介護にまつわるお役立ちコラム

シニアマンションの注意点|後悔しないためのデメリットと選び方

2025年10月20日

シニアマンションの購入は、老後の安心と快適な暮らしを実現する重要な選択です。しかし、十分な情報を得ずに契約してしまうと、思わぬ費用負担や将来の住み替えリスクに直面することもあります。この記事では、購入を検討している高齢者やその家族に向けて、シニアマンションの注意点やデメリットをわかりやすく解説し、後悔のない住まい選びをサポートします。

そもそもシニア向けマンションとは?他の高齢者向け住宅との違い

シニア向け分譲マンションとは、主に自立した高齢者を対象とした、生活支援サービス付きの所有権型住宅です。見守りや生活相談、緊急時対応といった基本サービスが提供され、資産として譲渡・売却・賃貸も可能になります。

高齢者向け住宅には複数の種類があり、所有形態や介護サービスの範囲が大きく異なります。以下の表で、代表的な3つの住宅形態を比較しましょう。

種類

所有形態

提供される介護サービスの範囲

主な入居対象者

シニア向け分譲マンション

所有権

資産として譲渡・売却・賃貸が可能。

見守り、生活相談、緊急時対応が基本。

介護や看護サービスは基本的に付帯しておらず、必要な場合は外部の訪問介護などを別途契約する。

自立して生活できる元気な高齢者。

要介護度は「自立~要介護1」程度が目安。

有料老人ホーム

利用権方式(建物の所有権は得られない )

食事、介護、家事、健康管理の4つのサービスを提供。

シニア向け分譲マンションより介護サポートが充実しており、要介護5まで対応する施設も多い。

自立している方から要介護度の高い方まで幅広く対応。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

賃貸借契約

安否確認と生活相談サービスが必須。

介護や医療サービスが必要な場合は、併設または近隣の事業者と別途契約する。

自立あるいは軽度の要介護状態の高齢者。

シニア向け分譲マンションは、自立した生活を続けながら、将来に備えた安心も得たい高齢者に適しています。資産として所有できるため、相続や売却といった選択肢を持ちたい方にも向いているでしょう。

購入後に後悔しないために知るべきシニアマンションの注意点とデメリット

シニア向け分譲マンションは魅力的な選択肢ですが、購入後に「こんなはずではなかった」と後悔する可能性もあります。事前に把握しておくべき潜在的な問題点やデメリットを理解しておくことが重要です。

高額な費用、介護体制の限界、資産価値といった複数の観点から、購入前に確認すべきポイントがあります。これらの注意点を十分に理解した上で、慎重に検討を進めましょう。

初期費用と月額費用のシミュレーション

シニア向け分譲マンションの購入には、数千万円から数億円の初期費用がかかります。さらに、購入後も管理費や修繕積立金などの月額費用として10万~30万円程度が継続的に必要です。

これらの固定費に加えて、レストランの食費やオプションの生活支援サービスといった変動費も発生します。実際の生活費は、利用するサービス内容によって大きく変わってくるでしょう。

退職金での一括購入や高齢での住宅ローン利用を検討する際は、特に注意が必要です。病気やケガなど不測の事態に備え、ある程度の預貯金を手元に残しておくことが重要になります。

介護・医療体制の限界と将来の住み替えリスク

多くのシニア向け分譲マンションは介護施設ではありません。そのため、常時介助が必要になると住み替えが必要になる可能性があります。看護師が常駐している施設もありますが、その役割は健康相談が主です。医療行為は基本的におこなわれないため、医療面での過度な期待は禁物でしょう。

ただし、外部の訪問介護サービスを組み合わせることで、継続して居住できる場合もあります。入居前に、どの程度の介護度まで対応可能か、外部サービスの利用制限はあるかなどを確認しておくことが重要です。

参考:厚生労働省|どんなサービスがあるの? - 訪問介護(ホームヘルプ)

資産価値と売却の難易度

シニア向け分譲マンションは購入層が限定的であるため、一般的なマンションと比べて売却が容易ではありません。将来、介護施設への住み替えを検討する際に大きな課題となる可能性があります。

マンションがすぐに売れない場合、住み替え先の費用と二重の負担が発生するリスクもあります。経済的な負担が長期化することも想定しておく必要があるでしょう。

購入を検討する際は、運営会社や不動産会社に確認を取ることが重要です。売却や賃貸に出す場合のサポート体制について、事前にくわしく聞いておきましょう。

失敗しない!シニア向けマンション見学時のチェックリスト

パンフレットやウェブサイトの情報だけでは、現地の雰囲気や実態は十分に把握できません。実際に足を運んで施設見学をおこなうことが、後悔しない選択をするために不可欠です。

見学当日に確認すべきポイントは多岐にわたります。「建物・設備」「スタッフ・入居者」「周辺環境」の3つのカテゴリーに分けて、チェックすべき項目を整理しました。これらのポイントを事前に整理し、質問事項をリストアップしておくことで、より有意義な見学になるでしょう。

シニア向けマンション見学時チェックリスト

カテゴリー

項目例

建物・設備

  • 清潔さとメンテナンス: 建物全体(外観、共用スペース、居室)が清潔に保たれ、手入れが行き届いているか。

  • バリアフリー設計: スロープの設置や室内の段差解消など、バリアフリー設計が徹底されているか。エレベーターの有無や広さ

  • 居室の快適性: 部屋の広さや日当たり、温度管理は適切か。寝室とトイレが近いなど、生活しやすい動線になっているか

  • 共用スペースの充実度: 食堂やリビング、庭などがリラックスできる環境か。ジムやカラオケルームといった娯楽施設が整っているか。

  • 安全対策: 室内に緊急通報装置が設置されているか、またその場所は適切か。

スタッフ・入居者

  • スタッフの対応と雰囲気: 入居者や見学者に対して丁寧な言葉遣いや態度で接しているか。スタッフ同士が良好な雰囲気で、しっかりと連携が取れている様子か。

  • 看護・介護体制: 看護・介護スタッフが常駐しているか、またその人数や資格は十分か。緊急時の対応体制はどのようになっているか。

  • 入居者の様子: 実際に入居している人たちの表情は明るいか、満足して生活しているように見えるか 。共用スペースでリラックスして過ごしているか。

周辺環境

  • 生活利便性: スーパー、ドラッグストア、コンビニ、病院などが徒歩圏内にあるか。

  • 交通アクセス: 駅やバス停からの距離は近いか 。家族や友人が訪問しやすい立地か。

  • 住環境: 閑静な住宅街であるかなど、落ち着いて生活できる環境か。

建物・設備の確認ポイント

共用施設の確認は見学時の重要なポイントです。共用施設(食堂、ラウンジ、大浴場など)の清潔感や管理状況、利用時間などを細かくチェックしましょう。居室内では、実際の生活を想定した確認が必要になります。バリアフリー設計が徹底されているか、日当たりや収納スペースは十分か、緊急通報装置の設置場所は適切かなどを確認してください。

エレベーターの数や広さ、廊下の幅にも注目しましょう。車椅子を利用する可能性を考えると、動線の確保は欠かせないチェックポイントです。実際の生活をイメージしながらチェックしてみることをおすすめします。

スタッフ・入居者の雰囲気の確認ポイント

スタッフの対応から、サービスの質を見極めることができます。入居者に対する言葉遣いや態度は丁寧か、スタッフ同士の連携はスムーズかなど、細かく観察しましょう。

入居者たちの様子も重要な確認ポイントです。表情や挨拶の様子、共用スペースでの過ごし方などから、コミュニティの雰囲気を掴むことができるでしょう。可能であれば、実際に入居している人に直接話を聞いてみることをおすすめします。住み心地や満足度について率直な意見を聞けるかもしれません。

周辺環境と立地の確認ポイント

日常生活に必要な施設が徒歩圏内にあるかは、重要な確認事項です。スーパーやドラッグストア、銀行、郵便局などの場所を把握しておきましょう。

医療機関の確認も欠かせません。かかりつけにできる病院やクリニックが近くにあるか、その評判はどうかについても、事前に調べておく必要があります。

また駅やバス停までの距離、交通の便も重要な判断基準です。家族や友人が訪問しやすい立地かどうかは、長く住み続ける上で大きなポイントになるでしょう。

シニアマンションの暮らしを支える「イチロウ」の訪問介護サービス

シニア向け分譲マンションに入居後、要介護度が上がったり、マンションのサービスだけでは不安を感じたりすることがあります。そのような場合に備えて、外部の訪問介護サービスを活用する選択肢があることを知っておきましょう。

外部の訪問介護サービスを組み合わせることで、住み替えをせずに自分らしい生活を継続できる可能性があります。特に、介護保険の枠にとらわれない柔軟なサービスは、生活の質を維持する上で有効です。

介護保険外サービスで実現する自由な暮らし

イチロウが提供する自費の訪問介護サービスは、介護保険では対応できないきめ細やかなニーズに応えます。介護保険の制限を受けずに、より柔軟なサポートを受けられる点が特徴です。

具体的には、通院の付き添いや買い物代行、趣味のための外出支援など、マンションのサービスを補完する幅広い利用が可能になります。日常生活をより豊かにするためのサポートを受けられるでしょう。

必要な時に必要な分だけ、専門的なスキルを持つヘルパーに依頼できる仕組みです。コストを抑えながら安心を確保できるため、経済的な負担を最小限にしながら自分らしい生活を続けられます。

https://ichirou.co.jp/

シニアマンション以外の選択肢:サ高住と有料老人ホーム

シニア向け分譲マンションのデメリットや費用面から、他の選択肢を検討したいと考える方もいるでしょう。高齢者向け住宅には、シニアマンション以外にも代表的な選択肢があります。

ここでは「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と「有料老人ホーム」の2種類を取り上げ、それぞれの特徴を解説します。自分の健康状態や経済状況、求めるライフスタイルに合わせて、最適な住まいを選ぶことが重要です。

賃貸で自由な暮らしを継続できる「サービス付き高齢者向け住宅」

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、安否確認と生活相談サービスが付いたバリアフリーの賃貸住宅です。賃貸契約のため、分譲マンションと比べて初期費用を抑えられます。住み替えが比較的容易である点も大きなメリットでしょう。ライフスタイルの変化や健康状態に応じて、柔軟に住まいを選び直すことが可能です。

介護が必要になった場合は、併設または外部の介護サービス事業者と別途契約する仕組みになっています。必要なサービスを自分で選べるため、自由度の高い暮らしを継続できるでしょう。

参考:国土交通省|サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム

手厚い介護が必要になった場合も安心な「有料老人ホーム」

有料老人ホームは、食事、介護、家事、健康管理のサービスを提供する施設です。要介護度が高い方でも入居できる場合が多く、手厚いサポートを受けられます。

有料老人ホームには「介護付」「住宅型」「健康型」の3つのタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。介護付は施設スタッフによる介護サービスが提供され、住宅型は外部の介護事業者と契約してサービスを受ける形式、健康型は自立した方向けで介護が必要になると退去が必要になる施設です。自分の状態やニーズに合わせて、適切なタイプを選ぶことが重要です。

将来的に手厚い介護が必要になることを見据えるならば、終身にわたって住み続けられる有料老人ホームが安心な選択肢となり得るでしょう。長期的な視点で検討することをおすすめします。

まとめ

シニア向けマンションは、自立した生活を続けながら安心も得られる魅力的な選択肢です。しかし、購入費用の高さ、介護体制の限界、資産価値の問題など、事前に理解すべき注意点が複数存在します。これらのデメリットを知らずに契約すると、将来的に住み替えを余儀なくされたり、経済的な負担が増大したりするリスクがあります。

後悔のない住まい選びを実現するためには、パンフレットだけでなく実際の施設見学を通じて、建物・設備、スタッフや入居者の雰囲気、周辺環境を細かく確認することが重要です。また、外部の訪問介護サービスの活用や、サ高住・有料老人ホームといった代替案も検討することで、自分に最適な選択肢が見えてくるでしょう。自身の健康状態、経済状況、求めるライフスタイルを総合的に考慮し、慎重に判断することで、安心して豊かなシニアライフを送ることができます。

シニア向けマンション購入に関するよくある質問

シニア向けマンションの購入を検討する際、多くの方が同じような疑問を持ちます。ここでは、これまで解説してきた内容の中から、特に読者が疑問に思いがちな点をQ&A形式でまとめました。購入前の不安を解消する参考にしてください。

Q1:シニア向け分譲マンションで介護が必要になったら、すぐに退去しないといけませんか?

すぐに退去する必要はありません。シニア向け分譲マンションでは、年齢制限や身体状況の変化を理由に退去を求められることは基本的にないためです。介護が必要になった場合は、外部の訪問介護サービスを別途契約することで、引き続き住み続けられます。介護保険を利用したサービスと、保険外の自費サービスを組み合わせることで、個々のニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。 ただし、要介護度が重くなり常時介助が必要な状態になると、マンション側で対応しきれず住み替えをすすめられる可能性があります。将来的な備えとして、外部サービスの利用可否を入居前に確認しておきましょう。

Q2:購入したマンションは、子どもに相続できますか?

相続できます。シニア向け分譲マンションは所有権のある分譲マンションのため、一般的なマンションと同様に配偶者や子どもに相続が可能です。 相続後は、自己居住するほか売却や賃貸運用といった選択肢があります。ただし、マンションには入居年齢の制限があるため、相続した方が年齢条件を満たしていない場合、すぐに住むことはできません。また、誰も居住していなくても管理費や修繕積立金、固定資産税などの費用が発生する点に注意が必要です。

Q3:夫婦で入居を考えていますが、片方が亡くなった場合はどうなりますか?

残された配偶者は引き続き居住できます。ただし、マンションの所有権については相続手続きが必要になるため注意が必要です。 夫婦共有名義で購入している場合、片方が亡くなると配偶者が自動的に全持分を取得するわけではありません。法定相続人による相続手続きをおこなう必要があります。単独名義の場合も同様に、相続人による名義変更の手続きが必要です。スムーズな相続のために、事前に遺言書の作成や家族との話し合いをしておくことが大切でしょう。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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