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介護にまつわるお役立ちコラム
「親の介護を頑張ったのに、相続分は兄弟と同じ…」その不公平感を解消できるかもしれないのが「寄与分」制度です。しかし、あなたの貢献を正当に主張するには、法律の知識と正しい準備が欠かせません。
本記事では、介護の貢献が相続で報われるための具体的な知識と、揉めないための生前対策まで分かりやすく解説します。
「親への介護を一身に背負って頑張ってきたのに、ほとんど何もしなかった兄弟姉妹と相続分が同じなんて、到底納得できない…」。そのように、報われない徒労感や強い不公平感を抱えていらっしゃる方は少なくないでしょう。現在の法律では、残念ながら親の介護をしたという事実だけで、他の兄弟姉妹よりも多くの遺産を自動的に相続できるという決まりはありません。しかし、あなたのその多大な貢献が法的に評価されるための「寄与分」という制度が存在します。
ただし、この寄与分が認められる道のりは平坦ではありません。「親族としての扶養義務を超える特別な貢献」であったことを、客観的な証拠をもって証明する必要があるのです。そのため、条件が非常に厳しく、証拠が不十分な場合は認められないケースも多いという厳しい現実も知っておく必要があります。
この記事では、あなたの介護の頑張りを正当に主張するための「寄与分」について、その仕組みと認められるための要件を詳しく解説していきます。
ここでは、ご自身の介護の貢献を相続分へ反映させるための法的な制度である「寄与分」に関する基本的な知識を解説します。法律に詳しくない方でもご理解いただけるよう、専門用語を避けながら、制度の根本からわかりやすく説明を進めていきます。
まずは、寄与分とはどのような制度なのか、そして、どのような場合に認められるのか、その厳しい要件について見ていきましょう。
寄与分とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持、または増加に対して、特別な貢献をした相続人が、法律で定められた相続割合(法定相続分)に加えて、より多くの財産を受け取れるようにするための制度です。
たとえば、相続人の一人が被相続人の事業を手伝って財産を増やした場合や、被相続人の療養看護に尽くしたおかげで高額な介護費用が抑えられ、財産が維持された場合などがこれにあたります。長年にわたる手厚い「介護」も、この「特別な貢献」に該当する可能性があり、寄与分を主張することは法律で認められた正当な権利なのです。
寄与分が法的に認められるためには、単に「親の介護をしていた」という事実だけでは十分ではありません。これから説明する5つの厳しい要件をすべて満たしていることを、客観的に示す必要があります。一つひとつの要件を、具体的な例を挙げながら確認していきましょう。
相続人による貢献であること
寄与分を主張できるのは、財産を相続する権利を持つ「相続人」に限られます。たとえば、亡くなった親の介護を子どもが行っていた場合は、その子どもが相続人であるため、この要件を満たします。
特別の寄与であること
親子や兄弟姉妹には、互いに助け合う義務(扶養義務)があります。寄与分として認められるのは、この一般的な扶養義務の範囲を明らかに超えるような「特別」な貢献です。たとえば、単に身の回りの手伝いをするだけでなく、仕事を辞めて24時間体制で介護にあたった、あるいは遠距離から頻繁に通い詰めて介護を行ったなど、自己犠牲を伴うような献身的な行為が求められます。
貢献によって親の財産が維持・増加したこと
行った介護が、結果として親の財産の維持や増加に直接的につながっている必要があります。典型的な例としては、本来であれば介護施設に入所して毎月数十万円の費用がかかったところを、子が在宅で介護したためにその支出が抑えられ、親の預貯金が減らなかった、というケースが挙げられます。
無償またはそれに近い状態であること
提供した介護が、無償、あるいはそれに近い状態で行われたことが必要です。もし親から介護の対価として十分な給料や生活費を受け取っていた場合、それは仕事として行われたと見なされ、寄与分は認められにくくなります。
貢献の時期、方法、程度が明確であること
いつからいつまで、どのような方法で、どの程度の介護を行ったのかを具体的に主張し、それを裏付ける証拠が求められます。口頭での主張だけでは不十分で、介護の内容を記録した日記や、介護にかかった費用の領収書、病院への送迎記録などが客観的な証拠として重要になります。
寄与分の請求が認められるのは、原則として財産を相続する権利を持つ「相続人」のみです。そのため、どれだけ献身的に介護を担ったとしても、相続人ではない人物、たとえば「子の配偶者(お嫁さんやお婿さん)」や、職業として介護サービスを提供していた「介護ヘルパー」は、寄与分を主張することができません。
しかし、この点については法改正がありました。2019年7月から施行された改正民法により、「特別寄与料」という新しい制度が創設されています。これにより、相続人ではない親族(子の配偶者など)も、無償で介護に尽くした場合、相続人に対して自身の貢献に見合った金銭の支払いを請求できるようになりました。
寄与分の制度が理解できても、やはり最も気になるのは「結局、自分の貢献はいくらと評価されるのか?」という点ではないでしょうか。この章では、その疑問にお答えするため、家庭裁判所などで実際に用いられる寄与分の具体的な計算方法と、過去の事例から見る金額の相場について解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、目安としてご確認ください。
介護の寄与分を金額として算出する際、家庭裁判所では一般的に以下の計算式が用いられることがあります。
【寄与分の計算式】
介護日数×介護報酬相当額×裁量的割合 |
それぞれの項目について説明します。
「介護日数」は、実際に介護に従事した日数です。
「介護報酬相当額」とは、もしあなたの介護を専門のヘルパーなどに依頼した場合にかかるであろう費用のことです。これは、厚生労働省が定める公的な介護保険サービスの基準(介護報酬基準)を参考に、要介護度などに応じて1日あたり5,000円〜8,000円程度で設定されることが多いようです。
「裁量的割合」は、介護の専門家ではない親族による貢献であることを考慮し、算出された金額を調整するための係数です。介護の負担の度合いや、被相続人との関係性といったさまざまな事情を裁判所が総合的に判断して決定し、一般的には0.5〜0.8の範囲で設定される傾向にあります。
この計算式を使えば大まかな目安は算出できますが、あくまでも個別の事情によって金額は大きく変動するという点を忘れないでください。
参照:厚生労働省「介護報酬」
では、実際の裁判ではどのくらいの金額が寄与分として認められているのでしょうか。もちろんケースバイケースですが、過去の判例を見ると、120万円〜200万円程度の範囲で認められることが多いようです。中には、貢献の内容が高く評価され、1,000万円近い寄与分が認められた事例も存在します。
これは、長期間にわたる献身的な介護がなければ、同等以上の介護費用が発生し、財産が大きく減少していたと評価された結果です。
ただし、繰り返しになりますが、これらの金額はあくまでも一例です。介護の期間、頻度、要介護度、そして介護していた側の負担の大きさなど、さまざまな要因によって認められる金額は大きく変わります。
寄与分は、主張すれば必ず認められるわけではありません。貢献が正当に評価されなかったり、認められても大幅に減額されたりしたケースも数多くあります。同じような失敗を避けるため、なぜ認められなかったのか、その理由を具体的な判例ケースから学びましょう。
親から相応の援助を受けていたケース
子が親の介護をしていたものの、その見返りとして親から家賃や生活費の援助を受けていたり、相場より安い家賃で親所有の家に住んでいたりした場合です。裁判所はこれを「介護の対価を受け取っていた」と判断し、無償性が低いとして寄与分を認めない、あるいは減額することがあります。
親族間の扶養義務の範囲内と判断されたケース
ときどき実家に戻って身の回りの世話をするといった、一般的な親子関係の範囲で行われる援助は、「特別な貢献」とは見なされにくい傾向があります。同居している家族が家事の延長線上で手伝うような場合も、扶養義務の範囲内と判断され、寄与分が否定されることがあります。
客観的な証拠が不十分だったケース
「毎日、必死で介護した」と口頭で主張するだけでは、法的な証明とはなりません。いつ、どのような介護を、どのくらいの時間行ったのかを示す介護日記や、介護用品の購入レシート、病院への送迎記録といった客観的な証拠がなければ、貢献の事実を認めてもらうことは極めて困難です。
ご自身の介護の貢献を寄与分として正当に認めてもらうためには、感情的に訴えるだけでは不十分で、然るべき手順を踏む必要があります。ここからは、実際に寄与分を主張し、最終的に認めてもらうまでの一連の流れを、具体的な4つのステップに分けて解説していきます。この手順を理解することが、あなたの頑張りを形にするための第一歩となります。
寄与分の主張を成功させるための生命線は、客観的な「証拠」です。あなたの貢献が、親族の扶養義務を超える「特別な」ものであったことを第三者に納得してもらうためには、具体的な証拠が何よりも重要になります。感情論ではなく、事実に基づいて主張を組み立てるため、以下のような資料を徹底的に集めましょう。
介護日記
「いつ、誰が、どのような介護をしたか」を詳細に記録したものです。排泄の介助、食事の準備、入浴の手伝い、通院の付き添いといった具体的な内容や、介護に要した時間を毎日記録することで、あなたの貢献が可視化され、極めて有力な証拠となります。
病院の診断書、要介護認定通知書
親がどのような病状で、どの程度の介護を必要としていたのかを公的に証明する書類です。要介護度が高ければ、それだけ介護の負担が大きかったことの裏付けになります。
介護にかかった費用の領収書
あなたが立て替えた医療費やおむつ代、通院のための交通費など、介護のために支出した費用の領収書はすべて保管してください。これにより、あなたが金銭的な負担も担っていたことを証明できます。
他の兄弟が介護に非協力的だったことを示すメールやLINEの履歴
もし他の相続人(兄弟姉妹など)に介護への協力を求めたにもかかわらず、断られた経緯があるのであれば、そのやり取りが分かるメールやSNSの履歴も証拠となり得ます。これは、あなたの貢献が特に大きかったことを示す一助となります。
証拠がそろったら、いよいよ行動に移ります。最初のステップは、相続人全員で行う「遺産分割協議」の場で、ご自身の寄与分を主張することです。この協議は、遺産の分け方を相続人同士で話し合って決める手続きを指します。
ここで重要なのは、ステップ1で集めた証拠を具体的に示しながら、冷静かつ論理的に交渉を進めることです。「私だけがこんなに大変だったんだから!」と感情的に不満をぶつけるだけでは、他の相続人の反発を招き、話し合いがこじれてしまう可能性があります。介護日記や領収書などを見せながら、自身の貢献が財産の維持にどれだけ繋がったのかを具体的に説明しましょう。
この遺産分割協議で相続人全員があなたの寄与分に合意すれば、最も円満かつ迅速に問題を解決できます。
遺産分割協議で他の相続人が納得せず、話し合いがまとまらなかった場合、次の手段として家庭裁判所に「寄与分を定める調停」を申し立てることになります。
「調停」というと難しく聞こえるかもしれませんが、これは裁判官1名と、民間の良識者から選ばれた調停委員2名が中立な立場で間に入り、相続人双方の意見を聞きながら、話し合いによる解決を目指す手続きです。あくまでも当事者同士の合意を目的とした話し合いの延長であり、裁判のように一方的に勝ち負けを決める場ではありません。
調停委員が専門的な知見から助言を与えたり、解決案を提示してくれたりすることで、当事者だけでは感情的になって進まなかった話し合いが、円満な合意へと至るケースも少なくありません。
調停を経てもなお、相続人全員の合意が得られなかった場合、調停は不成立となり、手続きは自動的に「審判」へと移行します。
審判では、当事者間の話し合いは行われません。これまでに提出された証拠や主張、調停での経緯など、一切の事情を裁判官が総合的に考慮し、最終的な判断を下します。つまり、裁判官があなたの寄与分の有無やその金額を法的に決定し、相続人全員に対して「〇〇円を支払うように」と命令(審判)を下すことになるのです。
審判まで進むと、解決までには相応の時間と労力が必要となります。また、法的な主張や立証がより重要になるため、弁護士といった法律の専門家によるサポートが事実上、不可欠となるでしょう。
これまで解説してきた寄与分の主張は、あくまで相続が始まった後に行う手段です。しかし、できれば他の相続人と争うことなく、円満に自身の貢献を認めてもらいたいと願うのが本音ではないでしょうか。
そのためには、親が元気なうちに「生前対策」を講じておくことが極めて重要になります。親の意思が明確なうちに準備を進めることで、無用なトラブルを未然に防ぎ、感謝の気持ちをスムーズに受け取ることが可能になります。
ここでは、その具体的な2つの方法を解説します。
最も効果的で基本的な生前対策の一つが、親に「遺言書」を作成してもらうことです。遺言書は、親が自身の財産を誰にどのように残したいかを示す最終的な意思表示であり、法的に強い効力を持ちます。
たとえば、遺言書の中に「長年にわたり介護に尽くしてくれた長男〇〇に、自宅の土地建物を相続させる」といった一文を明確に記してもらえれば、原則としてその内容通りに遺産は分割されます。これにより、相続が始まった後に他の兄弟姉妹と寄与分について争う必要がなくなります。
ただし、注意すべき点として「遺留分」の存在があります。遺留分とは、兄弟姉妹など一定の相続人に法律上保障されている、最低限の遺産の取り分のことです。もし遺言書の内容がこの遺留分を侵害していると、後に他の兄弟から侵害額に相当する金銭を請求される可能性があります。そのため、遺言書を作成する際は、他の相続人の遺留分にも配慮した内容にすることが、後のトラブルを避ける上で賢明です。
親が存命のうちに、介護への感謝の気持ちとして財産を贈与してもらう「生前贈与」も、有効な手段の一つです。これは、親の「ありがとう」という気持ちを、最も直接的な形で受け取れる方法といえるでしょう。
生前贈与には、年間110万円までの贈与であれば受け取った側に贈与税がかからない「暦年贈与」という仕組みがあります。この範囲内で毎年贈与を受ければ、税金の負担なく財産を移転できます。
ただし、相続開始前の一定期間内に行われた生前贈与は、遺産の前渡し(特別受益)と見なされ、遺産分割の際に相続財産に持ち戻して計算される場合があることにも留意が必要です。また、「言った、言わない」の争いを防ぐため、贈与の事実を明確にする親子間の「贈与契約書」をきちんと作成しておくことが大切です。
近年、新たな財産管理・承継の方法として注目されているのが「家族信託」です。これは、親(委託者)が元気なうちに、信頼できる子(受託者)との間で信託契約を結び、自身の財産の管理や処分を任せる制度を指します。
この制度の大きなメリットは、親が認知症などで判断能力が低下した後も、受託者である子が契約内容に従って預金の引き出しや不動産の売却などをスムーズに行える点にあります。これにより、介護費用の捻出などで困る事態を防げます。
さらに、家族信託の契約の中で、親が亡くなった後の財産の承継先(次の受益者)を指定しておくことも可能です。たとえば、「自身が亡くなった後は、介護を担ってくれた長男に信託した財産をすべて帰属させる」と定めておくことで、遺言書と似た効果を持たせることもできます。
介護を続けるうえで欠かせないのが、日々の負担をいかに軽減できるかという視点です。オーダーメイド型の介護保険外サービス「イチロウ」は、その負担を柔軟に支え、あなたの貢献を将来しっかり形に残すことができます。
たとえばご自身の財産で費用を支払えば、通院付き添いなどのサービス利用明細が客観的な証拠となり、親御さんの財産を守った具体的な金額として記録されます。また、親御さんの財産で支払う場合でも、サービスを選び管理・監督する行為は「身上監護」として法的に評価される大切な役割です。
イチロウは1時間単位で必要なときに必要なだけ依頼できるため、あなたの生活に合わせて効率的に活用可能です。その結果、心身に余裕が生まれ、より質の高い見守りや手続き、相続準備に力を注げます。イチロウのサービスを活用すれば、介護に追われる毎日から少し解放され、自分らしい時間を取り戻すことができます。その余裕が、より質の高い家族の関わりを可能にします。
親への介護という多大な貢献は、法的に評価されるべき正当な権利です。寄与分を主張するには客観的な証拠集めが、そして円満な解決には親が元気なうちの生前対策が不可欠となります。正しい知識を身につけ、あなたの頑張りが報われる未来のために、今日からできる準備を始めましょう。
これまで解説した内容について、特に多くの方が疑問に思われる点をQ&A形式でまとめました。ご自身の状況に近いものがあれば、ぜひ参考にしてください。
決して手遅れではありません。介護日記がなくても、他のもので貢献を証明できる可能性があります。たとえば、親の診断書や要介護認定通知書、あなたが立て替えた医療費・交通費の領収書、介護サービスを利用した際のご自身の支払い記録、兄弟姉M妹とのメールのやり取りなども証拠になり得ます。今からでも、日々の介護内容や気づいたことをメモに残し始めることが大切です。集められる資料を一つでも多くそろえて、専門家に相談してみましょう。
当事者同士での話し合いが難しい場合、まずは弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。専門家が代理人として間に入ることで、相手方も冷静に話を聞く姿勢になる可能性があります。また、具体的な行動としては、ご自身の貢献内容と寄与分を主張したい旨を記載した手紙を、配達記録が残る方法で送付することも一つの手段です。これにより、話し合いを求めたという正式な記録が残り、次のステップである家庭裁判所の調停へ進む際にも有利に働くことがあります。
相談したい内容によって専門家を選ぶのがよいでしょう。すでに相続人間で意見の対立がある、あるいはその可能性が高い場合は、交渉から調停・審判まで代理人になれる「弁護士」が適任です。トラブル防止のための遺言書作成や家族信託、不動産の名義変更が主な目的なら「司法書士」が力になります。相続税や贈与税の計算など、税金に関する具体的な相談は「税理士」の専門分野です。ご自身の状況が「揉め事に発展しそうか」を一つの基準として、まずは弁護士に相談してみるのが間違いのない一歩です。