
フレイル予防とは?原因と3つの柱、今日からできる改善方法
介護にまつわるお役立ちコラム
「ホスピス」という言葉を耳にしたことがあっても、具体的にどのような場所で、どのようなケアが受けられるのか、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
ホスピスとは、治癒を目的とした治療が難しくなった方が、人生の最終段階を穏やかに過ごすための場所やケアを指します。
この記事では、ホスピスの基本的な知識から、費用の目安、施設の種類まで、わかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ホスピスとは、がんなどの完治が見込めない病気を持つ方が、人生の最期を穏やかに迎えるための施設です。病気による痛みや不安といった身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的な悩みや経済的な問題など、社会的な側面からも本人と家族を総合的に支えます。
かつては病院の緩和ケア病棟が中心的な役割を担っていました。しかし近年では、病院だけでなく老人ホームで終末期を過ごす人が増えてきたことから、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでも同様のケアが提供されるようになりました。
さらに、住み慣れた自宅で最期を迎えたいというニーズに応える在宅ホスピスも注目を集めています。このように、どこでどのように最期のときを過ごすのか、選択肢は広がってきているのです。
ホスピスと混同されやすいケアや施設として、「緩和ケア」「ターミナルケア」「病院の一般病棟」があります。これらは対象とする時期や目的、提供される場所が異なるため、それぞれの特徴を正しく理解することが重要です。
緩和ケアは、がんなどの診断時から治療と並行して行うことができ、終末期に限定されません。一方、ホスピスケアは余命が限られた時期に焦点を当て、最期のときを穏やかに過ごすことを目的としています。
ターミナルケアは終末期医療とも呼ばれ、延命治療は行わずに穏やかな余生を支えるケアです。ターミナルケアやホスピスでは治療ではなく苦痛の緩和に重点を置きます。
以下の表で、それぞれの違いを整理しました。
【ホスピスとその他のケア・施設の違い】
ケアの種類 | 対象時期 | 目的 | 主な場所 |
ホスピスケア | 病気の終末期(余命が限られた時期) | 苦痛を緩和し、最期のときを穏やかに、その人らしく過ごすこと。 | ・緩和ケア病棟 ・一部の介護施設 ・在宅(在宅ホスピス) |
緩和ケア | がんなどの診断時から、治療と並行して行うことも可能。終末期に限らない。 | 病気に伴う身体的・精神的な苦痛を和らげること。 | ・一般病棟 ・緩和ケア病棟 ・在宅 |
ターミナルケア (終末期医療) | 病気や老化により、人生の最期が近づいた時期。 | 延命治療は行わず、穏やかに余生を過ごしてもらうことに重点を置いたケア。 | ・病院 ・介護施設 ・在宅 |
病院での一般治療 | 病気の各段階(診断、治療、回復期など) | 病気を治すこと(根治)を目的とした医療行為。 | ・病院の一般病棟 |
ターミナルケアとホスピスケアは、ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。ターミナルケアは、終末期の患者さんに対する包括的なケア全般を指す広い概念です。病院、自宅、施設など、どこで行われるケアも含みます。
ホスピスケアは、ホスピス(緩和ケア専門施設)で発展した終末期ケアの理念や方法を指します。身体的苦痛だけでなく、心理的・社会的・スピリチュアルな面も含めた全人的なケアを重視します。両者はほぼ同義として扱われるけーすがもありますが、患者さんの尊厳を大切にしながら、穏やかな最期を支える点で共通しています。
ホスピスでは、身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的な不安や社会的な悩みにも対応する総合的なケアを提供しています。
医師や看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーといった多職種がチームを組み、患者一人ひとりが穏やかに過ごせるよう支援する体制が整っています。
身体的ケアでは、痛みや息苦しさ、倦怠感といった症状を緩和するための医療的処置を行います。具体的には以下のようなケアが提供されます。
医療用麻薬(モルヒネなど)や鎮痛剤の投与
酸素療法
点滴
マッサージ
これらの処置は病気を治すことを目的とするのではなく、苦痛を和らげることに重点を置いています。また、食事介助や入浴介助、排泄介助、清拭、更衣介助といった日常生活の支援も、快適に過ごすための重要な身体的ケアの一部です。
死への恐怖や不安、孤独感といった精神的な苦しみに寄り添うことも、ホスピスケアの重要な役割です。心理士やチャプレン(宗教的ケアを行う専門職)によるカウンセリングを通じて、患者さんの心に寄り添い、穏やかな気持ちで過ごせるよう支援します。
レクリエーションや季節のイベントの開催、家族との時間を大切にする支援なども行われています。また、経済的な問題や相続といった社会的な悩みに対しても、ソーシャルワーカーが相談に応じます。公的支援の利用手続きや介護・看護サービスの手配など、患者さんと家族が安心して過ごせるよう、さまざまな側面からサポートしてくれるのです。
ホスピスへの入所にかかる費用は、病院の緩和ケア病棟を利用するか、介護施設のホスピスプランを利用するかによって大きく異なります。それぞれの費用構成や自己負担額の目安を理解しておくことで、経済的な準備を進めやすくなるでしょう。
緩和ケア病棟に入院する場合、入院基本料、食事療養費、差額ベッド代(室料)、雑費などが必要です。入院基本料には健康保険が適用されるため、実際の自己負担額は1〜3割となります。
また、高額療養費制度の対象にもなるため、月々の医療費が一定額を超えた場合には払い戻しを受けることができ、自己負担額には上限が設けられています。事前に協会けんぽや健康保険組合から「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、一時的な高額支払いを避けられます。
参考:特定非営利活動法人 日本緩和医療学会|緩和ケア病棟で緩和ケアを受ける費用を知る
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などのホスピスプランを利用する場合、介護保険サービス利用料、居住費、食費、雑費などが必要となります。介護保険サービス利用料については介護保険が適用されるため、自己負担は1〜3割です。
しかし、居住費や食費などは全額自己負担となるため注意が必要です。居住費は地域や施設、部屋の種類によって異なりますが、月額15〜30万円程度が一般的とされています。これに加えて、医療・介護に関わる費用として5〜25万円程度かかると考えておくと良いでしょう。施設によって費用は大きく異なるため、事前に詳細を確認することが大切です。
ホスピスケアを受けられる場所は、かつては病院の緩和ケア病棟が中心でしたが、近年では介護施設や在宅など、選択肢が多様化しています。どこで最期のときを迎えるかは、本人の希望や家族の状況、医療・介護の必要性などによって異なります。
それぞれの場所には特徴があり、メリットとデメリットが存在するため、以下の表で確認してみましょう。
場所 | 特徴 | メリット | デメリット |
病院の緩和ケア病棟 | 病院内に設置された、緩和ケアを専門に行う病棟。 | ・医師や看護師などが常駐しており、医療体制が万全。 ・急な症状の変化にも迅速に対応してもらえる安心感がある。 | ・長期的な入院が難しい場合がある。 ・あくまで病院のため、生活の自由度は低い傾向にある。 |
介護施設 | ホスピスプランや看取りに対応している有料老人ホームや特別養護老人ホームなど。 | ・「終の棲家」として、住み慣れた環境で落ち着いて過ごせる。 ・レクリエーションなどが開催されることもある。 | ・入居には「要介護認定」など、施設ごとの条件を満たす必要がある。 ・病院に比べると、夜間の医療体制が手薄になる場合がある。 |
在宅 | 自宅で訪問診療や訪問看護などを利用しながら過ごす。 | ・住み慣れた自宅で、家族と一緒にリラックスして過ごせる。 ・本人の希望に沿った、自由な生活を送りやすい。 | ・急変時の対応は訪問診療・看護の緊急対応に頼ることになる。 ・家族の介護負担が大きくなる可能性がある。 |
本人や家族がどこで最期を迎えたいかをしっかりと話し合ったうえで、かかりつけ医、がん相談支援センター、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどの適切な相談窓口にアクセスすることが大切です。
「最期は住み慣れた自宅で過ごしたい」という希望を持つ方にとって、在宅ホスピスは重要な選択肢です。在宅での療養生活を実現するには、訪問診療や訪問看護、訪問介護といった専門サービスが連携し、医療的なケアと日常生活のサポートを両立させることが不可欠となります。
「イチロウ」は、介護保険外の訪問看護・介護サービスとして、在宅ホスピスにおける手厚いケアを提供しています。24時間対応が可能で、介護保険サービスでは対応しきれない細やかなニーズにも応えられる点が特徴です。
イチロウの看護コース(※現在東京23区のみ提供)では、看護師が自宅を訪問し、終末期ケアや緩和ケアを実施します。痛みのコントロール、医療処置(たん吸引や経管栄養)、バイタル測定、お薬の管理などの医療的ケアに加え、療養生活や家族への相談支援も行えます。
介護コースでは、食事介助、排泄介助、入浴・清拭介助といった身の回りの世話のほか、夜間の見守りや話し相手など、療養生活を支える幅広いサポートを提供しています。介護保険サービスと組み合わせることで、公的サービスの枠を超えた手厚いケア体制を構築できるのが、自費サービスならではの強みです。
ホスピスとは、完治が見込めない病気を持つ方が、人生の最期を穏やかに迎えるための施設です。病院の緩和ケア病棟、介護施設、在宅など、受けられる場所は多様化しており、身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的・社会的な支援も提供されます。
費用は施設の種類によって異なりますが、健康保険や介護保険が適用される場合もあります。本人や家族がどこで最期を迎えたいかを話し合い、適切な相談窓口に相談することが大切です。
ホスピスの利用を検討する際に、多くの方が疑問に思われる点について、Q&A形式で解説します。
がん患者だけではありません。日本でホスピスへの入院が認められているのは、主にがん(悪性腫瘍)または後天性免疫不全症候群(エイズ)の患者さんです。 ただし、対象者が明確に定められているわけではなく、一部の施設では終末期にあたらない方を受け入れている場合もあります。難病の方については専門の病棟がある施設もあるため、病院のソーシャルワーカーや保健所などに相談してみると良いでしょう。
病院の緩和ケア病棟における滞在期間は、30〜45日程度が一般的です。ホスピス病床の少なさや短期入院の診療報酬の高さなどから、長期的な滞在が難しい場合があります。ただし、あくまで平均的な数値であり、患者さんの状況や病棟の体制によって異なります。長期入院が難しい場合には、在宅ホスピスやホスピスプランのある介護施設を利用する選択肢もあります。
病院の緩和ケア病棟における滞在期間は、30〜45日程度が一般的です。ホスピス病床の少なさや短期入院の診療報酬の高さなどから、長期的な滞在が難しい場合があります。長期入院が難しい場合には、在宅ホスピスやホスピスプランのある介護施設を利用する選択肢もあります。