介護にまつわるお役立ちコラム

親の終活完全ガイド|やることリスト・聞いておくこと・切り出し方

2025年09月27日

親の終活について考え始めたものの、何から手をつければ良いか、どう切り出せば良いか悩んでいませんか。この記事では、親と穏やかに対話するためのコツから、親子で進めるべき具体的な7つのやることリストまでを網羅的に解説します。読み終える頃には、終活への不安が解消され、残りの人生をより良く生きるための前向きな一歩を踏み出すための、具体的な道筋が見えるでしょう。

親の終活、まず何から始めるべき?

「終活」という言葉を聞くと、寂しさや不安を感じるかもしれません。しかし、本来の終活とは、残りの人生を自分らしく、より豊かに過ごすための前向きな準備活動を指します。親の終活を考えることは、親子にとって、これからの時間を安心して楽しむための大切な一歩となるでしょう。

 

親の終活をサポートするにあたり、子世代がまず心に留めておきたい3つの基本的な心構えがあります。一つ目は、何よりも親の気持ちを尊重することです。本人の意思を無視して話を進めることは避けなければなりません。

 

二つ目は、兄弟姉妹がいる場合、必ず情報を共有し、協力して進めることです。特定の一人だけに負担が偏ったり、後から意見の食い違いが生まれたりする事態を防ぎます。

 

そして三つ目は、一度にすべてを完璧に進めようとしないことです。終活は時間のかかる取り組みなので、焦らず一つひとつ丁寧に進める姿勢が大切になります。

親に「終活」の話を上手に切り出す3つのコツ

親が元気なうちだからこそ、終活について話しておきたいと考える方は多いでしょう。しかし、いざとなると「どう切り出せば良いかわからない」「不快に思われないか心配」と、ためらってしまうものです。大切なのは、親の気持ちに寄り添い、あくまで本人の意思を尊重する姿勢を示すことでしょう。

 

これから、親子の間で自然な形で終活の対話を始めるための、3つの具体的なコツを紹介します。

コツ1:自分自身の終活を話題にする

親へ直接「終活を始めない?」と促すのではなく、まずは自分自身の話として切り出してみるのが一つの方法です。たとえば、「実は最近、自分の将来のことを考えて、万一に備えてエンディングノートを書き始めたんだ」というように、あくまで自分のための準備として話題を提供します。

 

このアプローチの良い点は、親に「死」を直接的に連想させにくいことです。自分の話から始めることで、終活が特別なことではなく、誰もが考えるべきテーマなのだと自然に伝えられます。

コツ2:知人やテレビの話題をきっかけにする

身近な話題から会話を始めるのが難しいと感じる場合は、第三者の事例をきっかけにするのも有効な手段といえるでしょう。具体的には、「最近テレビの特集で終活のことをやっていたんだけど」「ニュースで見たのだけれど、〇〇さん(有名人)が生前にいろいろと準備をしていたらしいよ」といった切り出し方が考えられます。

 

個人的な問題としてではなく、世間一般の関心事として話題にすることで、心理的な抵抗感を和らげる効果が期待できます。客観的な情報から会話を始めることで、親も自分のこととして捉えやすくなるかもしれません。

コツ3:将来のポジティブな話からつなげる

終活を「終わりの準備」ではなく、「これからの人生を安心して楽しむための準備」として捉え直すと、会話のきっかけが見つかりやすくなります。将来の楽しみや計画に結びつけて話を切り出してみてはいかがでしょうか。

 

たとえば、「これから二人で気兼ねなく旅行を楽しむために、今のうちに家の荷物を整理して、いつでも出かけられるようにしない?」といった、前向きな提案ができます。このように話を進めることで、終活が未来を明るくするための活動なのだと親に感じてもらいやすくなるでしょう。

【ケース別】終活に乗り気でない親への対処法

これまで紹介したような切り出し方を試みても、すべての親御さんが終活に協力的とは限りません。「まだ早い」「縁起でもない」といった理由で、話題そのものを避けられてしまうこともあるでしょう。そのような場合でも、焦る必要はありません。

 

ここでは、終活に乗り気でない親の気持ちの背景にある理由を探り、それぞれのケースに応じた対処法を解説します。

「まだ早い」と思っている親には

親が心身ともに元気な場合、「終活なんてまだ先の話だ」と感じるのは自然なことかもしれません。そのような親には、「元気な今だからこそ、これからのことを一緒に考えたい」という気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。判断力がしっかりしており、体力もあるうちであれば、財産の整理や家の中の片付けなどもスムーズに進められます。

 

将来について冷静に話し合えるのは、心と体に余裕がある今だからこそ、という点を丁寧に説明することが大切です。決して急かしたりはせず、親の気持ちを尊重しながら、時間をかけて対話を重ねていく姿勢が求められます。

「縁起でもない」と話題を避ける親には

終活の話題を「縁起でもない」と感じてしまう親には、話の視点を変えてアプローチすることが有効です。終活は単なる死への準備ではなく、残される家族が困らないようにという「思いやり」であり、親から子への「愛情表現」の一環なのだと伝えてみましょう。

 

話題を避ける親に対しては、子どもとしての素直な気持ちを打ち明けることも一つの方法となります。「お父さん(お母さん)が大切にしてきたものを知りたいし、何より希望をきちんと叶えたいんだ」と伝えることで、親も自分のためだけでなく、子どものために話してみようという気持ちになるかもしれません。

親子で進める終活やることリスト7選

親との対話のきっかけがつかめたら、次はいよいよ具体的な終活の項目に触れていきましょう。ここでは、親子で一緒に進めたい7つの「やることリスト」を紹介します。一度にすべてをやろうとせず、「まずは簡単なものから」という気持ちで、親御さんのペースに合わせて無理なく取り組むことが大切です。

 

各項目について、なぜそれが必要なのか、そして子としてどのように手伝えるのかを具体的に解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

1.エンディングノートを書いてもらう

親子で始める終活の第一歩として最適なのが、エンディングノートの作成です。これは遺言書とは異なり法的な効力はありませんが、親の希望や考えを知るための素晴らしいきっかけになります。

 

財産や葬儀といった事務的な内容だけでなく、これまでの人生の思い出や家族への感謝のメッセージなど、前向きな気持ちで書ける項目から始めてもらうと良いでしょう。親の誕生日や敬老の日などに、プレゼントとして渡してみるのも素敵なアイデアです。

2.モノの整理・断捨離を手伝う

親が亡くなった後、残された家族にとって大きな負担となるのが遺品整理です。元気なうちに一緒にモノの整理を始めることで、その負担を大きく減らすことができます。片付けの際は、ただ処分するのではなく、親の思い出話に耳を傾けながら進めることが大切です。

 

具体的には、「いるもの」「いらないもの」「迷うもの」の3つに分類し、迷うものは無理に捨てず保留にするのがコツです。重い家具の移動など、体力が必要な作業は子どもが積極的に手伝いましょう。

3.財産について聞いておく

相続に関するトラブルを未然に防ぐためには、親が元気なうちに財産の全体像を親子で共有しておくことがきわめて重要です。預貯金(銀行名・支店名)、不動産、有価証券、生命保険といったプラスの財産だけでなく、ローンなどの借金の有無についても確認しておきましょう。あわせて、通帳や印鑑、重要書類の保管場所、利用している場合はネットバンクのIDやパスワードも聞いておく必要があります。ただし、生前に許可なくログインするのは不正アクセス禁止法に抵触するおそれがあるため注意が必要です。

 

また、遺言書の有無は必ず確認してください。もし作成していないなら、家族間の無用な争いを避けるためにも作成を検討してもらうのがおすすめです。特に、法務局が自筆証書遺言を保管する「自筆証書遺言書保管制度」は、紛失や改ざんの心配がなく、家庭裁判所での検認も不要になるため安心です。

 

参照:法務局「自筆証書遺言書保管制度について」

4.医療や介護の希望を確認する

もしもの時に備えて、親がどのような医療や介護を望んでいるかを確認しておくことは、残された家族が難しい決断を下す際の精神的な負担を軽くします。たとえば、延命治療を望むか望まないか、介護が必要になった場合は自宅で過ごしたいか施設に入りたいかなど、具体的な意思を聞いておきましょう。さらに、キーパーソン(意思決定の中心者)も決めておいてもらえると家族間トラブルの回避につながります。

 

また、かかりつけの病院や持病、日常的に服用している薬といった情報も一覧にしてまとめておくと安心です。厚生労働省は、このような人生の最終段階における医療・ケアについて話し合うプロセスを「人生会議(ACP)」と呼び、その重要性を広く伝えています。

 

参照:厚生労働省「人生会議(ACP)」

5.葬儀やお墓の希望を聞いておく

葬儀やお墓に関する希望は、親にとって「縁起でもない」と感じやすい話題の一つかもしれません。しかし、葬儀の規模(たとえば家族葬)や宗教形式、お墓をどうしたいかなどを事前に聞いておけば、いざという時に家族が迷わず、落ち着いて対応できます。

 

この話題を切り出す際は、いきなり本題に入るのではなく、「遺影に使うなら、どの写真がいいかな?」といったように、比較的明るく選びやすいテーマから話を始めてみるのが良いでしょう。

6.デジタル遺品の情報を整理する

現代の終活では、パソコンやスマートフォンの中の「デジタル遺品」の整理も欠かせません。これには、写真やメールなどのデータ、SNSのアカウント、ネットショッピングや月額課金制のサービス(サブスクリプション)などが含まれます。これらの情報を放置すると、アカウントが不正利用されたり、不要な支払いが続いたりする危険性があります。

 

そうした事態を避けるため、利用しているサービス名とID、パスワードの一覧を作成してもらい、その保管場所を共有しておきましょう。

7.連絡先リストを作成しておく

万一の際に、どこまで訃報を知らせるべきか判断するのは、残された家族にとって意外と難しいものです。親戚や特に親しかった友人など、連絡すべき人のリストを事前に作成しておくことで、家族の負担を大きく減らせます。

 

年末に年賀状の整理をするタイミングなどを利用して、「この方には連絡した方が良いかな?」と聞きながら、親子で一緒にリストを作成するのも一つの良い方法です。

親の介護や将来のことで悩んだらイチロウに相談を

 終活について親子で話し合いを進める中で、将来の介護に関する具体的な不安や疑問が生まれてくることもあるでしょう。自分たちだけで解決策を見つけるのが難しいと感じたときは、専門的な知識を持つプロに相談するのも大切な選択肢の一つです。

 

介護サービス「イチロウ」では、介護に関するさまざまな悩み事の相談を受け付けています。公的な介護保険では対応が難しい外出の付き添いや長時間の見守りなど、一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの介護プランを提案してくれるのが大きな特長です。

まとめ

本記事では、親の終活の進め方について、切り出すコツから具体的なやることリストまでを解説しました。終活は、残りの人生をより良く生きるための前向きな活動であり、親子で取り組むことで将来の不安を解消できます。大切なのは、親の気持ちを尊重し、焦らず一歩ずつ進めることです。この記事を参考に、親子で穏やかな対話の時間を持ってみてはいかがでしょうか。

よくある質問

親の終活を進めるうえで、共通する悩みについてまとめました。皆さんの参考にしてみてください。

Q.親が終活の話題をまったく受け入れてくれません。どうすれば良いですか?

まず大切なのは、無理強いをしないことです。親御さんの気持ちを尊重し、一度時間を置きましょう。タイミングを見て、この記事で紹介したような、ご自身の話やテレビの話題から切り出すなど、より自然な形で対話を試みるのがおすすめです。焦らず、親の心に寄り添う姿勢が重要です。

Q.エンディングノートと遺言書の違いは何ですか?

エンディングノートは、ご自身の希望や家族へのメッセージなどを自由に書き記すものですが、法的な効力はありません。一方、遺言書は財産の相続などについて法的な効力を持つ正式な書類です。まずはエンディングノートで気持ちや希望を整理してもらい、財産に関する項目は遺言書として別途作成を検討してもらうのが良いでしょう。

Q.親の終活を進める上で、最も大切なことは何ですか?

何よりも親の気持ちを尊重することです。子どもの考えを押し付けたり、一度にすべてを終わらせようと焦ったりせず、親のペースに合わせて一歩ずつ丁寧に進める姿勢が重要になります。兄弟姉妹がいる場合は、皆で情報を共有し、協力してサポートすることも忘れないようにしましょう。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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