介護にまつわるお役立ちコラム

介護療養型医療施設とは?特徴や利用する際の注意点を解説!

2021年12月08日

要介護状態となり、自宅で介護するのが難しい人の場合、施設に入所しそこで介護を受けるようになります。ところが施設にもいろいろあり、どこに入所したらよいのか分からないことが多いです。この記事では、施設の一つである介護療養型医療施設について、特徴や利用する際の注意点を解説します。これを読めば、介護療養型医療施設に入所するかどうか検討しやすくなります。

1介護療養型医療施設(介護療養病床)って何?

まずは、定義から確認をしていきます。

【定義】
介護療養型医療施設とは、療養病床等を有する病院又は診療所であって、当該療養病床等に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設。

出典:「旧介護保険法第8条第26項 – 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174013.pdf)」

簡単に言うと、長期療養を必要とする要介護者に対し、医師の管理の下に、主に「介護」を提供する施設のことです。また必要な医療処置(喀痰吸引、経管栄養、インシュリン注射など)およびリハビリも提供します。類似の病床・施設との違いは、医療療養病床は主に「医療」を提供すること、介護老人保健施設は主に「リハビリ」を提供することであり、主だって提供するものが異なる位置づけです。

【施設基準/人員基準】
医師数:48対1以上(3名以上:1名は常勤)
看護職員数:6対1以上
介護職員数:6対1以上
薬剤師数:150対1以上
栄養士数:100以上の場合1
介護支援専門員1以上
理学療法士・作業療法士:実情に応じた適当数
病室:1室あたり定員4人以下、患者1人当たり6.4㎡以上

出典:「介護療養型医療施設及び介護医療院 (参考資料)- 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174013.pdf)」

例えば、療養病床入居者144名の場合、医師が3名、看護職員が24名、介護職員24名、薬剤師1名、栄養士1名、介護支援専門員1名が配置される形になります。

2介護療養型医療施設を利用するメリットとデメリット

介護療養型医療施設は、医療施設ですが、主に介護(介助と看護を組み合わせた用語)を提供する役割をもちます。要介護者に対して、食事や排せつの介助および看護が行われます。必要な医療は提供されますが、医療療養病床レベルには及びません。リハビリも提供されますが、介護老人保健施設レベルには及びません。

介護療養型医療施設を利用するメリット

通常は病気になって急性期病院で治療をうけた後は、医療療養型医療施設に転院して治療を受けます。医療療養型医療施設を退院後は、自宅に帰るのが一番ですが、いろいろな事情で難しいことがあります病状が安定したとはいえ、喀痰吸引などの医療行為が必要な人、自宅に介護者がいない人などは介護療養型医療施設に転院して療養を続けます。

介護療養型医療施設の一番のメリットは、介助職員、看護職員が常勤しており、介護の内容が充実していることです。食事や排せつの介助はもちろんのこと、喀痰吸引、経鼻栄養、胃ろう栄養、酸素吸入などの医療行為が提供されます。また、3名以上の医師も配置されており、急病時には医師が診察し、適切に対応してもらえるの点も安心です。急病時以外でも、定期的な医師の診察があり、病院や薬局に行かなくても、常用薬を処方してもらえます。

さらに、リハビリも提供され、理学療法士・作業療法士などから、歩行訓練、機能訓練などが受けられます。介護療養型医療施設の費用は、入院時の初期費用は必要なく、月額費用も有料型老人ホームよりは安価で抑えることができるでしょう。

【介護療養型医療施設の費用】
所得や要介護度により決定されます。
多床室の場合:月額34,000円から99,700円
従来型個室の場合:月額48,700円から136,559円

出典:「介護療養型医療施設の費用(多床室)- 大阪府(https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1683/00161379/1%20tashoushitsu.pdf)」

介護療養型医療施設の費用(従来型個室) – 大阪府(https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1683/00161379/2%20juuraigatakoshitsu.pdf)」

介護療養型医療施設を利用するデメリット

介護療養型医療施設は、あくまでも医療施設であり、病院に入院しているような雰囲気となりますプライベートな空間も少なく、病院のように相部屋であることが多く、浴室、洗濯室、トイレ等の設備は共有が基本です。自宅で勝手気ままに暮らすような生活を望む人には向いていません。また、介護療養型医療施設は、医療施設とは言いながら、すべての医療サービスを受けられるわけではありません。医療処置が多くなった場合は、別途医療費がかかることから、予定よりも費用が高くなる可能性があります。

さらに、施設内で対応できない場合は、他の病院へ転院しないといけなくなります。介護療養型医療施設は、医療施設ですから、長期にとどまり続けることはできませんし、ましてや終の棲家にはなりえません。現段階では療養型医療施設制度は2023年度末に廃止が決まっており、その後は施設がどうなるかは未定です。施設によっては、介護老人保健施設に転換する予定が決まっていたりするので、入所前にちゃんと確認することが必要です。施設そのものがなくなる可能性もありますので、長期に入所を希望する人には不向きです。

3介護療養型医療施設を利用する際の注意点

デメリットでも示しましたが、介護療養型医療施設は、あくまでも医療施設であり、生活の場ではありません。趣味や友人との交流を楽しんだり、自由に出入りしたい人には不向きです。また、希望すれば誰でも入所できるわけではなく、入所しても終身おられるわけではありません。

イベントやレクリエーションはあまり充実していない

介護療養型医療施設は生活の場ではないので、イベントやレクリエーションはあまり充実していません。基本的な1日の流れは、起床→朝食→バイタルサインチェック→リハビリ→昼食→リハビリ→おやつ→リハビリ→夕食→就寝といった内容です。あくまで病院と同じような生活であり、老人ホームのように利用者同士あるいは職員との交流を楽しむというわけにはいきません。

それに対して、民間企業が経営している有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅はイベントやレクリエーションが充実しています。自分である程度動けて、周囲の人との交流を楽しみたい人は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を選ぶと良いでしょう。

「要介護1」以上が入居条件

介護療養型医療施設に入所するためには、条件が設けられており、介護保険でいう要介護1以上で65歳以上の高齢者でなければいけません。要介護1というと、寝起きしたり、室内で移動するのにも、ある程度介護が必要な人です。自分でいろいろできて、ほぼ自立しており、イベントやレクリエーションに積極的に参加したり、盛んに外出できる人は入居できないわけです。

逆に要介護4とか5で寝たきりの人は入所できます。病状はほぼ安定しており、寝たきりのために介護が最重要項目の人は、介護療養型医療施設の入居条件を満たします。ただし、病状が不安定のため療養型医療施設で対応不能となれば、他の病院に転院が必要です。

終身制ではない

介護療養型医療施設に入居できたからと言って、長期間あるいは終身施設におられるわけではありません。要介護状態の人でも、リハビリを受け、身体機能の改善を目指し、効果が出て要支援状態まで改善すれば、退所となります。

また、機能回復が望めない人でも、長期間滞在はできないのです。本来医療施設とは、機能回復のために治療するところであり、長期に生活するために利用すべきではありません。長期間の滞在あるいは終の棲家として施設を探すのであれば、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームへの入所が必要です。現実には、介護付き老人ホームや特別養護老人ホームの入所待ちの間、介護療養型医療施設に入所する方が多いようです。

4まとめ

介護療養型医療施設について、特徴や利用する際の注意点を解説しました。この施設は介護中心の施設ですが、医療やリハビリも受けることができ、安定期の要介護者が入所できます。ただし、生活の場としては不向きであり、終身入所を続けることはできません。介護療養型医療施設のメリット・デメリットを考え、入所するかどうか検討してください。

監修者情報
株式会社Social Code CDO

2009年大学卒業後回復期リハビリテーション病院に就職後、急性期病院にて専門外来の企画開設に従事。
2016年在宅の支援を行う医療法人に転職後、数年間赤字経営のホームの立て直し、リブランディングを行い、事業統括・社内制度等処遇の改善に携わる。
現在はケアに係るデータを取り扱うベンチャー企業にて事業企画・運営を行う。
著書:医療機関・介護施設のリハビリ部門管理者のための実践テキスト 部門管理に必要な7つの手法(第2版)・他

廣瀬哲司(作業療法士)
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