介護にまつわるお役立ちコラム

介護で家族崩壊が起きる原因は?家族の負担を軽減する方法も解説

2025年08月18日

高齢化が進むなかで、親の介護をきっかけに家族関係が悪化し、最終的に「家族崩壊」と呼ばれる深刻な事態に発展するケースが増えています。経済的な負担や心身の疲労、介護の偏りなどが重なり、家族間に溝が生まれてしまうのです。介護は家族で支え合うものとされる一方で、その現実は決して簡単ではありません。

 

本記事では、介護によって家族関係が崩れてしまう原因や、事前に取るべき具体的な対策について詳しく解説します。介護を「ひとりで抱え込まないために」ぜひ最後までご覧ください

1介護が原因で家族関係が崩壊する3つの要因

介護による家族崩壊は、決して珍しいことではありません。経済的困窮、精神的疲労、身体的負担の偏りという3つの要因が複雑に絡み合うことで、それまで良好だった家族関係が悪化し、最終的には家族の絆が断ち切られてしまうケースが増えています。

介護離職によって陥る経済的困窮

親の介護を理由に仕事を辞める「介護離職」は、家族崩壊の大きな原因となります。令和4年に厚生労働省が実施した就業構造基本調査によると、介護離職した方の数は約10万人に上り、女性の介護離職者は男性の約3.2倍にも達しています。

 

介護離職によって収入が途絶える一方で、介護保険サービスの自己負担分やおむつ代などの支出は増加し続けます。具体的には、月々の介護費用が数万円から十数万円に上ることも珍しくなく、貯蓄を切り崩しながらの生活が続きます。

 

経済的な余裕がなくなることで精神的なゆとりも失われ、「なぜ私だけが仕事を辞めなければならないのか」「他の家族は何もしてくれない」という不満が募りかねません。お金の問題は家族間の最も大きな争点となりやすく、これまで表面化していなかった価値観の違いが明らかになることもあります。結果として、家族間のいさかいの原因となってしまうのです。

 

参考:厚生労働省|-令和5年雇用動向調査結果の概況-

終わりが見えないことによる精神的な疲労

「いつまでこの生活が続くのか」という先行き不透明な不安が、介護者の精神を追い詰める大きな要因です。子育てと違って介護には明確なゴールがなく、むしろ状況は悪化していくことが多いため、希望を見出すことが困難になります。特に認知症の介護では、徘徊や暴言・暴力などの症状への対応が24時間続くため、介護者は十分な休息を取ることができません。

 

高齢者は夜間に症状が悪化しやすく、家族が夜中に何度も起こされることも少なくありません。このような心身の疲弊が続くと、介護者自身がうつ病を発症する「介護うつ」につながる危険性があります。疲労やストレスの蓄積により、家族間の空気がギスギスして、家族崩壊へと発展してしまうのです。

特定の家族に集中する身体的な負担

兄弟姉妹がいるにもかかわらず、「長男・長女だから」「実家の近くに住んでいるから」といった理由で、特定の1人に介護の負担が偏るケースが多く見られます。日本には「長男の嫁が介護をするもの」「娘が面倒を見るもの」といった古い価値観が根強く残っており、これが負担の偏りを生む要因の一つです。そして、介護を一人で担うことによる身体的な疲労に加え、「自分だけが大変な思いをしている」という不公平感や孤立感が募ります。

 

他の兄弟姉妹に手伝いを頼んでも、仕事や育児を理由に断られることが多く、金銭援助さえも拒否されるケースがあります。介護者はますます孤立し、他の家族への不満が増大していきます。このような協力体制が築けない状況が続くと、兄弟姉妹や親族同士の仲が険悪になり、家族関係の亀裂を深めてしまいます。

2家族の崩壊を防ぎ介護の負担を軽くするための対策

介護による家族崩壊は決して避けられない問題ではありません。介護による家族崩壊を防ぐためには、介護が限界を迎える前に適切な対策を講じることが不可欠です。家族間での話し合い、役割分担の明確化、公的制度の活用、専門家への相談など、さまざまなアプローチを組み合わせることで、介護負担を軽減し、家族関係を良好に保つことができます。

介護が始まる前に家族で話し合う機会を設ける

親が元気なうちや、介護の必要性が生じた初期段階で家族会議を開くことが重要です。問題が深刻化してからでは感情的になりやすく、冷静な話し合いが難しくなりやすいからです。話し合うべき具体的な内容として、介護の方向性(在宅介護か施設入居か)、介護にかかる費用の捻出方法(親の資産、兄弟での分担など)、中心となって介護を担う人(キーパーソン)の決定があります。

 

親本人も交えて意向を確認し、家族全員が納得できる方針を決めることで、後のトラブルを防ぐことができます。いざ介護がスタートしてからでは、感情的になりやすく納得のいく話し合いが困難になるため、事前の準備が不可欠です。

お金や手伝いなど具体的な役割分担を決める

「できる人ができることを」では、結局誰も何もしないことになりがちです。介護の負担が一人に偏らないよう、家族それぞれの状況に応じて具体的な役割分担を決めることが大切です。介護の役割は直接的な身体介助以外にもさまざまあり、金銭的支援として介護費用の一部を負担する、定期的交代で週末や特定の曜日に介護を代わる、情報収集・手続きで介護サービスや施設の情報を集めたり行政手続きを代行したりする、精神的サポートとして定期的に連絡を取り話を聞くなどの方法があります。

 

それぞれができることを明確にすることで不公平感をなくし、「チームで介護にあたる」という意識を持つことができます。直接介護ができない場合でも、できる範囲での支援を分担することが家族関係の維持につながります。

公的制度や介護保険サービスを積極的に活用する

経済的負担を軽減するために、以下などの公的制度を活用しましょう。

制度の名称概要
高額介護サービス費介護保険サービスの自己負担額が上限を超えた場合に払い戻される制度
医療費控除医療費やおむつ代などが一定額を超えた場合に税金が還付される制度
特定入所者介護サービス費所得に応じて施設サービスの食費・居住費の負担が軽減される制度

また、介護者の身体的・精神的負担を軽減するため、訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)などの介護保険サービスを積極的に利用することが重要です。家族だけで介護を抱え込まず、プロの力を借りることで介護負担を大幅に軽減できます。

ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談する

介護の悩みや家族間のトラブルは、専門的な知識を持つ第三者に相談することが有効です。ケアマネジャーは介護サービスの利用計画(ケアプラン)の作成や、サービス事業者との調整を行ってくれる専門家であり、地域包括支援センターは高齢者の介護、福祉、医療などに関する総合相談窓口で、市区町村が設置しており誰でも無料で相談できます。

 

一人で抱え込まずに外部の専門家を頼ることが、介護者自身の心身の健康を守り、結果的に家族崩壊を防ぐことにつながります。お住まいの地域の相談先は、厚生労働省のウェブサイト「介護事業所・生活関連情報検索」などで探すことができます。

3介護保険外サービス「イチロウ」なら急な家事や見守りにも対応

公的な介護保険サービスでは対応しきれない「かゆいところに手が届く」サービスとして、保険外の訪問介護・看護サービス「イチロウ」があります。

比較項目介護保険サービスイチロウ(保険外)
サービス内容ケアプランに基づいた内容のみ院内の付き添い、長時間の見守り、同居家族がいる場合の家事など、柔軟に対応可能
利用条件要介護認定が必要認定がなくても誰でも利用可能
利用時間制限がある場合が多い24時間365日、最低2時間から利用可能
当日対応難しい場合が多い最短当日の急な依頼にも対応(ヘルパー手配率96%)

介護保険サービスがケアプランに基づいた内容のみで要介護認定が必要なのに対し、イチロウは院内の付き添い、長時間の見守り、同居家族がいる場合の家事など柔軟に対応可能で、認定がなくても誰でも利用できます。

 

24時間365日、最低2時間から利用可能で、最短当日の急な依頼にも対応し、ヘルパー手配率96%を実現しています。介護士が対応する「介護コース」は日中基本料金3,190円/時間(税込)、看護師が対応する「看護コース」は5,500円/時間(税込)で、利用者の状態に合わせた専門的なケアを受けることができます。

 

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4まとめ

介護による家族崩壊は、経済的困窮や精神的疲労、負担の偏りが複雑に絡み合って生じる深刻な問題です。しかし、事前の家族会議による役割分担の明確化、公的制度の積極的活用、専門家への相談などの対策を講じることで、予防することが可能です。

 

家族全員で介護に向き合い、適切なサポート体制を構築することで、介護者の負担を軽減し、家族の絆を保ちながら安心して介護を続けることができるでしょう。再試行Claudeは間違えることがあります。回答内容を必ずご確認ください。

5よくある質問

介護による家族崩壊への不安や悩みは、多くの家族が抱える共通の問題です。ここでは、特に相談の多い3つの質問について、具体的な対策とともにお答えします。

Q1.認知症の介護で家族が崩壊しそうです。どうすればいいですか?

認知症の症状による介護の困難さは、介護者の努力だけで解決できる問題ではありません。そして、まず理解していただきたいのは、これは病気の症状であり、本人の意思ではないということです。認知症の方が示す行動や言動は、脳の病気による症状であり、決してあなたを困らせようとしているわけではありません。

 

対策として、認知症専門医、地域包括支援センター、認知症対応型の介護サービス(グループホームなど)といった専門家や専門機関に相談することが重要です。

 

介護者が休息をとるための「レスパイトケア」の考え方を取り入れ、ショートステイなどを利用して介護から離れる時間を作ることが、結果的に在宅介護を続ける力になります。

Q2.兄弟が介護に非協力的で揉めています。どうすればいいですか?

まずは感情的にならず、親の現状や介護の実態(かかっている費用、介護者の負担など)を客観的な事実として兄弟に伝えることが重要です。直接会って話し合い、金銭的支援など直接介護以外も含む具体的な役割分担を提案しましょう。話し合いで解決しない場合の最終的な手段として、家庭裁判所での「扶養請求調停」という手続きがあります(裁判所のウェブサイト「扶養請求調停」を参照)。

Q3.介護疲れでうつになりそうです。どうすればいいですか?

食欲がない・眠れない、何をしていても憂鬱で楽しめない、疲労感が取れない・体が重い、ささいなことでイライラしたり焦ったりするといった介護うつのサインに早めに気づくことが重要です。複数の項目に当てはまる場合は、無理をせず「介護を休む」ことが最も大切です。

 

ショートステイやイチロウのような保険外サービスを利用して意識的に休息日を作り、心療内科など専門医に相談することも選択肢の一つです。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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