介護にまつわるお役立ちコラム
【介護】高齢者のトイレが間に合わない失敗の原因と対策を解説

高齢者の介護において、「トイレが間に合わない」「失敗が増えてきた」といった排泄に関する悩みは非常に多く見られます。本人にとっても家族にとってもデリケートな問題であり、どう対処すればいいのか戸惑う方も少なくありません。排泄の失敗には、加齢による身体機能の低下や病気、服用している薬の影響など、さまざまな要因が関係しています。
本記事では、介護におけるトイレの失敗の原因を詳しく解説するとともに、具体的な対策や環境の工夫についても紹介します。正しい知識を持つことで、負担を軽減しながら本人の尊厳を守るケアを実現しましょう。
1高齢者のトイレの失敗を招く原因の特定

高齢者のトイレの失敗は、身体機能の低下、病気や薬の影響、認知症といった複数の要因が絡み合って起こります。
まずは「年のせい」と決めつけず、具体的な原因を見極めることが適切な対策につながる第一歩となります。
身体機能の低下に起因する失敗
加齢とともに、膀胱に尿を溜める機能や尿意を感じてから我慢する機能が低下する「蓄尿障害」が主な原因となります。
尿失禁の種類 | 症状 | 主な原因 |
腹圧性尿失禁 | 咳やくしゃみなど、お腹に力が入った時に尿が漏れる | 骨盤底筋や靭帯、結合組織のゆるみ |
切迫性尿失禁 | 強い尿意が突然起こり、トイレまで我慢できずに漏れる | 過活動膀胱など |
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁 | 尿を出し切れず、膀胱から少しずつ溢れ出るように漏れる | 膀胱の収縮障害、前立腺肥大症など |
歩行障害などで移動に時間がかかることで生じる「機能性尿失禁」もあります。女性では妊娠・出産、男女問わず痔や直腸の手術が、排泄をコントロールする筋肉や神経を傷つけ、便失禁の原因となる場合もあります。
病気や服用薬がもたらす影響
トイレの失敗の背景には、前立腺肥大症や尿道狭窄、過敏性腸症候群、糖尿病、脳梗塞といった治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
便秘解消のための下剤や、浣腸、座薬といった治療薬の副作用によって便失禁が引き起こされるケースも少なくありません。特に下剤の過剰使用は腸の正常な機能を乱し、便失禁のリスクを高めます。安易に「年のせい」と自己判断せず、泌尿器科や消化器科、かかりつけ医などの医療機関に相談することが重要です。
認知症の症状として現れるトイレの問題
アルツハイマー型認知症などにより認知機能が低下すると、トイレの場所が分からない、トイレで用を足すという行為自体が分からなくなるといった失敗が起こります。
尿意や便意そのものを認識できなかったり、感じていても介護者にうまく伝えられなかったりすることで失敗につながるケースもあります。また、トイレではない場所で排泄してしまうこともあります。認知症が疑われるトイレの失敗が見られた場合は、早期に認知症専門医やかかりつけ医に相談することが適切な対応への近道となります。
2高齢者のトイレの失敗を減らすための具体的な対策

トイレの失敗を防ぐには、排泄リズムの把握、環境整備、適切な福祉用具の活用、そして本人の心に寄り添うコミュニケーションが不可欠です。これらの対策を組み合わせることで、高齢者の尊厳を保ちながら失敗を減らすことができます。
排泄リズムを把握する生活記録の重要性
「排尿日誌」などで排泄のタイミングや量を記録・可視化することで、失敗しやすい時間帯を予測し、早めにトイレへ誘導できるようになります。
記録すべき項目は、排尿・排便の時刻、量、失敗の有無、食事・水分の摂取時刻などです。特に胃・大腸反射が起きやすい朝食後など、決まった時間にトイレに座る習慣をつける「トイレトレーニング」は排便リズムの改善に効果的です。便意がなくてもトイレに座ることで、自然な排便を促すことができます。
安全かつスムーズに移動できる環境の整備
トイレまでの動線上に手すりを設置したり、段差をなくしてスロープをつけたりする住宅改修が、安全な移動に効果的です。介護保険制度では、住宅改修費として最大20万円(自己負担1-3割)の支給が受けられます。
夜間の移動のために廊下や足元に照明を設置したり、ドアを開閉しやすい引き戸に変更したりするなど、すぐにできる環境整備の工夫もあります。
認知症の方には、トイレのドアに「トイレ」と大きく書いた紙を貼る、トイレの場所まで矢印で誘導するなど、視覚的に分かりやすくする工夫が有効です。
本人の状態に合わせた福祉用具の選定
トイレまでの移動が困難な場合に活用できる福祉用具があります。
福祉用具の種類 | 主な対象者 | 特徴 |
ポータブルトイレ | 座位は保てるが、トイレまでの移動が困難な方 | ベッドサイドに設置でき、移動距離を短縮できる。消臭機能、温水洗浄機能付きモデルあり。 |
尿器・便器 | 座位を保つのが難しく、ベッド上で排泄する方 | 防水シートと併用すると安心。こぼれ防止機能付きもある。 |
補高便座 | 便座が低くて立ち座りがつらい方 | 洋式便座に乗せるだけで座面を高くできる。肘掛け付きモデルで安全性向上。 |
和式から洋式への変換便座 | 和式トイレでの立ち座りが困難な方 | かぶせるだけで和式を洋式として使えるようにする。工事不要で設置可能。 |
安易におむつに頼ると、本人の尿意・便意や自立心を失わせる可能性があるため、使用は必要最低限に留めるべきです。
自尊心に配慮したコミュニケーションの工夫
トイレの失敗は本人の自尊心を深く傷つけるデリケートな問題であるため、失敗しても決して責めたり叱ったりしてはいけません。
「大丈夫だよ」「すぐ片付けようね」といった安心感を与える声かけや、着脱しやすいズボンや下着をさりげなく勧めるなど、本人の気持ちを尊重した寄り添い方が大切です。
介護用品の使用に抵抗がある場合は、無理強いせずに本人が見える場所に置いておき、慣れてもらうのを待つという「急がば回れ」のアプローチが功を奏すこともあります。
3専門家の力を借りてトイレの悩みを解決する

家族だけでは対応が困難な場合、専門的なサポートを受けることで、介護者の負担軽減と高齢者の生活の質向上を同時に実現できます。特に公的介護保険では対応できない夜間や緊急時のサポートが重要な選択肢となります。
介護保険外サービス「イチロウ」による24時間サポートの活用

公的な介護保険では対応が難しい、急な依頼や夜間・早朝を含めた24時間365日のサポートを、96%という高い手配率で実現している「イチロウ」があります。介護保険制度のルールに縛られず、あらゆるご要望に対してオーダーメイドの介護サービスを提供します。
トイレの介助(排泄介助)だけでなく、食事や入浴の介助、掃除・洗濯などの家事、通院の付き添いまで、幅広いニーズに専門のヘルパーが対応可能です。
1時間単位の分かりやすい料金設定で、最低2時間から利用でき、WEBや電話で気軽に相談・予約ができます。専属の担当者が一人ひとりに付き、ご家庭の介護環境を一緒に作り上げていくサポート体制が整っています。
4まとめ
高齢者のトイレの失敗は、適切な原因分析と対策により改善できる問題です。身体機能の低下や病気、認知症といった多角的な要因を理解し、排泄リズムの把握、環境整備、福祉用具の活用、心に寄り添うコミュニケーションを組み合わせることが重要です。これらの対策を実践することで、高齢者の尊厳を保ちながら介護負担を軽減し、安心して在宅生活を続けることができるでしょう。
5高齢者のトイレの失敗に関するよくある質問
高齢者のトイレの失敗に関して、多くのご家族が抱える疑問や不安にお答えします。適切な初期対応と継続的なサポートが、問題解決の鍵となります。
Q.トイレの失敗が増えたら、まず何をすべきですか?
まずは慌てずに「いつ、どんな時に、どのように」失敗するのかを客観的に観察し、原因を探ることが第一歩です。排尿日誌などで記録をつけながら、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、専門的なアドバイスを求めることが重要になります。病気の可能性も考えられるため、かかりつけ医に相談の上、必要であれば泌尿器科や認知症専門医などを受診しましょう。
Q.おむつを使うことに本人が抵抗を示す場合、どう対応すればよいですか?
おむつへの抵抗感は、自尊心や「もうおしまいだ」という喪失感から来るため、まずはその気持ちに共感し、無理強いしない姿勢が大切です。「外出時や夜だけ使ってみない?」と使用場面を限定したり、通常の下着に近い見た目のパンツタイプを試したりと、心理的なハードルを下げる提案が効果的です。本人が選びやすいように数種類のサンプルを用意したり、いつでも手に取れる場所に置いたりして、本人の意思を尊重しながら導入を進めましょう。また、おむつの着用は根本的な解決にはなりません。そのため、専門家からのアドバイスを受けて、まずは原因を探ることから始めるのをおすすめします。
Q.認知症でトイレの場所がわからなくなる場合、どのような対策が有効ですか?
トイレのドアや廊下に「トイレ」と大きな文字で張り紙をしたり、トイレの場所まで矢印で示したりするなど、視覚的に分かりやすくする工夫が有効です。トイレのドアを少し開けて中の照明をつけておく、寝室からトイレまでの動線をできるだけシンプルにする、夜間は足元灯をつけるなどの環境整備も重要になります。本人の状態によっては、無理にトイレまで移動するのではなく、ベッドの側にポータブルトイレを設置することで負担軽減を図ることも検討しましょう。