介護にまつわるお役立ちコラム

ワンオペ介護とは?1人で親を介護する大変さと解決策

2025年08月18日

親の介護を一人で担う「ワンオペ介護」。日々の介助や家事、通院対応など、すべてを自分一人でこなす生活は、想像以上に心身への負担が大きく、限界を感じる人も少なくありません。少子高齢化の進行により、こうしたワンオペ状態に陥る家庭は今後さらに増えると予想されます。

 

本記事では、ワンオペ介護の現状と直面しやすい課題、そして「一人では無理」と感じたときに取るべき具体的な対策までをわかりやすく解説します。孤独な介護に悩む前に、知っておきたい支援の手段や相談先を一緒に確認していきましょう。

ワンオペ介護とは?一人に負担が集中する介護の現実

親の介護が必要になったとき、さまざまな理由で一人に負担が集中してしまう「ワンオペ介護」が深刻な社会問題となっています。身体介護から家事、通院の付き添いまで、すべての責任を一人で背負うこの状況は、介護者の心身に大きな負担をもたらします。

 

少子高齢化が進む日本では、この問題がさらに深刻化することが予想されており、在宅介護だけでなく介護施設でも発生している現実があります。まずは、ワンオペ介護がどのような状況を指すのか、その背景や実態について詳しく見ていきましょう。

介護の全責任を一人で背負う「ワンオペ介護」の定義

ワンオペ介護の「ワンオペ」は「ワンオペレーション」の略語で、元々は飲食店やコンビニエンスストアで従業員が一人ですべての業務をこなす状況を表す言葉でした。この言葉が介護の分野に転用され、介護にまつわるすべての作業を一人でこなしている状態を指すようになりました。

 

具体的には、以下のような業務を一人の介護者が担っている状況です。

  • 身体介護:食事、排泄、入浴の介助、体位変換
  • 生活援助:掃除、洗濯、調理、買い物
  • 医療的ケア:服薬管理、通院の付き添い、医師との連携
  • 精神的ケア:話し相手、見守り、認知症ケア
  • 事務手続き:金銭管理、各種申請手続き

このように、被介護者の生活に必要なあらゆるサポートを一人の介護者が担っている状況です。この問題は家族が担う在宅介護だけでなく、多数の利用者を職員一人でケアしなければならない介護施設でも深刻な課題となっています。

少子高齢化で深刻化する在宅介護のワンオペ問題

日本の少子高齢化は、ワンオペ介護が増加している根本的な社会的背景となっています。公益財団法人生命保険文化センターのデータによると、一人の高齢者を支える15歳から64歳の現役世代の人口は、2045年には1.5人、2070年には1.3人となる見込みです。

 

このような状況では、介護の担い手が一人に集中しやすくなります。特に一人っ子や独身の場合、両親の介護の負担がすべて一人に集中してしまいます。きょうだいがいる場合でも、居住地が離れている、仕事が多忙である、自分の家庭で育児に追われているといった理由から、協力を得ることが困難な状況が生まれがちです。

 

これらの要因が重なることで、在宅でのワンオペ介護はさらに増加していくと予測されています。

 

参考:公益財団法人生命保険文化センター|少子高齢化はどれくらい進むの?

介護施設でも起こりうる夜勤のワンオペと人材不足

介護施設においても、ワンオペ介護は深刻な問題となっており、特に夜勤帯でこの状況が顕著に現れています。厚生労働省が定める夜勤職員の配置基準では、入居者25名以下の場合は職員1名以上という基準があり、制度上「職員一人で多数の入居者を見る」ことが許容されています。

 

夜勤者は、夕食・朝食の介助、就寝・起床の介助、定時巡回やおむつ交換、随時のナースコール対応、介護記録の作成や施設の清掃など、多岐にわたる業務を一人でこなさなければなりません。

 

グループホームでは、これらに加えて洗濯や調理、食事の後片付けといった家事も担当します。深刻な人材不足により、多くの施設が最低限の人員配置で運営せざるを得ない状況が、ワンオペ状態を生み出しやすい構造となっています。

 

【介護施設における夜勤の業務内容】

  • 夕食・朝食の介助
  • 就寝・起床の介助
  • 定時巡回、おむつ交換
  • 随時のナースコール対応
  • 介護記録の作成や施設の清掃など

グループホームでは、これらに加えて洗濯や調理、食事の後片付けといった家事も担当します。公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護職員の離職率は14.9%と全産業平均を上回っており、深刻な人材不足により、多くの施設が最低限の人員配置で運営せざるを得ない状況が、ワンオペ状態を生み出しやすい構造となっています。

 

参考:厚生労働省|厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準

一人で親の介護をする際に直面する3つの大きな壁

ワンオペ介護では、介護者が一人ですべての負担を背負うため、さまざまな問題に直面することになります。特に深刻なのは、身体的な疲弊、精神的な消耗、そして経済的な困窮という3つの大きな壁です。

 

これらの問題は相互に影響し合い、介護者を追い詰めていく要因となります。終わりの見えない介護の現実の中で、一人でこれらの負担を抱え続けることは非常に困難であり、適切な対策を講じなければ介護者自身が限界に達してしまう危険性があります。

終わりが見えない介助による身体的な疲弊

ワンオペ介護では、日常的に発生する身体介助がすべて一人の介護者に集中するため、深刻な身体的負担が生じます。トイレ介助、おむつ交換、入浴介助、車椅子への移乗といった作業は、被介護者の体重がのしかかるため、介護者の腰、肩、膝などに大きな負担をかけ、腰痛や肩こりといった身体的な不調を引き起こします。

 

さらに、認知症の症状などによる夜間の不定期な対応も深刻な問題です。夜中にトイレ介助が必要になったり、徘徊への対応が求められたりすることで、介護者の睡眠時間は削られ、慢性的な疲労や睡眠不足に陥ります。複数の介護者がいれば協力・分担できるこれらの負担が、ワンオペではすべて一人に集中してしまうという構造的な問題があります。

社会からの孤立が招く精神的な消耗

介護に多くの時間を費やすことで、外出や友人との交流の機会が減少し、介護者は社会的に孤立しやすい状況に陥ります。ワンオペ介護では、被介護者と一対一で接する時間が長くなり、悩みやストレスを相談できる相手がいないまま一人で抱え込んでしまいがちです。

 

特に認知症の方の介護では、夜間も眠らずに活動したり、暴力・暴言が見られたりするケースもあり、介護者の精神的負担は計り知れません。

 

このような状況が続くと、介護うつや虐待といった深刻な問題に発展するリスクが高まります。介護うつには食欲不振、睡眠障害、疲労感といった症状があり、虐待は介護者の介護疲れや知識不足、心身の不調が原因で起こることが多いとされています。

介護離職にもつながる経済的な困窮

仕事と介護の両立が困難になり、やむを得ず離職する「介護離職」は深刻な社会問題となっています。ワンオペ介護では一人で介護を担うため、一時的な退職や休職を余儀なくされるケースが多く、収入源を確保できなくなる経済的な問題が発生しやすくなります。具体的には、以下のとおりです。

  • 給与収入の喪失:退職や休職による平均年収の減少
  • 社会保険の負担増:国民健康保険、国民年金への切り替え
  • 退職金の減額:勤続年数の短縮による影響

また、介護サービスの利用料やおむつ代などの支出も継続して発生するため、経済的に困窮するリスクが高まります。さらに深刻なのは、一度キャリアを中断すると、積み上げたキャリアが途切れてしまい、元の条件での復職や再就職が非常に困難になることです。これにより、介護終了後の自身の生活にも大きな影響を及ぼし、長期的な視点での経済的不安を抱えることになります。

「一人で介護は無理」と感じたときの具体的な解決策

ワンオペ介護の負担が限界に達する前に、適切な支援を受けることが重要です。幸い、介護者を支援するためのさまざまな制度やサービスが整備されており、これらを上手に活用することで負担を大幅に軽減できます。

 

地域の専門機関への相談から始まり、公的な介護保険サービスの活用、民間サービスの利用、そして必要に応じた施設入居の検討まで、段階的なアプローチが可能です。一人で抱え込まず、利用できる支援を積極的に活用することで、持続可能な介護体制を築いていきましょう。

地域包括支援センター等の専門機関への相談

介護に関する悩みが生じた際に、まず相談すべき公的な総合相談窓口が「地域包括支援センター」です。地域包括支援センターは、高齢者の介護・医療・保険・福祉を多角的に支える地域の拠点として機能しており、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(ケアマネジャー)などの専門職が在籍しています。

 

相談することで得られる具体的なメリットは多岐にわたります。介護保険の要介護認定の申請代行をしてもらえるほか、利用者に合った介護サービスや地域の福祉サービスの情報提供を受けることができます。

 

特に重要なのは、介護者自身が「ワンオペ介護」の状況にあることを伝え、早い段階から協力体制を築くことです。専門職のアドバイスを受けながら、介護者一人の負担を軽減する具体的な方法を見つけていくことができます。

介護保険サービスを活用した負担の分散

介護保険制度は、要介護認定を受けることで、原則1から3割の自己負担でさまざまなサービスを利用できる制度です。在宅介護の負担を軽減するために活用できる介護保険サービスは多岐にわたります。

サービスの種類具体例内容
自宅で受ける訪問介護、訪問入浴、訪問看護ヘルパー等が自宅を訪問し、身体介護や生活援助、医療的ケアを行う。
施設に通うデイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)日帰りで施設に通い、食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなどを受ける。
施設に泊まるショートステイ(短期入所生活介護)介護施設に短期間宿泊し、介護者の休息(レスパイト)目的でも利用できる。
用具を借りる・買う福祉用具貸与・購入、住宅改修費の支給電動ベッドや車いすのレンタル、ポータブルトイレなどの購入費補助。

これらのサービスを組み合わせることで、介護者の負担を計画的に軽減できます。たとえば、認知症の方の場合は連日デイサービスを利用したり、介護者の仕事が土日休みの場合は土日営業のデイサービスを活用するなど、柔軟な対応が可能です。

24時間365日対応の「イチロウ」で介護の悩みを解決する

介護保険サービスでは対応しきれないニーズに応える選択肢として、介護保険外サービス「イチロウ」があります。イチロウは、長時間の見守りや急な依頼など、柔軟性が求められる場面で力を発揮するサービスです。

 

その強みは高い対応力にあり、夜間帯や土日祝日でもヘルパー手配率96%を実現しています(集計期間:2023年10月から2024年5月)。24時間365日対応で、最短当日の急な依頼にも対応可能な柔軟性を持っており、介護認定を受ける前でも利用できるため、公的サービスの利用開始までの橋渡し役としても活用できます。

 

介護保険との併用も可能で、通院の付き添いや自宅・病院内での介護、家事代行まで幅広く依頼できるため、介護者の「あと少し誰かの助けが欲しい」という思いに応えるサービスとなっています。

 

>>イチロウについて詳しく見る

限界を迎える前の介護施設入居という選択肢

在宅でのワンオペ介護が心身の限界に達する前に、介護施設への入居も積極的に検討すべき有効な選択肢です。施設入居によって、介護者は介護負担から解放され、自身の生活を取り戻すことができます。

 

一方、被介護者は介護のプロによる24時間体制のケアを受け、安心して生活できるというメリットがあります。

施設の種類主な対象者特徴
特別養護老人ホーム(特養)要介護3以上の方費用が比較的安価で、終身利用が可能な公的施設。
介護付き有料老人ホーム自立~要介護の方施設のスタッフが介護サービスを提供。費用は定額制が多い。
住宅型有料老人ホーム自立~要介護の方外部の介護サービスを利用。レクリエーションが充実している施設も多い。
グループホーム認知症の方少人数での共同生活を通して、認知症ケアを受ける。

入所までは待機が必要になることも多いため、限界を迎える前に施設探しを始めることが重要です。

まとめ

ワンオペ介護は、少子高齢化が進む現代社会で避けて通れない課題となっています。一人ですべての介護を背負うことで生じる身体的・精神的・経済的な負担は、介護者を限界まで追い詰める危険性があります。しかし、地域包括支援センターへの相談や介護保険サービスの活用、民間サービスの利用など、負担を軽減する解決策は数多く存在します。一人で抱え込まずに適切な支援を求めることで、介護者自身の生活を守りながら、持続可能で質の高い介護を実現することができるでしょう。

ワンオペ介護に関するよくある質問

ワンオペ介護について、多くの方が疑問に思うことがあります。特に、似たような状況である「ワンオペ育児」との違いや、介護認定を受けていない場合でも利用できるサービスの有無について、よく質問を受けます。これらの疑問を解決することで、ワンオペ介護への理解が深まり、適切な対応策を見つけやすくなるでしょう。

Q.ワンオペ介護とワンオペ育児の違いは何ですか?

ワンオペ介護という言葉は、先行して広まった「ワンオペ育児」から派生した言葉です。どちらも「一人の大人が、助けのない状況で子育てや介護を行う」という共通点があり、家事や育児・介護のタスクを一人でこなし、社会から孤立しやすいという特徴があります。

 

しかし、両者には重要な相違点もあります。育児は子どもの成長という未来への希望があり、子どもが自立していくという明確なゴールが存在します。一方、介護は終わりが見えにくく、被介護者の状態が悪化していくケースも多いという精神的な違いがあります。この違いが、介護者の心理的負担をより深刻なものにしている要因の一つとなっています。

Q.介護認定を受けていなくても利用できるサービスはありますか?

公的な介護保険サービスを利用するためには、原則として市区町村による「要介護(要支援)認定」が必要です。しかし、認定を受ける前や、非該当となった場合でも利用できるサービスが存在します。具体的には、市区町村が独自に行う福祉サービスがあり、これらの情報は地域包括支援センターなどで得ることができます。

 

また、民間の介護保険外サービスも選択肢の一つです。「イチロウ」のように全額自己負担となりますが、より柔軟なサービスを提供する事業者があります。これらのサービスは、介護認定の結果を待っている間や、公的サービスだけでは対応しきれない部分を補完する役割を果たしています。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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