介護にまつわるお役立ちコラム

パーキンソン病の症状とは?診断方法や兆候・治療法を詳しく解説

公開日:2025年08月04日
更新日:2026年09月14日

手足のふるえや動作の緩慢さなど、日常生活に支障が出ることがあるパーキンソン病は、神経変性疾患の一つです。症状は徐々に進行することがありますが、治療やリハビリテーションによって症状を和らげ、生活の質を保つことが目指されます。気になる症状がある場合は、自己判断せず神経内科などの専門医に相談してください。

本記事では、パーキンソン病の発症メカニズム、4大症状、進行過程、非運動症状、診断方法、薬物療法、手術、リハビリテーションを解説します。若年性パーキンソン病の特徴や支援制度も紹介します。症状や薬の変更については主治医に相談し、介護サービスは診断や治療に代わるものではない点を確認してください。

パーキンソン病とは何か

パーキンソン病は、脳の神経細胞が徐々に変性する神経変性疾患で、運動に関わる症状が現れます。主に手足の震えや筋肉のこわばり、動作の緩慢といった特徴的な症状が現れます。

 

この病気は高齢者に多く見られますが、若い世代でも発症する可能性があります。症状の進行は個人差がありますが、適切な治療により生活の質を維持することが可能です。

発症の仕組みとドパミンの役割

パーキンソン病では、中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が変性・脱落します。黒質の神経細胞が作るドパミンは、大脳基底核の回路で運動を調整する働きに関わります。

 

神経細胞が変性すると、ドパミンの生産量が減るとともに、大脳基底核の神経細胞同士をつなぐ接続の数が減少します。その結果、筋肉の動きを制御するという大脳基底核の正常な働きが損なわれて、振戦が起こるほか、動作が遅く小さくなり、姿勢や歩行に異常が現れます。

 

この病気の発症には、神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が蓄積して、レビー小体と呼ばれるかたまりを形成することが関与していると考えられています。

 

参考:文部科学省|神経疾患の克服にむけた産官学連携の在り⽅について-パーキンソン病を例に

パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い

パーキンソン病は黒質のドパミン神経細胞が変性する病気で、パーキンソン症候群は他の病気や薬剤などが原因でパーキンソン病に似た症状が現れる状態です。

項目

パーキンソン病

パーキンソン症候群

定義

黒質のドパミン神経細胞の変性による疾患

パーキンソン病と同じ症状を他の原因で引き起こす状態

原因

ドパミン神経細胞の変性とαシヌクレインの蓄積

多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、脳卒中、頭部外傷、薬剤など

症状の特徴

運動症状が中心で左右差がある

他の病気の症状(重度の血圧変化など)も伴うことが多い

パーキンソン症候群の原因として以下が挙げられます。

  • 薬剤による影響(抗精神病薬など)

  • 脳血管障害

  • 多系統萎縮症

  • 進行性核上性麻痺

  • 頭部外傷

パーキンソン病とパーキンソン症候群は治療法が違うため、専門医による正しい診断を受けることが重要です。

 

参考:日本赤十字社医療センター│パーキンソン病・パーキンソン症候群

発症しやすい年齢と患者数の傾向

パーキンソン病は一般的に50~79歳の間に発症します。現在、日本では約26万人の患者さんがおり、50代ごろから症状がみられ、年齢とともに患者さんが増加する傾向にあります。

 

40歳未満で発症することもあり、「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。高齢になるほどパーキンソン病を発症する割合が増え、60歳以上では10万人に約1,000人と多くなっています。

 

患者数は10万人に100人~180人程度ですが、高齢化社会の進行に伴い、今後も患者数の増加が予想されます。早期発見と適切な治療開始により、長期にわたって良好な状態を保つことができるため、症状に気づいたら早めに専門医を受診することが大切です。

 

参考:厚生労働省│令和5年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)

パーキンソン病の4大症状と運動症状の詳細

パーキンソン病の運動症状は、診断の重要な手がかりです。静止時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害は「4大症状」と呼ばれますが、診断は症状の経過や診察所見を踏まえて専門医が行います。

 

運動症状は左右いずれか片方から始まることが多く、徐々に両側に広がる特徴があります。

症状名

特徴

振戦(しんせん)
安静時振戦

安静時に1秒間4~6回の頻度で起こる震え。丸薬丸め運動が特徴的

筋強剛(きんきょうごう)
筋固縮

筋肉のこわばりにより関節の動きに抵抗が生じる。歯車様強剛が典型的

無動・寡動(むどう・かどう)
動作緩慢

動作の開始困難、動きが小さく遅くなる。すくみ足や小字症が現れる

姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)
姿勢保持障害

バランス維持が困難となり転倒しやすくなる。病気の後期に出現

安静時振戦(手足の震え)

安静時振戦は、何もしないでじっとしているときに1秒間4~6回の頻度で起こる震えです。特徴的な症状として、小さな物体を転がすように手首と指を動かす「丸薬丸め運動」と呼ばれる手の動きが見られます。

 

睡眠中は震えが弱まるか止まることが多く、精神的ストレスや疲労で目立ちやすくなることがあります。多くは片側の手や足から始まり、経過とともに反対側の手足へ広がることがあります。手を意図的に動かしているときには震えがあまり起こらないという特徴もあります。

筋強剛(筋肉のこわばり)

筋強剛では、筋肉のこわばりによって関節を動かす際に抵抗が生じます。医師は診察で患者の腕や脚を動かし、抵抗の出方を確認します。

項目

歯車様強剛(歯車現象)

鉛管現象(鉛管様強剛)

抵抗の特徴

動き始めては止まり、止まっては動き始める断続的な抵抗

一定の連続的な抵抗

触診時の感覚

歯車のようなカクカクした感覚

鉛管を曲げるような一様な抵抗感

発生メカニズム

振戦と筋強剛の合併

純粋な筋強剛

パーキンソン病での頻度

より一般的

比較的少ない

顔の筋肉がこわばると表情の動きが小さくなり、表情が乏しく見える「仮面様顔貌」がみられることがあります。こわばりや動かしにくさによって、筋肉の痛みや疲労を感じることもあります。

無動・寡動(動作の緩慢)

無動・寡動では、動作の開始が困難になり、動きが遅く小さくなります。
具体的な症状として以下が挙げられます。

  • 歩行の開始困難(最初の一歩が踏み出せない)

  • 小刻みな足取りでの歩行

  • 腕の振りが小さくなる

  • 日常動作(着衣、髪をとかす、食事)に時間がかかる

歩行障害には「すくみ足」があり、足が地面にくっついたように感じて、歩き始めや方向転換の際に足が出にくくなります。「加速歩行」では、歩くうちに意図せず歩幅がさらに小さくなり、歩く速度が速くなって止まりにくくなるため、転倒につながることがあります。また、文字を書く際に字が小さくなる「小字症」も特徴的な症状です。

姿勢反射障害(バランス維持困難)

姿勢反射障害は、パーキンソン病の進行に伴って現れやすく、ヤール重症度分類ではⅢ度からみられることがある症状です。体のバランスがとりにくくなり、軽く押されるだけでバランスを崩してしまいます。バランスを崩すと元に戻すことが困難で、そのまま転倒してしまうことがあります。

 

姿勢が前かがみになり、歩行中に止まったり方向転換をしたりすることが難しくなります。転倒のリスクが高まり、骨折につながることがあるため、日常生活では注意が必要です。症状が進行すると、首が下がったり体が斜めに傾いたりすることもあります。

パーキンソン病の非運動症状と精神症状

パーキンソン病では、運動症状の他にもさまざまな非運動症状が見られます。非運動症状の中には運動症状の前に現れるものがあり、自律神経症状、精神症状、睡眠障害、感覚症状などが含まれます。

 

これらの症状は患者さんの生活の質に大きく影響するため、症状の変化や薬の副作用が疑われる場合は主治医に相談することが重要です。

症状カテゴリー

具体的な症状

頻度・特徴

自律神経症状

便秘

患者の8割程度にみられる最も多い症状

排尿障害
・頻尿(特に夜間)
・尿失禁
・排尿遅延(開始困難)

排尿の開始と持続が困難、切迫した尿意

起立性低血圧
・立ちくらみ
・めまい
・失神

立ち上がったときの過度の急激な血圧降下

発汗異常
・過剰発汗
・発汗低下

体温調節の異常

性機能障害

自律神経の影響による機能低下

精神症状

うつ・不安

運動症状の何年も前から現れることがある

アパシー(無気力・無関心)

身の回りのことへの関心の低下

幻覚・妄想
・幻視が最も多い
・被害妄想

認知症を発症した場合に特によくみられる

認知症

病気の後期に約3分の1の患者に現れる

睡眠障害

不眠症
・中途覚醒
・早朝覚醒

夜間の症状悪化や頻尿が原因

レム睡眠行動障害
・夢の内容に合わせた異常行動
・大声での寝言

夢に合わせて体を動かし、隣で寝る人にけがをさせることもある

日中の過度の眠気

睡眠不足や薬剤の副作用による

感覚症状

嗅覚障害(嗅覚低下・脱失)

初期からよくみられるが気づかれないことがある

痛み・しびれ
・肩や腰の痛み
・手足の筋肉痛
・異常感覚

こわばりと可動性の低下により生じる

その他

疲労感

こわばりと可動性の低下により生じる

体重減少

嚥下困難や食事摂取の制限による

脂漏性皮膚炎
・頭皮や顔面の鱗屑

頭皮や顔面にしばしば鱗屑が生じる

自律神経症状(便秘・排尿障害・起立性低血圧)

便秘はパーキンソン病で多くみられ、患者の8割程度にみられるとされています。腸の内容物を送る動きがゆっくりになることで起こり、運動不足やレボドパの影響で悪化することがあります。
排尿障害では以下の症状が現れます。

  • 排尿の開始と持続が困難になる(排尿遅延)

  • 切迫した尿意を感じる(尿意切迫)

  • 失禁もよくみられる

  • 夜間の頻尿により睡眠が妨げられる

起立性低血圧は、立ち上がったときに血圧が急激に下がり、立ちくらみやめまいが起こる症状です。立ち上がるときはゆっくり動き、症状が続く場合や薬の調整が必要な場合は主治医に相談してください。

精神症状(うつ・不安・幻覚・認知症)

うつ症状は、運動症状が現れる何年も前からみられることがあり、病気の進行に伴って悪化する場合があります。気分の落ち込みや意欲の低下が続く場合は、運動症状にも影響することがあるため、主治医に相談してください。

 

幻覚、妄想、パラノイアなどの精神症状は、認知症を発症した場合に多くみられますが、認知症がない場合にも起こることがあります。幻覚では、そこにないものが見えたり聞こえたりします。妄想では、矛盾する明確な証拠があっても特定の信念に固執することがあります。パラノイアでは、疑い深くなり、他者から危害を加えられると思い込むことがあります。これらの症状が現れた場合や変化した場合は、薬の影響も含めて主治医に相談してください。

 

認知症は病気の経過とともに現れることがあり、複数の手順が必要な行動を計画しにくくなる遂行機能障害や、物忘れなどの症状がみられます。日常生活でこうした変化に気づいた場合は、主治医に相談してください。

睡眠障害と日中の眠気

レム睡眠行動障害は、通常は力が抜けているレム睡眠中に、夢の内容に伴って腕や脚を動かしたり、声を出したりする症状です。激しい動きによって、本人や隣で寝ている人がけがをすることもあります。

 

不眠症の原因として、排尿回数の増加や夜間の症状悪化により寝返りが困難になることが挙げられます。また、中途覚醒や早朝覚醒により十分な睡眠が取れなくなります。

 

睡眠不足は、抑うつや考えにくさ、日中の眠気を悪化させることがあります。パーキンソン病の治療薬の副作用で、日中に強い眠気が現れることもあるため、眠気や薬の変化は主治医に相談してください。

その他の症状(嗅覚障害・疲労・痛み)

嗅覚障害(嗅覚脱失)は初期からよくみられる症状ですが、気づかれないことがあります。においがしなくなることで食欲が低下し、栄養摂取に影響を与える可能性があります。

全身症状として以下が現れます。

  • 疲労感:こわばりと可動性の低下により生じる

  • 体重減少:嚥下困難や食事摂取の制限による

  • 脂漏性皮膚炎:頭皮や顔面にしばしば鱗屑が生じる

肩や腰の痛み、手足の筋肉痛やしびれが現れることがあります。痛みやしびれの原因は一つではないため、新たに現れた場合や悪化した場合は主治医に相談してください。

パーキンソン病の初期症状チェックと進行過程

パーキンソン病は、かすかな症状で始まり、何年もかけてゆっくりと進行する病気です。気になる症状がある場合は、自己判断せず神経内科などの専門医に相談し、診断と治療方針を確認しましょう。

 

症状の現れ方や進行パターンには個人差がありますが、特徴的な傾向を理解することで、早期発見と適切な対処につなげることが可能です。

初期に現れやすい症状のサイン

パーキンソン病の初期には、安静時に片側の手足が震える振戦、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、嗅覚が低下するなどの症状がみられることがあります。振戦は、安静時に片側の手で始まることがあります。

 

家族が気づきやすい変化として、表情をコントロールする顔面筋が正常に動かないため、顔の表情が乏しくなる「仮面様顔貌」があります。また、話し方が単調で小声になることも特徴的な初期症状の一つです。

 

非運動症状では、腸の動きがゆっくりになることによる便秘が早期から現れることがあります。これらの症状だけでパーキンソン病とは診断できないため、気になる変化が続く場合は神経内科などの医療機関に相談してください。

症状の左右差と進行パターン

パーキンソン病の重要な特徴として、症状の強さに左右で差があることが挙げられます。運動症状は左右いずれか片方に発症することが多く、徐々に両方に見られるようになる進行パターンを示します。

 

振戦は、安静時に片方の手から始まることがあり、進行に伴って反対側の手や腕、脚にも現れる場合があります。左右差は診断の手がかりの一つですが、診断は神経内科などの専門医が症状や検査を総合して行います。

 

初期は片側の軽い震えや動作のぎこちなさから始まり、徐々に筋肉のこわばりや動作の緩慢さが加わり、進行とともに反対側にも症状が現れます。

若年性パーキンソン病の特徴

40歳未満で発症するパーキンソン病は「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。まれに小児や青年が発症することもあり、通常の高齢発症のパーキンソン病とは異なる特徴を持っています。

 

若年性パーキンソン病では、遺伝的要因が関与する可能性が高くなります。パーキンソン病の人の約10~25%には、パーキンソン病の近親者がおり、パーキンソン病を引き起こすいくつかの遺伝子変異が特定されています。

 

ただし、患者さんのほとんどは孤発性であり、遺伝性を示しません。

進行速度と生活への影響

パーキンソン病の進行速度や症状は人によって異なり、何年もかけてゆっくり進行することがあります。治療薬で症状を和らげながら長期に生活を続ける人もいますが、症状や薬の変更は主治医に相談してください。

進行の程度は、運動症状を中心にヤール分類(Hoehn & Yahr重症度分類)で評価されます。日常生活への影響は、運動症状に加え、非運動症状や生活環境によっても異なります。

ヤール分類

症状の特徴

日常生活への影響

Ⅰ度(初期)

片側のみの軽い運動症状

日常生活にほぼ支障なし

Ⅱ度(軽症)

両側に軽度の運動症状、軽度の歩行障害

日常生活に軽度の支障

Ⅲ度(中等症)

明らかな歩行障害、姿勢反射障害の出現

日常生活に中等度の支障、介助が必要な場面が増加

Ⅳ度(重症)

起立・歩行が困難、日常動作に著しい障害

介助なしでの生活が困難

Ⅴ度(最重症)

車椅子生活または寝たきり状態

全面的な介助が必要

参考:厚生労働省|6 パーキンソン病

パーキンソン病の診断方法と検査

パーキンソン病の診断は、神経内科などの専門医が問診と神経学的診察をもとに行います。単独で確定診断できる検査はないため、症状の特徴、経過、診察所見を総合して評価します。

 

必要に応じて画像検査を行い、他の疾患を除外しながら診断を進めていきます。早期に正確な診断を受けることで、適切な治療を開始できます。

問診で確認される重要ポイント

問診では、症状の詳細について以下の項目が確認されます。

  • どのような症状で困っているか

  • 症状はいつから始まり、どのくらい続いているか

  • 症状の変化や左右差はあったか

  • これまでにかかった病気、今かかっている病気

  • 家族の中に同じような症状が出ている人がいるか

服用中の薬剤(市販薬や健康食品を含む)も確認します。薬剤によるパーキンソニズムの可能性を確認するため、受診時はお薬手帳を持参してください。

神経学的診察の内容

神経学的診察では、安静時振戦、動作緩慢、筋強剛、姿勢保持の障害などを確認します。指鼻試験などの協調運動の検査では、ほかの神経疾患の可能性も含めて評価します。

 

両手を膝に置いて裏返し元に戻すといった動作を素早く繰り返す検査では、パーキンソン病の患者は素早く動作を入れ替えることがうまくできません。歩行観察や姿勢反射の検査も実施されます。

 

診断がはっきりしない場合、専門医がレボドパへの反応を確認し、診察所見や経過と合わせて診断の参考にすることがあります。薬の開始や変更は、主治医に相談してください。

画像検査(CT・MRI・SPECT・DAT)の役割

CTやMRI検査は、脳血管障害や脳腫瘍など、パーキンソン病以外の脳の病気がないかを確認するために行われます。CTやMRIだけでパーキンソン病を診断することはできません。

 

MIBG心筋シンチグラフィーは、心臓の交感神経の状態を調べる検査です。パーキンソン病では、心臓へのMIBGの取り込みが低下することがあり、診断の参考になります。

 

ドーパミントランスポーター(DAT)イメージングは、ドパミン神経の働きを画像で確認する検査です。パーキンソン病やレビー小体型認知症などの鑑別診断の参考になります。

診断基準と鑑別診断の重要性

パーキンソン病の診断は、問診や神経学的診察をもとに、症状の経過と検査結果を総合して専門医が判断します。画像検査や血液検査は、パーキンソン病に似た症状を起こす他の病気を確認するために行われます。

 

パーキンソン病とパーキンソン症候群は治療法が異なるため、専門医による正しい鑑別診断を受けることが重要です。症状が似ていても原因が異なる疾患があるため、慎重な診断が必要になります。

 

症状に気づいたら専門医に相談し、早めに正確な診断を受けることで、症状や生活状況に合った治療や生活上の支援を検討できます。

パーキンソン病の治療法と薬物療法

パーキンソン病の治療は薬物療法が中心です。治療の開始時期や薬剤の種類・量は症状や生活への影響を踏まえて主治医が判断し、経過に応じて調整します。

 

患者さんの年齢、症状の程度、副作用の有無などを総合的に判断して、最適な治療薬を選択することが重要です。

薬剤分類

代表的な薬剤名

作用機序

特徴・効果

主な副作用

L-ドパ製剤

レボドパ/カルビドパ

脳内でドパミンに変換

治療効果が高く速効性に優れる

吐き気、ジスキネジア、幻覚

ドパミン受容体作動薬

プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン

ドパミン受容体を直接刺激

穏やかで安定した効果

眠気、衝動制御障害、幻覚

MAO-B阻害薬

ラサギリン、セレギリン

ドパミンの分解を抑制

ドパミンの作用時間を延長

高血圧、錯乱

COMT阻害薬

エンタカポン、オピカポン

レボドパの分解を抑制

レボドパの効果を延長

下痢、肝機能障害(トルカポン)

アデノシン受容体拮抗薬

イストラデフィリン

アデノシンとドパミンのバランス調整

運動症状の改善

悪心、めまい

抗コリン薬

ベンツトロピン、トリヘキシフェニジル

アセチルコリンの作用を遮断

振戦に特に有効

口腔乾燥、錯乱、排尿困難

ドパミン放出促進薬

アマンタジン

ドパミン放出促進、回収抑制

ジスキネジアの制御に有効

幻覚、むくみ

ドロキシドパ

ドロキシドパ

ノルアドレナリン補充

起立性低血圧の改善

高血圧、頭痛

レボドパ・カルビドパの効果と使い方

レボドパはドパミン前駆体で、体内でドパミンに変換される薬剤です。この変換は脳の大脳基底核で起こり、パーキンソン病のために減少しているドパミンを補充します。

 

カルビドパを同時に投与することで、レボドパが大脳基底核に到達する前にドパミンに変換されるのを防ぎます。その結果、副作用が少なくなる上、脳でより多くのドパミンが利用できるようになります。

 

レボドパは、筋肉のこわばりや動作の遅さなどの運動症状を改善する代表的な薬です。効果や副作用には個人差があるため、症状の変化や薬の調整については主治医に相談してください。

ドパミン作動薬とその他の治療薬

ドパミン作動薬はドパミンに似た作用を持つ薬で、投与経路により特徴が異なります。

投与経路

薬剤名

特徴

利点

欠点・注意点

経口薬

プラミペキソール

1日3回服用

早期治療に適している

単独では効果が数年で限定的

ロピニロール

1日3回服用

レボドパとの併用可能

日中の眠気が一般的

貼付薬

ロチゴチン

1日1回貼付

24時間安定した効果

皮膚刺激のリスク、貼る場所を毎日変更

注射薬

アポモルヒネ

即効性のレスキュー薬

ウェアリング・オフに対応

1日5回まで、注射の技術が必要

アポモルヒネ持続皮下注
(一部の国で利用可能)

ポンプによる持続投与

重度症状に対応

一部の国でのみ利用可能

MAO-B阻害薬はドパミンの分解を抑え、COMT阻害薬はレボドパの分解を抑えることで、レボドパの作用時間を延長します。アマンタジンは症状や治療状況に応じて使用され、レボドパによるジスキネジアの軽減に用いられることがあります。薬の種類や用量の変更は、主治医に相談してください。

薬の副作用と対処法

薬物治療開始時に現れやすい副作用として以下があります。

  • 胃腸症状:吐き気や食欲不振には吐き気止めで対処可能

  • 眠気:突然寝てしまう副作用があるため運転は避ける

  • 立ちくらみ:ゆっくり立ち上がることを心がける

長期使用により現れる副作用には、幻覚(薬の種類や量の変更で改善)、むくみ(薬剤変更で対処)、ドパミン調節異常症候群(衝動的な買い物やギャンブル依存)などがあります。

 

これらの症状が現れた場合は、恥ずかしがらずに主治医に相談することが重要です。適切な薬剤調整により症状の改善が期待できます。

ウェアリング・オフ現象への対応

レボドパによる長期治療で現れる運動合併症には、ウェアリング・オフ現象とオン・オフ現象があります。

項目

ウェアリング・オフ現象

オン・オフ現象

定義

薬の効果時間が短くなる現象

薬の効果が突然現れたり消失する現象

発生時期

レボドパ使用5年以上で半数以上に出現

より進行した段階で出現

症状の変化パターン

予測可能、次回服用前に症状出現

予測困難、突然の変化

オン(効果あり)時

毎回の服用後に動ける時間が短縮

急に動けるようになる

オフ(効果なし)時

徐々に症状が現れる

突然動けなくなる

持続時間

徐々に短縮

数秒から数時間と変動

対処法

服用回数増加、徐放製剤への変更

薬剤追加や変更

生活への影響

ある程度予測可能

日常生活の計画が困難

対処法として、1回の用量を減らして服用回数を増やす、レボドパの徐放製剤に切り替える、ドパミン作動薬やアマンタジンを追加するなどがあります。薬の量や種類の調整は主治医と相談して行い、自己判断で変更しないでください。

パーキンソン病の手術療法とリハビリテーション

パーキンソン病の治療は薬物療法が中心です。薬の効果が十分でない場合や副作用が問題となる場合は、脳神経内科などの専門医が症状や生活への影響を評価し、手術療法を含む治療の選択肢を検討します。

リハビリテーションは、診断後から主治医やリハビリテーション専門職に相談し、歩行、姿勢、日常動作などの困りごとに合わせて取り入れます。生活の質の維持・向上を目指し、日常生活での工夫と組み合わせて継続します。

脳深部刺激療法(DBS)の適応と効果

脳深部刺激療法(DBS)は、脳内の特定部位に電極を手術で留置し、電気刺激によってパーキンソン病の運動症状を改善する治療です。


適応条件として以下が挙げられます。

  • 病気が進行している

  • 認知症や精神症状がない

  • 薬剤を使用しても効果がないか重い副作用が出る

この部分を刺激することにより、不随意運動と振戦が大幅に減り、オン・オフ現象のオフ部分の時間が短くなります。脳深部刺激療法は専門施設でのみ行われており、薬物療法を補完する有効な治療選択肢となっています。

運動療法とリハビリの重要性

パーキンソン病と診断された後は、主治医やリハビリテーション専門職に相談し、自分の症状や体力に合った運動を始めましょう。有酸素運動やストレッチなどは、薬物療法と併せて、身体機能や日常生活の動作を維持するために行われます。運動の内容や強さは、症状や薬の効き方の変化に応じて主治医に相談してください。

 

理学療法士や作業療法士から、筋緊張を改善して関節の可動域を維持するための体操について助言を受けることができます。また、自立を維持するための歩行器などの補助器具の使用方法についても指導を受けられます。

 

定期的な運動は、日常生活動作や身体機能の維持に役立つことがあります。運動中に転倒しそうになる、痛みが出る、症状が変化する場合は、運動を続ける前に主治医やリハビリテーション専門職へ相談してください。

日常生活の工夫と環境整備

日常生活を安全に続けるため、転倒しやすい場所や動作に合わせて住環境を整えます。たとえば、小さな敷物を撤去し、浴室や廊下には必要に応じて手すりを取り付けます。

  • 転倒を予防するために小さな敷物は撤去する

  • 転倒のリスクを減らすため、浴室や廊下などに手すりを取り付ける

日常動作を楽にする工夫として、服のボタンを面ファスナーに替える、面ファスナー付きの靴を買うなどがあります。ジッパータブ(ファスナーを引くための補助器具)やボタンエイド(ボタンをかけるための補助器具)を使用することも効果的です。
体調と安全に配慮しながら日常活動を続けることは、機能の維持や生活の質の向上につながります。動作が難しくなった場合は、主治医やリハビリテーションの専門職に相談してください。

言語リハビリと嚥下訓練

パーキンソン病では、口や舌、のどの筋肉の動きが小さくなったり、動きの協調が難しくなったりして、「声が小さくなる」「早口になる」「声がかすれる」などの発声や話し方の変化が現れることがあります。症状に応じて、言語聴覚士などの専門職によるリハビリテーションを受けると、話しやすさやコミュニケーションの維持につながります。

 

発声の訓練内容は症状によって異なるため、まず言語聴覚士などに評価を依頼し、本人に合った方法を確認しましょう。声の大きさや話す速さを意識する練習を行う場合も、無理のない方法を専門職と相談して決めることが大切です。

 

パーキンソン病では、口やのどの動きが低下して、食べ物や飲み物、唾液を飲み込みにくくなることがあります。これらが気道に入る誤嚥は肺炎につながることがあるため、むせる、食事に時間がかかる、声が湿ったように聞こえるなどの変化があれば、主治医や言語聴覚士に相談してください。嚥下訓練や食事の形態は、専門職による評価をもとに決めます。

パーキンソン病と共に生きるための支援と展望

パーキンソン病と共に生きるためには、医療機関での治療に加え、日常生活を支える幅広い支援が必要です。介護保険や訪問看護などの既存サービスと併用しながら、本人と家族の希望に合わせて必要な支援を選ぶことができます。

イチロウは、介護保険外で24時間365日利用でき、家事・生活支援、見守り、身体介護、看護を一つのサービス内で必要に応じて組み合わせられる自由介護サービスです。介護関連資格を持つスタッフを、必要なケアスキル、経験、利用者との相性などを考慮して選定し、ヘルパー手配率は96%です。夜間を含む必要な時間帯に利用でき、症状や生活状況の変化に合わせて支援内容を調整できます。

看護コースでは、看護師がたん吸引や経管栄養などの医療的ケア、終末期ケア、緩和ケアに対応します。症状や薬の変更は主治医に相談し、介護サービスは診断や治療に代わるものではありません。

 

>>イチロウについて詳しく見る

まとめ

パーキンソン病では、症状の変化に気づいたら、神経内科などの専門医に相談することが大切です。診断と治療方針は専門医が、症状、生活への影響、薬の効果や副作用を踏まえて判断します。薬物療法、リハビリテーション、必要に応じた手術療法は、症状を和らげ、日常生活を続けやすくするために用いられます。症状や薬の変更は自己判断せず、主治医に相談してください。

よくある質問

パーキンソン病について、患者さんやご家族から寄せられる代表的な疑問にお答えします。症状や治療、日常生活での困りごとをわかりやすく解説しますが、診断や治療、薬の変更は主治医に相談してください。

Q1.パーキンソン病の初期症状を見分ける方法はありますか?

安静時の手足の震え、動作の遅さ、筋肉のこわばり、嗅覚の低下は、パーキンソン病でみられる初期症状です。表情が乏しくなる「仮面様顔貌」、声が小さくなる、便秘などの症状が現れることもあります。ただし、症状だけでパーキンソン病かどうかを見分けることはできません。気になる変化が続く場合は、早めに神経内科を受診し、専門医に相談してください。

Q2. パーキンソン病は遺伝しますか?

パーキンソン病患者の約10~25%に家族歴がありますが、患者さんのほとんどは孤発性で遺伝性を示しません。若年性パーキンソン病では遺伝的要因が関与する可能性が高くなりますが、40歳未満での発症は稀です。家族歴がある場合でも、必ず発症するわけではありません。遺伝について不安がある場合は、主治医や神経内科の専門医に相談してください。

Q3.パーキンソン病の薬を飲み続けると効かなくなりますか?

レボドパを長く服用していると、薬の効果が切れるまでの時間が短くなるウェアリング・オフ現象や、効いている時間と効かない時間が急に切り替わるオン・オフ現象が起こることがあります。現れ方や時期には個人差があります。服用回数の調整、徐放製剤への変更、他の薬剤の追加は、症状に合わせて主治医が判断するため、薬の効き方が変わったと感じたら自己判断で変更せず相談してください。

Q4.パーキンソン病でも運動やリハビリはできますか?

はい、パーキンソン病でも運動やリハビリはできます。症状や体調に合わせて内容と強度を調整し、主治医や理学療法士などに相談しながら、歩行、バランス練習、ストレッチなどに取り組みます。転倒しやすい場合や症状が変化した場合は、自己判断で続けず主治医に相談してください。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
コラム一覧に戻る