介護にまつわるお役立ちコラム
要介護4とはどのような状態?「在宅介護が無理」となる前に講じたい対処法や支援制度
要介護4の状態になると、在宅介護を続けられるか不安を感じる方は少なくないでしょう。しかし、状況に応じた対策を講じれば、自宅での介護を続けることは不可能ではありません。本記事では、要介護4の状態や原因を理解し、在宅介護を続けるための具体的な対策を紹介します。要介護者の尊厳を守りつつ、介護者の負担を軽減する方法を見つけましょう。
介護が必要な高齢者の状態を評価する要介護認定において、要介護4は上から2番目に位置する区分です。要介護4の詳細について見ていきましょう。
要介護認定は、介護サービスの必要性を判断するために行われる評価制度です。認定により、個人の状態に応じた適切な介護サービスを受けられます。認定は要支援1~2、要介護1~5まで7段階に分かれており、数字が大きくなるほど介護の必要性が高くなります。要介護4は、この7段階の中で上から2番目に位置し、要介護5に次いで介護の必要性が高い状態です。
厚生労働省が発表している「介護保険事業状況報告」(令和6年2月分 都道府県別 第2-1表 要介護(要支援)認定者数 男女計)によると、2024年2月時点で全国約90万人が要介護4の認定を受けており、高齢化社会の進展に伴い、この数字は今後も増加していくと予想されます。
要介護4は、寝たきりや認知症などにより、常時介護が必要な状態を指します。この段階では、身体機能の低下が顕著で、日常生活のほとんどの動作に介助が必要となります。例えば、食事、入浴、排泄といった基本的な生活動作を自力で行うことが困難です。
また、認知症による要介護4では、身体機能の低下だけでなく、認知機能の低下も見られます。思考力や理解力が著しく低下し、徘徊や妄想、不穏な行動といった認知症の周辺症状が現れる場合もあります。
要介護4のような日常生活の大部分に介護が必要となる原因は様々です。厚生労働省が2022年に実施した「国民生活基礎調査」によると、要介護4となった主な原因として、脳卒中(脳梗塞・脳出血等)、骨折・転倒、認知症が上位に挙げられています。
また、これらの主要因以外にも、パーキンソン病などの神経変性疾患も要介護4の原因です。パーキンソン病は、運動機能の低下や筋肉の硬直を引き起こし、日常生活に大きな影響がでます。また、加齢に伴う全身の機能低下や複数の慢性疾患の合併も、要介護4の状態に至る要因となることがあります。
要介護4の方の在宅介護は可能ですが、介護者にかかる負担は非常に大きくなります。日常生活のほぼすべての場面で介助が必要となるため、介護者の身体的・精神的疲労は避けられません。
2022年の国民生活基礎調査によると、要介護4の方を在宅で介護している家族の約41%が、1日のうち「ほとんど終日」を介護に割いています。これは、要介護3の場合の約32%と比べても明らかに高い割合です。さらに、公益社団法人生命保険文化センターが実施した2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、要介護4の方の約59%が施設での介護を受けており、在宅介護の42%を大きく上回っています。要介護4では施設介護を選択するケースが多いことがわかります。
要介護4は日常生活のほとんどの場面で介助が必要となるため、介護者は身体的にも精神的にも疲労が蓄積しやすい状況に置かれます。この対策の一つが、レスパイトケアの利用です。レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から解放され、休息を取ることができるサービスのことで、介護者は自分の時間を持ち、心身をリフレッシュすることができます。
以下では、具体的な対策方法について詳しく見ていきましょう。
ケアプランの見直しは、介護の質を向上させる重要な手段です。ケアマネジャーと相談しながら、利用する介護保険サービスを再検討しましょう。要介護4の方が利用できる主な介護保険サービスには以下のようなものがあります。
- 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います
- 訪問入浴介護:移動式の浴槽を使用して、自宅で入浴介助を受けられます
- 夜間対応型訪問介護:夜間も含め24時間体制で、必要時に訪問介護を受けられます
- 通所介護(デイサービス):日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けられます
- 短期入所生活介護(ショートステイ):短期間、施設に宿泊して介護サービスを受けられます
要介護4の方の介護保険サービスの利用限度額は、1ヶ月あたり30万9,380円です。この範囲内でサービスを組み合わせて利用できます。ケアマネジャーと相談しながら、現在の要介護者の状態や介護者の状況に合わせて、最適なサービスの組み合わせを見つけましょう。
ショートステイは、要介護者が短期間、介護施設に宿泊しながら日常生活上の支援やケアを受けるサービスです。通常は数日から1週間程度の利用が一般的ですが、最長で30日まで連続して利用できます。ショートステイを活用することで、介護者は一時的に介護から解放され、心身のリフレッシュを図れます。
ショートステイでは、食事、入浴、排せつなどの日常生活の支援に加え、機能訓練や健康管理なども行われます。要介護者にとっても環境の変化や新しい交流の機会となり、生活にメリハリをつけられるでしょう。介護者の急な用事や体調不良時の利用はもちろん、定期的な利用を組み込むことで、継続的な負担軽減につながります。
以下は、要介護4の方が利用できる主な高齢者施設です
特別養護老人ホーム | ・原則要介護3以上の方が対象 |
・比較的低料金で利用可能 | |
・待機者が多く、入居までに時間がかかる場合がある | |
・介護と生活援助サービスが受けられる | |
介護老人保健施設 | ・リハビリテーションを中心としたケアを提供 |
・医療的ケアと介護サービスを併せて受けられる | |
・在宅復帰を目指す方に適している | |
・長期入所よりも短期/中期の利用が一般的 | |
介護付き有料老人ホーム | ・24時間体制の介護サービスが受けられる |
・居室や設備が充実している場合が多い | |
・入居一時金や月額費用が高額な場合がある | |
・要介護度に関わらず入居可能 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | ・バリアフリー設計の賃貸住宅 |
・安否確認や生活相談サービスが付いている | |
・介護サービスは外部サービスを利用する | |
・自立した生活が可能な方から要介護者まで幅広く対応 | |
グループホーム | ・認知症の方を対象とした少人数制の施設 |
・家庭的な雰囲気で生活できる | |
・入居条件として認知症診断が必要 | |
・共同生活を通じて認知症状の進行を緩和 |
施設への入居を希望する場合は、早めの検討と準備が必要です。特に特別養護老人ホームは待機者が多く、入居までに数年かかることもあります。また、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、費用面での準備も必要です。
介護保険外サービスとは、介護保険制度の枠組みにとらわれず、利用者のニーズに応じて提供される、さまざまなサービスのことです。介護保険外サービスは全額自己負担ですが、介護保険サービスでは対応しきれない部分をカバーできます。例えば、長時間の見守りや外出支援、大掃除や庭の手入れなどです。サービスの内容や料金は事業者によって異なりますが、必要な支援を必要な分だけ利用できるため、状況に応じて柔軟に利用しましょう。
施設入居では、入居費用や月々の利用料など固定費用が高額になることが多いですが、介護保険外サービスは必要な分だけ利用できるため、費用を柔軟にコントロールできます。施設よりも費用を抑えつつ、在宅での介護負担を軽減することも可能です。
要介護4の状態になると、介護にかかる費用が大幅に増加し、家計を圧迫する可能性がありますが、一方でさまざまな経済的支援制度が用意されています。
ここでは、要介護4の方が利用できる主な制度を紹介します。在宅介護を継続するためにも、これらの制度を上手に活用しましょう。
高額介護サービス費制度は、介護保険サービスの利用者負担が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。毎月の自己負担額が、所得に応じて設定された上限額を超えた場合に、申請することで超過分が支給されます。2021年8月から一定以上の所得がある場合の負担上限額が見直され、負担がより公平化されました。
介護保険の住宅改修制度は、要介護者が自宅で安全に生活できるよう、住環境を整備するための支援制度です。手すりの取り付け、段差の解消、滑り止めの設置、引き戸への取り替え、洋式便器への交換などが対象です。住宅改修制度を利用すると、20万円を上限として、所得に応じて、改修費用の7〜9割が介護保険から支給されます。
一度に全額を使用する必要はなく、複数回に分けて改修工事を行うことができるため、初回の改修で支給額の一部を使用し、残りの金額を後日の工事に充てることも可能です。段階的な住環境の改善や、優先度の高い箇所から順次改修を進められます。
ただし、20万円を超える部分は全額自己負担となるため、計画的に利用しましょう。原則として1人1回限りの利用ですが、要介護度が3段階以上あがった場合や転居した場合は再度利用できることがあります。住宅改修を検討する際は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、適切な改修計画を立てましょう。
特定福祉用具販売制度は、介護保険を利用して福祉用具を購入できる制度です。対象となる用具は、腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽、などです。これらは他人と共有することが難しいため、レンタルではなく購入の対象となっています。
この制度を利用する場合、年間10万円を上限として購入費用の7〜9割が介護保険から払い戻されます。ただし、いったん全額を自己負担で支払い、後から払い戻しを受ける「償還払い」方式が一般的です。また、購入の際は、都道府県の指定を受けた事業者から購入する必要があり、インターネット販売などは対象外となりますので注意しましょう。
各自治体で、介護保険制度を補完する独自の支援制度を設けていることがあります。支援の内容は自治体によって異なりますが、日常生活に直結するサービスが多く提供されています。
自治体の支援制度は、地域の特性や住民のニーズに応じて設計されているため、利用できるサービスや条件は地域ごとに異なります。そのため、お住まいの地域の制度を詳しく確認し、活用できるものは積極的に利用しましょう。
次に、自治体が提供する二つの支援サービスについて紹介します。
- 【横浜市】高齢者紙おむつ給付事業
横浜市では、生活保護受給世帯や市民税非課税世帯への在宅介護支援として、紙おむつ給付事業を実施しています。この制度は、要介護4または5の方、あるいは要介護1から3で福祉保健センター長が必要と認めた方が対象です。
給付額は要介護度に応じて設定され、要介護4・5の方は月額8,000円、要介護1〜3の方は6,000円が上限です。利用者負担は基本的に給付額の1割ですが、生活保護受給世帯は無料です。
申請は各区の福祉保健センターや地域包括支援センターで受け付けており、利用の可否は福祉保健センターが決定します。
- 【東京都港区】理美容サービス
東京都港区では、外出が困難な高齢者や重度障害者向けに、自宅で理美容サービスを受けられる制度を設けています。対象は65歳以上で要介護3〜5の認定を受けた方や、重度心身障害者手当受給者などです。
サービス内容は、理容師や美容師が自宅を訪問し、カットやシェービング、メイクなどを行います。利用は年間6回まで可能で、1回あたり500円を自己負担します。利用するには事前登録が必要です。この制度により、外出が難しい方々も定期的に身だしなみを整えることができます。
要介護4の状態を理解し、適切な対策を講じることは在宅介護を続ける上で欠かせません。介護の負担が大きくなる前に、ケアプランの見直しやショートステイの利用、施設入居の検討など、さまざまな選択肢を探ることが大切です。介護保険制度や自治体の支援制度をうまく使えば、お金の面での心配も減らせます。早めに情報を集め、家族や専門家と話し合いながら介護環境を整えていきましょう。