介護にまつわるお役立ちコラム

食事介助で大切なこととは?方法や注意点なども解説!

2024年07月23日

食事は私たちの生活に欠かせない大切な活動です。しかし、高齢者や障がいのある方にとって、自力で食事をすることが難しい場合があります。そのような時に必要となるのが「食事介助」です。適切な食事介助は、単に栄養を摂取するだけでなく、食事を楽しむ喜びを提供し、生活の質を向上させる重要な役割を果たします。

 

本記事では、食事介助の目的から具体的な方法、注意点まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。介護に携わる方々や、ご家族の介護をされている方々にとって、役立つ情報をお届けします。

 

1食事介助の目的とは?

食事介助の目的は、単に食べ物を口に運ぶだけではありません。真の目的は、要介護者の尊厳を守りながら、安全かつ快適に食事を摂取してもらうことにあります。

 

食事介助の主な目的は、適切な栄養摂取を支援することが挙げられます。自力で食事を取ることが難しい方でも、必要な栄養を摂取できるよう手助けすることが重要です。次に、誤嚥や窒息のリスクを軽減し、安全に食事を楽しんでいただくことです。適切な姿勢や食べ方の支援により、食事中の事故を防げます。

 

さらに、食事介助は健康面へのサポートだけではありません。食事は単なる栄養摂取の手段ではなく、生活の楽しみの一つでもあります。適切な介助により、要介護者に食事の喜びを感じてもらい、生活の質の向上につなげることも重要な目的の一つです。

 

要介護者の状態や好みを理解し、個々に合わせた介助が求められます。また、介助者は単に機械的に食事介助する     のではなく、要介護者とのコミュニケーションを大切にしながら、心のこもった介助を心がける姿勢が大切です。

2高齢者が食事をしづらくなる要因

高齢者が食事をしづらくなる要因は多岐にわたります。まず、加齢に伴い、咀嚼力や嚥下機能が低下することがあります。歯の喪失や義歯の不具合により、食べ物を噛み砕くことが困難になったり、喉の筋肉の衰えにより食べ物を飲み込みにくくなったりする場合があります。また、手指の巧緻性の低下により、箸やスプーンを上手く使えなくなることも珍しくありません。

 

次に、認知機能の低下も大きな要因の一つです。認知症などにより、食事の手順を忘れてしまったり、食事に集中できなくなったりする症状があります。また、食欲不振や食事の重要性の認識が薄れると、十分な栄養摂取ができなくなる場合もあります。

 

さらに、疾患や薬の副作用の影響も考えなければなりません。例えば、パーキンソン病による振戦(しんせん)は、食べ物を口に運ぶ動作を困難にします。また、一部の薬剤は副作用として食欲不振や口内乾燥を引き起こす可能性があります。

 

心理的な要因も見逃せません。孤食や食事環境の変化により、食事への意欲が低下することがあります。また、食べこぼしを気にして食事を控えてしまうなど、自尊心の低下が食事に影響を与えることもあるため注意が必要です。

3食事介助で大切なこと!「食べる楽しみ」に導く声かけ

食事介助において、適切な声かけは非常に重要です。単に食べ物を口に運ぶだけでなく、要介護者に「食べる楽しみ」を感じてもらうことが、質の高い食事介助につながります。

 

そのためには、「食べる楽しみ」に導くような声かけを行い、コミュニケーションを取るようにしましょう。

食事介助中の声かけのポイント!

まず、声かけのタイミングについてです。食事の開始時、食事中、そして食事の終了時と、それぞれのタイミングで適切な声かけを行うことが重要です。例えば、食事開始時には「いただきます」と声をかけ、食事の雰囲気づくりをします。食事中は「美味しいですね」「ゆっくり食べましょう」などと声をかけ、食事の進行を支援します。食事終了時には「ごちそうさまでした」と声をかけ、食事の締めくくりを明確にするとよいでしょう     。

 

さらに、ポジティブな言葉選びも重要なポイントです。「頑張って食べましょう」ではなく、「美味しく食べましょう」と言い換えることで、食事をより楽しい体験として捉えてもらえます。また、「すごいですね」「上手に食べられていますね」など、要介護者の努力を認める言葉も効果的です。

 

食事介助中の声かけの注意点!

食事介助中に声かけを行う際は、命令口調や強制的な言葉遣いをしないよう注意しましょう。例えば、「食べなさい」「早く食べて」といった言葉は、要介護者にプレッシャーを与え、かえって食欲を減退させる可能性があります。代わりに、「一緒に食べましょう」「ゆっくり食べましょうね」など、柔らかい表現を使うことが望ましいです。

 

また、要介護者の状態や気分を無視した声かけも適切ではありません。例えば、体調が優れない日に「今日も頑張って全部食べましょう」と言うのは、要介護者の負担になる可能性があります。常に要介護者の状態を観察し、その日の体調や気分に合わせた声かけを心がけることが大切です。

 

食事の内容や量に関する否定的な発言も避けるべきです。「こんなに多いと食べられないでしょう」「これ、苦手だったかな」といった言葉は、要介護者の食欲を損なう可能性があります。代わりに、「美味しそうですね」「少しずつ食べていきましょう」など、ポジティブな言葉を選ぶことが重要です。

4食事介助の流れ

食事介助は単に食べ物を口に運ぶだけではありません。適切な準備から始まり、安全な姿勢の確保、そして実際の介助まで、一連の流れを理解することが大切です。ここでは、食事介助の基本的な流れについて、段階を追って詳しく説明していきます。

 

食事介助の前準備

食事介助を始める前の準備は、安全で快適な食事のために欠かせません。適切な準備を行うことで、要介護者の方の食事への意欲を高め、スムーズな介助につながります。

  • トイレへの促し

食事の前にトイレに行くことを促すのは、食事中の不快感や中断を防ぐために重要です。要介護者の方に「食事の前にトイレに行きませんか?」と優しく声をかけましょう。トイレに行くことで、食事に集中できる環境が整います。

  • 食事に集中できる環境作り

食事に集中できる環境を整えることは、安全で楽しい食事のために重要です。テレビの音量を下げたり、不要な物を片付けたりして、落ち着いた雰囲気を作りましょう。また、適切な照明や室温にも気を配り、快適な空間を作ることが大切です。

  • 食前の口腔ケア

食前の口腔ケアは、口腔内を清潔に保ち、食事をより美味しく、安全に摂取するために重要です。歯磨きや、うがいを行い、口腔内を清潔に保ちましょう。義歯を使用している場合は、しっかりと装着されているか確認を忘れてはいけません。

  • 嚥下体操・唾液腺マッサージ

食事前の嚥下体操や唾液腺マッサージは、嚥下機能を高め、唾液の分泌を促進します。首や肩の軽い体操、口の周りのマッサージなどを行うことで、食事をより安全に、美味しく摂取することができます。要介護者の状態に合わせて、無理のない範囲で行いましょう。

 

  • 手を洗う

食事の前に手を洗うことは、衛生面で非常に重要です。要介護者の方の手を優しく洗い、清潔なタオルで拭きましょう。介助者自身も必ず手を洗い、清潔な状態で食事介助に臨むことが大切です。

安全な姿勢の確保

安全な姿勢の確保は、誤嚥を防ぎ、快適に食事を摂るために非常に重要です。要介護者の状態に応じて、適切な姿勢を選択し、必要に応じて修正します。以下に、主な場面での安全な姿勢の確保方法を説明します。

  • 車椅子

車椅子を使用している場合、背もたれに深く腰かけ、足がしっかりと床についた状態を保ちます。必要に応じてクッションなどを使用し、安定した姿勢を確保しましょう。また、テーブルの高さが適切か確認し、食べやすい位置に調整することも大切です。

 

  • リクライニング車椅子

リクライニング車椅子を使用する場合、背もたれの角度を30度から60度に調整します。ここで注意したいのが頸部(首)の角度です。首が天井を向いたままだと食べ物が気道や気管に入りやすくなり、肺炎の原因になります。必ずあごを少し引いた姿勢を保持するようにしましょう。

  • 介護ベッド

介護ベッドでの食事介助の場合、ベッドの頭部を30度から60度に上げ、半座位の状態を作ります。膝下にクッションを入れて、お尻が下に滑らないようにすることも大切です。また、枕やクッションを使って頭部や体幹のサポートを行い、安定した姿勢を保ちましょう。

食事介助の方法

適切な食事介助の方法を理解し、実践することは、安全で快適な食事のために不可欠です。ここでは、食事介助の具体的な方法について、順を追って説明していきます。

  • エプロンをかける

食事の際、衣服を汚さないようにエプロンをかけることは重要です。要介護者の方の状態に合わせて、適切なエプロンを選びましょう。首元や胸元をしっかりカバーし、食べこぼしから衣服を守ります。

  • 要介護者と同じ目線で座る

介助者は要介護者と同じ目線の高さで座ることが大切です。これにより、自然なコミュニケーションが取れ、要介護者の表情や様子を細かく観察することができます。また、食べ物を上から押し付けるような形にならず、自然な角度で食事を提供できます。

  • 献立を伝える

食事を始める前に、その日の献立を伝えるのは重要です。「今日の昼食は〇〇ですよ」と、メニューを具体的に説明しましょう。食事への期待や楽しみが生まれ、食べる意欲を高められます。また、アレルギーや好み、食べられない物がないかを再確認する良い機会にもなります。

  • 水分補給をする

食事の前後、そして食事中にも適度な水分補給を行うことが大切です。水分は食べ物を飲み込みやすくし、口腔内を潤します。ただし、一度に多量の水分を摂取すると誤嚥のリスクが高まるため、少量ずつ、ゆっくりと水分を摂取するよう心がけましょう。

  • 主食・副食・水分をバランス良く口に運ぶ

食事介助では、主食・副食・水分をバランス良く口に運ぶことが重要です。一つの食材に偏らず、様々な味や食感を楽しめるよう心がけましょう。また、一口の量は小さめにし、要介護者の嚥下の状態を見ながら、ゆっくりと食べていただくことが大切です。

  • 口腔ケアを行う

食事が終わったら、口腔ケアを行うことが重要です。口の中に食べ残しがないか確認し、歯磨きやうがいを行います。口腔内を清潔に保ち、虫歯や歯周病の予防にもつながります。また、義歯を使用している場合は、取り外して洗浄することも忘れないようにしましょう。

5食事介助で大切な3つの注意点

食事介助を行う上で、特に注意すべき点があります。これらの点に気を付けることで、より安全で快適な食事介助が     実現できるでしょう。ここでは、食事介助で特に大切な3つの注意点について詳しく説明します。

最初は少量から

食事介助を始める際は、最初は少量から始めるのが重要です。これには複数の理由があります。まず、要介護者の食欲や体調を確認できます。その日の体調によっては、普段より食欲が落ちている場合もあるでしょう。

 

また、少量から始めることで、嚥下の状態を確認することもできます。さらに、食事のペースをゆっくりと作り上げていくことができ、急いで食べてしまうことによる誤嚥のリスクを減らすことができます。

要介護者の食べるスピードに合わせる

食事介助では、要介護者の食べるスピードに合わせることが非常に重要です。人それぞれに適切な食事のペースがあり、それを尊重することが大切です。

 

介助者のペースで食事を進めてしまうと、要介護者が食事を楽しむ余裕がなくなったり、むせや誤嚥のリスクが高まったりする可能性があります。ゆっくりと、要介護者の表情や反応を見ながら、その方のペースに合わせて食事を進めていくことが大切です。

 

食事時間を決める

規則正しい生活リズムを保つために、食事時間を決めることは重要です。毎日決まった時間に食事をすることで、体内時計が整い、食欲も自然と湧いてきます。

 

また、食事の時間を予測できることで、心の準備もでき、食事を楽しみにする気持ちも生まれます。ただし、その日の体調や状況に応じて、柔軟に対応することも必要です。無理に決められた時間に食べさせようとするのではなく、要介護者の状態を見ながら、適切に判断することが大切です。

6まとめ

食事介助は、単に栄養を摂取するだけでなく、生活の質を向上させる重要な役割を果たします。適切な準備、安全な姿勢の確保、そして丁寧な介助方法を理解し実践することが、快適で安全な食事につながります。

 

また、最初は少量から始め、要介護者のペースに合わせ、規則正しい食事時間を設定するなどの注意点にも気を配ることが大切です。これらの点に留意しながら、要介護者の方々が食事を楽しみ、健康的な生活を送れるよう支援していきましょう。食事介助は技術だけでなく、心のこもったケアが重要です。要介護者の方々の気持ちに寄り添い、笑顔で楽しい食事の時間を過ごせるよう、日々の介護に取り組んでいきましょう。

 

監修者情報

テラステック株式会社

2013年に株式会社が経営するデイサービス兼有料老人ホームに就職後、2年後に生活相談員兼現場統括・財務管理に従事。

2017年に一般社団法人の有料老人ホームに転職後、介護福祉士を取得。

2019年に株式会社が経営するグループホームに転職後、認知症実践者研修を修了。

2022年に訪問介護事業所の新規開設。

2023年に居宅介護・重度訪問介護の指定取得。

現在は事業所の管理者に従事。教育に重点を置き、人間性やコミュニケーションの取り方を発信。

沼原義和(介護福祉士)
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