介護にまつわるお役立ちコラム

介護疲れの悩みはどこに相談する?介護疲れを軽減する方法も紹介

2024年07月05日

介護は身体的にも精神的にも大変な労力を要する仕事です。介護を行う中で、身体的・精神的な疲労が蓄積し、やがて「介護疲れ」という状態に陥ってしまうことがあります。介護疲れを放置してしまうと、介護の質が低下するだけでなく、介護者自身の心身の健康にも悪影響を及ぼします。介護うつや虐待行為など、深刻な問題を引き起こしかねません。

介護を長く続けるためには、介護者自身が疲れを軽減し、心身ともに健康な状態を保つことが大切です。

 

本記事では、介護疲れによって引き起こされる具体的な悩みや問題について解説します。そして、介護疲れの負担を軽減するための方法を具体的に紹介します。

1介護疲れが引き起こす悩みとは?

介護は身体的にも精神的にも大変な労力を要する仕事です。介護をする側の家族にとっては、介護疲れが溜まることで様々な悩みを抱えてしまうことがあります。

 

大切な家族のためとはいえ、介護の負担から心身共に疲弊してしまうことは珍しくありません。ここでは、介護疲れによって引き起こされる具体的な悩みについて見ていきましょう。

介護疲れとは?

介護疲れとは、家族の介護を行う中で、身体的・精神的な疲労や困難さを感じ、心身の健康を害してしまう状態を指します。介護は、食事や入浴、排せつなど、日常生活のあらゆる場面で手助けが必要となる重労働です。介護する家族にとっては、自分の生活を犠牲にしてまで毎日介護に追われることになるため、徐々に疲れを感じていくのです。

介護する家族の中には、「家族だから」と我慢し、一人で介護を抱え込んでしまう傾向もみられます。しかし、休息を取らずに頑張り続けると、やがて心身共に限界を迎えてしまうのです。

  • 介護による身体の疲れ

介護による身体の疲れは、主に体を動かす負担から生じます。例えば、食事介助の際には、要介護者を椅子やベッドに座らせるために、腰をかがめて体を支える必要があります。入浴介助の際も、浴槽の中で体を洗ったり、湯船から上がる手伝いをしたりと、介助者の体への負荷は大きくなります。

 

また、排せつ介助では、おむつ交換のために要介護者の体を持ち上げる動作が必要となります。就寝時の体位交換なども、介助者の腰への負担は計り知れません。このように、日常的に同じような動作を繰り返すことで、腰痛や肩こりなどの身体の疲れを感じやすくなるのです。

  • 介護による精神面の疲れ

介護による精神面の疲れは、主にコミュニケーションの難しさから生じます。例えば、認知症の人の介護では、同じことを何度も聞かれたり、介護に対して拒否的な態度を取られたりすることがあります。意思疎通がうまくいかず、叱责や暴言を浴びることもあるでしょう。

 

こうしたコミュニケーションの行き違いから、介護する側はストレスを感じ、徐々に精神的な疲れを感じるようになります。怒りっぽくなったり、イライラが募ったりと、精神的に不安定な状態に陥りやすいのです。

  • 経済的な負担による疲れ

介護による経済的な負担も、介護疲れの大きな原因の一つです。介護サービスを利用したとしても、おむつ代や病院代、介護タクシー代など、思わぬ出費が重なります。介護のために仕事を辞めざるを得ない場合は、収入が減ってしまうため、なおさら家計が苦しくなってしまうのです。

 

また、介護期間が長引けば、貯蓄を切り崩さざるを得なくなることも。「これからどうやって生活していけばいいのか」と将来への不安を感じる人も少なくありません。

介護疲れを感じている人は多い

こうした介護疲れは、介護者の多くが感じているものです。2016年に厚生労働省が発表した国民生活基礎調査によると、同居している介護者の68.9%が日常生活での悩みやストレスを感じていることが明らかになりました。一方、悩みやストレスが「ない」と答えた人は26.8%に留まりました。

 

つまり、介護者の約7割が何らかの形で介護疲れを感じているということです。介護疲れは特別なことではなく、むしろ当たり前のように多くの介護者が経験していることがわかります。

介護疲れが原因で起きる可能性がある問題

介護疲れを一人で抱え込んでしまうと、やがて深刻な問題を引き起こしてしまう恐れがあります。ここでは、介護疲れが原因で起こりうる問題について見ていきましょう。介護疲れを感じたら、一人で抱え込まずに周囲に相談することが大切です。悩みを放置してしまうと、より深刻な事態を招いてしまうかもしれません。

  • 介護うつになってしまう

介護うつとは、介護疲れが原因で引き起こされるうつ病の一種です。介護疲れが蓄積することで、食欲不振や不眠、興味や関心の低下といったうつ症状が現れます。重症化すると、自殺願望を抱いたり、実際に自殺を図ったりする自体にも陥りかねません。

 

家族の介護をしているからといって、自分の心の健康まで疎かにしてはいけません。介護による過度なストレスを感じたら、早めに周りに助けを求める必要があります。

  • 虐待行為が起きてしまう

介護疲れから虐待行為が引き起こされるケースも少なくありません。厚生労働省が実施した令和4年度の調査では、養護者による高齢者虐待の相談・通報件数が年々増加していることが明らかになりました。身体的虐待だけでなく、暴言や脅しといった心理的虐待、年金を搾取するなどの経済的虐待も問題となっています。介護者は疲れ果て、イライラした結果、知らず知らずのうちに虐待をしてしまっているのです。

 

「うちは大丈夫」と思わずに、虐待のサインを見逃さないことが大切です。適切な支援を受けることで、虐待という最悪の事態を防ぐことができるはずです。

2介護疲れの悩みを相談できる窓口とは?

介護の悩みを一人で抱え込んでしまうと、心身共に疲弊してしまうことがあります。そんな時は、一人で頑張らずに周囲に助けを求めることが大切です。

 

ここからは、介護疲れの悩みを相談できる窓口を具体的に紹介していきます。一人で悩まずに、ぜひ活用してみてください。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の生活を支える地域の拠点として、市町村が主体となって設置・運営しています。地域包括支援センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門スタッフが、高齢者やその家族からの相談に応じています。介護や福祉、医療など、様々な面から総合的にサポートしてくれるのが特徴です。

 

介護疲れで悩んでいる場合も、家族の立場から相談に乗ってもらえます。介護サービスの利用方法や介護技術の指導、介護者同士の交流会の案内など、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。身近な相談窓口として、まずは地域包括支援センターに連絡を取ってみるのがおすすめです。

住んでいる自治体

介護保険の認定申請や介護サービスの利用に関することは、住んでいる自治体の介護保険課や高齢者福祉課が担当しています。これらの部署では、家族の介護で悩んでいる人の相談にも乗ってくれます。例えば、要介護認定の申請方法がわからない、介護保険制度について知りたい、介護サービスの利用の仕方を教えてほしいといった質問に丁寧に対応してくれるでしょう。

 

自治体によっては、介護に関する電話相談窓口を設けているところもあります。介護の悩みを話したいけれど、直接出向く時間がないという人は、電話相談を利用するのもよいでしょう。まずは自治体のホームページなどで、介護に関する相談窓口を確認してみてください。

ケアマネジャー

介護保険の認定を受けて介護サービスを利用している場合は、ケアマネジャーに相談するのも一つの方法です。ケアマネジャーは、要介護者や要支援者が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアプランの作成やサービス事業者との連絡調整を行う専門職です。介護の現場を熟知しているため、家族の悩みにも親身になって対応してくれます。

 

介護疲れの相談を受けたケアマネジャーは、利用者の状態に合わせてケアプランの見直しを提案してくれるかもしれません。デイサービスやショートステイなど、介護者が休息を取れる介護サービスの利用を勧めてくれる場合もあるでしょう。ケアマネジャーは、介護者の立場に立って一緒に解決策を探ってくれる心強い味方です。抱えている悩みを相談して、支援を求めてみるとよいでしょう。

医療機関の相談先

病気やケガが原因で介護が必要になった場合は、医療機関の相談窓口も心強い味方になります。例えば、医療ソーシャルワーカーは、療養中の患者さんやその家族の抱える心理的・社会的な問題の解決をサポートしてくれる専門職です。退院後の生活について不安を感じている介護者の相談にも乗ってくれます。

 

医療ソーシャルワーカーからは、介護保険制度の利用方法や介護サービスの種類、利用できる施設など、介護に必要な情報を教えてもらえるでしょう。リハビリの方法や福祉用具の利用など、医療的なアドバイスがもらえることもあります。

 

また、認知症の人を介護している家族は、認知症疾患医療センターに相談するのもおすすめです。認知症に詳しい専門医や看護師、精神保健福祉士などが対応してくれるので、認知症ならではの介護の悩みを相談しやすいでしょう。

3介護疲れの負担を軽減するには

介護を行う中で、身体的・精神的な疲労が蓄積し、やがて「介護疲れ」という状態に陥ってしまうことがあります。介護疲れを放置してしまうと、介護の質が低下するだけでなく、介護者自身の心身の健康にも悪影響を及ぼします。介護を長く続けるためには、介護者自身が疲れを軽減し、心身ともに健康な状態を保つことが大切です。

 

ここからは、介護疲れの負担を軽減するための具体的な方法を紹介します。一人で抱え込まずに、周囲のサポートを上手に活用しながら、介護生活に取り組んでいきましょう。

悩みを相談しサポートを受ける

介護の悩みを一人で抱え込んでしまうと、ストレスが増大し、介護疲れに拍車がかかってしまいます。介護の悩みは、家族や親族、友人など身近な人に打ち明けるのがよいでしょう。自分の気持ちを言葉にすることで、モヤモヤした感情が晴れることもあります。

 

また、すでに紹介したような介護の相談窓口を利用するのもおすすめです。専門家から介護の方法や利用できる制度についてアドバイスをもらえるので、悩みの解決につながることが多いです。

 

介護者同士の交流会に参加するのも効果的です。同じ立場の人と悩みを共有し、情報交換することで「自分だけじゃない」と感じられ、心が軽くなるはずです。介護の悩みを一人で抱え込まずに、周囲の人に相談してサポートを受けることが重要です。

自分がリラックスできることをする

介護は1日24時間体制で行う必要があり、常に要介護者のことを考えていなければならないため、心身ともに休まる暇がありません。介護者がリラックスできる時間を作ることは、介護疲れの軽減につながります。

 

例えば、マッサージグッズを使って体の凝りをほぐしたり、アロマグッズで心を落ち着かせたりするのもよいでしょう。好きなドラマや音楽、本などに没頭するのも効果的です。また、ヨガや瞑想など、リラックスできる習い事を始めるのもおすすめです。介護から離れた時間を過ごすことで、気分転換になります。

 

たとえ短い時間でも、自分のための時間を作ることを習慣づけましょう。心に余裕ができれば、介護もより前向きに取り組めるはずです。

介護保険サービスの利用や見直しをする

介護保険サービスを利用することで、訪問介護やデイサービスなど、プロの手を借りながら介護を行うことができます。例えば、ホームヘルパーに家事援助を頼めば、家事の負担を減らすことができます。また、訪問入浴介護を利用すれば、入浴介助の手間を省くことができるでしょう。

 

要介護者の状態に変化があった場合は、ケアマネジャーに相談して、現在の状況に合ったサービス内容に見直すことも大切です。介護保険サービスを上手に活用しながら、できるところは外部に任せるという発想を持つことが、介護疲れの軽減につながります。

レスパイトケアでリフレッシュする

レスパイトケアとは、「介護者が一時的に介護から解放され、休息や気分転換を図ること」を指します。介護保険サービスの中には、デイサービスやショートステイといった、レスパイトケアにつながるサービスがあります。

 

デイサービスは日帰りのサービスなので、日中は自由な時間を持つことができます。ショートステイは数日間施設に宿泊するサービスで、その間は介護から完全に離れることができるでしょう。レスパイトケアを定期的に利用して、心身をリフレッシュすることが介護疲れの防止に役立ちます。

 

年に1回の旅行や趣味の時間など、介護から離れてリフレッシュする計画を立てておくのもおすすめです。

民間の介護サービスを利用する

介護保険サービスは公的なサービスであるため、時間帯や利用日に制限があることが多いです。特に、年末年始や祝日など、公的サービスが利用しにくい場合は、民間の介護サービスの出番です。介護保険サービスでカバーできない部分を、民間の介護サービスを使って補完することができます。

 

例えば、イチロウは介護保険では対応できない、あらゆる介護ニーズに応える民間の介護サービスです。イチロウは、採用率8%の厳しい条件をクリアした介護士が在籍します。介護保険では対応できない、あらゆる介護ニーズを24時間365日体制でサポートしています。外出同行や家事代行、重度の方の介護まで幅広く対応可能です。

 

オンラインレポートでサービス内容を報告するため、遠方から家族の介護をしている場合でも安心して利用できます。要介護認定を受けていない場合や、介護保険の限度額を超えてしまう場合にも柔軟に対応してくれるのが魅力です。介護疲れの軽減のために、ぜひ一度イチロウの利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

4まとめ

介護は誰にでも起こりうる「疲れ」です。あなた一人で頑張る必要はありません。周囲の支援を上手に活用しながら、介護者自身の心身の健康を大切にしてください。介護者の心身の健康なくして、良質な介護は望めません。介護疲れを感じたら、一人で抱え込まずに周囲に助けを求めることが何より大切です。

 

紹介した介護疲れの軽減法を参考に、介護者の方が少しでも元気に前向きに介護と向き合えることを願っています。

あなたの大切な家族を支えるためにも、まずはご自身の健康管理を優先してください。周囲の協力を得ながら、介護生活を送っていきましょう。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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