介護にまつわるお役立ちコラム

認知症による介護拒否への対応とは|原因とケース別の対応例も紹介

2024年07月05日

認知症の方の介護をしていて、せっかくの食事を食べてくれなかったり、お風呂に入ることを嫌がられたりしたことはありませんか?大切な人のためを思っての行動なのに、自分が否定されているようで悲しく、つらい気持ちになりますよね。でも、認知症の方にはそれぞれ介護を拒否する理由があるのです。

 

本記事では、認知症による介護拒否が起きる原因と、ケースごとの適切な対応方法をわかりやすく解説します。介護に悩まれている皆さまが前を向いて介護に取り組めるよう、ぜひ最後までお読みください。きっと認知症の方への理解が深まり、介護へのヒントが見つかるはずです。

1介護拒否の原因|認知症も起因する

介護を必要とする高齢者の中には、デイサービスなどの介護サービスを拒否する方がいます。特に認知症を発症している場合、症状によってはさまざまな介護を拒否することがあります。ここでは、認知症が原因で起こりうる介護拒否について詳しく解説します。

認知症による認知機能低下

認知症による認知機能の低下は、食事や服薬などの日常的な行為に対する拒否にもつながります。例えば、食事の必要性や服薬の意味が理解できなくなり、食事や薬を拒否するようになるケースです。認知機能の低下により、本人にとって必要なケアであっても拒否してしまうことがあるのです。

介護されることの恥ずかしさ

認知症の方の中には、介護を受けることに対して恥ずかしさを感じ、拒否する人もいます。排泄や入浴の介助など、プライベートな場面での介護に抵抗を示すことがあり、特に異性の介護者に対してその傾向が強くなります。介護者が本人の羞恥心に配慮せず、一方的に介助を進めると、拒否はさらに強くなってしまいます。

高いプライドや自信喪失による心苦しさ

「人に頼るくらいなら」と、他者の助けを拒むケースもあります。元々自立心が強く、プライドが高い人に多い傾向です。認知症になって自分でできないことが増えると、自信を失い、情けなく感じたり申し訳ない気持ちになったりします。介護に対する拒否は、そうした心苦しさの表れかもしれません。

自分の自由に行動できないことのストレス

認知症の人は、介護を受けることで自分の思い通りに行動することができなくなります。食事や入浴のタイミング、その方法など、多かれ少なかれ我慢しなくてはならない部分が出てきます。自由に振る舞えないことでストレスが蓄積し、介護全般に対する拒否として表面化することがあります。

新しい環境に適応できないストレス

施設入所などで環境が変わることは、認知症の人にとって大きなストレス要因になります。食事の時間や回数、入浴の方法など、今までの生活習慣と異なる部分に適応できず、不満を感じることも。こうした環境の変化についていけないことが、介護サービス拒否の一因となるのです。

2介護拒否のケースと対応例

認知症の人の介護拒否は、さまざまな場面で起こります。入浴や着替え、食事、服薬、外出などを嫌がるケースがよく見られますが、それぞれどのような理由で拒否するのでしょうか。ここでは、代表的な介護拒否のケースと、それぞれの対応方法を具体的に解説します。

入浴拒否|お風呂に入りたがらない

認知症の人が入浴を嫌がる理由としては、湯船につかることの必要性が理解できなかったり、上着を脱ぐことへの恐怖心を抱いたりすることが考えられます。また、裸を見られる羞恥心から入浴介助を拒否するケースもあります。

 

対応としては、本人の入浴習慣に合わせることが大切です。長湯が好きなら時間をかけて、シャワー派なら短時間で済ませるなど、柔軟に対応しましょう。異性介助を嫌がるようなら、同性の介助者が行うのも一案です。

着替え拒否|着替えを嫌がる

着替えを嫌がる認知症の人は、服を脱ぐ理由が分からず不安になっていることがあります。一方的に脱がせようとすると、拒否はさらに強くなります。

 

着替えの必要性を丁寧に説明し、納得してもらうことが大切です。急かさず、本人のペースに合わせて着替えを進めましょう。最後まで拒否する場合は、無理強いせず、別の機会を探るのも一つの方法です。

食事拒否|食事を取りたがらない

食事の必要性が理解できなくなり、食事を拒む認知症の人もいます。食欲がないのに無理に食べさせると、かえって食べる意欲を失ってしまいます。

 

食事を勧める際は、強制するのではなく、本人の空腹のサインを見逃さないことが大切です。食器や献立など、食事の環境を工夫するのも効果的です。どうしても食べない場合は、少量でも栄養価の高いものを提供するなど、柔軟に対応しましょう。

服薬拒否|薬を飲まない

服薬の意味が分からなくなり、薬を飲みたがらない認知症の人への対応は慎重に行う必要があります。

 

まずは飲み忘れを防ぐため、服薬のタイミングを日課に組み込むことが大切です。嚥下が難しいようなら、薬の形状を変更してもらうのも一案です。

 

どうしても飲めない場合は、無理に飲ませるのではなく、医師に相談しましょう。飲み方を工夫したり、薬を変更したりするなど、服薬を継続するための方法を探ってもらえます。

外出拒否|デイサービス施設などへ外出拒否

デイサービスなどへの外出を嫌がる認知症の人は、行き先や理由が分からず不安を感じているのかもしれません。

 

行く前から丁寧に説明し、イメージしやすいように写真などを活用するのが効果的です。いつもと同じ時間、同じ順序で準備を進めるのもポイントです。

 

それでも行きたがらない場合は、本人の希望を尊重し、時間をおいてから声をかけてみましょう。。デイサービスのスタッフとも情報を共有し、安心して通えるよう努めましょう。

 

以上のように、認知症の人の介護拒否には、それぞれ理由があります。一つ一つのケースに応じて、本人の気持ちに寄り添いながら対応していくことが何より大切だと言えるでしょう。

3介護拒否への対応のポイント

認知症の人の介護を行う上で、拒否への適切な対応は欠かせません。しかし、認知症ゆえの言動に戸惑い、つい感情的になってしまうこともあるでしょう。ここでは、介護拒否への対応のポイントを4つご紹介します。認知症の人に寄り添い、適切なタイミングでケアを行うためのヒントが見つかるはずです。

本人に寄り添う

介護拒否への対応で何より大切なのは、本人の意思を尊重し、その気持ちに寄り添うことです。なぜ拒否するのか、本人の言葉に耳を傾けましょう。思いを受け止め、共感することで、拒否の原因が明らかになることもあります。

 

その上で、本人が納得できる方法を一緒に探っていくのが得策です。

介護するタイミングを改める

認知症の人の中には、体調や気分によって介護の受け入れ方が変わる人もいます。

 

無理強いはせず、本人の様子を見極めながら、介護を受け入れやすいタイミングを見計らうことが大切です。たとえば、あまり調子が良くないにもかかわらず入浴するように言われても、拒否してしまうのは無理もありません。、様子を見極め、1日の中で比較的協力的な時間帯を見つけ、そこに介護の場面を設定するのも一案です。

介護する前の説明をしっかり行う

認知症による記憶障害のために、これから何をされるのか分からず不安になり、拒否することがあります。

 

介護の直前に、これから行うことを具体的に説明し、理解を促すことが大切です。同じ説明を何度か繰り返すことで、スムーズに介護に入れる場合もあります。声のトーンにも気を配り、穏やかに話しかけるよう心がけましょう。

専門家に頼る

認知症の人の介護拒否に家族だけで対応するのは容易ではありません。 対応に苦慮する場合は、かかりつけ医や介護施設のスタッフなど、専門家に相談するのも一つの方法です。

 

認知症ケアのプロならではの知識と経験から、適切なアドバイスがもらえるはずです。 サービス担当者会議などで情報を共有し、より良い支援方法を検討するのも効果的と言えるでしょう。

 

介護拒否は、認知症の人と介護者双方にとってストレスフルな出来事です。しかし、認知症の人の心情を理解し、適切に対応することで、乗り越えていくことができます。

 

一つひとつのケースに丁寧に向き合い、周囲の支援を上手に活用しながら、認知症の人が穏やかに暮らせる環境を作っていきましょう。

 

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4まとめ

認知症による介護拒否は、介護者にとって大きな悩みの種ですが、その背景には必ず理由があります。認知症の人の心情を理解し、適切な対応を心がけることが重要です。

 

本記事では、介護拒否の原因や具体的なケース、対応のポイントを詳しく解説しました。介護拒否に直面した際は、まず本人の気持ちに寄り添い、専門家の力も借りながら、粘り強く向き合っていくことが求められます。介護拒否を乗り越えることで、認知症の人もご家族も、より穏やかで充実した日々を送ることができるでしょう。

監修者情報

所属:介護老人保健施設メディトピア小諸

経歴:2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務の傍ら、ライターとしても活動している。医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

鈴木康峻(理学療法士)
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