介護にまつわるお役立ちコラム
介護保険は生活保護受給者も利用できるの?
住宅や施設で介護サービスを受ける、必要な介護用品をそろえる、自宅をバリアフリーにするなど、介護を必要としている人の生活を充実させるためにはコストがかかります。そこで知っておきたいのが、介護保険による給付制度がある点です。幅広い人が利用できる制度ではあるものの、現在生活保護を受給している方にとっては「自分も利用できるのだろうか」と不安に感じてしまうことでしょう。そこで今回は生活保護受給者が利用できる介護保険制度について詳しく解説します。自分や家族の介護について不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
生活保護受給者でも介護保険サービスを利用することは可能です。ただし、生活保護を受給していない人と保険料の納め方や自己負担の割合などが異なります。生活保護受給中で介護保険の利用を希望している方は、事前に情報を確認することや役所に相談しておきましょう。ここからは、生活保護受給者が受けられる介護保険サービスの範囲や保険料などについて以下3つの項目に分けて解説します。
①65歳以上と40歳~64歳に生活保護受給者も分けられる
②介護や生活、医療などの扶助が受けられる
③生活保護受給者も介護保険料を支払う必要がある
それぞれの項目について具体的に見ていきましょう。
一般的に、介護保険を利用できる人は、以下2つのグループに分けられます。
- 65歳以上の第1号被保険者
- 40歳~64歳の第2号被保険者
まず、65歳以上が加入できる第1号被保険者は、手続きをおこなうことによって給付の範囲内で介護サービスを利用できます。次に、40歳~64歳が加入できる第2号被保険者は、「対象の疾病(特定疾患)」にかかり介護が必要な状態だと認定されることを条件としてサービスを利用できます。ここでいう、対象の疾病(特定疾患)とは変形性関節症や関節リウマチ、パーキンソン病、末期がん、早老症などを含む以下の16種類で、いずれかに当てはまることが条件です。特定疾病は、以下の16種類です。
- 回復の見込みがないと診断されたがん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗しょう症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 多系統萎縮症
- 早老症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 変形性関節症
生活保護受給者も同じように2つのグループに割り振られ、条件を満たせば介護サービスを利用できます。ただし40歳~64歳の生活保護受給者は正確には第2号被保険者とは呼ばれず、「みなし2号」と呼ばれます。第1号被保険者はサービスを利用したいときに、第2号被保険者(みなし2号)は特定疾病によって介護が必要と認定されたときに「介護保険被保険者証」を自治体で発行してもらう必要があります。
一般的には介護保険の申請をおこなうと、介護や生活、医療面で必要な扶助を受けられます。具体的には、必要に応じて以下のようなサポートを受けられます。
- 住宅で入浴や食事、掃除などをサポートしてもらう
- 送り迎え付きの介護施設でデイサービスを受ける
- 介護が必要な期間だけ施設に滞在してサービスを受ける
- 自宅に手すりを付ける工事費用を支援してもらう
- 日常生活を送るために必要な介護用品の購入を支援してもらう
- 自宅で専門的なリハビリを受ける
必要なサービスは身体的な状態や疾病によって異なるため、ケアマネージャーに相談して最適なプランを提案してもらう必要があります。生活保護を受給しているからといって利用できるサービスに制限がかかることはなく、生活保護受給者ではない人と同じサービスを必要な範囲内で利用できます。
介護保険を利用するには保険料を支払わなければなりません。基本的に40歳から加入・支払いがスタートし、64歳までは公的医療保険に上乗せして納めるのが一般的です。65歳以上になると年金から保険料分が差し引かれる形で納めます。一部の生活保護受給者も介護保険料を支払う必要はありますが、受給していない人とは納め方に違いがあります。まず40歳~64歳(みなし2号)の生活保護受給者は介護保険料を納付できず、介護認定を受けた段階で生活保護費の「介護扶助」制度を活用してサービスを受けます。一方65歳以上の第1号被保険者は生活保護を受給していない人と同じように保険料を納めなければなりませんが、金額自体は安く抑えられます。
これまで記したように、生活保護受給者が介護保険制度を利用するにはグループの分け方や保険料の納付方法、金額などが異なるため、事前に制度の内容をチェックしておくことが大切です。ここからは、65歳以上の第1号被保険者と65歳未満の2グループに分けて、それぞれの介護保険制度についてより詳しく解説します。生活保護受給中で介護が必要になったときの費用負担が不安な方は、ぜひ参考にしてみてください。
65歳以上の生活保護受給者は、受給者ではない人と同じく第1号被保険者に認定されます。第1号被保険者は年齢の条件をクリアするだけで対象となる点が特徴です。要支援や要介護の認定を受けたあとに必要な手続きをすることによって、限度額の範囲内で希望する介護サービスを利用できます。要支援や要介護の認定を受けた原因は関係ないため、病気やケガで歩行が困難になった、認知症で通常の生活がおこなえなくなったなどさまざまな理由で活用されています。どのような介護が必要なのか判断できない場合、地域を担当しているケアマネージャーに介護を受ける本人もしくは家族が相談をしながらサービス内容を決定することも可能です。
生活保護受給中の第1号被保険者は、介護保険料を生活保護費のなかから支払います。ただし生活扶助と呼ばれる予算のなかに保険料分が追加されるため、実質は負担なしで介護保険に加入できます。保険料の支払いで生活が困窮することを不安に感じていた方は、介護保険料分が新たに支給されることを知っておきましょう。保険料は、支給される生活保護費から差し引かれる方法で支払われるのが基本です。そのため納付を忘れたり、保険料分の予算をほかの費用に使い込んでしまったりする心配は原則不要です。生活保護の受給開始のタイミングによっては差し引く手続きが間に合わず、一時的に現金を自己納付をする可能性もあります。
また、生活保護受給中の第1号被保険者が支払う介護保険料は通常よりも少なく設定されます。通常、介護保険料の金額は世帯年収などによって計算方法が異なります。生活保護受給中の第1号被保険者は所得段階区分が第1段階となるため、「基準額×0.25」で算出します。
40歳~64歳までは通常第2号被保険者に該当しますが、生活保護受給者の場合は「みなし2号」と呼ばれるグループに該当します。みなし2号の被保険者は第2号被保険者と同様、以下2つの条件に全て当てはまることによって介護保険利用の対象となります。
国が指定する16種類の疾病(特定疾病)いずれかを患っていること
要介護の認定を受けること
みなし2号の場合も、特定疾病による要介護の認定を受けたうえで必要な手続きをすれば第1号被保険者と同じく限度額内の介護サービスを利用できます。病気によって誰かのサポートがないと生活が難しいと判断した場合、1人で悩まずに主治医や福祉事務所の担当者に相談してみましょう。生活保護を受給していない人は40歳になった月から介護保険料を納めることが義務化されますが、生活保護受給者は納付できません。そもそも生活保護受給者に割り当てられる毎月の支給額は、「生活扶助」や「住宅扶助」など項目ごとに予算が決められています。65歳未満の生活保護受給者は予算のなかに介護保険料分は含まれないため、支払う必要はありません。そのため、介護保険料を支払わなくても介護サービスを受けられる条件を満たせば自己負担なしで必要なサービスを利用できます。
生活保護受給者の場合は介護保険料分が支給額に上乗せされたり、納付が免除されたりなどの処置を受けられます。しかし生活保護受給の認定をもらえなかった低収入者の場合、どのように介護保険を利用したらよいのでしょうか。
生活保護を希望するほど生活が困窮している方は、「境界層措置」と呼ばれる制度があることを知っておきましょう。境界層措置は、介護保険料やサービスの利用料(施設の滞在費や食費など)を通常よりも減額してもらえる制度のことです。費用が足りないことが原因で必要な介護を受けられない人を少しでも減らすために作られた制度です。まず地域の福祉事務所で境界層措置の対象である証明書を発行してもらい、自治体に申請をおこなうことによって手続きできます。申請者の状況によっては、福祉事務所で生活保護の受給資格が却下された際に担当者から境界層措置について案内してもらえます。
今回は生活保護受給者の介護保険制度について解説しました。介護保険は、毎月保険料を納めることによって必要なときに適切な介護サービスを受けるための制度です。生活保護受給者の場合は毎月の保険料を負担せず、通常の被保険者と同じように適切な介護サービスを利用できます。
自分や家族の老後が不安な方、突然病気になって1人で生活していけるか不安な方は、生活保護受給者でも必要なサービスを安心して受けられる制度があることを知っておきましょう。また、生活保護の受給資格が得られずに困っている方は、境界層措置の制度を利用して通常よりも安く保険料やサービスの支払いができることを認識しておくことが大事です。介護保険について不明点がある方は、自治体や福祉事務所の担当者に相談してみてください。