介護にまつわるお役立ちコラム
アルツハイマー型認知症の症状とは?原因や治療法・介護での対応を解説

認知症の中でも最も多く見られるのが「アルツハイマー型認知症」です。記憶力が落ちたり、時間や場所の感覚がわからなくなったりするなど、少しずつ進んでいく症状が特徴であり、本人だけでなく支える家族にも大きな影響を与えます。とくに介護の現場では、症状の段階に応じた適切な対応や、感情に寄り添った接し方が求められます。また、介護保険を活用した支援や専門職によるケアも重要なポイントです。
本記事では、アルツハイマー型認知症の症状や原因、治療法に加え、日常の介護で役立つ対応方法や利用できる介護サービスまでを包括的に解説します。家族の介護負担を軽減し、本人の尊厳を保つための知識として、ぜひ参考にしてください。
1アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、脳の神経細胞が少しずつ壊れていき、脳全体が縮んで小さくなることで引き起こされる進行性の疾患です。
1906年にドイツの医学者A.アルツハイマー博士によって初めて報告されました。主な症状として記憶障害から始まり、見当識障害や判断力の低下など、日常生活に支障をきたすさまざまな症状が現れます。
発症年齢によって65歳以前の「早発性」と65歳以上の「晩発性」に分類され、男性より女性に多く見られるのが特徴です。アルツハイマー型認知症は他の認知症タイプとは異なる特徴や有病率を持っており、適切な理解と対応が求められます。
他の認知症との違い
アルツハイマー型認知症は記憶障害を主症状とし、特に最近あったことを覚えておくのが難しくなります。
他の主要な認知症との違いを理解することで、より適切なケアが可能になります。
認知症タイプ | 主な症状 | 進行の特徴 | 診断の特徴 |
アルツハイマー型 | 記憶障害が初期から顕著、時間や場所の見当識障害 | 緩やかだが着実に進行、3~15年かけて重度化 | 脳の萎縮(特に海馬)、アミロイドβの蓄積 |
レビー小体型 | 注意力・集中力の変動、幻視、パーキンソン症状 | 変動が大きく、良い日と悪い日の差が顕著 | レビー小体の存在、睡眠障害が初期から出現 |
血管性 | 突然の発症、部分的な麻痺や言語障害 | 段階的に進行、症状の安定期と悪化期が交互に現れる | 脳梗塞や出血の痕跡、高血圧などの危険因子 |
前頭側頭型 | 人格変化、社会的行動の異常、言語障害 | 緩やかに進行、若年での発症が多い | 前頭葉・側頭葉の萎縮、遺伝的要因が強い |
加齢による物忘れとアルツハイマー型認知症の違いは日常生活の中で見分けることができます。たとえば、食事について加齢による物忘れの場合は「昨日の夕食の献立」を忘れますが、アルツハイマー型の場合は「食事をしたこと自体」を忘れてしまいます。
認知症における有病率と割合
日本の認知症有病率は年々増加傾向にあります。2020年の調査によれば、65歳以上の高齢者における認知症患者数は約602万人で、有病率は16.7%に達しています。これは高齢者の約6人に1人が認知症を発症している計算になります。
認知症の中でもアルツハイマー型認知症は最も多く、全体の60%以上を占めていると報告されています。特に女性は男性より発症率が高く、年齢が上がるにつれそのリスクも増大します。
また、65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病の患者数は2020年時点で約3.57万人と推計されており、人口10万人あたり約50.9人の割合で存在しています。
2アルツハイマー型認知症の段階別症状

アルツハイマー型認知症は発症から終末期まで、症状が徐々に進行していく特徴があります。その進行は一般的に発症前期、初期(軽度)、中期(中等度)、後期(高度)の4段階に分けられますが、症状の現れ方や進行速度には個人差があります。中核症状とは脳の神経細胞の変性や脱落により生じる認知機能の障害で、記憶障害や見当識障害などが含まれます。
一方、BPSD(認知症の行動・心理症状)は周囲の環境や対応によって改善できる可能性がある症状です。アルツハイマー型認知症の各段階における特徴を理解することで、適切なケアや対応が可能になります。
段階 | 期間 | 主な症状 | 日常生活への影響 |
発症前期 | 発症の約10年前から | 物忘れ、抑うつ、不安感、睡眠障害 | 本人も周囲も気づきにくく、日常生活に大きな支障はない |
初期(軽度) | 発症から1~3年程度 | 近時記憶障害、時間の見当識障害、実行機能障害、睡眠障害 | 約束を忘れる、金銭管理が困難になるが、家族のサポートで自立生活は可能 |
中期(中等度) | 発症から5~9年程度 | 場所の見当識障害、遠隔記憶障害、失認、失行、失語、妄想 | 道に迷う、着替えや入浴に介助が必要、会話が困難になる |
後期(高度) | 発症から10年以上 | 人の見当識障害、鏡兆候、興奮や多動、意識障害、嚥下障害 | 家族の顔も認識できない、歩行困難、失禁、24時間の介護が必要 |
認知機能低下の進行パターン
アルツハイマー型認知症における認知機能の低下は、まず記憶障害、特に新しい出来事を覚えられない近時記憶の障害から始まります。その後、時間や場所がわからなくなる見当識障害、物事を順序立てて考えられなくなる実行機能障害へと進行します。
言語機能も徐々に低下し、初期は言葉が出てこない程度ですが、中期になると会話の理解自体が難しくなります。脳の萎縮は側頭葉内側の海馬から始まり、次第に広範囲に及びます。この進行速度には大きな個人差があり、生活習慣や合併症の有無によって変わってくるため、早期の対応が重要になります。
初期から気づくべきサイン
アルツハイマー型認知症の初期には、新しい情報を記憶できない近時記憶障害が顕著に現れます。たとえば、先ほど話した内容を忘れて同じ質問を繰り返したり、約束したことを完全に忘れたりしてしまうことが増えていきます。
また、日付や曜日、季節などの時間感覚が曖昧になる時間の見当識障害も見られます。料理の手順がわからなくなったり、買い物で計画的に商品を選べなかったりなど、複雑な行動が難しくなる実行機能障害も現れます。
これらの症状に加え、夜間の不眠や昼夜逆転などの睡眠障害も初期のサインとなるでしょう。家族は「もの忘れ」と「記憶障害」の違いに注意し、早期発見に努めることが大切です。
中期症状の特徴と見逃せない変化
アルツハイマー型認知症の中期になると、自宅近くでも道に迷うなど場所の見当識障害が顕著になります。若い頃の記憶や自分の生まれた場所など、長期記憶まで失われる遠隔記憶障害も進行します。日常的な動作が一人でできなくなる失行も見られ、着替えや入浴など基本的なセルフケアに介助が必要になるでしょう。
また、家族の顔がわからなくなる失認や、言葉が出てこない・理解できない失語症状も現れます。物盗られ妄想や作話(記憶の欠落を埋めるために作り話をする)なども多くなり、徘徊行動が見られるようになることもあります。この段階では日常会話も徐々に成立しなくなり、家族の精神的・身体的負担が大きくなるため、介護サービスの利用を検討すべき時期です。
後期症状と重度化したときの状態
アルツハイマー型認知症が後期に進行すると、家族の顔もわからなくなる人の見当識障害が深刻化します。鏡に映った自分を他人と認識する鏡兆候や、自分が誰なのかもわからなくなる自己認識の喪失も起こります。言語機能はさらに低下し、意味のある会話はほぼ不可能になります。
身体面では嚥下障害により食事が困難になり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。また、歩行困難や寝たきり状態になることで、褥瘡や拘縮などの合併症も生じやすくなります。この時期には興奮や多動、異食行動、弄便(排便物に触れたり、衣服などに塗ったりする行為)などの行動も見られ、24時間体制の専門的な介護が必要となるため、多くの場合、施設入所が検討されます。
3アルツハイマー型認知症の原因と危険因子

アルツハイマー型認知症の原因は完全には解明されていませんが、脳内での特定のタンパク質蓄積と神経細胞の変性が深く関わっていることがわかっています。脳の萎縮は症状が現れる数年前から始まっており、特に記憶をつかさどる海馬から変化が生じます。
発症リスクには年齢や遺伝的要因のほか、生活習慣や既往歴など複数の要因が関与しており、これらの一部は予防可能と考えられています。アルツハイマー型認知症の発症メカニズムと危険因子を理解することで、適切な予防策や早期対応につなげることが大切です。
発症メカニズムと脳の萎縮プロセス
アルツハイマー型認知症は脳の萎縮によって認知機能が低下する疾患です。この変化は側頭葉内側部、特に記憶形成に重要な海馬から始まります。MRIやCT検査では、MRIやCT検査では、記憶をつかさどる海馬やその周囲の領域に萎縮が見られ、診断の重要な手がかりになります。
神経細胞の減少と脱落は徐々に前頭葉や頭頂葉にも広がり、思考力や判断力の低下、空間認識の障害などさまざまな症状を引き起こします。この萎縮プロセスは症状が現れる約10年前から始まっていると考えられており、神経細胞の喪失が一定の閾値を超えると認知症の症状として顕在化します。早期発見のためには定期的な認知機能検査が重要となります。
アミロイドβとタウタンパク質の関係
アルツハイマー型認知症では、脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積して「老人斑」と呼ばれるシミのような構造を形成します。これに加え、神経細胞内のタウタンパク質が異常にリン酸化され、神経原線維変化を引き起こします。この2つの変化が神経細胞間の情報伝達を阻害し、やがて細胞死に至らせると考えられています。
「アミロイドカスケード仮説」では、アミロイドβの蓄積が最初に起こり、続いてタウタンパク質の異常、神経細胞死、認知機能低下という連鎖が進行すると説明されます。現在、これらのタンパク質を標的とした治療薬の研究が進められていますが、完全に進行を止める薬はまだ開発途上です。アミロイドβ蓄積は症状出現の10~20年前から始まっていると考えられています。
なりやすい人の特徴と予防できる危険因子
アルツハイマー型認知症の最大の危険因子は加齢です。遺伝的要因では、家族性アルツハイマー病が知られていますが、全体のごく一部です。多くは生活習慣や環境要因が複合的に関わる孤発性のケースとされています。
予防可能な危険因子としては、過度な飲酒や喫煙、運動不足、不健康な食生活が挙げられます。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も発症リスクを高めることが知られています。予防には次のような対策が効果的です。
- 適度な運動を習慣化する
- バランスの良い食事を心がける
- 過度な飲酒や喫煙を避ける
- 生活習慣病の管理を適切に行う
- 知的活動や社会的交流を積極的に持つ
今日から始められる予防策も多いため、発症リスクを抑えたい方はぜひ取り組んでみてください。
4アルツハイマー型認知症の診断と治療アプローチ

アルツハイマー型認知症の診断は、症状の観察や認知機能検査、脳画像検査など複数の方法を組み合わせて総合的に行われます。現在のところ完全に治癒させる治療法はありませんが、薬物療法によって症状の進行を遅らせたり、非薬物療法によって生活の質を向上させたりするアプローチが取られています。
早期発見・早期治療が重要であり、軽度の段階から適切な治療を開始することで、より長く自立した生活を送れる可能性が高まります。診断から治療まで、患者さんとご家族に寄り添った継続的なサポートが大切です。
診断のプロセスと認知機能検査の種類
アルツハイマー型認知症の診断は、まず詳細な問診から始まります。患者の症状や日常生活の変化、家族歴などを確認し、他の疾患との鑑別を行います。次に、認知機能検査が実施されます。代表的なものに「改訂長谷川式認知症スケール」があり、時間や場所の見当識、記憶力などを評価します。
また「MMSE(ミニメンタルステート検査)」では、言語機能や計算能力、図形模写など動作性の課題も含めた検査が行われます。画像診断では頭部MRIやCTで脳の萎縮を確認し、特に海馬の萎縮がアルツハイマー型認知症の特徴とされています。WHO(ICD-10)や米国精神医学会の診断基準に基づき、これらの結果を総合的に判断して診断が確定します。
薬物療法の現状と効果|進行を遅らせる治療法
アルツハイマー型認知症の診断は、まず詳細な問診から始まります。患者の症状や日常生活の変化、家族歴などを確認し、他の疾患との鑑別を行います。次に、認知機能検査が実施されます。代表的なものに「改訂長谷川式認知症スケール」があり、時間や場所の見当識、記憶力などを評価します。
また「MMSE(ミニメンタルステート検査)」では、言語機能や計算能力、図形模写など動作性の課題も含めた検査が行われます。画像診断では頭部MRIやCTで脳の萎縮を確認し、特に海馬の萎縮がアルツハイマー型認知症の特徴とされています。
WHO(ICD-10)や米国精神医学会の診断基準に基づき、これらの結果を総合的に判断して診断が確定します。
非薬物療法と生活習慣改善によるアプローチ
薬物療法と並行して行われる非薬物療法も重要な治療アプローチです。認知リハビリテーションでは、音読や計算ドリルなどを通じて脳の活性化を促します。回想法は昔の思い出話に花を咲かせることで脳に刺激を与え、自尊心の回復にも効果があります。
身体面では、姿勢改善や歩行安定のための運動療法が有効で、転倒予防にもつながります。また、音楽療法や園芸療法は感情の安定を図り、QOL(生活の質)向上に役立ちます。日常生活では、できる範囲で洗濯や料理などの家事を続けることで自発性の維持につながります。
環境面では、わかりやすい表示や安全な動線確保など、認知症の方が混乱しにくい工夫も大切です。これらの取り組みにより、薬物療法だけでは得られない総合的な効果が期待できます。
5アルツハイマー型認知症の介護と向き合い方

アルツハイマー型認知症の方を介護する上で最も大切なのは、症状を正しく理解し、適切に対応することです。記憶障害や見当識障害といった症状に戸惑うことも多いでしょうが、患者さんの尊厳を尊重しながら寄り添う姿勢が基本となります。日常生活でのケアや環境調整、コミュニケーションの工夫など、症状に合わせた対応を心がけることで、本人の不安や混乱を軽減し、介護者の負担も和らげることができます。
ここでは家族ができる具体的なケア方法と、症状別の対応のポイントについて解説します。
家族ができるケアと接し方のポイント
アルツハイマー型認知症の方への家族のケアでは、薬の服用管理を確実に行い、同じ話を繰り返されても我慢強く聞く姿勢が大切です。間違いを強く否定せず、さりげなく正しい情報を伝えましょう。物忘れのサポートにはメモやカレンダーを活用し、生活環境も安全に配慮します。本人のペースを尊重し、不快な言葉を使わないことで信頼関係を築きます。
症状別の対応方法と介護のヒント
アルツハイマー型認知症の症状別対応では、記憶障害にはメモの活用、見当識障害には時計やカレンダーの設置が有効です。物盗られ妄想などには否定せず寄り添い、徘徊には安全確保を優先します。視界の狭さを理解し、見えやすい位置に物を置き、味覚の変化に応じて時に濃い味の食事を取り入れると効果的です。
中核症状 | 対応方法 |
記憶障害 | メモやカレンダーで視覚的に情報を残す。同じ質問にも穏やかに答える。 |
見当識障害 | 時計やカレンダーを見やすい場所に設置。場所の名前を具体的に伝える。 |
失行 | 複雑な動作は細かく分けて説明。一緒に動作を始める手助けをする。 |
失認 | 物の名前と用途を簡潔に説明。視覚以外の感覚も活用してもらう。 |
失語 | ゆっくり簡潔に話す。非言語コミュニケーション(ジェスチャーなど)も活用。 |
記憶障害・見当識障害への具体的サポート
記憶障害への対応では、予定をメモに書いて目立つ場所に貼ったり日課表を作成したりします。時間の見当識障害には日付と曜日がわかるカレンダーを設置し、場所の見当識障害にはトイレや寝室に名称を表示すると効果的です。家族写真にラベルを付けたアルバムも記憶補助に役立ちます。混乱している本人を焦らせない安心感のある接し方が大切です。
6介護保険サービスとプロの介護サポート

アルツハイマー型認知症の介護では、介護保険サービスの活用と専門的なサポートが欠かせません。認知症の症状が進行すると、家族だけでの介護には限界が生じるため、適切なタイミングで外部の支援を取り入れることが重要です。
介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要がありますが、認知症の場合は症状の特性から適切な評価が難しい面もあります。
また、24時間対応の訪問介護サービスや専門職によるケアを組み合わせることで、より充実した介護環境を整えることができます。家族の負担軽減と本人のQOL向上の両立を目指した介護サポートの選び方について解説します。
要介護認定の仕組みとアルツハイマー型認知症の場合
アルツハイマー型認知症の方が介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。申請は本人または家族が市区町村の窓口で行いますが、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談すれば、ケアマネジャーが無料で代行申請してくれます。
認定調査では、認知症特有の記憶障害や見当識障害などの症状が評価され、これらの状態によって要支援1・2または要介護1~5に分類されます。アルツハイマー型認知症の場合、初期は要支援や要介護1程度ですが、進行に伴い要介護度が上がることが一般的です。
症状の進行状況に合わせたサービス選択が重要で、定期的な再認定によってサービス内容を見直すことが大切です。認知症の症状は日によって変動することもあるため、日頃の状態を記録しておくと適切な認定につながります。
24時間対応の訪問介護サービス「イチロウ」の活用法

「イチロウ」は、24時間対応の介護保険外訪問介護サービスで、アルツハイマー型認知症の方の介護に幅広く活用できます。介護保険では対応できない部分をカバーし、全額自己負担ですが介護保険サービスと併用可能です。
「介護コース」では、移動介助、排泄介助、食事介助、着替えのお手伝い、入浴・清拭介助、服薬管理など、在宅生活に必要な支援をワンストップで提供します。医療行為が必要な場合は「看護コース」でバイタル測定、医療処置、服薬管理などのサポートも受けられます。
利用の流れは、まず電話やWEBで相談し、会員登録後にサービスを予約、確定連絡を受けてからサービスを利用します。担当ヘルパーの訪問後はレポートで支援内容を確認でき、家族の仕事やプライベートと介護の両立を実現します。
症状の度合いに関わらず認知症の方への対応が可能で、あらゆる介護ニーズに応える高い手配率でサポートしています。
専門職による認知症ケアの重要性と効果
アルツハイマー型認知症のケアでは、専門知識を持つプロフェッショナルの関与が非常に重要です。認知症ケアの専門職は、症状の正確な理解に基づいた適切なコミュニケーション技術や環境調整のノウハウを持っており、これにより本人の混乱や不安を軽減できます。
専門的なケアは認知症の方のQOL向上に直結し、残存能力を最大限に活かした自立支援が可能になります。また、家族にとっても介護のノウハウを学べるだけでなく、心理的・身体的負担の軽減につながります。24時間体制のケアサービスを導入することで、夜間の見守りや緊急時の対応も可能となり、長期的な在宅生活継続の土台を築けます。
さらに、専門職による適切なケアは転倒や誤嚥性肺炎などの合併症予防にも効果的で、結果として認知症の進行抑制にもつながります。専門職を選ぶ際は、認知症ケアの経験や資格、コミュニケーション能力を確認することが大切です。
7まとめ
アルツハイマー型認知症は、記憶障害から始まり徐々に進行する最も一般的な認知症です。脳内にアミロイドβが蓄積し、神経細胞が減少することで発症し、初期・中期・後期と症状が変化していきます。完全に治す薬はまだありませんが、早期発見・早期治療により進行を遅らせることは可能です。介護においては、本人の尊厳を尊重しながら、記憶障害や見当識障害などの症状に合わせた対応が重要です。家族だけで抱え込まず、介護保険サービスや民間の介護サポートも活用し、介護者自身の生活も大切にしながら、長期的な視点で向き合うことが大切です。
8よくある質問
アルツハイマー型認知症について、ご家族の方からは初期症状の見分け方や進行速度、遺伝の可能性、予防方法などについて多くのご相談をいただきます。また、実際に介護が始まった場合の対応方法や利用できるサービスについても、具体的な情報を求める声が寄せられています。
ここでは、アルツハイマー型認知症に関してよく寄せられる質問についてお答えします。
Q1. 物忘れとアルツハイマー型認知症の違いはどう見分けられますか?
加齢による物忘れとアルツハイマー型認知症では、忘れ方に大きな違いがあります。加齢による物忘れの場合は「昨日の夕食の献立」を忘れても「食事をしたこと」は覚えていますが、アルツハイマー型認知症では「食事をしたこと自体」を忘れてしまいます。また、約束を忘れることが頻繁になったり、同じ質問を繰り返したり、日付や曜日がわからなくなったりする症状が見られる場合は、医療機関への相談をおすすめします。単なる物忘れとは異なり、日常生活に支障をきたす程度の記憶障害が継続する場合は早期受診が重要です。
Q2. アルツハイマー型認知症はどのくらいの速度で進行しますか?
アルツハイマー型認知症の進行速度には大きな個人差がありますが、一般的には発症から3~15年かけて重度化していきます。初期(軽度)は発症から1~3年程度で、中期(中等度)は5~9年程度、後期(高度)は10年以上経過した状態とされています。ただし、生活習慣や合併症の有無、適切な治療やケアを受けているかどうかによって進行速度は変わります。早期発見・早期治療を行うことで進行を遅らせることが可能ですので、気になる症状がある場合は早めに専門医に相談することが大切です。
Q3. アルツハイマー型認知症は遺伝しますか?
アルツハイマー型認知症の大部分は孤発性で、明確な遺伝はしません。ただし、全体のごく一部には家族性アルツハイマー病があり、特定の遺伝子変異が関わる場合があります。家族に認知症の方がいても必ず発症するわけではありませんが、家族歴がある場合は発症リスクがやや高くなる可能性があります。重要なのは遺伝的要因よりも、生活習慣病の管理、適度な運動、バランスの良い食事、知的活動や社会的交流などの予防可能な要因に取り組むことです。
Q4. アルツハイマー型認知症を予防する方法はありますか?
完全な予防法は確立されていませんが、発症リスクを下げる効果的な方法があります。適度な運動習慣、バランスの良い食事、禁煙・節酒が基本となります。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を適切に管理することも重要です。知的活動(読書、パズル、楽器演奏など)や社会的交流を積極的に持つことも脳の健康維持に効果的とされています。これらの対策は今日からでも始められるため、早めに取り組むことをおすすめします。