介護にまつわるお役立ちコラム
訪問介護の報酬はどれくらい?サービス内容と注意点は?
高齢化によりADLが低下すると、自分一人では生活を維持するのが難しくなり、誰かの介護が必要となります。高齢者の介護を家族だけでするのが難しい場合、訪問介護を利用することが多いですが、どんなシステムなのか分かりにくいです。この記事では、訪問介護の利用料、サービス内容、注意点をまとめて説明いたします。これを読めば、訪問介護の利用を開始する際に、どんなサービスを希望するか、どこの事業所にお願いするのが良いか判断しやすくなります。
高齢化により、自分一人だけで生活するのが難しくなった要介護者は、俗にいう「ヘルパーさん」に手助けをしてもらうことがあります。介護保険では、ヘルパーさんのことを「訪問介護員」と呼び、訪問介護員による介護を「訪問介護」と呼びます。要介護者とは、介護保険で要介護1~5と診断された人のことです。年齢は原則65歳以上となります。訪問介護員は、介護に関する指定の研修を修了した人であり、次のような人を含みます。
- 介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者
- 生活援助従事者研修修了者
- 居宅介護又は重度訪問介護を提供している者
- 旧訪問介護員1級又は旧2級課程修了者
訪問介護は、法律でサービスの内容が決められています。ですから、家政婦とは違い、提供できないサービスもあります。また、医療従事者ではありませんので、医療行為はできません。訪問介護にかかる費用は、介護保険法により決まっていますが、利用者は所得に応じて全費用の1~3割を自己負担し、残りの7~9割は介護保険から支払われます。訪問介護を提供する事業所は、まず介護支援専門員(ケアマネジャー)から相談・紹介をされ、計画を元に利用者の状態、状況に併せて訪問介護サービスを提供していきます。
出典:「訪問介護の概要 – 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000608309.pdf)」
訪問介護のサービスは、利用者が希望すれば何でもやってもらえるわけではなく、厚生労働省の決めた法律により、サービス提供できる内容に規定があります。ですから、あらかじめ介護支援専門員(ケアマネジャー)、サービス提供者と相談して、受けるサービス内容を決めておくことが必要です。サービス内容は、大きく分けて身体介護サービス、生活援助、通院等乗降介助の3種類があります。
まず、一番基本的な介護サービスとして、「身体介護」があります。高齢化や病気が元になって、身体の動きが悪くなった時、その状態で生活をしていく必要がでてきます。その生活を支える上で身体介護は非常に重要となります。身体介護サービスには次の項目があります。
- 生きていくうえで不可欠な排泄や食事の介助
- 身体を清潔にするための清拭・入浴あるいは身体整容
- 自分で動くのが困難となった人のために体位変換、移動・移乗介助
- 病院等に通院するときの外出介助
- 寝起きするのも困難な場合、起床及び就寝介助
- 自分だけでちゃんと薬がのめない人には服薬介助
日常生活を営む上では、身体介護をしてもらうだけでなく、身の回りのことで自分一人でできなくなったことへの支援も必要になります。そんな時は、日常の生活を支えるための生活援助サービスを依頼しましょう。生活援助サービスには次の項目があります。
- 居室内やトイレ、卓上等の清掃、ゴミ出し等の掃除
- 洗濯機または手洗いによる洗濯、物干し、洗濯物の取り入れと収納、アイロンがけ
- 利用者不在のベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等のベッドメイク
- 夏・冬物等の入れ替え等の衣類の整理
- ボタン付け、破れの補修等被服の補修
- 一般的な調理、配下膳
- 日常品等の買い物
- 薬の受け取り
利用者が病院等に通院するとき、利用者の自家用車あるいはタクシーへの乗り降りを介助するサービスになります。また、受診等の手続き、移動等の介助も受けられます。気をつけなければならない点は、訪問介護員は車の運転ができないことです。
出典:「訪問介護の概要 – 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000608309.pdf)」
訪問介護サービスでは、なんでも希望通りにやってもらえるわけではありません。生活援助サービスで受けられない行為は、厚生労働省により規定されています。一般的に生活援助の範囲に含まれないと考えられる行為はサービスで受けられません。
1.「直接本人の援助」に該当しない行為
家族の利便に供する行為または家族が行うことが適当であると判断される行為が含まれます。下記に例を示します。
- 利用者の家族のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し
- 主として利用者が使用する居室等以外の掃除
- 来客に対するお茶、食事の手配
- 自家用車の洗車・清掃
2.「日常生活の援助」に該当しない行為
訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為のことであり、次のような項目が含まれます。
- 草むしり
- 花木の水やり
- 犬の散歩等ペットの世話等
日常的に行われる家事の範囲を超える行為も含まれます。
- 家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え
- 大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ
- 室内外家屋の修理、ペンキ塗り
- 植木の剪定等の園芸
- 正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理(おせち料理等)
出典:「平成12年11月16日老振第76号(http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kurashi/todoke/shinsei/seikatuenjyo_ryuuijikou.pdf)」
3.「医療行為」とみなされる行為
医療行為とみなされる行為も禁止されています。
- 爪に異常がある人の爪切り
- 耳垢塞栓の除去
- 重度の歯周病がある場合の口腔ケア
- 薬の管理
- 注射や点滴
- 摘便や自己導尿などの処置等
事業者が利用者に訪問介護のサービスを提供した場合、その対価として事業者に介護報酬が支払われます。訪問介護に対する介護報酬は、厚生労働大臣が定める基準により算定されます。介護報酬の7割から9割は介護保険から支払われますが、1割から3割は、利用者が所得に応じて利用料として自己負担することになります。
訪問介護の自己負担率は、利用者の年金収入によって変わります。
- 年金収入280万円未満の場合:1割
- 年金収入280万円以上340万円未満の場合:2割
- 年金収入340万円以上の場合:3割
自己負担率および要介護度により自己負担額が変わりますが、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)が計算してくれます。実際の訪問介護の自己負担額(利用料)をシミュレーションしてみます。
>介護サービス概算料金の試算
- 1回利用時の費用:3,170円
- 自己負担率1割、要介護度1、月に10回利用の場合:3,360円
- 自己負担率2割、要介護度3、月に15回利用の場合:9,510円
- 自己負担率3割、要介護度5、月に30回利用の場合:30,240円
出典:「厚生労働省介護サービス情報公表システム(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/?action_kouhyou_simulation_index=true)」
介護保険の要介護度1以上の方は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の立てるケアプランにもとづき、訪問介護を受けることができます。訪問介護を提供する事業所は複数あり、どの事業所のサービスを受けるかは、利用者が選択可能です。訪問介護サービスを提供する事業所を選ぶためのポイントについても解説します。
訪問介護サービスを受けられる方は、介護保険による要介護度1以上の認定を受けている方です。介護保険の要介護認定を受けられる方は、65歳以上の方か、40歳から64歳までの医療保険加入者で、末期がん・関節リウマチ等の加齢に起因する特定疾病により要支援、要介護の状態になっている人です。要支援1あるいは要支援2の認定を受けている方は「介護予防訪問介護」というサービスを利用できます。
最初に介護支援専門員(ケアマネジャー)と一緒に立てたケアプラン通り、適切なサービスが実行されているかどうか確認しましょう。例えば、ちゃんと調理してくれるか、時間どおりに掃除を十分にしてくれるか等です。また、介護スタッフの言葉遣いや態度に違和感を感じないかも重要なポイントとなります。こういった内容に不満がある場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談して、サービスを提供してもらう事業所を変更することも可能です。
訪問介護サービスを開始する前に、サービスの内容や費用について説明を受けます。身体介護や生活援助に関して、具体的にどんなサービスが受けられるのか、全体の料金はいくらになるのかを確認しましょう。その際に、どのくらい丁寧に説明してくれるか、希望や質問にちゃんと答えてくれるかが大きなポイントです。この点をちゃんと説明してからサービスを開始する事業所なら、安心して訪問介護サービス提供を任せることができます。
訪問介護を利用する際、受けられるサービスと受けられないサービスがあります。この点を十分に理解していないと、後で「こんなはずではなかった」という事にもなりかねません。メリット・デメリットを知ったうえで、サービスを提供してくれる事業所を選びましょう。迷ったら介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談をしましょう。また、適切なサービスが実行されているか、サービスの内容と費用について説明があるかを確認することも大切です。