介護にまつわるお役立ちコラム

介護保険サービスとは?種類や特徴をわかりやすく解説

2021年08月19日

高齢化が進む日本では、要介護者・要支援者のサポートだけでなく、家族の負担軽減にもつながることから、介護保険サービスへの需要が高まっています。介護が必要な家族がいる人や、将来的に両親や祖父母の介護が必要になると感じている人にとって、介護保険サービスは心強い存在です。

ただし、家族の希望やライフスタイルに合った介護保険サービスを利用するためには、まずはサービスの概要について情報を集めることが大切です。

当記事では、介護保険サービスの種類と特徴について解説します。介護保険サービスの利用を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

1介護保険サービスとは?

介護保険サービスとは、条件に当てはまる人を対象とした介護サービスです。介護保険サービスを受けるためには、申請を出して要介護(要支援)を受ける必要があります。

介護保険サービスの対象者は、下記の通りです。

・要介護または要支援状態にある65歳以上の人
・特定疾患の患者とみなされる40~64歳の人

介護保険サービスで発生する費用は、介護保険料・国や自治体の負担金・自己負担金で支払います。介護保険サービスの利用者負担額は、原則1割です。ただし、一定以上の所得者は2~3割負担となることもあります。要介護度別に支給限度額が決められており、支給限度額を超える利用額は全額自己負担となります。

2介護保険サービス(1)居宅サービス

居宅サービスは、自宅で介護を必要とする人向けのサービスです。居宅サービスを受ける場合は、居宅介護支援事業者へ依頼します。居宅サービスの利用対象者は、要介護認定者または要支援認定者です。居宅サービスは種類が多いため、家族の希望や状況、利用者に合わせて必要なサービスを選びましょう。

ここからは、居宅サービスの種類ごとにサービス内容や特徴について解説します。

自宅に訪問してくれるサービス

訪問介護サービスは、要介護者・要支援者の食事や排せつなどの介助、家事援助を中心としたサービスです。住み慣れた自宅で必要な介護を受けられるため、介護サービスが初めての人でも安心して利用できるでしょう。

訪問介護サービスの主な内容は、下記の通りです。

サービス内容
身体介護 ・食事、入浴、排せつなどの介助
・清拭
・リハビリ
・体位交換など
生活支援・居間の掃除、ゴミ出し
・洗濯
・食事の準備
・健康チェック、爪切りなど

訪問介護サービスの対象は、要介護者・要支援者本人に限られます。利用者本人以外のためとなる行為、ホームヘルパーや介護福祉士などが行わなくても生活に支障がない行為は、訪問介護サービスで依頼することができません。

施設に通って利用するサービス

通所介護は、日帰りで利用できることから「デイサービス」と呼ばれることもあります。通所介護を上手く活用することで、要介護者・要支援者はもちろん、普段介護を行っている家族もリフレッシュする時間を作ることができます。

通所介護の主な内容は、下記の通りです。

・食事、入浴、排せつなどの介助
・リハビリ
・レクリエーション
・健康チェックなど

機能の維持回復や日常生活の動作訓練を中心としたサービスを希望する場合は、「通所リハビリテーション(デイケア)」の利用が適しています。ただし、通所リハビリテーションを利用するためには、主治医の指示が必要です。

短期間だけ施設に入所するサービス

短期間だけ施設に入所するサービスは、通所介護サービスとは異なり、泊まりで利用することが可能です。最大利用可能日数が定められているため、「ショートステイ」とも呼ばれます。

短期入所サービスの主な内容は、下記の通りです。

サービス内容
短期入所生活介護・身体介護
・機能訓練など
短期入所療養介護・身体介護
・一定の医療ケア
・リハビリなど

短期入所サービスは、「介護する家族の休息」「介護する家族の外出」「家族が倒れたなどの緊急時の利用」を目的とする人が多い傾向にあります。

福祉用具や住宅改修などのサービス

福祉用具貸与は、要介護者・要支援者の自立支援や家族の負担軽減を目的とした介護保険サービスです。要介護度に応じて貸与対象となる福祉用具は異なります。要介護度1の人や要支援の人の場合、利用できる福祉用具は一部となることを理解しておきましょう。

貸与される主な福祉用具は、下記の通りです。

・車いす
・移動用リフト
・歩行器
・歩行補助杖
・床ずれ防止用具
・認知症老人徘徊感知器
・特殊寝台および付属品
・体位変換器
・スロープなど

住宅改修サービスも、要介護者・要支援者の自立支援や家族の負担軽減を目的としています。下記は、介護保険サービスから住宅改修費が支給される一例です。

・手すりの設置
・段差の解消
・洋式便器への取り換えなど

ただし、介護保険サービスで認められる住宅改修は、小規模な改修に限ります。

3介護保険サービス(2)施設系サービス

施設系サービスは、介護保険施設に入居して身体ケアや医療ケアなどを受けるサービスです。介護保険制度上の施設系サービスには種類があり、サービス内容は各施設によって異なります。

施設系サービスの主な内容は、下記の通りです。

サービス内容入居条件
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
・身体介護
・機能訓練など
・原則要介護3以上
・自宅での介護が難しい人
介護老人保健施設・身体介護
・リハビリ
・医療ケアなど
・要介護1以上
・リハビリで在宅復帰を目指す人
介護療養型医療施設 (※)・身体介護
・リハビリ
・医療ケアなど
・要介護1以上
・長期療養が必要な人
介護医療院・身体介護
・リハビリ
・レクリエーション
・日常生活のサポートなど
・要介護1以上
・長期療養が必要な人

※2017年度末で廃止が決まり、2024年3月末まで移行期間が設けられています。

施設系サービスを利用する場合は、医療ケアや日常生活のサポートの有無などを比較したうえで、ニーズに合う施設を選ぶとよいでしょう。なお、施設系サービスには含まれませんが、グループホーム・介護付き有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などもあります。サービス付き高齢者向け住宅にかかる費用は、介護保険の給付対象ではありません。

4介護保険サービス(3)地域密着型サービス

地域密着型サービスは、要支援・要介護高齢者や認知症高齢者が住み慣れた地域で快適に生活できるように提供されているサービスです。厚生労働省では、高齢者が安心して暮らせるように2025年を目途に「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。地域密着型サービスは、地域包括ケアシステムの一翼を担う取り組みです。

地域密着型サービスは、下記の条件を満たす人が対象です。

・要介護認定または要支援認定を受けている人
・サービス提供事業所と同じ市区町村に住んでいる人

 

地域に合ったサービスを提供するために、サービスの基準や負担する費用の一部は各市区町村が設定することができます。

地域密着型サービスの主な内容は、下記の通りです。

サービス内容
訪問・通所サービス・訪問、通所、短期入所による介護
・夜間や緊急時の訪問介護
・1日複数回の定期訪問による介護など
認知症対応サービス・認知症の要介護者への身体介護
・共同生活における生活支援
・機能訓練など
施設・特定施設サービス・介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホームなどにおける身体介護
・共同生活における生活支援
・機能訓練など

認知症対応サービスには、「通所介護」「共同生活介護」の2種類があります。共同生活介護の利用対象者は、要支援2以上の人です。市区町村によっては、地域密着型サービスの整備が進んでいない可能性もあります。地域密着型サービスの利用を希望する場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談しましょう。

5まとめ

介護保険サービスは、「居宅サービス」「施設系サービス」「地域密着型サービス」の3つに分けられます。サービスの対象者や介護内容は、各サービスによって異なることが特徴です。

また、介護保険を使わずに自費で介護サービスを受ける「介護保険外サービス」もあります。介護保険外サービスの場合、提供時間・サポート内容・対象者に柔軟性があるため、ニーズに合わせて利用しやすいことが魅力です。介護が必要な家族がいる人や将来的に介護サービスを利用したい人は、介護保険外サービスも視野に入れて今後について検討してみましょう。

監修者情報
天晴れ介護サービス総合教育研究所株式会社 代表取締役

京都大学経済学部卒業後、特別養護老人ホームに介護職として勤務。社会福祉法人、医療法人にて、生活相談員、グループホーム、居宅ケアマネジャー、有料老人ホーム、小規模多機能等の管理者、新規開設、法人本部の仕事に携わる。15年間の現場経験を経て、平成27年4月「介護現場をよくする研究・活動」を目的として独立。介護福祉士、介護支援専門員 執筆、研修講師、コンサルティング活動を行う。著書、雑誌連載多数(日総研出版、中央法規出版、ナツメ社など)。年間講演、コンサルティングは300回を超える。ブログ、facebookはほぼ毎日更新中。オンラインセミナー、YouTubeでの配信も行っている。 天晴れ介護サービス総合教育研究所オフィシャルサイト https://www.appare-kaigo.com/ 「天晴れ介護」で検索

 

榊原宏昌(さかきばらひろまさ)
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