介護にまつわるお役立ちコラム
老老介護とは?増加の原因と老老介護の問題点・解決方法
少子高齢化が進む日本では、家庭における介護の担い手不足が深刻となっています。同居・近居の家族が高齢を迎えた方の中には、両親や配偶者といった家族を介護する際に、自身も高齢になることを不安に感じる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、高齢の家族の介護を高齢者が担う「老老介護」について解説します。老老介護が増加している原因や老老介護が抱える問題、問題を解決するための方法を確認し、老老介護の詳細を把握しましょう。
「老老介護」とは、介護を要する65歳以上の高齢者を、65歳以上の高齢者が介護している状態です。老老介護と似た言葉に「認認介護」がありますが、これは認知症の被介護者を認知症の介護者(介助者)がケアしている状態です。介護する側・される側がともに認知症を患っているため、思わぬ事故が起こる可能性も高まります。
高齢の被介護者には認知症の方も多いため、老老介護が長引くことで認認介護に発展することも珍しくありません。
高齢化や長寿化に伴い、介護を必要とする高齢者の数とともに、介護を担う高齢者の数も増加しています。厚生労働省の調査によると、介護が必要である70~79歳を、70~79歳の人が介護する割合は56%を占めています。
(出典:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)
老老介護の状態となっている世帯では、75歳以上の後期高齢者が介護を担っていることも珍しくありません。今後は少子高齢化がさらに進むと考えられているため、老老介護を行う世帯の数の増加や、介護者のさらなる高年齢化が予想されます。
現代の日本において老老介護が増加している原因には、少子高齢化のほかにも複数の要素があります。老老介護が増加している原因は以下が挙げられます。
原因1:平均寿命と健康寿命に差がある
「平均寿命」とは、一般的に言われる寿命のことです。
■ 日本人の平均寿命(2016年)
・男性…80.98歳
・女性…87.14歳
一方、「健康寿命」とは介護を受けなくても日常生活を送れる期間のことです。
■ 日本人の健康寿命(2016年)
・男性…72.14歳
・女性…74.79歳
上記のデータから、平均寿命と健康寿命との差(介護が必要となる期間)は以下のとおりです。
■ 介護が必要となる平均期間
・男性…8.84年
・女性…12.35年
このように、平均寿命と健康寿命に数年単位の大きな差があることで、介護が必要な期間が長期化します。被介護者・介護者の両者の高齢化により、老老介護が増加している傾向です。
原因2:誰かに頼ることができない
現代社会では核家族世帯が増加しており、子どもなど若い世代が遠方に住んでいることも珍しくありません。「別居家族・親戚を介護の協力者として頼れない」などの理由で、高齢者どうしの介護を選択するケースも多く存在します。
原因3:経済的な困難を抱えている
介護施設の入所や介護サービスの利用には、ある程度のお金が必要です。家族以外の第三者の手を借りたいと考えている場合でも、経済的に余裕がないことが要因となり、自宅での老老介護を選択せざるを得ない世帯が多くあります。
老老介護の増加は当事者の事情だけでなく、少子高齢化や核家族化といった社会全体の問題によって引き起こされています。老老介護の状態の解消・予防には、上記のような原因を理解したうえで予防策を取ることが重要です。
老老介護が抱える主な問題点は以下の3つです。
〇体力的な負担:共倒れになる恐れがある
介護は体力が必要です。介護者も高齢である場合、介護ケアを行う際にケガをして介護が困難になり、共倒れとなるリスクがあります。
〇精神的な負担:認認介護のリスクがある
毎日の介護でストレスを抱えたり、運動不足やコミュニケーション不足が続いたりすると、介護者自身が認知症を発症する恐れがあります。認認介護の状態となると、老老介護よりも介護の精神的負担が増加するケースもあるため、注意が必要です。
〇経済的な負担:もともとの年金なども少ない、終わりが見えない
自宅で介護をする場合でも、介護には生活資金以外にある程度のお金が必要となります。介護者も高齢で年金収入しかない場合、経済的な負担は非常に大きくなるでしょう。介護は終わりが見えないため、自分の老後への不安も常に付きまといます。
老老介護が長く続くと、心身のストレスや経済的な負担が大きくなり、介護者のQOL(生活の質)が低下する危険性があります。できる限りの対応策を講じ、介護の負担を軽減することを考えましょう。
老老介護は介護者の負担が非常に大きいため、悩みや不安を1人で抱え込まず、必要なサービスを利用することが大切です。老老介護の負担を軽減できる方法について確認し、介護への不安を可能な限り減らしましょう。
ここでは、老老介護の問題を解決する方法を3つ解説します。
それぞれの自治体には、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を過ごせるようサポートする「地域包括支援センター」が設置されています。
国が推進する「地域包括ケアシステム」の一環である地方包括支援センターには、社会福祉士やケアマネジャー、保健師などの社会福祉の専門家が在籍しています。老老介護に関する心配事や不安な点があれば、積極的に地域包括支援センターに相談しましょう。
老老介護に限らず、自宅介護を家族だけで行うことは非常に大きな負担です。日帰りで介護ケアが受けられるデイサービスやデイケア、短期間の施設宿泊が可能なショートステイなどを上手に活用し、介護者が休める時間を確保しましょう。自宅で入浴支援などの介護ケア・看護ケアが受けられる訪問介護や、訪問看護の利用もおすすめです。
介護保険では利用できない生活支援サービスを利用したい場合は、介護保険外サービスを活用しましょう。
〇介護保険外サービスの例
・食事の配達(宅食)
・家事支援や代行
・訪問理容サービス
・認知症高齢者・認知症患者の見守り
・移送や送迎
介護保険外サービスの利用料金は全額自己負担となります。しかし、介護認定の有無にかかわらず利用できる点は、嬉しいポイントと言えるでしょう。
老人ホームなどの介護施設への入所を検討することも、老老介護を解消する方法です。介護にかかる費用は高くなりやすいものの、介護の大幅な負担軽減が期待できるでしょう。
介護施設に入所することで受けられるサービスなどは、施設や被介護者の要介護度・要支援度などによって異なります。事業者や施設によっては、比較的早期に入所できるところや夫婦で入居できるところもあるため、家庭状況に応じて施設入所を検討しましょう。
「在宅生活を送りつつ、介護サービスも積極的に利用したい」という方は、地域密着型の介護サービスを利用することがおすすめです。地域密着型の介護サービスの例は以下のとおりです。
〇小規模多機能型居宅介護
施設への通所を中心として、ショートステイや自宅での訪問介護を組み合わせた介護サービスです。住み慣れた自宅・地域で環境を大きく変えずに暮らしながら、リハビリなどの支援サービスや生活支援を、体調や希望に応じて受けられるメリットがあります。
〇定期巡回・随時対応型訪問介護看護
訪問介護員や訪問看護師が利用者の自宅を定期的に訪問し、利用者にケアを行うサービスです。24時間対応のサービスであり、1日に10~20分間程度のケア(介助や服薬管理など)を在宅で受けることができます。
老老介護の負担を軽減するためには、家庭の状況や生活環境に応じた社会的サポートを利用することが大切です。施設や事業所のサービス内容などについて、事前によく比較検討し、被介護者と介護者の両者に合ったサービスを考えましょう。
「老老介護」とは、高齢を迎えて介護が必要となった家族のケアを、65歳以上の高齢者が担うことです。老老介護は体力面や精神面、経済面での負担が非常に大きいため、決して自分だけで不安や困り事を抱え込まないように対策を取りましょう。
老老介護の負担を軽減するためには、地域包括支援センターなどで高齢者ケアについて相談するほか、介護サービスを上手に活用することも重要です。介護施設への入所や地域密着型介護サービスの利用も検討し、世帯状況や介護者の生活スタイルに合った介護のしかたを考えましょう。