介護にまつわるお役立ちコラム
身体介護とは?生活援助との違いやサービス内容・費用の目安も解説
社会の高齢化に伴って、要支援・要介護者の認定を受ける人は年々増えています。適切な介護を必要とする人向けの福祉サービスが多様化するなかで、在宅生活を続けたい人に高い人気と需要を誇るサービスが訪問介護です。
そこで今回は、訪問介護サービスで受けられる身体介護に焦点を当てて、具体的なサービス内容とかかる費用の目安について解説します。これから「自宅で介護を受けたい」「自宅で家族を介護したい」と考えている人は、ぜひ参考にしてください。
身体介護とは、訪問介護サービスのひとつであり、下記のいずれかを行います。
- 直接利用者の身体に触れて介助する
- 生活意欲やADL(日常生活動作)を向上させるために、利用者と共に行う
- 利用者の状態に合わせて、専門的な知識や技術を要する援助・相談・指導を行う
訪問介護サービスは、下記に示す2つの条件どちらかに当てはまる高齢者・障害者が対象です。
- 要介護1~5の認定を受けている
- 要支援1~2の認定を受けている
ただし、要支援の場合は「介護予防訪問介護」という形となり、要支援1の人は週に2回までしかサービスを利用できません。「介護予防訪問介護」は、要介護状態への症状進行を予防する目的となるため、身体介護よりも生活援助が中心です。
身体介護では、主に下記のサービスが行われます。
- 食事介助
- 排せつ介助
- 入浴介助
- 着替え介助
- 体位変換介助
- 移乗介助
- その他ケア
各サービスの具体的な内容については後述するため、参考にしてください。
生活援助と身体介護で最も異なることは、「利用者の身体に触れるか触れないか」です。
生活援助は、利用者が日常生活を送るために必要な家事の一部を、訪問介護員が代行するサービスとなっています。そのため、利用者の身体に直接触れて行動を介助することはありません。生活援助では、主に下記のサービスが行われます。
- 掃除
- 洗濯
- 一般的な食事の準備や調理
- 生活必需品の買い物
- 薬の受け取り
- 衣服の整理・補修
ただし、生活援助サービスは、あくまでも利用者本人の生活を援助するためのサービスです。そのため、同居する家族の部屋の掃除や、ペットの世話などは生活援助に含まれません。
身体介護では、ホームヘルパーなどの介助者が直接利用者の身体に触れて日常生活に必要な基本動作・行動を援助します。また、利用者一人ひとりの状況に合わせた自立生活支援のために、必要な相談・指導を行ったり家事などを共に行ったりすることもサービスの一部です。
ここでは、身体介護の具体的なサービス内容について解説します。
食事介助は、一人でスムーズに食事が行えなくなった人に対して行われます。下記は、食事介助で行われる主なサービスです。
- 食事の準備
- 調理
- 配膳
- 摂食の介助
- 服薬の介助
- 下膳
- 後片付け
- 食後の口腔ケア
食事介助では、全面的な摂食介助だけではなく、一部介助や見守り介助など、利用者一人ひとりの摂食能力に合ったサポートが行われます。利用者の状態に合わせて、美味しく楽しく食事が続けられるようにアドバイスやサポートを行うことも食事介助の一部です。
排せつ介助は、一人でスムーズに排せつできなくなった人に対して行われます。下記は、排せつ介助で行われる主なサービスです。
- トイレへの移動
- 衣服の着脱
- 排せつの手伝い
- おむつの交換
- 排せつ物の状態チェック
- 陰部の洗浄
- 汚物の始末
- ポータブルトイレや尿瓶の洗浄
排せつ介助では、人としての尊厳を損なわないように注意しつつ排せつや後始末を手伝い、利用者の身体を衛生的に保ちます。また、利用者の尿や便の色・形状から、健康状態を確認することも排せつ介助の一部です。
入浴介助は、一人でスムーズに入浴できなくなった人に対して行われます。下記は、入浴介助で行われる主なサービスです。
- 入浴の準備
- 衣類の着脱
- 身体の洗浄
- 洗髪の介助
- 湯あみ介助
- 身体の清拭
身体に痛みや麻痺の症状があり入浴が困難な場合には、シャワーチェアや入浴専用ベルトなどの福祉用具を補助に使用します。入浴介助において、身体の洗浄は可能な限り自分自身で行ってもらうことが基本です。
着替え介助は、一人でスムーズに着替えられなくなった人に対して行われます。下記は、着替え介助で行われる主なサービスです。
- 衣服の着脱
- 身体の清拭
- 服の段差やしわなどのチェック
着替えの動作には手足や指先の簡単な運動・リハビリの効果があり、利用者の自信や満足にもつながるため、可能な限り自力で行ってもらいます。寝ている間にも多くの汗をかくため、こまめな着替えと清拭で身体を清潔に保つことが必要です。
体位変換介助は、一人でスムーズに寝返りが打てない人に対して行われます。下記は、体位変換介助で行われる主なサービスです。
- 寝返り介助
1日中寝返りを打てない場合、血行障害や床ずれを起こす恐れがあるため、少なくとも数時間に1度は体位変換が必要となります。利用者の意識がはっきりしている場合は、意思の疎通を図りながら行うことが大切です。
移乗介助は、一人でスムーズに移動・乗降が行えなくなった人に対して行われます。下記は、移乗介助で行われる主なサービスです。
- 起床介助
- 立ち居の介助
- 歩行介助
- 車いすへの移乗介助
- 車いすでの移動介助
- 介助機器の点検
移乗介助は、食事・排せつ・入浴・着替えなど、日常生活で必要となるあらゆる移動・乗降の際に対応します。利用者の移動能力に合わせて介助し、移動で使用する介助機器が万全な状態にあるかをチェックすることも重要です。
先述した介助以外にも、利用者一人ひとりの状態に応じてさまざまな介助が行われます。下記は、その他ケアとして行われる主なサービスです。
- 利用者が行う家事の見守り・声かけ・手伝い
- 医師などの指示により行う特別な配慮が必要な食事の準備
- 服薬介助
- たんの吸引
- 経管栄養
- 投票所への往復介助
- 通院介助
- 外出介助
ただし「たんの吸引」や「経管栄養」は、各都道府県で定められた基準を満たして認定を受けた介護員もしくは介護福祉士の資格保持者のみが行えます。また、外出に伴う介助に関しては、同行できる場所・目的・時間に制限が設けられているため、事前の確認が必要です。
身体介護をメインとした訪問介護にかかる費用の目安は、下記の式で算出できます。
サービス種類別料金×利用時間+その他料金(緊急時訪問介護加算など) |
一般的に介護保険を利用して身体介護を受ける場合、自己負担額は利用料金の1割分です。ただし、利用者に一定以上の所得があり、「第一号被保険者」に該当する場合は、自己負担額の割合が2~3割となるため注意しましょう。
また、利用者が介護保険サービスを申請する市区町村や介護サービスを利用する事業者によって、サービスごとの単位数・料金設定が異なります。下記は、自己負担額の割合が1割であった場合、1回あたりの利用にかかる費用の一例です。
サービス種類 | 利用時間 | 自己負担額(1割) |
身体介護0 | 20分未満 | 195円 |
身体介護1 | 20分以上30分未満 | 245円 |
身体介護2 | 30分以上60分未満 | 390円 |
身体介護3 | 60分以上90分未満 | 580円 |
以降30分増すごとに | 85円 |
上記の料金設定で、1割負担・週2回・1日50分の身体介護2のサービスを利用した場合、1カ月にかかる自己負担額は3,120円となります。
実際に訪問介護サービスを受ける場合は、上記の身体介護に加えてその他料金や生活援助の費用が加算されることがほとんどです。サービスを利用する前に、居住地域の費用相場と各事業所で設定されているサービスの種類別料金やその他料金をチェックするとよいでしょう。
また、介護保険外のサービスを利用する場合は、さらに費用が上乗せされるため、複数の事業所を比較することをおすすめします。
訪問介護サービスのひとつである身体介護は、直接利用者の身体に触れて動作や移動などの日常生活をサポートする介助サービスです。一方、日常生活における家事をサポートする生活援助では、介護員が利用者の身体に触れることはありません。
また、介護員が所定の研修を修了して認定を受けていれば、たんの吸引や経管栄養といった医療ケアを行うこともできます。身体介護の利用にかかる費用や詳細なサービスの内容は、各市区町村や事業者によって料金設定が異なるため、事前に複数の事業所を比較して選びましょう。