介護にまつわるお役立ちコラム
食事介助の正しい手順|注意すべきポイント4つも
高齢となってさまざまな能力が低下すると、食事の際も自分では食べられなくなり、介助が必要となる人が多くなります。しかし、適切な介助が受けられなければ、食べることを負担に感じて食事が嫌いになったり、死亡事故へつながったりするケースがあるため注意しなければなりません。
そこで今回は、食事介助の基礎知識として、高齢化により低下しやすくなる4つの要素について解説します。食事介助の手順・流れと介護者側が気を付けるべきポイントも4つ紹介するため、正しい食事介助の方法を知りたい人はぜひ参考にしてください。
高齢化に伴い食事能力が低下することは、さまざまな弊害が起こる原因となります。例えば、食物などが気管に入る誤嚥は、窒息だけでなく誤嚥性肺炎につながる可能性が高い事故です。場合によっては命に関わるため、食事介助の際は気を付けなければなりません。
消費者庁の発表によると、令和元年度における65歳以上の気道閉塞を生じた食物の誤えんによる死亡者数は、3,790人となっています。64歳以下の死亡者数を合計しても500人に届かないことから、高齢者となるほど誤嚥事故を引き起こしやすいといえるでしょう。
(出典:消費者庁「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください!」/https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_cms204_20201223_01.pdf)
ここでは、高齢化に伴う能力の低下によって起きる弊害と、食事介助を行う際の注意点を紹介します。
高齢化によって唾液の分泌量が減り、のどの周りの筋肉が衰えることで嚥下力が下がります。特に、カステラなどの水分量の少ない食べ物や水やお茶などのさらりとした液体は、誤嚥につながるリスクが高まる傾向です。
水分量の多い食べ物を選んだり、片栗粉などでとろみを付けたりすることで食べ物を飲み込みやすくなります。また、一口に含む量を少なくし、きちんと飲み込めたかどうかをのどの上下運動や口の中を見て確認することも、誤嚥を防ぐことにつながるでしょう。
高齢化によってあごの筋肉が衰えることや、口内の状態が悪くなることで咀嚼力が下がります。
咀嚼力が下がった高齢者はやわらかく調理された食べ物を好み、野菜類などの繊維質が多く硬い食材や肉類などの噛み切りにくい食材は避ける傾向です。硬いものを避けることでさらに噛む力が衰えるほか、糖質の摂取量が増えてビタミンやたんぱく質などが不足しやすくなります。
硬い食べ物はやわらかく煮込んだり小さくしたりして食べやすくし、栄養のバランスを取れるようにメニューを工夫しましょう。
高齢化によって胃腸の消化液や唾液が分泌されにくくなり、消化器官の運動機能が低下することで消化能力が下がります。
消化能力の低下は、食欲を減退させる理由の一つです。食べ物が長時間消化されずに胃に留まることによって、少ない食事量であっても胃もたれを感じることが多くなります。また、消化器官の運動機能が低下することによって、便秘や下痢も慢性化する傾向です。
できるだけ消化吸収されやすい食材や調理法を選び、足りない分はサプリメントなども併用して補いましょう。
高齢化によって身体機能の衰えと共に活動量が減ることや、味覚や嗅覚が鈍くなり食事の楽しみが減ることで食欲が下がりやすくなります。
食欲が減って食事量が減ると必要なエネルギーや栄養が取りにくくなるため、病気や怪我の回復にかかる時間が増えます。また、味覚の衰えを補うために味付けが濃くなりやすく、塩分過多に陥るケースも少なくありません。
日頃から運動の習慣を付けさせたり、酢や香辛料を利用して味に変化を持たせたり、料理の盛り付けを工夫したりして食欲を湧かせる工夫をしましょう。
食事の際は、できるだけリラックスした状態で食事だけに意識を集中できる環境を作ることが大切です。ここでは、食事介助の基本的な手順・流れを紹介します。
- 1 食事の時間であることを告げ、トイレを済ませてもらう
- 2 周りを清掃し換気する
- 3 安全な体勢を確保し、エプロンを着ける
- 4 うがいや拭き取りなどで口腔内を清潔にする
- 5 水分を補給する
- 6 本人から見える位置に食事や食器を並べる
- 7 介護者は隣か斜め前に座る
- 8 献立を説明する
- 9 本人が食べたいものや水分の多いものから少量ずつ与える
- 10 飲み込めたことを確認する
- 11 本人の食事ペースに合わせてバランスよく順に与える
- 12 食事が終わったら摂取量を記録してから片付ける
- 13 服薬させる
- 14 口腔をケアする
- 15 リラックスさせる
事前に排泄を済ませてもらうことで、食事の中断を避けます。ポータブルトイレを利用する場合は、室内にニオイが残らないようにしっかりと換気することも必要です。
食事の準備から終了までは余裕を持って行い、食事を急かしたり無理に食べさせたりしないようにしましょう。
正しい方法で食事介助を行うことは、食事介助をする側がスムーズに食事を進められるうえ、高齢者自身にとっても食事が楽しい時間となります。正しく食事介助を行うためには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
ここでは、食事介助を行う際のポイントを4つ紹介します。
食事介助を行う際は、姿勢に気を付けましょう。
上体が90度に近いほど食べ物を嚥下しやすくスムーズに食道を通過するため、誤嚥の可能性が減ります。普段はベッドで過ごしている場合でも、可能な限りいすや車いすを利用し、テーブルを使用すると良いでしょう。
下記は、正しい姿勢の取り方です。
◯テーブルを使用する場合
いすに深く腰掛ける
車いすはフットレストから足を下ろす
床に足の裏を付け、膝は90度くらいにする
上体は軽く前傾姿勢を取らせる
背もたれと身体の間にクッションなどを挟み、姿勢を安定させる
いすに深く腰掛ける
車いすはフットレストから足を下ろす
床に足の裏を付け、膝は90度くらいにする
上体は軽く前傾姿勢を取らせる
背もたれと身体の間にクッションなどを挟み、姿勢を安定させる
◯ベッドを使用する場合
ベッドをギャッジアップする際の角度は30~90度とする
後頭部や膝の下にクッションを入れて姿勢を安定させる
テーブルとベッドのどちらを使用する場合でも、軽くあごを引くことで飲み込みやすくなり、誤嚥も防ぐことができます。
食事前や食事中には、適切な声かけを行いましょう。
まずは食事前に声をかけて目覚めを確認し、食事の開始を認識させます。献立を伝え、本人の食べたいものから食事を開始したり食事のメリットを伝えたりすることで、食事への意欲をアップさせることも重要です。
下記は、食事介助を行う際の声かけ例となります。
「そろそろ食事の時間です」
「今日は寒いので◯◯で身体を温めましょう」
「以前にお好きだといっていた◯◯にしました」
「先日食べてみておいしかったので、ぜひ食べてもらおうと思ったんです」
食事中に話しかけると誤嚥の可能性を高めるため、声かけは口に食べ物を含ませるまでとし、咀嚼中や嚥下中のタイミングは控えることが重要です。
食事を与えるときは、主食・副食・水分をバランス良くしましょう。
同じ料理ばかりを連続して与えると食事に飽きやすく、料理によっては口内の水分が足りなくなることもあります。水分が多い料理を適度に挟むことで水分補給となるだけでなく、咀嚼や嚥下を行いやすくすることが可能です。
また、一口に含む量が適切になるよう、料理の量や大きさに注意します。高齢者の一口量は、ティースプーン1杯分が適量の目安です。口元より下からスプーンを運ぶことであごが上がらず、誤嚥の可能性を下げられます。
スプーンを口の奥まで入れ過ぎないことも重要です。
食後は口腔ケアや服薬介助を忘れずに行いましょう。
薬がある場合は必ず服薬介助を行います。歯磨きや入れ歯の洗浄をして口の中に食べかすや歯垢が残っていないかを確認し、清潔な状態で休んでもらいましょう。
ただし、食後すぐに横になると胃から食べ物が逆流する可能性があるため、数十分程度は時間をおくことが大切です。また、食べた量を記録することで、高齢者の食欲や健康状態を把握することにつながります。
高齢化による嚥下力・咀嚼力の低下は誤嚥を起こしやすく、消化能力・食欲の低下は体力や身体能力の低下を招きます。高齢者に少しでも長く健康でいてもらうためにも、食事介助の際はポイントを押さえて正しい手順で行うことが大切です。
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