介護にまつわるお役立ちコラム

在宅介護でそろえておきたい必要なものとは?負担を軽減する便利グッズもご紹介

2024年07月23日

在宅介護を始める際、必要な器具や便利なグッズを揃えることは、介護の質を高め、介護者の負担を減らすために重要です。しかし、何を選べばよいのか迷う方も多いでしょう。本記事では、在宅介護に必要なアイテムの選び方や、食事、入浴、排泄、就寝、移動など、日常生活の各場面で役立つアイテムを紹介します。在宅介護の環境を整え、要介護者と介護者双方の生活の質を向上させるヒントを見つけられるでしょう。

1在宅介護で必要なものはどうやって選ぶの?

在宅介護に必要なものを選ぶ際は、介護される人の状態や要介護度に合わせて判断してください。一人ひとりの状況が異なるため、個別のニーズに合った選択が大切です。介護する人の負担を減らせるものを選ぶのもポイントです。

 

介護用品を導入する際は、ケアマネジャーへの相談をおすすめします。専門家の意見を聞くことで、より適切な選択ができます。また、家の改修工事や手すりの設置が必要になる場合もあるので、環境整備も含めて総合的に検討しましょう。

要介護度や体の状態に応じたもの選ぶ

介護に使う道具は、介護される人の要介護度や体の状態に合わせて選びましょう。例えば、移動を助ける道具の場合、歩ける人には杖やシルバーカーが向いています。一方、歩くのが難しい人には車いすや歩行器が必要です。同じ種類の用品でも、機能やタイプがたくさんあるため、その人の状況に合わせて選ぶことが大切です。

 

介護用品選びは、単に「あれば便利」というだけでなく、介護される人の状態改善や自立支援、さらに介護する人の負担軽減にもつながります。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に選択するのが望ましいでしょう。

使う場所のサイズに合わせて選ぶ

介護ベッドやお風呂用のイスなど、大きなものは保管スペースをしっかり確認しましょう。使う場所に合わないサイズを選んでしまうと、毎日の介護に支障が出るだけでなく、事故の危険性も高くなるからです。そのため、実際に使用する場所の寸法を測り、サイズと比べることが大切です。場合によっては、家具の配置を変更したり、不要なものを整理したりして、適切なスペースを作るのも検討しましょう。

介護負担を軽減できるものを選ぶ

在宅介護では、介護者に身体的にも精神的にも大きな負担がかかります。そのため、介護用品を選ぶときは、介護者の負担を減らせるかどうかも大切なポイントです。

 

例えば、食事の手伝いで使うエプロンは、使い捨てのものを選ぶと洗濯の手間が省けます。また、水をはじく素材を選ぶと、服が汚れるのを防ぎ、着替えの回数を減らせます。さらに、介護ベッドや車いすなどの大きなものは、使いやすさや動かしやすさを重視して選びましょう。例えば、電動ベッドであれば、ボタン一つで高さや角度を変えられるため、介護する人の体への負担を大きく減らせます。

 

介護者の負担を減らすことを意識して選ぶと、長く良い介護を続けられ、介護者自身の健康維持につながるでしょう。

2在宅介護の必要なものや便利なものリスト

在宅介護を始めると、これまでの生活では使わなかったものが必要になります。ここでは、在宅介護で必要なものに加え、あると便利なものリストを紹介します。介護者と要介護者の双方が快適に過ごせるよう、これらのアイテムを参考に準備を進めていきましょう。

食事の際に必要なもの・あると便利なもの

食事は、要介護者自身がどこまで自分でできるかによって、介護者の負担の大きさが変わってきます。ここでは、食事の介助に必要なものや、あると便利なグッズをご紹介します。これらのアイテムを上手に活用することで、食事時間がより快適に過ごせるようになるかもしれません。

  • 高齢者用のカトラリー・食器

高齢者や要介護者が使いやすいように工夫した、介護用のカトラリーや食器があります。例えば、持ち手が握りやすいように太めになっているフォーク、手首を返さなくても使えるよう角度がついているスプーン、2本が一体となっていてバラバラになりにくい箸。また、食器は平らな皿ではなく、傾斜がついて食べ物が集まりやすいものや、縁が高くすくいやすいものがおすすめです。これらを使うことで、要介護者の自立を促し、介護者の負担も軽減できます。

  • とろみ剤

飲み込む力が弱くなり、きちんと噛めるものの飲み込むのが大変というときは、とろみ剤で食べ物にとろみをつけると、飲み込みやすくなります。最近は介護者の負担を減らすため、加熱不要でダマになりにくいタイプも販売されています。飲み込みの悪さは、喉に食べ物を詰まらせる事故につながる恐れもあるため、飲み込む力が弱いと感じたら、とろみ剤の使用をしてみるとよいでしょう。

  • 介護用テーブル

介護用テーブルは、要介護者の状態や生活環境に合わせて選択することが大切です。車いす利用者でも使いやすいよう、側面に車いすが入るスペースがあるタイプや、キャスター付きでベッドサイドまで移動できるものがあります。最新の電動昇降タイプは、ボタン一つで高さを調整できるため、車いすやベッドなど、様々な状況に対応できます。食事場所が固定されていない場合におすすめです。

  • 介護用食事エプロン

介護用食事エプロンは、要介護者の食べこぼしによる衣服の汚れを防ぎ、介護者の洗濯の手間を減らすアイテムです。テーブルまで覆う長めのものや、食べこぼしをキャッチするポケット付きなど、さまざまなタイプがあります。使い捨てタイプと繰り返し使えるタイプがあり、拭くだけで汚れが落ちる素材や、防水素材など、使用する状況に合わせて選べます。また、要介護者の尊厳を守るためにも、デザインも大切です。おしゃれで気分が上がるようなデザインを選ぶと、食事の楽しみも増すでしょう。

  • ストロー付きのコップやペットボトル用のストローキャップ

ストロー付きのコップやペットボトル用のストローキャップは、要介護者の自立した水分補給を支援する便利なアイテムです。手の震えがある方や、寝たきりの方でも使いやすいよう設計されています。蓋付きなので、倒しても中身がこぼれにくく、介護者の片付けの手間も省けます。衛生面が気になる方は、使い捨てストローが使えるタイプを選ぶと良いでしょう。

  • すいのみ

すいのみは、寝たままでも水分補給ができるように作られた容器です。医療現場でも使用されており、在宅介護でも便利なアイテムです。目盛り付きのものや流動食にも使えるタイプなど、形や使用感もさまざま。要介護者の状態に応じて、適したものを選びましょう。すいのみを使用することで、寝たきりの方でも楽に水分を摂取できるため、脱水予防にも役立ちます。ただし、ベッドを水平にしたまま水分摂取すると誤嚥(ごえん)につながる可能性があるため、ベッドの角度調整が必要です。介護者の負担も軽減できるため、ぜひ用意しておきたいアイテムの一つです。

  • ハンドブレンダー・ミキサー・圧力鍋

ハンドブレンダーやミキサーは、硬い食材を砕いたり、なめらかなポタージュを作ったりするのに役立ちます。特にハンドブレンダーは手入れが簡単で収納スペースも取らないため、介護食作りにおすすめです。一方、圧力鍋は柔らかい料理を短時間で調理できます。根菜類などの硬い食材も、通常の1/3程度の時間で柔らかく仕上がります。電気式の圧力鍋は安全性が高く、初心者でも扱いやすいのが特徴です。これらのツールを活用することで、介護食の調理がより簡単かつ効率的になるでしょう。

  • マッシャー・ヌードルカッター

マッシャーとヌードルカッターは、要介護者の食事をより食べやすくするのに役立つキッチンツールです。マッシャーで食材を柔らかくすり潰すことで、咀しゃくや嚥下が困難な方でも食べやすくなります。一方、ヌードルカッターは、ラーメンやスパゲッティーなどの麺類を、素早く一度に細かく切ることができます。長い麺類が食べにくい場合があるため、これを使用することで食べやすくすることができます。

入浴介護や口腔ケアで必要なもの・あると便利なもの

入浴は、清潔を保つために欠かせません。しかし、要介護者が安全に入浴するには丁寧な介助が必要で、滑りやすい浴室では転倒のリスクも高まります。ここからは、衛生面に注目し、入浴や口腔ケアの介護で必要なものや便利なグッズを紹介します。

  • シャワーチェア

入浴時に使う介護用のシャワーチェアは、一般的な風呂椅子と比べて座面が高めです。立ち座りの動作が不安定な方や、一般的な風呂用椅子では腰をおろしにくい方でも使いやすくなっています。使用する方の体の状態に合わせて、背もたれやひじ掛けが付いているタイプを選ぶとよいでしょう。

  • 介護用手袋

入浴や清拭の際には、介護用手袋は大切です。要介護者の体に直接触れるため、手袋を着用することで、汚れを防ぎ、同時にお互いを感染症から守ることができます。特に、皮膚トラブルがある場合や感染症の心配がある場合は、必ず使用するようにしましょう。また、使い捨てタイプを選べば、洗濯の手間も省けます。

  • 介護用浴室すべり止めマット

浴室や浴槽での転倒は、重大な事故につながる可能性があります。そのため、ぜひ介護用浴室すべり止めマットを敷きましょう。これらのマットは通常の浴室マットよりも滑りにくい素材や構造になっており、浴槽の中や出入りする際の足元、洗い場など、危険が予想される場所に敷きます。すべり止めマットを使用することで、介護者も安心して入浴介助ができるようになります。

  • うがい受け

前かがみになるのが難しい方や寝たきりの方のうがいや歯磨きをサポートする際に、うがい受け(ガーグルベース)があると非常に便利です。うがい受けは顔のラインに合わせた形状になっており、うがいや歯磨きの際の水や歯磨き粉をこぼさずに受け止めることができます。軽くて持ちやすいタイプや、ベッドサイドで使いやすい形状のものなど、さまざまな種類があります。要介護者の状態や使用シーンに合わせて選ぶとよいでしょう。うがい受けを使用することで、ベッドや衣服を濡らす心配がなくなります。

排せつの介護で必要なもの

排せつの介助は、介護者にとって体力的にも精神的にも大変な仕事です。また、要介護者にとっても排せつは非常にデリケートな問題です。ここからは、排せつの介護で必要なものや便利なグッズを紹介します。

  • ポータブルトイレ

トイレの失敗は要介護者の自尊心を傷つけることにもなりかねません。ポータブルトイレはベッドのすぐそばに置いておくことができるので、要介護者には安心です。また、家のトイレは一人での利用が基本なので、介護者と要介護者が一緒に入ると窮屈で身動きがしにくいものですが、ポータブルトイレならばその問題も解決できます。

 

ポータブルトイレには、座面の高さ調整ができるもの、ひじ掛けが付いているもの、暖房機能や脱臭機能が付いているものなど、さまざまな種類があります。中には、水洗式のものもあり、後片付けの手間を軽減できます。ただし、プライバシーの配慮も忘れずに、必要に応じて間仕切りなどを設置することも検討しましょう。

  • おしりふき

排泄ケアでは「大人用おしりふき」が欠かせません。大人用は拭き取る範囲が広いため、赤ちゃん用と比べて大きめサイズで厚手タイプが主流です。特に、トイレに流せるタイプは、処分の手間もかからないので気軽に使用できます。おしりふきを使用すると、清潔さを保ちやすくなり、皮膚トラブルの予防にもつながりため、ぜひ用意しておきたいアイテムです。

  • おむつ・おむつ用消臭袋

自力での排せつが難しい場合は、尿漏れパッドや紙おむつを使用します。おむつには、下着のように履けるパンツタイプ、寝たきりの方向けのテープ固定タイプ、軽度の尿漏れ用の薄型パッドなど、さまざまな種類があります。要介護者の状態や体の大きさに合わせて選びましょう。また、おむつを使用する際には、おむつ用消臭袋も忘れずに。ゴミ収集の日までの間もにおいを気にせず保管できます。

  • 消臭剤

おむつを使用する方のベッドの周りやポータブルトイレの周りには、置き型やスプレータイプの消臭剤を使用することをおすすめします。きちんと掃除をしていても、においを完全に防ぐことは難しいでしょう。消臭剤を使用すれば、介護者と要介護者の双方のストレスを軽減することができます。ただし、強すぎる香りは逆に不快に感じる場合もあるので、適度な消臭効果のものを選ぶことが大切です。

就寝時に必要なもの・あると便利なもの

就寝時に要介護者は、長時間同じ姿勢を保つことになります。そのため、体位変換や床ずれ防止、失禁対策など、さまざまな配慮が必要です。ここからは就寝時に必要なものや、あると便利なグッズを紹介します。快適な睡眠環境を整えることは、日中の生活の質の向上にもつながります。

  • 介護ベッド

介護ベッドは、起き上がりや体勢を変える動作が楽にできるように設計された特殊寝台です。高さや角度が変えられるため、要介護者の状態に合わせて調整できます。介護ベッドを使用することで、要介護者の自立を促すとともに、介護者の身体的負担も大きく軽減できます。選ぶ際は、要介護者の状態や部屋のサイズ、介護者の使いやすさなどを考慮しましょう。

  • 床ずれ防止マット

夜間に床ずれ防止で体位を頻繁に変えるのは大変です。そこで床ずれ防止マットを使用すると、就寝時にかかる圧力を分散し、床ずれを予防できます。床ずれ防止マットには、ビーズタイプやエアータイプなど様々な種類があります。要介護者の状態や好みに合わせて選びましょう。

  • 防水シーツ

防水シーツを使うと、失禁やおむつ替えの際に汚れから布団を守ってくれるため、片付けの手間が減ります。シーツの下に敷くタイプや、ベッドパッドと一体型になったタイプなど、様々な種類があります。洗濯可能なものを選ぶと、繰り返し使用できて経済的です。また、防水性だけでなく、通気性も良いものを選べば、蒸れを防いで快適に使用できます。

  • 体交まくら

自力で体位交換ができない方には、体位を支えるための体交まくらがあるとよいでしょう。体交まくらによって、体位変換後の姿勢を安定させ、長時間同じ姿勢を保つことができます。様々な形状のものがあり、背中や腰、足など、必要な部分をサポートします。要介護者の体型や好みに合わせて、適切なものを選びましょう。

移動時に必要なもの・便利なもの

外出や通院など移動の際には、要介護者の安全を確保しつつスムーズに移動するために、適切な補助具が欠かせません。ここからは外出や通院など、移動の際に必要なものや便利グッズを紹介します。これらのアイテムを活用することで、要介護者の行動範囲を広げ、社会参加の機会を増やすことができるでしょう。

  • 車いす

歩行が困難な方や、不安定な方の移動に必要な車いすは、室内用、外出用、リクライニング機能付きなど、さまざまな種類があります。要介護者の体格や症状、使用環境、利用状況に合わせて選びましょう。また、押しやすいハンドルの高さ、折りたたみ式で持ち運びしやすい、など、介護者目線での使いやすさも大切です。特に、電動車いすは移動に便利ですが、バッテリーの重量に注意する必要があります。

代表的なものには、シンプルな1本杖、グリップがT字型のT字杖、複数の脚で支える多点杖などがあります。選ぶ際は、軽量で扱いやすく安定性の高いものを選びましょう。杖の長さは使用者の体格に合わせることが大切です。適切な長さの目安として、グリップを握った状態で肘が軽く曲がる程度が理想的とされています。この角度は約30度になるようにします。購入の際には、実際に手に取って試してみることをおすすめします。使用者自身が扱いやすいと感じ、歩行時に安定感があるかどうかを確認しましょう。

  • 歩行器

杖よりも安定して歩行ができる歩行器は、車輪付きのもの、歩行器を持ち上げて進むものなど、さまざまな種類があります。車輪なしタイプは、立ち上がりや静止時に安心感があります。一方、車輪付きは体重をかけながらスムーズに移動できる利点があります。選ぶ際は、使用者の体の状態や生活環境を考えましょう。例えば、屋外でよく使う場合は、座面付きの歩行器が役立つかもしれません。これなら外出先で座って休憩もできます。

在宅介護であると便利なグッズ

在宅介護では、日常生活のあらゆる場面でさまざまな工夫が必要になります。ここからは、在宅介護であると便利なグッズを紹介します。介護の日々は、些細なことでも、毎日の積み重ねが大きな違いを生み出します。これらのアイテムは直接介護行為では使用しませんが、介護生活をよりよくするために活躍するでしょう。

  • ワイヤレスコールボタン

ワイヤレスのコールボタンは、介護者と要介護者が違う階にいるなど、そばにいないときに便利なグッズです。コールボタンがあれば、要介護者が何か必要なときにすぐに呼ぶことができるので、介護者も安心して他の作業を行えます。また、緊急時の連絡手段としても有効です。適切な使い方を要介護者と介護者で確認し、必要なときにのみ使用するようにしましょう。

  • 薬を入れられるポケット付きカレンダー

薬を入れて掛けておけるポケット付きのカレンダーは、薬の飲み忘れ防止におすすめです。日付ごとに透明のポケットが付いており、その日に飲む薬を入れておくことができます。朝・昼・夜の仕切りがついているタイプもあるので、1日の服薬スケジュールが一目でわかりますし、薬を飲んだか飲んでいないかも一目瞭然です。忙しい毎日の中で薬の管理まで気が回らないこともありますが、このカレンダーを使用することで確実な服薬管理ができるでしょう。

3まとめ

在宅介護には適切なアイテムや便利グッズの活用が欠かせません。要介護者の状態や生活環境に合わせて選んだアイテムは、日常生活のあらゆる場面で大きな助けとなり、介護の質を向上させるでしょう。

 

こうした工夫は、要介護者の自立を促し生活の質を向上させるだけでなく、介護者の身体的・精神的な負荷を軽くし、長期にわたって無理なく続けられる介護生活につながります。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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