介護にまつわるお役立ちコラム

認知症の介護ストレスで限界を感じた時の対処法とストレス軽減方法を紹介

2024年10月30日

認知症の介護は長期にわたる大きな負担を伴うため、介護者のストレスや疲労は避けられません。しかし、適切な対処法を知り、ストレス軽減の方法を実践することで、より良い介護環境を築けます。

 

この記事では、認知症介護の特徴や介護ストレスの実態を踏まえた上で、具体的な対処法やストレス軽減のポイントを紹介します。専門家への相談、介護サービスの活用、そして介護者自身のケアなど、多角的なアプローチを学び、持続可能な介護の実現を目指しましょう。

1認知症介護とは

認知症介護とは、認知症の方の日常生活を支援し、その人らしい生活を送れるようサポートすることです。認知症は脳の機能が低下することで引き起こされる病気で、記憶障害や判断力の低下、見当識障害などの中核症状に加え、徘徊や妄想、昼夜逆転といった周辺症状が現れる場合があります。

 

認知症の方は日常生活を送る上でさまざまな困難に直面します。例えば、食事の準備や服薬管理ができなくなったり、トイレの場所がわからなくなったりすることです。また、家族や介護者のことがわからなくなり、コミュニケーションが難しくなる場合もあります。

 

そのため、認知症の介護は介護者にとって身体的にも精神的にも大きな負担になるのです。特に、認知症介護で介護者がストレスを感じやすい場面としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 同じ質問や行動を何度も繰り返される
  • 介護への抵抗や拒否がある
  • 徘徊や危険な行動への対応
  • 被害妄想などによる誤解や攻撃的な言動
  • 昼夜逆転による睡眠不足
  • コミュニケーションの困難さ

これらの状況に日々直面することで、介護者は疲労やストレスを蓄積しやすくなります。また、先の見えない介護に不安を感じたり、自分の時間が持てないことへのストレスを抱えたりすることも少なくありません。

 

認知症介護のストレスは長期化しやすく、介護者自身の心身の健康を損なう可能性があります。そのため、介護者がストレスを軽減し、健康を維持しながら介護を続けられるよう、適切な支援やストレス対処法を知ることが重要です。

2介護ストレス・介護疲れは鬱に発展する可能性も

認知症介護は長期にわたるケースが多く、介護者の負担が徐々に増大していきます。過度なストレスや疲労が蓄積されると、介護者自身の心身の健康に影響を及ぼし、最悪の場合、介護うつと呼ばれる状態に陥る可能性があります。

 

介護うつとは、介護による負担やストレスが原因で発症するうつ症状を指します。具体的には、食欲不振、不眠、気分の落ち込み、意欲の低下、集中力の低下などの症状が現れます。これらの症状が2週間以上続く場合、介護うつの可能性が高いと考えられます。

 

介護うつに陥ると、介護者自身の生活に支障をきたすだけでなく、適切な介護を行うのが困難になるリスクがあります。さらに深刻な場合、介護放棄や高齢者虐待につながる可能性もあります。介護者の心身の健康は、要介護者の生活の質にも直接影響するため、介護うつの予防と早期発見・対処が非常に重要です。

介護者の多くが悩みやストレスを抱えている現状

在宅介護を行っている介護者の実に6割以上が何らかの悩みやストレスを抱えているのが現状です。この数字は、介護の負担が決して軽いものではない現実を如実に示しています。介護者は身体的な疲労だけでなく、精神的な負担、経済的な不安など、さまざまな問題に直面しています。

 

特に認知症介護の場合、症状の進行に伴い介護の内容や方法も変化していくため、常に新たな課題に対応しなければなりません。このような状況下で、多くの介護者が孤立感や将来への不安を感じ、ストレスを抱えていると考えられます。

主な介護要因は認知症

介護が必要となる主な要因として、認知症が16.6%を占め、最も高い割合となっています。認知症が現代社会における重要な健康課題であることを示していると言えるでしょう。

 

認知症の症状が見られた場合、基本的に何らかの介護や支援が必要になります。認知症は進行性の病気であり、時間の経過とともに症状が変化するからです。初期段階では見守りや軽度の支援で済むこともありますが、中期から後期になると、日常生活のほぼ全般にわたって介助が必要になる場合が多いです。

 

認知症介護は長期的かつ包括的なケアが求められるため、介護者への負担が大きくなりやすい特徴があります。そのため、介護者自身のケアや適切なサポート体制の構築が、認知症介護において特に重要です。

3認知症介護のストレスで限界を感じたときの対処法

認知症介護のストレスで限界を感じたとき、一人で抱え込まずに適切な支援を受けましょう。

 

以下では、具体的な対処法をいくつか紹介します。専門家への相談、介護支援サービスの活用、そして介護施設への入所検討など、状況に応じた選択肢を考えてみましょう。

認知症の専門医や専門家に相談する

認知症の専門医や専門家に相談すると、適切な治療や介護方法のアドバイスを受けられます。専門家は認知症の症状や進行状況を正確に把握し、それに応じた対応策を提案してくれます。また、介護者自身のストレスや不安についても相談でき、メンタルヘルスのサポートを受けられます。

 

認知症の相談ができる専門家や専門医がいる機関の具体例は、以下の通りです。

  • 認知症疾患医療センター
  • 地域包括支援センター
  • かかりつけ医や精神科医
  • 認知症の人と家族の会
  • 認知症カフェ

これらの機関では、認知症に関する専門的な知識を持つ医師や介護の専門家が相談に応じてくれます。介護者の悩みを共有し、適切なアドバイスを得ることで、介護ストレスの軽減につながる可能性があります。

介護支援サービスを活用する

介護支援サービスには、介護保険が適用されるものから保険外サービスまで様々な種類があります。サービスを上手く活用することで、介護者の負担を軽減し、より良い介護環境を整えられます。

 

すでに介護保険適用サービスを利用している人は、ケアマネジャーに相談してケアプランの見直しを検討するとよいでしょう。状況の変化に応じて、より適切なサービスの組み合わせを提案してもらえる可能性があります。

 

認知症の方が利用できる介護支援サービスの例を以下に紹介します。

 

【認知症の方が利用できる介護支援サービスの例】

デイサービス・日帰りで施設に通い、食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを受ける
・認知症専門のデイサービスもある
訪問介護・ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排泄などの身体介護や掃除、洗濯などの生活援助を行う
ショートステイ・短期間、施設に宿泊して介護サービスを受ける
・介護者の休息や急用時に利用できる
訪問看護・看護師が自宅を訪問し、医療処置や健康管理を行う
・認知症の症状管理にも対応
訪問リハビリステーション・理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、身体機能の維持・改善のためのリハビリを行う
訪問入浴・移動入浴車で自宅を訪問し、入浴介助を行う
・自宅での入浴が困難な場合に利用できる
  • イチロウの介護サービスでできること

イチロウの介護サービスは、介護保険では対応できないあらゆる介護・生活支援を24時間365日、オーダーメイドで提供する特徴があります。厳しい基準をクリアした一流の介護士が、高品質でホスピタリティの高いサービスを提供します。

 

特に認知症の患者さんやそのご家族に対しては、以下のようなサポートが可能です。

  • 認知症の症状に応じた柔軟な対応:徘徊や昼夜逆転など、認知症特有の症状に対して、時間帯を問わず適切なケアを提供
  • 家族の負担軽減:24時間体制で介護サービスを提供することで、家族の介護負担を大幅に軽減する
  • 生活全般のサポート:食事の準備、掃除、洗濯などの日常生活全般をサポートし、認知症の方の生活の質を維持する
  • 通院や外出の付き添い:病院への通院や買い物など、外出時の付き添いサービスを提供し、安全な移動をサポートする
  • 見守りサービス:日中や夜間の見守りサービスにより、家族が安心して休息や仕事ができる環境を整える

イチロウの介護サービスは、介護保険では対応できない細かなニーズにも柔軟に対応し、認知症の方とそのご家族に寄り添った支援を提供しています。

介護施設への入所を検討する

認知症の家族を自宅で介護することが困難だと判断した場合は、施設への入所も検討するとよいでしょう。施設入所は、専門的なケアを24時間受けられる環境で、介護者の負担を大幅に軽減できます。

 

施設への入所を検討する際の判断基準としては、以下のような点が挙げられます。

  • 介護者の身体的・精神的負担が限界に達している
  • 自宅での安全確保が難しくなっている
  • 医療的なケアが頻繁に必要になっている
  • 認知症の症状が進行し、専門的なケアが必要になっている
  • 家族の生活や仕事との両立が困難になっている

認知症でも入所が可能な施設の例を以下に紹介します。

 

【認知症でも入所できる施設の例】

特別養護老人ホーム・常時介護が必要な方を対象とした施設
・原則要介護3以上が入所条件
・24時間体制の介護サービスを提供
介護老人保健施設・リハビリテーションを中心としたケアを提供する施設
・在宅復帰を目指す方や短期間の利用に適している
グループホーム・認知症の方を対象とした少人数制の共同生活施設
・家庭的な環境で、個別ケアを受けられる

これらの施設は、それぞれ特徴が異なるため、認知症の症状の程度や家族の状況に応じて、最適な施設を選択することが重要です。入所を検討する際は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

4介護ストレスを軽減するためのポイント

認知症介護のストレスを軽減するには、介護者自身の心のケアが非常に重要です。自分の気持ちを大切にしながら、適切な距離感を保つことで、より良い介護環境を築けるでしょう。

 

以下では、介護ストレスを軽減するための具体的なポイントをいくつか紹介します。

認知症家族に対する強い義務感を手放す

認知症家族に対する義務感とは、「家族だから自分が介護をしなければならない」「最後まで面倒を見るのは当然だ」といった強い責任感や使命感を指します。この感情は、介護者の善意から生まれるものですが、時として重荷となってしまう場合があります。

 

義務感や責任感、罪悪感が強すぎると、介護者は自分の限界を無視して無理を重ねてしまいがちです。結果として、心身の疲労が蓄積され、ストレスが増大してしまいます。

 

義務感を手放すためには、以下のような考え方を意識することが大切です。

  • 完璧な介護は存在しないことを受け入れる
  • 自分の限界を認識し、無理をしないことを心がける
  • 介護は一人で抱え込むものではなく、社会全体で支えるものだと考える
  • プロの介護サービスを利用することも、家族への愛情表現の一つだと捉える
  • 自分の時間や健康を大切にすることが、結果的に良い介護につながると理解する

このように考えることで、過度な義務感から解放され、より柔軟な介護の姿勢を持つことができるでしょう。

他の家族と比べない

他の家族の介護状況と自分の状況を比較することは、ストレスを軽減する上で避けるべき行動です。なぜなら、認知症の症状や進行度、家族の環境や状況は千差万別であり、単純に比較することはできないからです。

 

他の家族と比較してしまうと、「あの家族は在宅介護を続けているのに、自分は施設入所を検討している」「同じ時期に発症したのに、症状の進行度が違う」といった思考に陥りがちです。このような比較は、自分を追い詰めたり、不必要な罪悪感を抱いたりする原因となり、ストレスを増大させてしまいます。

 

大切なのは、自分と家族の状況に合った最適な介護方法を見つけることです。他の家族の事例を参考にすることは有益ですが、それを自分の状況に当てはめて判断することが重要です。自分たちのペースで、無理のない介護を続けていくことが、結果的にストレスの軽減につながります。

ストレスや悩みのはけ口を確保しておく

ストレスや悩みのはけ口を確保するのは、介護ストレスを軽減する上で非常に重要です。なぜなら、介護に関する悩みや不安を抱え込んでしまうと、精神的な負担が増大し、最終的には介護の質の低下にもつながりかねないからです。

 

ストレスや悩みを吐き出すことで、精神的な負担が軽減され、客観的に状況を見直す余裕が生まれます。また、同じような悩みを持つ人々と交流することで、新たな視点や解決策を得られる可能性もあります。

 

家族や親族以外のストレスや悩みのはけ口として、以下のような選択肢があります。

  • 認知症カフェ:認知症の人や家族、地域の人々が気軽に集まれる場所で、情報交換や相談ができる
  • オンラインコミュニティ:インターネット上で同じ悩みを持つ人々と交流できるプラットフォーム。時間や場所の制約なく利用できる
  • 介護者の会:定期的に開催される介護者同士の交流会で、経験や情報を共有できる
  • 専門家によるカウンセリング:心理カウンセラーや介護の専門家に個別に相談できる機会を持つことも有効

これらの場を活用することで、介護者は自分の気持ちを整理し、新たな視点や解決策を得ることができます。定期的にストレスや悩みを吐き出す機会を持つことで、より健康的に介護を続けることが可能になるでしょう。

5まとめ

認知症介護のストレスに対処し、介護者の心身の健康を維持することは、長期的な介護を継続する上で不可欠です。専門家への相談、介護支援サービスの活用、そして介護施設の検討など、様々な選択肢を柔軟に考慮することが重要です。また、強い義務感を手放し、他の家族と比較せず、ストレスのはけ口を確保することで、介護者自身のケアも忘れずに行うことができます。これらの対策を実践することで、より良い介護環境を築き、認知症の方とその家族の生活の質を向上させることができるでしょう。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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