介護にまつわるお役立ちコラム
認知症介護のつらさ・大変なこととは?基本的な対応方法や介護疲れを軽減する付き合い方

認知症介護は、多くの家族にとって大きな挑戦となりますが、適切な知識と対応方法を身につけることで、負担を軽減できます。この記事では、認知症の基本的な症状から、日々の介護で直面する困難や乗り越えるための具体的な方策を解説します。

認知症とは、脳の病気や障害などのさまざまな原因により認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態を指します。単なる老化現象ではなく、脳の神経細胞の働きが徐々に低下することで引き起こされる疾患です。
認知症は、原因や症状違いによって「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などに分類されます。それぞれ原因や症状の現れ方に特徴がありますが、共通して見られる症状は大きく分けて「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つの種類があります。
【認知症の中核症状】
- 記憶障害:新しいことを覚えられない、数分前の出来事を忘れる
- 見当識障害:日付や曜日、場所がわからなくなる
- 理解力・判断力の低下:状況や説明が理解できない、手続きや計算ができなくなる
- 実行機能障害:計画を立てて順序よく物事を実行することができなくなる
【認知症の周辺症状】
- 不安や抑うつ:一人になると怖がったり、何をするのも億劫がったりする
- 妄想:自分のものを誰かに盗まれたと思い込む
- 徘徊:目的もなく歩き回る
- 興奮や攻撃性:些細なことで怒りっぽくなる
認知症による物忘れは、加齢による物忘れとは異なります。加齢による物忘れは体験の一部を忘れる程度で、本人も自覚があり、日常生活に大きな支障はありません。
一方、認知症による物忘れは、体験そのものを忘れてしまい、本人に自覚がないことが多く、日常生活に支障をきたします。
認知症の初期に見られる症状で、注意しておきたい行動や言動には以下のようなものがあります。
- 同じことを何度も聞く、話す
- ものの置き忘れが増え、いつも探し物をしている
- 日付や曜日を間違える
- 調理の味付けを間違える、薬の飲み忘れが増える
- 財布や通帳などを「盗まれた」と言い出す
- 慣れた道で迷うことがある
以上のような症状が見られた場合、早めに専門医への相談を検討しましょう。早期発見・早期対応により、適切な治療やケアを受けることで、症状の進行を遅らせたり、生活の質を向上させたりできます。

認知症の方への基本的な対応として、以下の4つのポイントが重要です。
- まずは様子をしっかり観察・見守る
- 声かけは1人で優しい口調で行う
- できるだけ前向きな気持ちで明るくサポートする
- 叱責・命令・強制はしない
まず、認知症の方の様子をしっかりと観察し、見守ることから始めましょう。初期症状は加齢による物忘れと判断がつきにくいことがあるため、すぐに「認知症」と断定せず、普段の様子をさりげなくチェックすることが大切です。変化に気づいたら、医療機関や地域包括支援センターなどの適切な施設に相談することをおすすめします。
次に、声かけは1人で優しい口調で行うようにしましょう。認知症の方は常に不安を抱えながら生活しています。複数人で声をかけると、パニックになる恐れがあります。また、相手の目線に合わせ、なるべく優しい口調で、はっきりと話すことを心がけましょう。認知症の方に安心感を与え、コミュニケーションがスムーズになります。
できるだけ前向きな気持ちで明るくサポートすることも重要です。認知症の方は、自分の状態に不安を感じていることが多いからです。介護者が明るく接することで、認知症の方の気持ちも明るくなり、生活の質の向上につながります。例えば、最近あった明るい出来事を話題にしたり、楽しい思い出について語り合ったりするのも良いでしょう。
最後に、叱責・命令・強制はしないことが大切です。認知症の方は、記憶力や理解力、判断力の低下により、以前よりも行動が遅くなりがちです。しかし、「なぜこんなこともできないの」「もっと早くして!」といった言葉は、相手の自尊心を傷つけ、症状を悪化させる可能性があります。代わりに、できることを見守り、必要に応じてさりげなくサポートすることが望ましいです。
これらの対応が良いとされる理由は、認知症の方の尊厳を守り、安心感を与えることにつながるからです。認知症の方は、自分の状況に対する不安や混乱を感じていることが多いため、穏やかで理解ある環境を提供することが重要です。また、これらの対応は、認知症の方の残存能力を活かし、自立を促すことにもつながります。

認知症の方の症状は個人によってさまざまですが、いくつかの典型的な症状があります。これらの症状に対して適切に対応することで、認知症の方の不安を軽減し、より良い生活環境を作ることができます。
以下では、代表的な症状とその対応方法について詳しく説明します。
被害妄想は認知症の症状の一つで、「財布を盗られた」「家族から悪口を言われている」といった根拠のない思い込みを抱くことです。多くの場合、認知症による記憶障害が原因で、物の置き場所を忘れたり、周囲の状況を正確に理解できなくなったりすることから生じます。
このような状況では、本人の気持ちに寄り添い、共感的な態度で接するのが重要です。例えば、「それは大変ですね」と相手の気持ちを受け止めた上で、一緒に探すことを提案するなど、穏やかに解決策を模索しましょう。時には「置き忘れたのかもしれませんね」と優しく声をかけることで、本人が落ち着く場合もあります。
NG行動としては、妄想を強く否定したり、責め立てたりする行為です。これらの行動は本人の不安や混乱をさらに悪化させる可能性があります。また、無視をするのも避けるべきです。本人の訴えを真摯に受け止め、安心感を与える姿勢が大切です。
認知症の進行に伴い、暴言を吐いたり、叩く・突き飛ばすといった暴力的な行動を取ったりすることがあります。これは多くの場合、本人の不安や混乱、周囲の状況に対する誤解から生じます。
このような状況では、まず相手の気持ちを落ち着かせることを優先しましょう。「落ち着いてほしい」「何に怒っているのか聞かせて」などと穏やかに声をかけ、相手の感情を受け止める姿勢を示すのが重要です。また、安全な環境を確保し、必要に応じて距離を取ることも大切です。
NG行動としては、暴力に対して力で抑えつけたり、感情的に言い返したりする行動です。これらの行動は相手をさらに興奮させる可能性があります。また、相手を無視したり、一人にしたりするのも避けるべきです。常に冷静さを保ち、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が大切です。
認知症の方が徘徊し、迷子や行方不明になる場合があります。主に、記憶障害や見当識障害(時間や場所がわからなくなる症状)が原因で起こります。例えば、自宅にいるのに「家に帰る」と言って外出しようとする行動があります。
このような状況では、本人の気持ちに寄り添いながら、安全を確保するのが最優先です。例えば、「お茶でも飲んでからにしませんか」と別の話題に誘導したり、一緒に散歩に出かけたりすることで、外出願望を和らげられます。
外出を力ずくで止めようとしたり、本人の話を頭から否定したりしてはいけません。これらの行動は本人の不安や混乱を増大させる可能性があります。代わりに、GPSを利用した見守りシステムや、身元がわかるものを身につけてもらうなど、安全対策を講じましょう。
認知症の進行に伴い、尿意や便意を感じづらくなったり、トイレの場所がわからなくなったりすると、失禁が起こることがあります。また、トイレの使い方を忘れてしまうケースもあります。
このような状況では、本人の自尊心を傷つけないよう配慮しながら対応することが重要です。失禁があった場合は、さりげなく片付け、本人を責めたりせず、優しく対応しましょう。また、定期的にトイレに誘導したり、トイレの場所をわかりやすく表示したりするなど、予防的な対策も効果的です。
失禁を叱ったり、責めたりすることはNGです。これらの行動は本人の自尊心を著しく傷つけ、トイレの失敗を隠すようになる可能性があります。また、過度に下着を確認したり、トイレに行くよう強制したりするのも避けるべきです。本人の尊厳を守りながら、さりげなくサポートしましょう。

認知症の介護にはさまざまな課題があり、介護者に多大な負担がかかることがあります。身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスも大きな問題となります。
ここでは、認知症介護において特に大変だと感じられる次の5つについて詳しく見ていきます。
- 介護期間に終わりが見えない
- 暴言や暴力による心身のストレス
- 介護を拒否される
- 24時間体制の介護による睡眠不足
- 仕事と介護の両立が難しい
認知症の介護期間は個人差が大きく、一概に予測できません。一般的には6~7年程度と言われていますが、10年以上続くケースも珍しくなく、介護者に大きな不安をもたらします。
認知症は必ずしも寿命の直前に発症するわけではなく、身体が比較的健康な段階から始まることもあります。そのため、介護者は長期にわたる介護の可能性を考慮しなければなりません。
先の見えない状況は、介護者に精神的な疲労をもたらし、時には絶望感さえ感じさせかねません。日々の介護に追われながら、終わりが見えないという状況は、介護者の心身に大きな負担となります。
認知症の進行に伴い、暴言や暴力的な行動が現れる場合があります。例えば、些細なことで激しく怒り出したり、介護者に対して侮辱的な言葉を投げかけたりすることがあります。時には、突然叩いたり物を投げつけたりするなど、予測不可能な暴力的行動を取ることもあります。
このような状況に直面すると、介護者は深く傷つき、強いストレスを感じます。愛する家族からの暴言や暴力は、たとえ認知症が原因だと理解していても、心に大きな傷を残します。また、常に暴力の可能性を警戒しなければならないという緊張状態が続くと、身体的にも精神的にも疲弊してしまいます。
認知症の方の介護拒否も、介護者にとって大きな課題となります。例えば、食事や薬の服用、入浴などの日常的なケアを拒むことがあります。「今は食べたくない」「薬なんて必要ない」「お風呂に入りたくない」といった拒否が繰り返されると、介護者は無力感や挫折感を味わいます。
介護を拒否されると、必要なケアを提供できないことへの不安や焦りが生じます。また、「自分の介護が下手だから拒否されるのではないか」と自信を失う場合もあります。さらに、拒否を説得しようとして口論になり、関係性が悪化してしまうケースもあります。このような状況が続くと、介護者は身体的にも精神的にも疲弊してしまいます。
認知症の方の介護は、昼夜を問わず必要となることがあります。特に夜間の徘徊や不眠といった症状が現れると、介護者は十分な睡眠を取るのが困難になります。
例えば、真夜中に「家に帰る」と言って外出しようとする認知症の方を見守り、安全を確保しなければならないこともあります。
このような状況下では、介護者は常に警戒態勢を強いられ、深い睡眠を取ることができません。断続的な睡眠や慢性的な睡眠不足は、介護者の健康に深刻な影響を及ぼします。
集中力の低下、判断力の鈍化、イライラ感の増大など、日中の生活にも支障をきたすようになります。さらに、長期的な睡眠不足は、うつ病などの精神疾患のリスクを高める可能性もあります。
認知症の介護と仕事の両立は、多くの介護者にとって大きな課題となります。認知症の症状は予測不可能で、急な対応が必要になるケースも少なくありません。
例えば、仕事中に「認知症の家族が行方不明になった」という連絡を受け、急遽仕事を中断して捜索に向かわなければならない場合もあります。
このような状況下では、仕事に集中することが難しく、パフォーマンスの低下を招きます。また、頻繁な休暇取得や早退が必要となり、職場の理解が得られないケースもあるでしょう。最悪の場合、介護のために退職を余儀なくされることもあります。
仕事を辞めることは、経済的な問題だけでなく、社会とのつながりの喪失や自己実現の機会の損失にもつながります。一方で、仕事を続けることで介護に十分な時間を割けないという罪悪感に悩まされることもあります。このジレンマは、介護者に大きなストレスをもたらします。

認知症の介護は長期にわたることが多く、介護者の心身の健康を維持することが重要です。
ここでは、介護疲れを軽減し、持続可能な介護を実現するための方法をいくつか紹介します。これらの方法を取り入れることで、介護者自身のQOL(生活の質)を保ちながら、より良い介護を提供することができるでしょう。
認知症の介護において、ストレスやイライラを感じるのは自然なことです。しかし、これらの感情を抑え込み続けると、介護者自身の心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。長期にわたる介護では、介護者自身のケアも重要です。
そのため、一人で全ての負担を背負い込むのではなく、家族や親族に相談し、協力を求めることが大切です。介護の役割分担や、定期的な休息の確保など、具体的な支援を依頼することで、気持ちの負担を軽減できます。
また、家族や親族以外にも、同じ立場の人々と交流できる場があります。例えば、認知症カフェは、認知症の方やその家族が気軽に訪れ、情報交換や悩みの共有ができる場所です。さらに、インターネット上にはネットコミュニティも存在し、時間や場所を問わず同じ悩みを持つ人々とつながることができます。
これらの場を活用して不安や悩みを吐き出すことで、精神的な負担を軽減し、新たな視点や対処法を得ることができるでしょう。
自宅での介護に利用できる支援サービスを活用することは、介護負担を軽減する効果的な方法の一つです。これらのサービスを利用することで、介護者は一時的に介護から解放され、自分の時間を持つことができます。また、専門家による適切なケアを受けることで、認知症の方の生活の質も向上します。
介護支援サービスを利用するメリットとしては、介護者の身体的・精神的負担の軽減、介護の質の向上、社会とのつながりの維持などが挙げられます。また、これらのサービスを利用することで、介護者が仕事や自身の生活を維持しやすくなるという点も重要です。
【自宅で利用できる介護支援サービスの例】
デイサービス | ・日中、施設で食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを受ける |
・認知症の方の社会性維持や介護者の休息に効果的 | |
訪問介護 | ・ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排泄などの介助を行う |
・日常生活の支援を受けられる | |
ショートステイ | ・短期間、施設に宿泊してケアを受ける |
・介護者の休養や外出時に利用可能 | |
訪問看護 | ・看護師が自宅を訪問し、医療的ケアや健康管理を行う |
・医療ニーズの高い方に適している | |
訪問リハビリステーション | ・理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、リハビリを行う |
・身体機能の維持・改善に効果的 | |
訪問入浴 | ・入浴車で自宅を訪問し、入浴の介助を行う |
・自宅での入浴が困難な方に適している |
- イチロウの介護サービスでできること
イチロウの介護サービスは、認知症の方とそのご家族に寄り添った、きめ細やかなサポートを提供しています。介護保険では対応できないさまざまな介護・生活支援を24時間365日、オーダーメイドで提供することが特徴です。
認知症の患者さんに対しては、個別のケアプランを作成し、その方の残存能力を最大限に活かすアプローチを行います。例えば、日常生活動作(ADL)の支援を通じて、できる限り自立した生活を送れるようサポートします。また、認知症の症状に応じた適切なコミュニケーション方法を用いて、穏やかな環境づくりに努めてくれます。
介護するご家族に対しては、レスパイトケア(介護者の休息)の提供や、介護技術の指導を行います。認知症の方との適切なコミュニケーション方法や、ストレス管理の技術なども指導します。さらに、24時間の相談窓口を設置しており、突発的な出来事や不安な気持ちにいつでも対応できる体制を整えています。
イチロウの介護サービスは、認知症の方とご家族が安心して暮らせる環境づくりをサポートしてくれるので、認知症の介護疲れを感じている方は、ぜひ一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。
認知症の家族を自宅で介護することが困難だと感じた場合、施設への入所を検討することも一つの選択肢です。自宅介護と施設介護にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、介護者の負担が大きくなりすぎたり、本人の安全が確保できなくなったりした場合には、施設入所を考える時期かもしれません。
施設入所の判断基準としては、以下のような点が挙げられます。
- 認知症の症状が進行し、24時間の見守りが必要になった場合
- 徘徊や暴力など、在宅での対応が困難な行動が頻繁に見られるようになった場合
- 介護者の健康状態が悪化し、十分なケアを提供できなくなった場合
- 家族の生活や仕事との両立が極めて困難になった場合
【認知症で入所できる施設の例】
特別養護老人ホーム | ・要介護3以上の方が対象。24時間体制で介護サービスを提供 |
・終身利用が可能で、看取りにも対応している施設が多い | |
介護老人保健施設 | ・リハビリテーションに重点を置いた施設 |
・在宅復帰を目指すための中間施設として位置づけられている | |
・医療的ケアも受けられる | |
グループホーム | ・認知症の方を対象とした少人数制の共同生活施設 |
・家庭的な環境で、個別ケアを受けられる | |
・認知症ケアに特化したスタッフが常駐している |
認知症介護は長期にわたる心身の負担を伴う挑戦ですが、適切な知識と支援を得ることで、介護者と患者双方の生活の質を向上させることができます。認知症の症状を理解し、適切な対応方法を学ぶことで、日々の介護をより円滑に進められます。
また、介護支援サービスや施設の利用を検討することで、介護者の負担を軽減し、持続可能な介護環境を整えることができます。一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に活用することが、長期的な介護を乗り越える鍵となります。認知症介護に取り組むことで、家族の絆を深め、新たな人生の価値を見出すことができるでしょう。