介護にまつわるお役立ちコラム

要介護3で使える介護保険サービス完全ガイド|利用負担金や利用の流れも把握しよう

2024年07月05日

要介護3の認定を受けた方やそのご家族にとって、介護保険サービスをどのように活用していけば良いのか悩ましい問題ではないでしょうか。本記事では、要介護3の心身の状態像から、利用できる様々な介護サービスの種類、料金負担、利用までの流れなどを詳しく解説します。適切なサービスを選択し、上手に組み合わせることで、要介護3の方が安心して生活を送れるようサポートすることを目指します。介護に向き合う方々の一助となれば幸いです。

1要介護3の心身状態とは?

要介護3は、日常生活において常時介護を必要とする状態であり、身体的にも認知機能的にも著しい低下がみられます。ここでは、要介護3の心身状態について、要介護認定の仕組みを交えながら詳しく解説します。

「要介護3」についておさらい

要介護認定とは、介護保険制度において、高齢者の心身の状況を評価し、必要な介護サービスの種類や量を判断するために行われる認定です。公平・中立な立場から、介護の必要性を7段階(要支援1・2、要介護1~5)に分けて評価します。

 

要介護3は、要介護1~5の中では中程度に位置し、介護の必要性が高い方から数えて3番目の区分です。日常生活での動作や認知機能の両面から、常時の見守りや介助を必要とする状態と言えます。

要介護度状態像
要支援1~2基本的動作は概ね自立しているが、手段的日常生活動作に何らかの支援が必要
要介護1~2手段的日常生活動作の能力が低下し、部分的な介護が必要
要介護3日常生活動作と手段的日常生活動作の両方で著しく能力が低下し、ほぼ全面的な介護が必要
要介護4~5動作能力が著しく低下し、介護なしでは日常生活がほぼ不可能
要介護3の具体的な心身状態

要介護3の方は、以下のような心身状態にあることが一般的です。

  • 排泄、入浴、着替えなど、身の回りのほとんどの行為に全面的な介助が必要
  • 自力での立ち上がりや歩行が困難で、移動には何らかの補助具や介助が不可欠
  • 認知症により、徘徊、妄想、不潔行為などの問題行動がみられることがある
  • 理解力や判断力の低下により、常に目を離すことができない

こうした状態は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」にも反映されています。要介護3の基準時間は以下の5分野の合計が「70分以上90分未満」とされています。

  • 直接生活介助(入浴、排泄、食事等の介護)
  • 間接生活介助(洗濯、掃除等の家事援助)
  • BPSD関連行為への対応
  • 機能訓練関連行為
  • 医療関連行為(診療の補助等)

つまり、要介護3の方は、生活のあらゆる場面で手厚い介護を必要とする状態にあると言えます。

要介護3の方の在宅介護は困難

要介護3の方の在宅介護は不可能ではありませんが、常時の介護が必要なため、家族の負担は非常に大きくなります。

 

訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)など、様々な在宅サービスを組み合わせ、切れ目のない支援体制を整える必要があります。それでも介護の担い手の心身の負担は重く、介護離職や介護疲れが問題となるケースも少なくありません。

 

在宅介護の継続が難しいと感じた場合は、速やかに施設入所も視野に入れた介護方法の見直しが求められます。介護保険施設や有料老人ホームなど、要介護3の方に適した入所施設を探すことも大切です。

2要介護3の方が使える介護保険サービス

要介護3の方は、下記のような多様な介護保険サービスを利用することができます。状況に応じて適切なサービスを選択し、組み合わせて利用することで、安心して生活を送ることができるでしょう。

相談サービス【1種】
種類概要
居宅介護支援ケアマネジャーによるケアプラン(介護保険サービスを利用するためのプラン)の作成や、サービス提供事業者との連絡・調整などを行います。利用者の状況や希望に合わせて、最適なサービスを選択・調整し、介護保険サービスがスムーズに利用できるようサポートします。

ケアマネジャーは、要介護者やその家族の相談に乗り、介護に関する様々な悩みや不安の解消にも努めます。また、介護保険サービス以外の社会資源(ボランティアや地域のサービスなど)の活用のアドバイスも行います。

訪問型サービス【6種】
種類概要
訪問介護(ホームヘルプ) ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴、排せつ、食事の介助など)や生活援助(掃除、洗濯、調理、買い物など)を行います。
訪問看護看護師等が自宅を訪問し、療養上の世話や必要な診療の補助を行います。病状の観察やバイタルチェック、服薬管理、医療機器の管理、リハビリテーションなども行います。
訪問リハビリテーション理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、リハビリテーションを行います。心身機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けます。
訪問入浴介護移動入浴車で自宅を訪問し、浴槽を持ち込んで入浴介助を行います。
夜間対応型訪問介護夜間や早朝に定期巡回や通報システムによる緊急時の対応などを行います。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が一体的または密接に連携しながら定期巡回と随時の対応を行います。

訪問型サービスは、要介護者の自宅での生活を支援するためのサービスです。身体介護や生活援助、医療面のケア、機能訓練など多岐にわたります。これらのサービスを適切に組み合わせることで、できる限り住み慣れた自宅での生活が継続できるよう支えます。

通所型サービス【5種】
種類概要
通所介護(デイサービス)デイサービスセンター等で日帰りの入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談・助言、健康状態の確認などが受けられます。
通所リハビリテーション(デイケア)介護老人保健施設や医療機関等で日帰りでのリハビリテーション、入浴、排せつ、食事等の介護が受けられます。
認知症対応型通所介護※認知症の方を対象とした専門のデイサービスです。少人数で、認知症の特性を踏まえたケアを受けられます。
療養通所介護※医療ニーズの高い要介護者に、医療機関で日帰りで看護や機能訓練等のケアが受けられます。
地域密着型通所介護※小規模な通所介護事業所で、日帰りで入浴、排せつ、食事等の介護等が受けられます。

※認知症対応型通所介護・療養型通所介護・地域密着型通所介護は介護保険サービスにおける「地域密着型サービス」に分類されます。そのため、事業所がある住所に在住する要介護者しか利用できないためご注意ください。

 

通所型サービスは「デイサービス」の総称で、施設に通って必要なケアを日帰りで受けるサービスです。入浴や食事、機能訓練などを提供するほか、利用者同士の交流の機会にもなります。自宅での介護の負担を軽減し、要介護者の心身機能の維持・改善を図ることを目的としています。

短期宿泊型サービス【2種】
種類概要
短期入所生活介護(ショートステイ)介護老人福祉施設等に短期間宿泊して、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練等が受けられます。
短期入所療養介護介護老人保健施設等に短期間宿泊して、看護、医学的管理下の介護、機能訓練等が受けられます。

ショートステイは、一時的に介護者が不在になる場合や、自宅での介護の負担を軽減するために利用されます。数日から数週間程度、施設に宿泊しながら必要なケアを受けられるサービスです。介護者のリフレッシュや休息、冠婚葬祭などの際に活用されることが多いです。

訪問・通所・宿泊複合型サービス【2種】
種類概要
小規模多機能型居宅介護「通い」を中心に、利用者の選択に応じて、「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービスを提供します。
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせたサービスで、「通い」「訪問」「泊まり」に加えて、必要に応じて訪問看護を受けられます。

小規模多機能型居宅介護は、「通い」「訪問」「泊まり」を柔軟に組み合わせて、利用者の状況や希望に応じたサービス提供を行います。看護小規模多機能型居宅介護は、それに加えて訪問看護も提供。医療ニーズにも対応しながら、在宅生活の継続を支援するサービスです。

施設入居型サービス【5種】
種類概要
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)※常時介護が必要で、自宅での生活が困難な方が入所する施設です。日常生活上の支援や介護が受けられます。
介護老人保健施設 (老健) 病状が安定期にあり、リハビリに重点をおいたケアが必要な方が入所する施設です。看護、医学的管理下の介護、リハビリテーションが受けられます。
介護療養型医療施設長期の療養が必要な方が入所する医療機関です。医学的管理下の介護などが受けられます。
特定施設入居者生活介護有料老人ホームやケアハウス等で、入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談・助言などが受けられます。
介護医療院日常的な医学管理や看取り・ターミナル、長期の療養が必要な方が入所する施設です。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)認知症の方が少人数で共同生活を送りながら、食事や入浴等の介護や機能訓練等を受けられます。

※特別養護老人ホームは原則要介護3以上の認定がないと入所できないためご注意ください。

 

施設入居型サービスは、施設に入所して日常的に介護を受けるサービスです。常時介護が必要で在宅での生活が難しい場合に利用されます。特養やグループホーム等では生活の場としてのケア、老健や介護療養型医療施設では医療的なケアに重点が置かれます。

福祉用具のサービス【2種】
種類概要
福祉用具貸与車いすやベッドなど、福祉用具のレンタルサービスです。
特定福祉用具販売入浴補助用具や腰掛便座の購入費が、一定の上限額の範囲内で保険給付されるサービスです。

福祉用具は、要介護者の自立した生活を助け、介護する側の負担を軽くするための用具です。介護保険の対象となる福祉用具は、レンタル(福祉用具貸与)もしくは購入(特定福祉用具販売)することができます。レンタルの場合は原則として全額が保険給付の対象となりますが、購入の場合は一定の上限額(10万円まで)までが給付対象となります。

番外編|民間の介護施設

介護保険サービス以外にも、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームといった民間の介護施設があります。

 

サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造等を有し、安否確認や生活相談サービスが付いた賃貸住宅です。有料老人ホームは、食事の提供や介護サービスなどを行う施設で、介護が必要となった場合に適したケアを受けながら生活を送ることができます。

 

これらの施設は介護保険の対象外ですが、要介護認定を受けていれば、施設内で介護保険サービスを利用することは可能ですし、外部の介護保険サービス(在宅サービス)を利用することも可能です。民間施設の特徴は、入居一時金や月額利用料の設定が事業者によって様々であること。サービス内容や費用を十分に比較検討し、自身に合った施設を選ぶことが大切です。

3要介護3の介護保険サービス利用負担額

介護保険サービスを利用する場合、原則として費用の1割を利用者が負担することになります。ただし、所得に応じて2割または3割の負担となるケースもあります。

 

具体的には、65歳以上で合計所得金額が160万円以上の方は2割負担、220万円以上の方は3割負担となります。40歳以上65歳未満の方は、標準報酬月額28万円以上の方が2割負担、65万円以上の方が3割負担です。

1ヵ月の利用限度額

要介護度に応じて、1ヵ月あたりの介護保険サービスの利用限度額が設定されています。要介護3の場合、その限度額は270,480円です。

 

この限度額の範囲内であれば、1割〜3割の自己負担で介護保険サービスを利用することができます。しかし、限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分については全額自己負担となります。

利用限度額を超えた場合の減額措置

介護保険サービスの利用者に過度な経済的負担がかからないよう、高額介護サービス費や高額医療・高額介護合算制度といった減額措置が設けられています。高額介護サービス費は、1ヵ月の利用者負担額が上限額を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される制度です。上限額は所得に応じて設定されています。

 

また、1年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が著しく高額になった場合、高額医療・高額介護合算制度により、自己負担が一定の限度額を超えた分が払い戻されます。これらの制度により、介護保険サービスの必要性が高い方でも、過度な経済的理由から必要なサービスの利用を控えることがないよう配慮されています。

4介護保険サービス利用までの流れ

介護保険サービスを利用するまでには、以下のような流れがあります。

  • 1. お住まいの市区町村に要介護認定の申請をする
  • 2. 市区町村職員または委託を受けた機関の職員による訪問調査を受ける
  • 3. かかりつけ医に心身の状態についての意見書を書いてもらう
  • 4. 訪問調査の結果とかかりつけ医の意見書をもとに、コンピュータを用いた一次判定が行われる
  • 5. 介護認定審査会において、一次判定の結果や特記事項等をもとに二次判定が行われ、要介護度が決定する
  • 6. 市区町村から結果が通知される
  • 7. 居宅介護支援事業者のケアマネジャーと相談し、ケアプランを作成する
  • 8. ケアプランに基づいて介護保険サービスを利用する

まず、要介護認定の申請を行います。申請を受けた市区町村は、本人の心身の状況について、訪問調査とかかりつけ医の意見書をもとに審査・判定を行います。審査・判定は二段階で行われ、コンピュータを用いた一次判定の後、保健・医療・福祉の学識経験者から構成される介護認定審査会において二次判定が行われます。こうして要介護度が認定されると、市区町村から結果が通知されます。

 

要介護度の認定を受けたら、ケアマネジャーに相談し、心身の状況や希望に合わせたケアプランを作成します。このケアプランに基づいて、実際に介護保険サービスを利用することになります。

5介護保険外サービスの利用について

要介護3と認定された方の中には、介護保険サービスだけでは十分に対応できないニーズを抱えている方もいらっしゃいます。そのような場合、介護保険外のサービスを利用することも選択肢の一つです。介護保険外サービスとは、介護保険の対象とならないサービスのことを指します。これらのサービスを利用する場合、全額自己負担となります。ただし、市区町村や民間団体等が独自に助成を行っている場合もあります。

 

介護保険外サービスの例としては、以下のようなものがあります。

  • 配食サービス
  • 移送サービス(介護タクシー等)
  • 外出同行サービス
  • 話し相手サービス
  • 理美容サービス
  • 住宅改修(手すりの取り付け等)

介護保険外サービスを利用する際は、サービスの質や費用、提供体制などを十分に確認することが大切です。特に、事業者の信頼性や実績については慎重に評価する必要があります。

 

また、利用者の心身の状況や生活環境、経済状況等を総合的に勘案し、真に必要なサービスを選択することが重要です。必要以上のサービスを利用すると、かえって利用者や家族の経済的・精神的な負担が大きくなる可能性があります。

 

介護保険外サービスの利用を検討する際は、ケアマネジャーや地域包括支援センター等の専門家に相談し、アドバイスを求めることをおすすめします。利用者や家族の状況を踏まえた上で、適切なサービスの組み合わせを提案してもらうことができます。

6まとめ

要介護3は常時の介護が必要な状態ですが、適切な介護保険サービスを利用することで、その多くは在宅での生活が可能です。自宅で利用できる訪問系や通所系サービス、福祉用具のレンタルや購入補助など、利用者の状況に合わせて選択肢は豊富にあります。

 

しかし、サービス利用にかかる自己負担額や、要介護度に応じた支給限度額についても把握しておかなければなりません。利用限度額を超えた場合の減額措置など、費用面での助成制度にも目を向けることが大切です。

 

一方で、介護保険サービスだけでカバーしきれないニーズには、自費の介護保険外サービスも視野に入れましょう。ただし、サービス選択には慎重さが求められます。介護保険サービスの利用までの流れを理解し、ケアマネジャーをはじめとする専門職の助言を得ながら、利用者や家族に最適なサービスの組み合わせを探っていくことが重要です。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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