介護にまつわるお役立ちコラム

高齢者の一人暮らしのリスクとは?不安を解消する対策も紹介

2024年07月01日

高齢者の一人暮らしが年々増えています。「一人暮らしの親の健康が心配」「一人で暮らせるか不安」そんな思いを抱えている人は多いのではないでしょうか。一人暮らしには様々なリスクが潜んでいます。しかし、今からできる対策を知っておけば、高齢者もその家族も安心して過ごせるようになります。

 

この記事では、高齢者の一人暮らしのリスクと、不安を和らげる具体的な方法をわかりやすくお伝えします。最後まで読めば、今からできる備えが明確になり、高齢者の一人暮らしへの不安が軽減されるでしょう。

12070年には2.6人に1人が65歳以上に

我が国の総人口は、令和4年10月1日現在、1億2,495万人となっています。そのうち65歳以上人口は3,624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29.0%に達しました。

 

今後も高齢化は進み、令和52年には高齢化率が38.7%となり、国民の約2.6人に1人が65歳以上の高齢者という社会が到来すると推計されています。

 

また、65歳以上人口のうち、75歳以上の後期高齢者は令和52年(2070年)には総人口の25.1%を占め、約4人に1人が75歳以上になると見込まれています。

 

参照元:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

高齢者の一人暮らしの割合

65歳以上の一人暮らしの高齢者は年々増加傾向にあります。

 

昭和55年には男性約19万人(高齢者人口の4.3%)、女性約69万人(同11.2%)だったのが、平成27年には男性約192万人(同13.3%)、女性約400万人(同21.1%)と大幅に増加しています。

 

令和22年には、65歳以上の男性の20.8%、女性の24.5%が一人暮らしになると推計されており、高齢者の4~5人に1人が一人暮らしという時代がやってきます。

 

核家族化や晩婚化・非婚化の影響で、今後も高齢者の一人暮らしは増えると考えられ、様々な課題やリスクが懸念されます。

 

参照元:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

2高齢者の一人暮らしが増えている原因

現在、日本では高齢化が進み、65歳以上の一人暮らしの高齢者が年々増加しています。なぜ高齢者の一人暮らしが増えているのでしょうか。ここでは、その主な原因について見ていきましょう。

頼れる身内・家族がいない

配偶者との死別や少子化による核家族化が進む現代では、身内や家族がいない高齢者が増えています。特に、配偶者を亡くした高齢者や子供がいない家庭は、一人暮らしを余儀なくされることが多いです。

 

また、都市部においては、仕事や教育のために子供たちが遠方に移住し、結果として高齢者が孤立するケースも少なくありません​​。

現状の生活に不自由なく不満がない

安定した収入と経済的自由を持つ高齢者は、一人で生活することに問題を感じない場合が多いです。年金や貯蓄がしっかりしている場合、生活の質を維持しながら安心して一人暮らしを続けられるため、不満を抱くことなく生活を楽しむことができます​​。

誰かと共同生活することに抵抗がある

子供との同居や老人ホーム入居などを選択肢に考えても、一緒に暮らすことでストレスを感じてしまう人や、今の住まいから引っ越すことに抵抗がある人は、あえて一人暮らしを選ぶ場合もあります。

 

自分のペースで気ままに暮らしたいという思いから、共同生活よりも一人暮らしを望む高齢者は少なくないのです。

3高齢者の一人暮らしで不安なリスク・問題点

高齢者の一人暮らしでは、加齢に伴う様々なリスクにさらされるため、日常生活に不安を抱える場合があります。具体的には、健康面の不安や介護が必要になったときの対応への心配など、全てを一人で背負わなければならない状況に不安を感じています。以下では、高齢者の一人暮らしにおける代表的な不安要素について詳しく見ていきましょう。

日常の健康や病気

高齢になると、病気やケガのリスクが高まります。一人暮らしの場合、病気やケガをしたとき、周りに気付いてもらえず重症化したり、自力での対処が難しくなったりします。このような状況は大きな不安要素となっています。

介護生活に伴う肉体的・精神的負担

一人暮らしの高齢者にとって、介護が必要になったときのサポートや介護にかかる費用は大きな負担となります。家族のサポートが得られず、専門家による支援を受ける必要がある場合、肉体的にも精神的にも大きなストレスを一人で背負うことになるでしょう。

認知症の発症

認知症は、自覚症状が乏しいのが特徴です。一人暮らしだと認知症の兆候に周囲が気付きにくく、症状が進行してから発見されるケースが少なくありません。認知症の進行により、一人での生活が困難になるリスクもあります。

詐欺・犯罪に巻き込まれる可能性

高齢者を狙った特殊詐欺や振り込め詐欺は年々増加傾向にあります。一人暮らしの高齢者は、家族など周囲からのアドバイスを受けられないため、犯罪に巻き込まれるリスクが高くなります。被害に遭っても気付きにくいという問題もあります。

孤独死のリスク

高齢者の一人暮らしでは、万が一のときに発見が遅れ、孤独死につながるリスクがあります。誰にも看取られることなく亡くなり、発見が遅れるケースは社会問題にもなっています。

 

以上のように、高齢者の一人暮らしには様々な不安とリスクが潜んでいます。次の章では、このような不安を解消するための対策について解説します。

4高齢者の一人暮らしのリスク・問題点への対策

前章で解説したように、高齢者の一人暮らしには様々なリスクや問題点があります。しかし、適切な対策を講じることで、これらの不安を軽減し、安心して生活を送ることができます。ここでは、家族との同居や見守りサービスの活用、自治体のサービス利用など、具体的な対策について見ていきましょう。

家族や身内との同居

リスク回避の最も有効な方法は、家族や身内と同居することです。同居することで、日常的に高齢者の様子を見守ることができ、急な体調変化にも速やかに気づくことができます。家族にとっても、高齢者の安全を確認でき安心につながります。

 

なお、自治体によっては、親世帯との同居を支援する補助金制度を設けているところもあります。例えば、千葉市の「三世代同居・近居支援事業」では、三世代家族の同居・近居に必要な費用の一部を助成しています。

 

参考:千葉市三世代同居・近居支援事業

高齢者見守りサービスの活用

家族が遠方に住んでいる場合など、直接の見守りが難しい場合は、民間企業が提供する見守りサービスの活用が有効です。

 

自宅にセンサーを設置し、一定時間動きがないと異常と判断して連絡するタイプや、ペンダント型の緊急通報装置を利用するタイプなど、様々なサービスがあります。利用料は月額数千円程度のものが多く、高齢者の安全を守るために、検討する価値は十分にあるでしょう。

各自治体の高齢者向けサービスの活用

自治体では、高齢者を支援するための様々なサービスを提供しています。例えば、三鷹市では、週1~2回の食事宅配サービスや、ゴミ捨て場所までゴミを出す支援、週1回のボランティアによる電話訪問などを行っています。

 

また、札幌市でも、月~土曜の週6日の範囲で夕食を届ける配食サービスや、月1回のおむつ宅配サービス、24時間体制の健康相談サービスなどを実施しています。こうした行政サービスを上手に活用することで、一人暮らしの不安を和らげることができるでしょう。

 

参考:三鷹市「高齢者向けサービス」

参考:札幌市「介護保険サービス以外に札幌市が行っている高齢者支援」

人と関わり認知症などの進行を低減

高齢者が積極的に人と関わることは、認知症の予防や進行の低減につながります。近所付き合いを大切にしたり、趣味の集まりに参加したりすることで、他者とコミュニケーションを取る機会が増え、脳の活性化が期待できます。

 

また、地域のイベントに参加することで、身体を動かす機会も増えます。家族も、高齢者が人と触れ合う機会を作れるよう、声かけをしていくことが大切です。

介護資格者が対応する家事代行サービスの活用

一人暮らしには様々なリスクが潜んでいますが、家族が常に寄り添うのは難しいですよね。でも安心してください。介護の有資格者が対応する家事代行サービスを定期的に利用すれば、掃除・買い物・調理などの家事をサポートしてもらいながら、見守りもお任せできます。

 

例えばイチロウなら、サービス提供後に専用のレポートが届くので親御さんの状況がよくわかります。プロのサポートで、一人暮らしのリスクを軽減しませんか?

5まとめ

高齢者の一人暮らしには様々なリスクと不安がつきまといますが、適切な対策を講じることで安心して暮らすことができます。家族や身内との同居、見守りサービスや自治体のサービス活用、人との関わりを持つことなどが有効な手段となります。

 

一人ひとりが、自分に合った方法を選択し、周囲のサポートを上手に活用しながら、充実した老後生活を送ることが大切です。高齢化が進む現代社会において、高齢者が安心して暮らせる環境を整えることは、私たち全員の課題といえるでしょう。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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