介護にまつわるお役立ちコラム
要支援1で使える介護保険サービス一覧|利用の流れや負担額などを解説
要支援1と認定された方やそのご家族にとって、どのようなサービスが利用できるのかを理解することは大切です。適切な介護サービスを活用することで、できる限り自立した生活を継続することができるでしょう。本記事では、要支援1の方が利用可能な介護保険サービスについて、その種類や内容、利用の流れ、自己負担額などを詳しく解説します。ご自身やご家族の状況に合ったサービスを選択する際の参考にしていただければ幸いです。
要支援1と認定されるには、日常生活において部分的なサポートが必要な状態である必要があります。ここでは、要介護認定で最も軽い「要支援1」の状態について解説します。
要介護認定とは、介護を必要とする高齢者の心身の状態を調査し、どの程度の介護サービスが必要かを判断するために行われる認定です。この認定により、介護保険サービスを利用できるようになります。
要介護認定は、日常生活での介護の必要度合いに応じて、以下のように区分されています。
区分 | 状態 |
自立 | 介護サービスは不要 |
要支援1 | 部分的な生活支援が必要 |
要支援2 | 要支援1よりも広範囲な支援が必要 |
要介護1 | 部分的な介護が必要 |
要介護2 | 要介護1よりも広範囲な介護が必要 |
要介護3 | ほぼ全面的な介護が必要 |
要介護4 | 全面的な介護が必要 |
要介護5 | 最も重度な介護が必要 |
数値が大きくなるほど、より多くの介護が必要な状態であることを示しています。このうち、要支援1は最も軽度な区分であり、部分的な生活のサポートを必要とする状態を指します。
要支援1の方は、起き上がりや立ち上がり、歩行などの基本的な動作能力が低下しています。そのため、これらの動作を行う際に何らかの支援や見守りが必要となります。
ただし、トイレでの排泄や食事については、概ね自力で行うことができる状態です。介助が必要となるのは要介護の状態からといえるでしょう。
厚生労働省によると、要支援1の「要介護認定等基準時間」は以下のように定められています。
要介護認定等基準時間の分類 | 内容 |
直接生活介助 | 入浴、排泄、食事等の介護 |
間接生活介助 | 洗濯、掃除等の家事援助等 |
問題行動関連行為 | 徘徊に対する探索、不潔行為の後始末等 |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練、日常生活訓練等 |
医療関連行為 | 輸液の管理、褥瘡の処置等 |
これらを合計した「要介護認定等基準時間」が25分以上32分未満である場合、またはこれに相当する心身の状態である場合に、要支援1と認定されます。
要支援1の方は、適切な生活支援を受けることで、現状を維持したり改善したりすることが期待できる状態です。介護サービスを上手に活用し、できる限り自立した生活を続けていくことが大切だといえるでしょう。
要支援1と認定された方が利用できる介護保険サービスの多くは、「介護予防」に重点を置いたものになります。介護予防サービスは、現在の心身の状態を維持・改善し、少しでも自立した生活を送れるようサポートすることを目的としています。
ここでは、要支援1の方が利用可能な主な介護保険サービスを、カテゴリごとに見ていきましょう。
自宅に訪問して受けられる「訪問系サービス」には、以下のようなものがあります。訪問系サービスは、自宅での療養生活を支えるために欠かせません。専門職が直接自宅に来てくれるので、通院が難しい方でも必要なケアを受けられるのが大きな利点です。
種類 | 概要 |
介護予防訪問看護 | 看護師が利用者宅を訪問し、療養上のサポートや診療の補助が受けられる |
介護予防訪問リハビリテーション | 理学療法士や作業療法士などが利用者宅を訪問し、自立に向けたリハビリを行ってくれる |
介護予防訪問入浴介護 | 看護師と介護職員が自宅を訪問し、入浴の介助を行う |
「通所系サービス」は、施設に通って日帰りで受けられる介護サービスです。通所リハビリテーションでは、理学療法士や作業療法士の指導のもと、施設内の設備を使ってリハビリに取り組めます。認知症対応型通所介護は、認知症の特性を踏まえたケアが受けられるのが特徴です。
種類 | 概要 |
介護予防通所リハビリテーション (デイケア) | 介護老人保健施設や病院などに通い、リハビリを受ける |
介護予防認知症対応型通所介護 | 認知症の方を対象に、施設で介護サービスを提供する |
「短期入所系サービス」は、施設に短期間宿泊しながら受けるサービスです。ショートステイは、一時的に在宅介護が難しい時などに利用されます。また、介護する家族の休養目的で定期的に利用するケースもあります。
種類 | 概要 |
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ) | 特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、日常生活上の世話を受ける |
介護予防短期入所療養介護 | 介護老人保健施設などに短期間宿泊し、看護や医学的管理下でのケア・リハビリなどを受ける |
小規模多機能型居宅介護は、利用者の希望や状況に合わせ、通い・訪問・宿泊を柔軟に組み合わせられる点が最大の特徴です。なじみの施設でサービスを受けられる安心感があります。
種類 | 概要 |
介護予防小規模多機能型居宅介護 | 施設への通い・訪問・宿泊を組み合わせ、多機能なサービスを受ける |
施設への入居を検討している方は、特定施設入居者生活介護の対象となる施設を選ぶと良いでしょう。施設内で介護が受けられるので、要介護度が上がっても安心です。
種類 | 概要 |
介護予防特定施設入居者生活介護 | 有料老人ホームや軽費老人ホームなどに入居し、施設内で介護サービスを受ける |
自力での生活動作が難しくなった時は、福祉用具を上手く活用しましょう。要支援1の段階では、比較的軽度な用具がレンタルや購入の対象になります。
種類 | 概要 |
介護予防福祉用具貸与 | 歩行器や杖などの福祉用具をレンタルする |
介護予防特定福祉用具販売 | 入浴や排泄のための福祉用具を購入する際、費用の一部(7割~9割)を介護保険から支給 |
要支援1の方は残念ながら、訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)の介護保険サービスは受けられません。ただし、市町村の判断で要支援者向けに、これらに相当するサービスが整備されていたり、全額自費でデイサービスなどを利用できる場合もあります。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も要支援1では利用できないサービスの一つです。入居には要支援2以上の認定が必要です。
以上のように、介護が必要になりはじめの要支援1では、介護予防に重点を置いたサービスの利用がメインになります。市町村独自のサービスや、自費のデイサービスなどの利用を検討しつつ、できる限り心身の状態を維持し、自立した生活を続けていけるよう計画的にサービスを活用しましょう。
要支援1の認定を受けた方が、介護保険サービスを利用するまでの流れと、サービス利用時の自己負担額について解説します。
介護保険サービスを利用するまでのステップは以下の通りです。
- 1. お住まいの市区町村の窓口に要介護認定の申請をする
- 2. 市区町村の認定調査員が自宅に訪問し、心身の状態などについて聞き取り調査を行う
- 3. 主治医に意見書の作成を依頼する(市区町村から主治医に依頼)
- 4. 認定調査の結果と主治医意見書をもとに、コンピュータによる一次判定が行われる
- 5. 介護認定審査会にて二次判定が行われ、要介護度が決定する
- 6. 認定結果が通知される
- 7. 地域包括支援センターに相談し、ケアプランを作成してもらう
- 8. ケアプランに沿って介護サービスの利用を開始する
申請から認定まではおおむね30日程度かかります。要介護認定の有効期間は、新規申請の場合原則6ヶ月(3~12ヶ月の範囲で設定可能)で、更新申請の場合は原則12ヶ月(3~48ヶ月の範囲で設定可能)となります。有効期限が切れるとサービスが利用できなくなるため、更新手続きを忘れないよう注意しましょう。
- ケアプランは地域包括支援センターで作成してもらう
ケアプランとは、利用者の心身の状況に応じてどのようなサービスをどの程度利用するかを定めた計画のことです。要介護1以上の方の場合、担当のケアマネジャーが自宅を訪問し、利用者や家族と相談しながらケアプランを作成します。
一方、要支援1・2の方については、地域包括支援センターに依頼してケアプラン(介護予防サービス計画)を作成してもらうことになります。地域包括支援センターの職員が自宅を訪問し、アセスメントを行った上でケアプランを立案し、サービス事業所との調整を行います。
介護保険サービスを利用する際の自己負担割合は、原則1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割~3割の負担となります。要支援1の方が1ヶ月に利用できるサービス費用の上限(支給限度額)は50,320円と定められているため、1割負担の場合は目一杯サービスを利用すると、自己負担額は5,032円となります。
支給限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担となります。例えば55,000円分のサービスを利用すると、上限である5,032円に加えて超過分の4,680円が自己負担となり、合計9,712円の支払いが必要です。
介護サービスを利用する際は、支給限度額内に収まるようケアプランを立てることが重要です。限度額を有効に活用し、できる限り自立した生活が送れるようサポートを受けていきましょう。
公的な介護保険サービスは要支援1の方の生活をサポートする上で大変心強い存在ですが、それ以外にも民間企業や自治体が提供する多様なサービスが存在します。これらのサービスを上手に活用することで、より充実した在宅生活を送ることができるでしょう。
例えば、安否確認サービスでは定期的な電話や訪問により利用者の状況を確認し、異変があった際には速やかに連絡を取ることができます。施設への送迎サービスを利用すれば、移動の負担を軽減しつつ、デイサービスなどに通うことが可能です。買い物代行や外出の付き添いサービスなどを活用すれば、日常生活の様々な場面でサポートを受けられるでしょう。
これらの介護保険外のサービスは、要支援1の方でも自由に組み合わせて利用できるのが大きな魅力です。介護保険サービスでは、利用対象者や受けられるサービスの種類・頻度・時間などに一定の制限がありますが、民間のサービスではより柔軟にニーズに応じたサポートを受けられます。
例えば、要支援1の方の中には、買い物に行くのは難しいが調理はできるという方もいます。そのような場合は、買い物代行サービスと配食サービスを組み合わせることで、食事の心配をすることなく在宅生活を送れるようになります。
介護保険サービスだけでカバーしきれない部分を、民間のサービスで補完していくことが大切です。ただし、サービス提供エリアや料金は事業者によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。
要支援1の認定を受けた方は、介護保険サービスを利用することができるようになります自宅で受けられる訪問系サービスや、施設に通う通所系サービス、短期間の宿泊サービスなど、ニーズに応じて選択肢も豊富です。サービスの利用にあたっては、まずは要介護認定の申請を行い、地域包括支援センターでケアプランを作成してもらうことが重要です。利用者の自己負担割合は所得に応じて1割~3割であり、支給限度額を超えた分は全額自己負担となるため注意が必要です。
介護保険サービスでカバーできないニーズには、民間企業や自治体が提供する多様なサービスを活用することで、より柔軟できめ細やかに対応できます。介護保険サービスと上手に組み合わせながら、自分に合ったサービスを選んでいきましょう。
要支援1の認定を受けても、適切な介護サービスを利用しながら、できる限り自立した生活を送ることが可能です。本記事を参考に、ご自身やご家族に最適なサービスを見つけていただければ幸いです。