介護にまつわるお役立ちコラム

居宅介護支援で受けられるサービス内容とは?対象者や利用料についてわかりやすく解説

2024年10月30日

介護が必要な家族を持つ方にとって、どのようなサポートを受けられるのかは大きな課題です。日々の介護に追われ、適切な支援を見つけるのは簡単ではありません。しかし、居宅介護支援を利用することで、ケアマネジャーによる専門的なケアプランの作成や、各種サービスの調整が可能です。

 

このコラムでは、居宅介護支援で受けられるサービス内容や対象者、利用料についてわかりやすく解説します。

1居宅介護支援とは

居宅介護支援(きょたくかいごしえん)とは、要介護認定を受けた人(以下、利用者)が適切な介護サービスを利用できるよう、ケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプランの作成や関係機関との連絡調整を行うサービスです。

 

居宅介護支援は、都道府県の指定を受けた居宅介護支援事業所が行っています。これらの事業所は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送れるよう支援することを目的に運営されています。

 

厚生労働省は居宅介護支援を、「居宅要介護者が居宅サービス等を適切に利用できるよう、心身の状況、置かれている環境、要介護者の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成するとともに、サービス事業者等との連絡調整等を行うこと」と定義しています。

 

注意してほしいのは、居宅介護支援は直接的な介護サービスを提供するものではないということです。居宅介護支援は、ケアマネジャーがケアプランを作成し、必要な介護サービス事業者や関係機関への橋渡しを行うことです。言いかえると、利用者が適切な介護サービスを受けられるよう支援するサービスになります。

 

引用元:厚生労働省「居宅介護支援の基本資料」

2居宅介護支援で受けられるサービス内容

居宅介護支援では、主に以下の3つのサービスを受けることができます。これらのサービスは、ケアマネジャーが中心となって提供し、利用者の自立した生活を支援することを目的としています。

一人ひとりに合ったケアプランの作成

ケアプランとは、介護サービスを利用するために必要な計画書のことです。これは、利用者の心身の状況や生活環境、希望に沿って作成され、適切な介護サービスを受けるために不可欠なものです。

 

ケアマネジャーは、利用者や家族との面談を通じて情報を収集し、一人ひとりの状況に合わせたケアプランを作成します。ケアプランには、利用するサービスの種類や頻度、目標などが記載されます。

 

ケアプラン作成の際は、利用者や家族の自身の要望をしっかり伝えることが重要です。遠慮せずに、日常生活での困りごとや希望する生活スタイルなどを具体的に伝えましょう。これにより、より適切で効果的なケアプランを作成することができます。

自治体や事業者との連絡や調整

ケアマネジャーは、利用者に代わって自治体や介護サービス事業者との連絡や調整を行います。具体的な内容は、介護保険の更新手続きや区分変更の申請、サービス提供事業者との契約手続きなどの代行です。。

 

また、利用者の状態に変化があった場合や新たなサービスが必要になった際には、関係機関との連絡調整も行います。これにより、利用者は複雑な手続きの負担から解放され、必要なサービスをスムーズに利用することができます。

 

このサービスを最大限に活用するためにも、利用者はケアマネジャーと密にコミュニケーションを取り、状況の変化や新たなニーズがあれば速やかに伝えることが大切です。

定期的なモニタリングや介護に関する相談

ケアマネジャーは、定期的に利用者宅を訪問し、サービスの利用状況や効果を確認するモニタリングを行います。これは通常、月に1回以上実施されます。

 

モニタリングでは、ケアプランの内容が適切かどうかを評価し、必要に応じて計画の見直しを行います。また、利用者や家族からの介護に関する相談にも応じ、適切なアドバイスや情報を提供します。

 

このサービスを有効に活用するためには、日頃から気になることや困っていることをメモしておき、モニタリング時にケアマネジャーに伝えることが重要です。小さな変化や悩みでも構いません。積極的に相談することで、より適切な支援を受けることができます。

3居宅介護支援の利用方法

居宅介護支援を利用するための方法について、対象者や利用料金を含めて詳しく説明します。これらの情報を知ることで、スムーズにサービスを利用することができます。

居宅介護支援を受けられる対象者

居宅介護支援を受けられるのは、自宅で生活する要介護1~5の認定を受けた人です。

 

要介護認定とは、介護保険制度において介護の必要度を判定するものです。介護が必要な状態を7段階に分類し、それぞれの状態に応じて受けられるサービスが決まります。

 

以下は、認定レベルごとの判定基準と受けられるサービスの概要です。

認定レベル判定基準受けられるサービス
要支援1日常生活に少し支援が必要介護予防支援サービス
要支援2要支援1よりも支援が必要
要介護1部分的な介護が必要居宅介護支援サービス
要介護2軽度の介護が必要
要介護3中等度の介護が必要
要介護4重度の介護が必要
要介護5最重度の介護が必要

要支援1・2と判定された方は、介護予防支援サービスを受けることができます。このサービスは地域包括支援センターが提供し、介護が必要な状態になることを予防するためのものです。

居宅介護支援の利用料金

居宅介護支援ののサービスは、利用料の全額が介護保険制度から給付されるため、利用者の自己負担はゼロ円となります。

 

つまり、ケアマネジャーによるケアプランの作成や、各種相談、調整サービスなどを無料で受けることができるのです。

 

ただし、ケアプランに基づいて実際に利用する介護サービス(訪問介護や通所介護など)には、別途費用がかかります。これらのサービスには通常、利用者の所得に応じて1〜3割の自己負担があります。具体的な費用については、ケアマネジャーに相談し、詳細を確認することをおすすめします。

居宅介護支援を利用する流れ

居宅介護支援の利用は、以下の6つのステップで進みます。

 

【居宅介護支援を利用する流れ】

 

  1. 1. 要介護認定の申請
  2. 2. 居宅介護支援の業者の選定&契約
  3. 3. 担当するケアマネジャーの選任
  4. 4. ケアプランの作成
  5. 5. 介護保険サービスの利用を開始
  6. 6. モニタリング&プランの調整

 

それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。居宅介護支援の利用に不安を感じている方も、この流れを理解することで、スムーズにサービスを開始できるはずです。

  • 1.要介護認定の申請

要介護認定の申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で行うことができます。申請から結果通知までは通常1〜2ヶ月程度かかります。申請後には、要介護認定調査が行われます。

 

申請時や認定調査時には、本人の状態をできるだけ正確に伝えることが重要です。日頃の生活の様子や困っていることなどを具体的に説明しましょう。また、主治医の意見書も必要になるので、主治医がいない場合は申請時に相談しましょう。

  • 2.居宅介護支援の業者の選定&契約

要介護認定を受けたら、市区町村から提供される居宅介護支援事業者リストから、自分に合った事業者を選びます。事業所のリストを見て、気になるところがあれば、電話をするか、直接事業所を訪ねて相談してみましょう。選び方のポイントとしては、事業所の場所、対応のていねいさ、スタッフの経験などがあります。

 

一度契約した事業者でも、サービスに不満がある場合は途中で変更することが可能です。納得のいく事業者を見つけることが大切。契約を交わすと、正式に居宅介護支援サービスの利用が開始されます。

  • 3.担当するケアマネジャーの選任

多くの居宅介護支援事業所では、担当するケアマネジャーを選択することができます。ただし、1人のケアマネジャーが担当できる利用者数は厚生労働省によって定められているため、希望通りにならない可能性もあります。(1人のケアマネジャーが担当できる要介護者は、35人までです)

 

相性の良いケアマネジャーを見つけることが、より良い支援を受けるためのカギとなります。可能であれば、複数のケアマネジャーと面談し、自分に合った人を選ぶことをおすすめします。

  • 4.ケアプランの作成

ケアプランは、ケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、本人や家族と面談しながら作成します。ケアプランでは以下のようなことを決めます。

  • 利用者の長期的な目標
  • 支援内容の方針
  • 利用する介護サービスの内容
  • 利用する介護サービスの利用頻度
  • サービス担当者会議で話し合う要点
  • 相談内容や事業者との連絡事項

自身に合ったケアプランを作成してもらうためには、自身の要望、心身の状況、家族が抱える悩みを明確にしておくことが重要です。遠慮せずに、日々の生活で困っていることや希望する生活スタイルを具体的に伝えましょう。

  • 5.介護保険サービスの利用を開始

ケアプランが完成したら、ケアマネジャーが各介護サービス事業所と連絡や調整を行い、契約を交わします。その後、ケアプランに沿って介護保険サービスの提供が開始されます。この段階で初めて、実際の介護サービスを受けることができるようになります。

  • 6.モニタリング&プランの調整

サービス開始後は、ケアマネジャーが定期的(通常は月1回以上)に訪問し、モニタリングを行います。この際、サービス内容の過不足や新たな悩みなどを相談することができます。

 

利用者の状況に変化があった場合や、新たなニーズが生じた場合には、ケアプランを変更することも可能です。遠慮せずに、気になることがあればケアマネジャーに相談しましょう。柔軟にプランを調整することで、常に最適な支援を受けることができます。

4まとめ

居宅介護支援は、介護が必要な方々の生活を支える重要なサービスです。ケアマネジャーによるきめ細かなサポートにより、一人ひとりのニーズに合わせた適切な介護サービスを受けることができます。利用者の状況に応じたケアプランの作成から、各種手続きの代行、定期的なモニタリングまで、幅広い支援を無料で受けられるのが大きな特徴です。

 

介護に不安を感じている方は、ぜひ居宅介護支援を活用してください。専門家のサポートを受けることで、より安心して自立した生活を送ることができ、家族の負担も軽減されます。介護の必要性を感じたら、早めに市区町村の窓口に相談し、居宅介護支援の利用を検討しましょう。

監修者情報

保健師歴15年介護職歴5年のフリーランスWebライター。ケアマネージャー経験あり。現在は、遠距離介護を続けつつ、当事者および支援者の立場から、介護や福祉に関する記事を執筆中。

古賀優美子(保健師、介護支援専門員)
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