介護にまつわるお役立ちコラム
介護費用はどれくらいかかる?月々の平均額や介護にかかる総額は?
自分の家族などの要介護者を介護する場合、長期になることもあり費用もそれ相応にかかります。そのため、介護するのにどれくらいの年数がかかるか、月々必要な費用はどれほどか、総額でどれくらいかかるかを知っておいた方がよいでしょう。この記事では、介護費用の算出の仕方、平均費用、介護保険サービスならびに自己負担額について説明していきます。これを読めば、介護をしていくうえで準備すべき資金額を知ることができます。
平成30年度生命保険に関する全国実態調査の結果によると、月々に必要な介護費用の平均は7.8万円です。また、一人の要介護者の介護にかかる年数は平均4年7カ月になっています。この2つのデータから試算すると、1人の要介護者を一生涯に介護する費用総額は平均429万円です。かなりの負担金になりますが、各項目について詳しく説明していきます。
介護にかかる年数は、1人もしくは複数の介護者が、1人の要介護者を生涯のうちで何年間介護するのかを指します。平成30年度生命保険に関する全国実態調査によると、世帯主あるいは配偶者が要介護状態となった場合、介護が必要と考える期間の平均は、13年11カ月です。ただし、同じ調査で、実際に介護に当たった年数の平均は4年7カ月という結果がでています。
参考サイト:「厚生労働省 – 主な年齢の平均余命(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/dl/life19-02.pdf)」
「厚生労働省 – 平均寿命と健康寿命の推移(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html)」
「平成30年度生命保険に関する全国実態調査(https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf)」
要介護者の家族だけが介護にあたり、他の公的援助を受けないとすれば、介護費用は比較的少なくて済むでしょう。しかし、現実には家族だけで介護にあたるのは難しく、大抵は介護保険サービスをうけることになります。介護保険サービスには福祉用具貸与、デイケア、ショートステイ、訪問介護、訪問看護などのサービスがあり利用料が必要です。また、在宅介護が難しくなれば、施設入所も必要となり、施設利用費用が発生します。
そのため、利用するサービスの種類、要介護者を介護する場所によって、介護費用が変わってきます。要介護者1人の介護に対して月々に必要な費用は、平成30年度生命保険に関する全国実態調査によると、費用分布は0~15万円以上とかなり幅があり、平均は7.8万円となります。その中で、月々に必要な介護費用の平均は、在宅の場合は4.6万円、施設の場合は11.8万円になるとのことです。また、月々に必要な介護費用の平均は、介護度によっても違いがあり、要支援1の場合は5.8万円、要介護5の場合は10.4万円です。
参考サイト:「平成30年度生命保険に関する全国実態調査(https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf)」
それでは一人の要介護者に対して、一生涯にかかる介護費用を算出してみます。
月々に費用な介護費用の平均:7.8万円
介護にかかる平均年数:4年7カ月(55カ月)
介護費用額 = 7.8 × 55 = 429万円
ちなみに、介護にかかる年数を14年とした場合も計算しておきます。
介護費用の総額 = 7.8(万円/月) × 14(年) × 12(か月) = 1310万円
これに加え一時費用として、ベットの購入費など平均69万円も必要です。結果、介護費用の総額は、下記のようになります。
平均:69万円 + 429万円 = 498万円
介護年数14.6年の場合:69万円 + 1310万円 = 1379万円
いずれにしても、かなり費用がかかるのは間違いありません。
参考サイト:「平成30年度生命保険に関する全国実態調査(https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf)」
要介護者を介護する際、家族だけでは限界があり、介護保険サービスを受けることがあります。介護保険サービスとして利用できるのは、訪問介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護などです。介護保険サービスの利用料は、利用者の所得によって自己負担割合1~3割と決められています。さらに、自己負担を軽減するために、月額上限額が設けられ、限度額を超えた分は払い戻されます。
利用者の所得金額によって、介護保険サービス費用の自己負担割合は1~3割と異なります。区分の決定条件は下記の通りであり、年金収入、その他の収入、控除などが関係し複雑ですが、介護保険課の担当者が計算してくれます。
同じ世帯に65歳以上の人が1人の場合
本人の合計所得金額 | 本人の年金収入+その他の合計所得金額 | 自己負担割合 |
220万円以上 | 340万円以上 | 3割 |
220万円以上 | 340万円以上 | 2割 |
160万円以上220万円未満 | 280万円以上 | 2割 |
160万円以上220万円未満 | 280万円未満 | 1割 |
160万円未満、住民税非課税者、生活保護者 | 1割 |
同じ世帯に65歳以上の人が2人以上の場合
本人の合計所得金額 | 本人および同じ世帯にいる65歳以上の人の年金収入+その他の合計所得金額 | 自己負担割合 |
220万円以上 | 463万円以上 | 3割 |
220万円以上 | 463万円未満 | 2割 |
160万円以上220万円未満 | 346万円以上 | 2割 |
160万円以上220万円未満 | 346万円未満 | 1割 |
160万円未満、住民税非課税者、生活保護者 | 1割 |
合計所得金額:収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除する前の所得金額
なお、40~64歳の第2号被保険者も対象であり、自己負担割合1割です。
参考資料:「厚生労働省資料 – 利用者負担割合の見直しに係る周知用リーフレット(https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2018/0611085857446/ksvol658.pdf)」
介護保険が使えるサービスはいろいろありますが、ジャンル別に主なものをまとめてみます。
1) 訪問系
・訪問介護
訪問介護員が利用者の居宅を訪問して、入浴・排泄・食事の介護、調理・洗濯・掃除等の家事を提供します
・訪問入浴介護
看護師あるいは介護職員が居宅において入浴を援助します
・訪問看護
看護師が居宅に訪問し手療養上の世話または必要な診療を補助します
・訪問リハビリテーション
理学療法士、作業療法士が居宅を訪問しリハビリテーションします
2) 通所系
・通所介護
デイサービスセンターに通い、入浴・排泄・食事等の介護や機能訓練を受けます
・通所リハビリテーション
認可を受けた施設に通い、心身機能の回復のためにリハビリテーションを受けます
3) 施設系
・短期入所生活介護
特別養護老人ホーム等に短期入所し、日常生活の介護ならびに機能訓練を受けます
・小規模多機能型居宅介護
訪問系、通所系と短期入所系サービスをミックスした介護サービス
4) その他
・福祉用具貸与・特定福祉用具販売
・住宅改修
参考資料:「各介護サービスについて – 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000608309.pdf)」
介護サービスの利用料を支払う際に、1か月に支払った自己負担額の合計が限度額を超えたときに、超えた分が払い戻されます。詳しくは、最寄りの役所の介護保険課に尋ねるといいでしょう。介護保険の月間限度額は、利用者の所得によって下記のように決められます。
区分 | 負担の月額上限額 |
課税所得690万円以上 | 140,100円(1世帯あたり) |
課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(1世帯当たり) |
市町村民税課税かつ課税所得380万円未満 | 44,400円(1世帯当たり) |
世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600円(1世帯当たり) |
世帯の全員が市町村民税非課税かつ、前年の年金の収入金額+その他の合計所得金額合計が80万円以下 | 24,600円(1世帯あたり)
15,000円(個人) |
生活保護受給者 | 15,000円(1世帯あたり) |
月間限度額は、介護サービス利用者の負担を軽減するための制度ですが、負担能力に応じて段階的に額が決められています。
参考資料:「高額介護サービス費の負担限度額 – 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf)」
一人の要介護者を介護するための介護費用は、月平均7.8万円かかり、一生涯にかかる費用総額は平均429万円と、かなりの負担になります。それでも、介護は不可欠であり、介護負担を軽減するためにも、介護保険サービスを利用する必要があります。介護保険サービスの自己負担額や、介護保険の月間限度額についても説明しました。この情報をもとに介護の資金計画を立てていただければと思います。