介護にまつわるお役立ちコラム

遠距離介護は難しい?メリット・デメリットと事前準備

2021年12月24日

核家族化が進んだ現代の日本において、高齢の家族と別居している人は少なくないでしょう。遠方で暮らす高齢の家族が一人、もしくは高齢の夫婦だけで暮らしていると、日常生活や今後の介護のことを心配する人も多いのではないでしょうか。

この記事では、遠方に暮らす高齢の家族をサポートする「遠距離介護」について解説します。遠距離介護の現状やメリット・デメリットを理解したうえで、事前の準備に関する情報を確認し、遠距離介護を不安なくスムーズに始められる環境を整えましょう。

1遠距離介護を選ぶ人は増えている?

「遠距離介護」とは、離れた場所で暮らす子や親族などが、遠方にいる高齢の親や親族などの日常生活をサポートする介護の方法です。別居家族が介護を担うケースは増加傾向にあり、最近では下記のような割合となっています。

【要介護者のうち別居家族が介護をする割合】

2016年2019年
12.2%13.6%

(出典:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html

上記のデータは、遠距離介護を行っている家庭のほか、近距離に住む別居家族が介護を行うケースも含まれます。そのため、遠距離介護の割合を正確に把握することはできません。しかし、核家族化の進行・若年層の都市部への流出といった社会背景を踏まえると、遠距離介護が行われることは珍しくないといえるでしょう。

遠距離介護が増加している背景は、以下のとおりです。

 

●介護する側の背景
親の介護を担う子ども世代は、働き盛りで社会的に責任のある立場の人も多くいる。仕事を離職して介護を必要とする家族の元へ引っ越すなど、現在の生活スタイルを容易には変えられないなどの事情が考えられる。

 

●介護される側の背景
高齢者にとって、自分が住み慣れた自宅・街を離れ、周囲に家族以外の知り合いがいない場所に移動することは、決断力が求められる。新しい環境・生活状況に上手く適応できず、ストレスや疲れなどから認知症の症状や健康状態が悪化するケースもあるため注意が必要。

 

遠距離介護には、同居・近距離別居の場合とは異なる準備や課題があります。しかし、近年では通信網や見守りシステム、各種サービスの発達などにより、遠距離介護をよりスムーズに行えるようになっています。遠距離介護を始める際は、利便性の高いアイテムやサービスを積極的に活用しましょう。

2遠距離介護の3つのメリット

遠距離介護には、介護する側・介護される側ともにメリットがあります。代表的な3つのメリットは下記のとおりです。

 

●転居や同居をしなくてよい
●介護の負担が軽減される
●介護保険サービスを利用しやすい

 

遠距離介護では、介護する側・介護される側の双方が今までの環境で生活を続けられます。同居をする必要がないため、家族内でのトラブルも最低限に抑えられるでしょう。

入浴や食事の介助など、実際に介護を行う頻度が低い点もポイントです。介護における身体的・肉体的な負担が軽減されれば、心に余裕を持って接することが期待できます。

介護保険サービスは、介護が必要であると認められた人が利用できるサービスです。しかし、訪問介護の「生活援助」など、同居の場合は利用が難しいサービスもあります。遠距離介護の場合は介護保険サービスが提供されやすくなるため、生活面でのサポートに関する負担も軽減できるでしょう。

3遠距離介護の2つのデメリット

遠距離介護にはメリットだけでなくデメリットも存在します。遠距離介護のデメリットは下記のとおりです。

 

●有事の際にすぐ対応できない
●交通費(帰省費用など)・通信費・交際費などがかかる

 

遠距離介護の場合は、介護される人の様子を常に確認できるわけではないため、事故発生時や容態急変時に迅速な対応が難しくなります。有事の際にもできるだけ速く帰省して対応できる体制を整え、介護が必要な家族とこまめに連絡を取り合うことを心がけておきましょう。

また、介護が必要な家族に会いに行くための交通費や、本人・ケアマネジャー・各施設と連絡を取り合うための通信費がかかります。地域の見守りなど近所の人に協力してもらっている場合は、挨拶やお土産を持っていく必要もあるでしょう。

4遠距離介護をスムーズに行うための事前準備

介護の形は、同居・近距離別居での介護・遠距離介護など、家庭によって異なります。介護の形を考える際は、介護をする側だけでなく介護を受ける側の意思や希望も確認し、今後の介護について話し合うことが重要です。

事前にきちんと備えておけば、遠距離介護をスムーズに始めることができます。ここでは、遠距離介護を行うための事前準備を解説します。

お金にまつわる準備をする

遠距離介護には、介護サービス以外にもさまざまなお金がかかります。お金に関する心配事を整理しておくと、親族間での金銭トラブルを避けられる可能性が高まるため、介護や相続に関係のある人と話し合っておきましょう。

 

●親の資産を把握する
●詐欺・紛失を防ぐため資産の管理方法を決める
●費用や税金を抑える方法を調べる(各種介護割引なども含め)
●親族間での話し合いを実施する(特定の人に経済的負担や心身の負担がかからないようにする)

 

なお、介護を必要とする親を子の扶養に入れることで、親は健康保険料を納めずに済みます。また、子の所得から親の分の扶養控除を差し引けるため、子の所得税や住民税の納付額を抑えることも可能です。扶養の認定条件などは子が加入している健康保険によって異なる場合があるため、事前にチェックしましょう。

コミュニケーションを密に取る体制をつくる

遠距離介護では、同居介護や近距離別居での介護よりも、介護を受ける人の様子の把握が難しくなります。介護する側・介護される側を中心として、密に情報交換ができるサポート体制を整えましょう。

 

●生活パターンを把握する
●携帯電話・スマートフォン・デジタル機器の使い方・操作を覚えてもらう
●本人の友人や近所の人・かかりつけ医・担当の訪問看護師・ヘルパー・ケアマネジャーなどの専門家と話しておく

 

遠距離介護の場合、介護する側が、介護される側の家族が住んでいる地域の人と連絡を取れる状態にすることも重要です。近所の人やかかりつけ医など、介護を受ける本人以外の関係者と連絡先を交換し、いつでも安心して相談できる環境をつくっておきましょう。

見守り・介護サービスについて調べる

遠距離介護では、介護する側が近くで体調を見守ることができないため、高齢者向けの見守り・介護サービスを調べておくことも重要です。下記のような項目を中心に、情報収集・調査を行いましょう。

 

●地域・自治体の見守りサービス
●企業の見守りサービス
●介護保険サービス
●近隣で利用できる介護施設・サービス(安否確認サービス・配食サービスなど)

 

介護保険サービスでは、福祉用具のレンタル費用・リフォーム費用の補助も受けられます。また、「要支援」「要介護」の認定を受けていない場合でも利用可能な高齢者向けサービスがあるか、確認をしておきましょう。

介護できる頻度や分担を考えておく

遠距離介護を行っていても、場合によっては家族による介護が一時的に必要な機会もあります。このような状況になった場合に備えて、下記のポイントをチェックしておきましょう。

 

●介護休暇などの制度や申請の際の手続きについて確認する
●家族・兄弟姉妹・配偶者などと分担について話し合う

 

介護に関する休暇には、法律に基づく「介護休業」や企業・職場独自の介護休暇制度など、さまざまな制度が存在します。両方の制度を確認し、家族や兄弟姉妹・親戚などと介護負担の分担について話し合っておきましょう。

5まとめ

現代では、遠距離介護を選択する世帯が増加傾向にあります。遠距離介護には転居や同居の必要がないなどのメリットもありますが、緊急時にすぐ対応できないなどのデメリットもあることに注意が必要です。介護する側・介護される側で、将来の介護についてよく話し合っておきましょう。

遠距離介護をスムーズに始めるためには、地域で利用できる介護サービスを探すなどの事前準備を行うことが大切です。介護を必要とする家族が東京都や愛知県に住んでいる場合は、遠距離介護にも手厚く対応可能な「イチロウ」の利用をご検討ください。

監修者情報
株式会社Social Code CDO

2009年大学卒業後回復期リハビリテーション病院に就職後、急性期病院にて専門外来の企画開設に従事。
2016年在宅の支援を行う医療法人に転職後、数年間赤字経営のホームの立て直し、リブランディングを行い、事業統括・社内制度等処遇の改善に携わる。
現在はケアに係るデータを取り扱うベンチャー企業にて事業企画・運営を行う。
著書:医療機関・介護施設のリハビリ部門管理者のための実践テキスト 部門管理に必要な7つの手法(第2版)・他

廣瀬哲司(作業療法士)
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