介護にまつわるお役立ちコラム

在宅介護で看取りをするまでの流れや必要な5つの準備を紹介

2024年07月05日

大切な家族の最期を自宅で看取りたいと考えている方は、家族全員にとっても大きな決断であり、様々な準備が必要です。この記事では、在宅介護での看取りの定義から、実際の流れ、必要な準備まで詳しく解説します。介護度に応じた具体的な介護内容や必要な用品についても触れています。在宅介護での看取りには課題もありますが、家族との大切な時間を過ごせるメリットもあります。この記事を通じて、在宅介護での看取りについての理解を深め、適切な準備のためのヒントを得ていただければ幸いです。

1在宅介護での看取りとは

在宅介護での看取りについて、定義と特徴を説明します。看取りとは、人生の最期を迎える方に寄り添い、その人らしい最期を迎えられるようサポートすることです。在宅介護での看取りは、病院ではなく自宅で行われるという点が特徴です。

以下の3点について詳しく解説していきます。

  • 看取りの定義と看取り介護の概要
  • ターミナルケアとの違い
  • 緩和ケアとの違い

これらの理解を通じて、在宅介護での看取りの全体像をつかんでいきましょう。

看取りとは

看取りとは、人生の最期が近づいた方に対して、無理な延命治療を行わず、自然な形で最期を迎えられるよう見守りながら支援します。元々は介護や看病などの世話全般を指す言葉でしたが、現在では最期を見守ることを中心に「看取り」と呼ばれています。

 

看取り介護は、身近に迫った「死」を避けられない状態にある人に対する介護を言います。目的は、肉体的・精神的な苦痛を和らげて、人としての尊厳を保てる生活の支援です。従来の延命治療とは異なり、医師の指示に従いながら痛みを和らげる方法を取り、静かに自分らしい最期を迎えるサポートをします。

 

看取り介護では、食事や排泄、入浴などの日常生活全般のケアに加え、本人や家族の精神的なケアも重要な要素となります。最期の時まで、その人らしい生活を送れるよう支援することが、看取り介護の本質といえるでしょう。

ターミナルケアとの違い

看取りとターミナルケア(終末医療)の主な違いは、医療行為を行うかどうかにあります。

 

ターミナルケアは、その名の通り終末期における治療や看護を中心に行います。具体的には、点滴や酸素吸入といった医療行為を行いながら、残された生活の質を向上させることを目的としています。病気の症状による苦痛や不快感を和らげることに重点が置かれ、主に病院などの医療機関で行われます。

 

一方、看取りは日常生活におけるケアが中心です。医療行為よりも、食事や排泄の介助、入浴、褥瘡(床ずれ)の防止など、生活面での支援に重点が置かれます。看取りは自宅や介護施設など、より生活に近い環境で行われることが多いのが特徴です。

 

つまり、ターミナルケアが医療的なアプローチを中心とするのに対し、看取りは生活面でのサポートを重視するという違いがあります。ただし、両者は明確に区別されるものではなく、状況に応じて組み合わせて行われることも少なくありません。

緩和ケアとの違い

看取りと緩和ケアは、どちらも患者の苦痛を和らげることを目的としていますが、その対象や時期、アプローチに違いがあります。

 

緩和ケアは、患者や家族の身体的・精神的な苦痛を和らげつつ、治療や支援を進めていくものです。がんなどの重篤な疾患の診断を受けた時点から始まり、治療と並行して行われるのが特徴です。つまり、必ずしも終末期に限定されず、病気の進行に関わらず提供されます。緩和ケアは、医師や看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、多職種のチームで取り組む場合が多いです。

 

一方、看取りは人生の最終段階、つまり死が間近に迫った時期に行われるケアです。緩和ケアが治療と並行して行われるのに対し、看取りは積極的な治療を控え、自然な死を迎えることを支援します。看取りでは、日常生活の介護や精神的なサポートが中心となり、医療的なアプローチは最小限にとどめられ     ます。

 

また、緩和ケアが主に医療機関で提供されるのに対し、看取りは自宅や介護施設など、よりいままでの生活に近い環境で行われるのも特徴です。

 

このように、緩和ケアと看取りは、ともに患者の苦痛緩和を目指すものの、その開始時期や具体的なアプローチ、実施場所などに違いがあります。ただし、実際のケアの現場では、両者の要素が組み合わされて提供されるケースも少なくありません。

2在宅介護で看取りをする際の問題点とメリット

在宅介護で看取りをする際には、いくつかの問題点とメリットがあります。ここでは、在宅介護で看取りを行う際に直面する問題点と、在宅介護を選択するメリットについて説明します。これらを理解と、在宅介護での看取りを検討する判断材料となるでしょう。

問題点

在宅介護で看取りを行う際には、いくつかの重要な問題点が存在します。これらの課題を事前に認識し、対策を講じると、円滑な在宅介護の実現につながります。

 

まず、住宅環境の問題です。大半の家庭は介護を想定した間取りになっていないため、介護に必要な十分なスペースの確保が難しい場合があります。例えば、ベッドの設置場所や介護者の動線確保、車いすでの移動のためのスペースなどが問題となるでしょう。これにより、家族の生活にも影響が出る可能性があります。

 

次に、介護時間の増加に伴う介護者や家族の負担増大は避けられません。終末期や看取り期には、24時間体制での介護が必要となることが多く、介護者の心身の疲労が蓄積されやすくなります。仕事や私生活との両立が困難になり、介護者自身の健康管理も重要な課題です。

 

さらに、緊急時の対応の限界も問題点の1つです。医療機関のような設備や常駐の医療スタッフがいないため、急変時の対応に不安が生じる可能性があります。また、痛みのコントロールなど、専門的な医療ケアが必要な場面での対応にも制限があります。

 

これらの問題点に対しては、ケアマネジャーや訪問看護師と相談しながら環境整備を行ったり、介護保険サービスを適切に利用したりすることで、ある程度軽減できるでしょう 。しかし、在宅での看取りを検討する際には、これらの課題を十分に認識し、家族で話し合いを重ねることがもっとも重要です。

メリット

在宅介護で看取りを行うことには、いくつかのメリットがあります。これらは、多くの人が在宅での看取りを選択する理由となっています。

 

最も大きなメリットは、介護される本人の生活に制限が少なくより自由に過ごせることです。病院や施設とは異なり、自宅では慣れ親しんだ環境で自分のペースで生活を送れます。好きな時間に起きたり、好みの食事を取ったりすることが可能で、これは本人の精神的な安定にもつながるでしょう。

 

慣れ親しんだ家に住むことで、家族とのコミュニケーションが増えるというメリットも重要です。日常的な会話や触れ合いの機会が多くなり、より深い絆を築くことができます。最期の時まで家族と一緒に過ごせると、本人や家族にも大きな慰めとなるでしょう。

 

さらに、通院に対する家族の負担を軽減できるのも大きなメリットです。在宅医療を利用することで、頻繁な通院の必要がなくなり、本人の体力的な負担だけでなく、家族の時間的・経済的負担も減らせ          ます。特に、移動が困難な方や遠方の病院に通っていた方にとっては大きな利点となります。

 

在宅での看取りでは、その人の生活スタイルや好みに合わせた個別化されたケアを提供しやすくなります。食事の時間や内容、入浴の方法など、本人の希望に沿ったケアを行うことができ、これは本人の尊厳を保つ上でも重要です。

 

これらのメリットは、在宅での看取りを選択する大きな理由となっています。各家庭の状況や本人の希望、医療的ニーズなどを総合的に考慮した、最適な選択が望ましいです。

3介護度に応じた介護内容と必要な準備

介護度は、要介護者の身体状況や日常生活における介助の必要性を示す指標です。介護度に応じて適切な介護内容を理解し、必要な準備ができれば、効果的な在宅介護の実現につながります。以下では、要介護1から要介護5までの各段階について、その特徴や必要な介護内容、準備すべき介護用品などを詳しく解説します。

 

各介護度の特徴を理解し、適切な介護計画を立てることで、要介護者の生活の質を維持・向上させられるでしょう。また、介護者の負担を軽減し、持続可能な介護環境にもつながります。

要介護1の場合

要介護1は、介護が必要な状態の中では最も軽度な段階です。この段階では、日常生活の基本的な動作はほぼ自立していますが、一部の動作に支援が必要となります。要介護1の方への適切な介護は、自立した生活を維持しつつ、必要最小限の支援を行うことが重要です。

  • 要介護1とは

要介護1とは、日常生活の基本的な動作はほぼ自分で行えるものの、一部の動作に支援が必要な状態を指します。具体的には、立ち上がりや歩行に若干の不安定さがあり、入浴や掃除、洗濯などの家事に部分的な介助が必要な状態です。認知機能に関しては、軽度の低下が見られることがありますが、基本的なコミュニケーションや判断能力は保たれています。要介護1の方は、介護保険サービスを利用しながら、できる限り自立した生活を送ることが可能です。

  • 要介護1の介護内容

要介護1の方への介護内容は、主に日常生活の一部をサポートすることが中心となります。具体的には以下のような介護が必要でしょう。

 

・入浴の際の見守りや部分的な介助

・掃除や洗濯などの家事の一部支援

・買い物の同行や代行

・食事の準備や片付けの支援

・服薬管理の支援

・外出時の付き添いや見守り

 

これらの介護を行う際には、本人の自立心を尊重し、体調に合わせながらできることは自分で行ってもらいましょう。また、主治医と相談しながら、転倒予防や体力維持のための軽い運動を促すことも重要です。

  • 要介護1での必要な介護用品

要介護1の方に必要な介護用品は、日常生活の安全性を高め、自立を支援するものが中心となります。主な介護用品には以下のようなものです。

 

・手すり(浴室、トイレ、廊下など)

・滑り止めマット

・シャワーチェア

・歩行補助つえ

・スロープ高齢者向けの箸、スプーン、フォーク

・エプロン

・ストロー付きコップ

 

これらの介護用品を適切に使用することで、日常生活の安全性が高まり、自立した生活をより長く維持することができます。ただし、個人の状態や生活環境に応じて必要な用品は異なるため、ケアマネジャーや介護用品専門家に相談しながら選択するのが望ましいでしょう。

要介護2の場合

要介護2は、要介護1よりもさらに介護の必要性が高まった状態を指します。この段階では、日常生活のほとんどの場面で何らかの介助が必要となり、自立した生活を送ることが難しくなります。要介護2の方への適切な介護は、安全性を確保しつつ、残存機能を活かした生活支援を行うことが重要です。

  • 要介護2とは

要介護2とは、日常生活を送る上で見守りや介助を必要とし、家事に加えて食事や入浴、排せつなどの基本的な生活動作でも支援が欠かせない状態です。立ち上がりや歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まります。また、認知機能の低下が見られる場合も多く、金銭管理や服薬管理などが難しくなるかもしれません。要介護2の方は、介護保険サービスを積極的に利用しながら、安全で快適な生活が求められます。

  • 要介護2の介護内容

要介護2の方への介護内容は、日常生活のほぼ全般にわたるサポートが必要となります。具体的には以下の介護が必要でしょう。

 

・食事の準備、介助、片付け

・入浴の全面的な介助

・排せつの介助や見守り

・着替えの介助

・移動や外出時の付き添いと介助

・服薬管理

・家事全般の代行

・金銭管理の支援

 

これらの介護を行う際は、要介護者の残存能力を活かし、無理のない範囲でできることは自分で行ってもらうよう促すことが大切です。また、リハビリテーションを通じて身体機能の維持・改善も重要です。

  • 要介護2での必要な介護用品

要介護2の方に必要な介護用品は、安全性の確保と介護のしやすさを考慮したものが中心となります。主な介護用品には以下のものがあります。

 

・介護用ベッド

・車いす

・歩行器

・ポータブルトイレ

・入浴用チェア

・介助バー(浴室、トイレ、ベッド周りなど)

・介護用食器(滑り止め付きなど)

・おむつや尿取りパッド

・移乗用ボード

これらの介護用品を適切に使用すると、介護の負担を軽減し、要介護者の安全と快適さを確保できます。ただし、個人の状態や生活環境に応じて必要な用品は異なるため、ケアマネジャーや介護用品専門家に相談しながら選択するのが望ましいでしょう。また、介護保険制度を利用して福祉用具のレンタルも検討するとよいでしょう。

要介護3の場合

要介護3は、介護の必要性がさらに高まり、日常生活のほぼすべての面で介助が必要となる段階です。この段階では、24時間体制での見守りや介護が必要となり、介護者の負担も大きくなります。要介護3の方への適切な介護は、安全性と快適さを確保しつつ、残存機能の維持に努めることが重要です。

  • 要介護3とは

要介護3とは、立ち上がりや歩行などの動作を自力で行うことが困難で、日常生活のほぼすべてに介護を必要とする状態です。食事や排せつも自分一人では行うことが難しく、多くの場合認知症の症状も見られます。要介護3になると生活上で全面的なケアを必要とし、見守りや介助は常時必要となるでしょう。この段階では、介護保険サービスを最大限に活用し、在宅介護と施設介護のバランスを考慮しながら、適切な介護環境の調整が求められます。

  • 要介護3の介護内容

要介護3の方への介護内容は、日常生活のすべての面でのサポートが必要となります。具体的には以下の介護が必要です。

 

・食事の全面的な介助(食事の準備、摂食介助、片付け)

・入浴の全面的な介助(清拭を含む)

・排せつの全面的な介助(おむつ交換を含む)

・着替えの全面的な介助

・移動・体位変換の介助

・服薬管理

・認知症状への対応(見守り、声かけなど)

・口腔ケア

・褥瘡予防のためのケア

 

これらの介護を行う際は、要介護者の残存能力を最大限に活かし、できる限り自立を促すことが大切です。また、リハビリテーションを継続し、身体機能の維持に努めることも重要です。

  • 要介護3での必要な介護用品

要介護3の方に必要な介護用品は、介護の負担軽減と要介護者の快適さを両立させるものが中心となります。主な介護用品には以下のものがあります。

 

・介護用ベッド(電動ベッド)

・エアマットレス(褥瘡予防用)

・車いす(室内用・外出用)

・リフト(移乗用)

・ポータブルトイレ

・入浴用リフト

・介護用食器(自助具付きなど)

・おむつや尿取りパッド(高吸収タイプ)

・体位変換クッション

・口腔ケア用品

 

これらの介護用品を適切に使用と、介護の質を向上させ、要介護者の生活の質の     維持につながります。ただし、個人の状態や生活環境に応じて必要な用品は異なるため、ケアマネジャーなどに相談しながら選択するのが望ましいでしょう。また、介護保険制度を活用し、必要な福祉用具のレンタルや購入     も検討しましょう。

 

要介護4の場合

要介護4は、介護の必要性が非常に高く、日常生活のほぼすべての面で全面的な介助が必要となる段階です。この段階では、24時間体制での介護が不可欠となり、介護者の負担は極めて大きくなります。要介護4の方への適切な介護は、安全性と快適さを最優先に考えつつ、残存機能の維持と生活の質の向上に努めることが重要です。

  • 要介護4とは

要介護4とは、日常生活を一人で送ることがほぼ不可能であり、認知機能の低下も顕著に見られる状態を指します。立ち上がる・歩くといった基本的な動作が極めて困難で、自力で座っていることも難しくなります。食事、排せつ、入浴などのすべての日常生活動作に全面的な介助が必要です。また、意思疎通も困難になってくるため、介護者とのコミュニケーションにも支障が生じる場合があります。この段階では、在宅介護を継続するか、または介護施設への入所を検討するかの判断が必要となるケースも多いです。

 

  • 要介護4の介護内容

要介護4の方への介護内容は、生活のあらゆる面での全面的なサポートが必要となります。具体的には以下の介護が必要です。

 

・食事の全面的な介助(経管栄養を含む場合もある)

・入浴の全面的な介助(清拭や機械浴を含む)

・排せつの全面的な介助(おむつ交換、カテーテル管理を含む)

・着替えの全面的な介助

・移動・体位変換の全面的な介助

・服薬管理

・認知症状への対応(見守り、安全確保)

・口腔ケア

・褥瘡予防と処置

・医療的ケア(痰の吸引、経管栄養など)

これらの介護を行う際は、要介護者の安全と快適さを最優先に考えつつ、残存能力を活かせる場面があれば積極的に活用することが大切です。また、専門的な医療的ケアが必要な場合は、訪問診療や訪問看護サービスなどを利用し、適切な医療的サポートを受けることも重要です。

  • 要介護4での必要な介護用品

要介護4の方に必要な介護用品は、介護の負担軽減と要介護者の安全確保、生活の質の向上を目的としたものが中心となります。主な介護用品には以下のものがあります。

 

・介護用ベッド

・高機能エアマットレス(褥瘡予防・治療用のもの)

・車いす

・移動用リフト(天井走行リフトや据置型リフト)

・ポータブルトイレ(馬蹄型など、移乗しやすい形状のもの)

・特殊浴槽(機械浴槽)

・経管栄養用具

・吸引器

・介護用食器(自助具付きのものや、飲み込みやすい形状のもの)

・おむつや尿取りパッド

 

これらの介護用品を適切に使用すれば、介護の質を向上させ、要介護者の生活の質を維持することができるでしょう。ただし、個人の状態や生活環境に応じて必要な用品は異なるため、ケアマネジャーや介護用品専門家への相談が必要といえます。

 

要介護5の場合

要介護5は、介護保険制度における最も重度の要介護状態を指します。この段階では、日常生活のすべての面で常時介護が必要となり、自力では生活を維持することがほぼ不可能な状態です。要介護5の方への介護は、生命維持と苦痛の軽減を最優先としつつ、可能な限り尊厳を保ちながら生活の質を確保することが重要です。

 

  • 要介護5とは

要介護5とは、要介護区分の中で最も重度な状態を指します。この状態では、1日の大半を寝たきり状態で過ごし、ベッドの上で寝返りをする際にも介助が必要になります。食事、排せつ、入浴などのすべての日常生活動作において、常時全面的な介護が必要です。認知機能も著しく低下し、意思疎通が困難になる場合も多くみられます。また、嚥下機能の低下により、経管栄養が必要になることもあります。要介護5の段階では、医療依存度が高くなり、医療的ケアが日常的に必要となることが多いため、在宅介護を継続するか、または専門的な介護施設への入所を検討するかの判断が求められます。

  • 要介護5の介護内容

要介護5の方への介護内容は、生命維持と苦痛軽減を最優先とした全面的なケアが必要となります。具体的には以下のような介護が必要です。

 

・食事の全面的な介助

・入浴の全面的な介助

・排せつの全面的な介助

・体位変換

・医療的ケア

・口腔ケア

・皮膚ケア

・関節拘縮予防

・精神的ケア

・環境整備

 

これらの介護を行う際は、要介護者の苦痛を最小限に抑え、できる限り快適に過ごせるよう配慮することが重要でしょう。また、医療機関や訪問看護サービスと密接に連携し、適切な医療的サポートを受けることが不可欠です。

  • 要介護5での必要な介護用品

要介護5の方に必要な介護用品は、生命維持と苦痛軽減、そして介護者の負担軽減を目的としたものが中心となります。主な介護用品には以下のものがあります。

 

・高機能介護用ベッド(体圧分散機能や体位変換補助機能を備えた電動ベッド)

・特殊エアマットレス(褥瘡予防・治療用の高機能エアマットレス)

・特殊浴槽(寝たきり状態でも入浴可能な特殊浴槽や機械浴槽)

・天井走行リフト

・高機能車いす(ティルト・リクライニング機能付きの車いす)

・吸引器

・経管栄養ポンプ

・褥瘡予防用具(体位変換クッションや除圧マット)

・医療用モニター

・口腔ケア用品

これらの介護用品を適切に使用することで、要介護者の苦痛を軽減し、生活の質を可能な限り維持できます。また、介護者の身体的負担を軽減し、持続可能な介護環境を整えられるでしょう。ただし、個人の状態や生活環境、医療的ニーズに応じて必要な用品は異なるため、医師やケアマネジャー・介護用品専門家と相談しながら適切な用品の選択が重要です。

4在宅介護で看取りをするまでの流れ

在宅介護で看取りをするまでの流れは、以下のようになります。

  • 1. 本人と家族で在宅で最期まですごす意思確認をする
  • 2. 地域包括支援センターに相談する
  • 3. ケアマネジャーや医師・訪問看護師を探す
  • 4. 本人と家族、専門家を交えたチームを作る
  • 5. 介護用品を準備する
  • 6. 必要に応じて介護リフォームをする
  • 7. チームで連携して介護を進める
  • 8. 自宅で最期を迎える

まず、本人と家族で話し合い、自宅で最期を迎えることを決定します。次に、地域包括支援センターに相談し、適切なサービスの提案を受けます。その後、在宅に対応したケアマネジャー、医師、訪問看護師を探し、看取りチームを編成します。必要な介護用品の準備やリフォームを行い、チームで連携しながら介護を進めます。

 

最期の迎え方については、本人の意思を最大限に尊重しましょう。痛みの緩和や精神的なケアを行いながら、家族や大切な人々に囲まれて、穏やかに最期を迎えられるよう支援します。医療との連携を密に行い、症状の変化に迅速に対応することで、本人と家族の不安を軽減できるでしょう。安心して看取りが行えるよう、専門家を交えたチームでの介護が重要です。

5在宅介護で看取りをするために必要な5つのこと

在宅介護で看取りを行うには、様々な準備と心構えが必要です。ここでは、在宅介護で看取りをするために、特に重要な5つのポイントについて解説します。これらの要素を押さえることで、より円滑で心安らかな看取りを実現できるでしょう。以下の5つのポイントについて詳しく見ていきます。

  • 本人と家族が「自宅で最期を迎える」という意思疎通ができている
  • 医療と介護に関して24時間体制でサポートできる体制を整える
  • 介護や医療に必要な費用を準備する
  • 後悔しないようにする
  • 介護者の心のケアを行う

これらの要素を十分に考慮し、準備すると、より良い在宅看取りの実現が可能です。

本人と家族が「自宅で最期を迎える」という意思疎通ができている

本人と家族の「自宅で最期を迎える」という意思疎通は、在宅看取りの基盤となる最も重要な要素です。要介護者本人の意思を最大限尊重し、どこでどのように最期を迎えたいのかを明確にしておきましょう。この意思確認は、できるだけ早い段階で行い、書面に残しておくのが望ましいです。

 

家族間でも、在宅看取りに対する考えや覚悟を共有し、合意を図ることが重要です。意思疎通が不十分な場合、看取りの過程で家族間の意見のくい違いが生じ、要介護者本人の望む最期を迎えられない可能性があります。また、家族の心理的負担が増大し、後悔を残すことにもなりかねません。

 

十分な意思疎通により、要介護者本人の希望に沿った看取りを実現し、家族全員が納得して看取りに臨むことができます。これは、看取り後の家族の心の整理にも大きく影響するでしょう。

医療と介護に関して24時間体制でサポートできる体制を整える

在宅看取りを円滑に行うためには、医師やケアマネジャー、訪問看護師などの医療チームと緊密に協力していく必要があります。24時間体制で医療と介護のサポートを受けられる環境を整えると、要介護者と家族の安心につながります。

 

まず、在宅医療に対応した主治医を見つけ、定期的な往診や急変時の対応について相談しましょう。また、ケアマネジャーと連携し、適切な介護サービスの利用計画を立てます。訪問看護師は、医療的ケアや日常生活のサポートを行い、家族の介護負担を軽減する重要な役割を果たします。

 

家族内でも役割分担を明確にし、一人に負担が集中しない配慮が大切です。訪問看護や訪問介護サービスを積極的に活用し、専門家のサポートを受けながら、家族全体で看取りに取り組む体制を作るのが望ましいでしょう。

介護や医療に必要な費用を準備する

在宅介護や医療に必要な費用を事前に把握し準備することは、安心して看取りを行うために重要です。費用は個々の状況により異なりますが、一般的な目安を知っておくと、経済的な不安を軽減できます。

 

在宅医療の費用は、医療保険が適用され、1割から3割の自己負担となります。例えば、1割負担の方で月4回の在宅医療を受ける場合、診療代の自己負担額は月7,000円から12,000円程度となります。これに加えて、薬代や介護保険の負担分がかかります。介護保険の自己負担は、1割負担の場合、月600円程度です。

 

また、医療機器のレンタル代や、夜間・休日の診察代など、追加で発生する費用もあります。高額療養費制度の利用も検討し、経済的負担を軽減する方法を探ることが大切です。事前に医療機関や介護サービス提供者に相談し、具体的な費用を把握しておくことで、より安心して看取りに臨むことができるでしょう。

後悔しないようにする

在宅看取りに関して後悔が残らないようにするためには、事前の準備と心構えが重要です。まず、在宅看取りが可能かどうか、ケアマネジャーや主治医に相談し、客観的な評価を受けるのが大切です。本人の状態や家族の介護力、住環境などを総合的に考慮し、無理のない計画を立てる必要があります。

 

また、看取りの過程で生じる不安や悩みを家族だけで抱え込まず、積極的に専門家に相談することが重要です。訪問介護や訪問看護のサービスを利用し、専門的なアドバイスを受けながら介護を進めると、より適切なケアを提供できます。

 

さらに、本人との大切な時間を過ごすことを優先し、できる限りコミュニケーションを取ることは、     後悔を減らす一つの方法と言えます。最期まで本人の希望を尊重し、家族で寄り添う時間を持てれば、心に残る看取りを実現できるでしょう。

介護者の心のケアを行う

看取りまでの在宅介護を続けるには、介護者自身の心のケアが非常に重要です。長期にわたる介護は、身体的な疲労だけでなく、精神的にも大きな負担となります。介護者が心身ともに健康でいられるよう、適切なケアが必要です。

 

心を軽くする方法として、定期的に自分の時間を持つことや、趣味や運動などを通してストレス解消を図るのが効果的です。また、介護日記をと、自分の感情を整理したり、介護の進捗を客観的に見つめ直したりできます。

 

定期的にストレスチェックを行い、自身の精神状態を把握することも大切でしょう。過度なストレスや燃え尽き症候群の兆候が見られる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

 

在宅介護サービスを積極的に利用し、介護の負担を軽減すると、介護者の心のケアにつながります。レスパイトケアを利用して一時的に介護から離れる時間を作れば、心身のリフレッシュになります。家族や友人、支援グループなどとの交流は、悩みの共有やアドバイスがもらえるなど、心の支えとなるでしょう。

6在宅介護に疲れてしまったら利用したいサービス

在宅介護に疲れたときに利用できるサービスの一つとして、「イチロウ」があります。イチロウは、介護保険サービスでは受けられない柔軟なサポートを提供する民間サービスです。

イチロウでは、以下のサービスを受けられます。

  • 介護保険外の訪問介護・家事代行(掃除、洗濯、料理など)
  • 外出支援(通院や買い物の付き添い)
  • 見守りサービス
  • 急な依頼への対応(当日予約可能)

このサービスは、介護者の負担が一時的に増大したときや、レスパイトケアが必要なときに特に有用です。例えば、介護者自身の体調不良時や、急な用事が入ったときなどの利用をおすすめします。

 

イチロウを利用する際は、ウェブサイトや電話で簡単に予約できます。定期利用だけでなく、スポット利用も可能なので、必要なときに必要なだけサービスを受けられます。

 

料金は都道府県や利用時間によって異なりますが、1時間あたり3,190円程度です。詳細な料金はイチロウのウェブサイトで確認できます。

 

イチロウのようなサービスを上手に活用すれば、介護者の負担を軽減し、より持続可能な在宅介護を実現できるでしょう。

7まとめ

在宅介護での看取りは、要介護者本人の希望を尊重し、家族との大切な時間を過ごせる選択肢です。しかし、それには適切な準備と心構えが不可欠です。本人と家族の意思疎通、医療・介護チームとの連携、費用の準備、後悔のない看取りへの取り組み、そして介護者のケアが重要なポイントとなります。

 

必要に応じて介護保険サービスや民間サービスを利用し、介護者の負担軽減も大切です。在宅看取りは決して容易ではありませんが、適切な支援と準備があれば、要介護者本人と家族にとって意義深い経験となるでしょう。

在宅看取りを選択するかどうかは、個々の状況や希望によって異なります。専門家のアドバイスを受けながら、要介護者本人と家族にとっての最適な選択が大切です。十分な準備と心のケアを行い、家族の絆を深めながら、人生最期の時間を大切に過ごせるよう取り組んでいきましょう。

監修者情報

1990年看護師資格取得、同年総合病院の脳神経内科・リハビリテーション科に就職。

ライフスタイル(結婚・出産・育児など)に合わせながら、30年以上看護業務に従事。

主な経歴は、訪問看護・施設看護師・クリニック勤務など。

2003年介護支援専門員資格取得

2022年に個人ブログ開始、2023年から医療ライターとして活動中。

得意ジャンルは、老年看護・認知症・介護保険・アンチエイジング

田代文恵(看護師)
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