介護にまつわるお役立ちコラム

介護休暇の対象条件や取得できる日数、申請の流れを解説

2024年07月05日

介護休暇は、要介護状態の家族を介護する労働者が取得できる権利です。仕事と介護の両立を支援するために設けられた制度で、最大年5日の休暇を取得可能です。介護が必要な家族がいる労働者なら、正社員やパート・アルバイトなど雇用形態を問わず利用できます。この記事では、介護休暇の対象条件や取得できる日数、申請の流れについて解説します。介護休暇を上手に活用して、介護と仕事を無理なく両立させましょう。

1介護休暇とは

介護休暇とは、要介護状態にある家族の世話をするために、一定期間仕事を休むことができる制度です。この制度は、仕事と介護の両立を支援することを目的として設けられました。介護休暇は、育児・介護休業法によって、労働者の権利として法律で定められています。つまり、条件を満たせば、介護休暇を取得することは労働者の権利であり、雇用主は従業員の介護休暇の取得を拒むことはできません。

 

うまく介護休暇を活用することで、介護が必要な家族のそばに寄り添いながら、キャリアを中断することなく仕事を続けていくことが可能になります。

介護休業との違い

介護休暇と似た制度に介護休業がありますが、いくつか違いがあります。大きく違う点は、休む期間でしょう。

 

<介護休業について>

  • 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して取得できる
  • 基本的に無給である
  • 一定の条件を満たせば介護休業給付金を受け取れる

<介護休暇について>

  • 対象者が1人なら年5日、2人以上なら年10日が上限
  • 会社によって有給か無給か異なる

このように、介護休業は長期間の介護のために仕事を休む場合に適しており、介護休暇は通院の付き添いや役所での手続きなど、比較的短時間で済む用事の際に利用するのに向いていると言えるでしょう。

2介護休暇の取得条件

介護休暇を取得するには、法律で定められた一定の条件を満たす必要があります。ここでは、介護休暇の取得条件について詳しく見ていきます。介護休暇は、要介護状態にある家族を介護する場合、正社員だけでなく、多様な雇用形態で働く労働者も利用可能です。

 

しかし、取得のためには、対象者や介護が必要な家族の範囲、認められる介護の範囲などの条件を確認しなければなりません。それぞれの取得条件について具体的に解説します。

介護休暇の対象者

介護休暇を取得できる対象者は、要介護状態の家族を介護する労働者です。正社員は当然ながら、パートタイマーやアルバイト、派遣社員、契約社員なども、雇用形態に関係なく介護休暇を取得できます。従業員数の規模も関係ありません。

 

ただし介護休暇を取得できない対象者として、日雇い労働者があげられます。また、会社と労働者の間で労使協定を結んでいる場合、就業規則で除外規定を設けていれば入社6ヶ月未満の労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者なども、介護休暇を取得できない可能性があります。

介護休暇が認められる家族の範囲

介護休暇の対象となる要介護者の家族の範囲は、・配偶者(事実婚含む)・父母・子(養子も含む)・配偶者の父母・祖父母・親兄弟です。直系血族だけでなく、兄弟姉妹なども幅広く対象に含まれています。実父母でも養父母でも、介護休暇を取得することができます。

 

ただし、叔父叔母、甥、姪、従兄弟、兄弟姉妹の配偶者など、対象家族の範囲外にあたる人の介護は、介護休暇の対象にはなりません。介護休暇の対象となる家族の範囲は限定されているため、あらかじめ確認しておくことが大切です。

介護の範囲

介護休暇が認められる介護の範囲は広く、単に要介護者の身体的な介助だけでなく、様々な支援が含まれます。

  • 食事や入浴、排せつなどの身の回りの世話
  • 通院の付き添い
  • 介護サービスの手続き
  • ケアマネジャーとの打ち合わせ
  • 福祉用具の購入

要介護者の生活を支えるために必要な行為は、全て介護休暇の対象となります。

 

したがって、直接的な介護だけでなく、家族の介護に関する様々な用事の際に、介護休暇を活用することができます。介護する家族の状況に合わせて、必要な範囲で柔軟に介護休暇を取得しましょう。

取得できる休暇の日数

介護休暇で取得できる日数は、対象となる要介護者が1人なら年5日、2人以上なら年10日が上限です。介護休暇は、1日単位、半日単位だけでなく、時間単位でも取得することが可能です。たとえば、要介護者の通院に付き添うために数時間の介護休暇を取得したり、介護サービスの説明会に出席するために半日の介護休暇を取得したりと、状況に応じて必要な時間の休暇を柔軟に取ることができます。

 

ただし、年次有給休暇と異なり、介護休暇は繰り越しができない点には注意が必要です。年度内に取得可能な日数を使い切れるよう、計画的に介護休暇を活用しましょう。

3介護休暇の申請方法

介護休暇を取得するためには、所定の手続きを踏む必要があります。ここでは、介護休暇の申請方法について、具体的なステップを追って説明します。介護休暇の取得を検討している方は、申請の流れを把握し、スムーズに手続きを進められるよう準備しましょう。

 

【介護休暇の申請方法】

  • 1. 介護休暇の取得が必要な状況を把握する
  • 2. 会社の就業規則や社内規定を確認する
  • 3. 上司や人事部門に相談し、申請書を提出する
  • 4. 介護休暇の取得が承認されたら、計画的に休暇を活用する

まず、自分自身が介護休暇を取得する必要があるかどうかを見極めることが肝心です。要介護状態にある家族の状況を把握し、介護のために仕事を休まなければならない期間や頻度を想定しておきましょう。

 

次に、自社の就業規則や社内規定を確認し、介護休暇の取得条件や手続き方法を理解しておく必要があります。介護休暇の申請書のフォーマットや提出先、必要な添付書類などは、会社によって異なる場合があります。

 

介護休暇の取得が必要だと判断したら、できるだけ早めに上司や人事部門に相談するようにしましょう。突然の申請ではなく、事前に状況を説明し、理解を得ておくことが望ましいです。介護休暇の申請は、法律上は口頭でも認められていますが、トラブルを避けるためにも、書面で行うのが一般的です。社内の所定の申請書に必要事項を記入し、期日までに提出します。

 

申請が承認されたら、介護休暇を計画的に活用していきましょう。介護の状況に合わせて、必要な日数や時間を適切に取得することが大切です。

 

介護休暇の申請は、余裕を持って早めに行うことをおすすめします。具体的な申請の時期は、会社の規定や介護の状況によって異なりますが、シフト調整や人員補充なども考えられるため、少なくとも1ヶ月前までには申請の準備を始める方が無難でしょう。

 

介護休暇の申請の際は、担当者に介護の必要性や緊急性をていねいに説明することが大切です。要介護者との続柄や要介護状態、介護休暇を取得する期間や頻度など、できるだけ具体的に伝えるようにしましょう。会社から求められた場合は、介護の必要性を証明する書類(診断書や介護保険被保険者証の写しなど)を提出する必要もあります。

 

社内の介護休暇に関する規定や申請手続きは、会社によってさまざまです。申請の方法や必要書類、承認までの期間など、各社のルールに従う必要があります。スムーズに介護休暇を取得できるよう、事前に上司や人事部門の担当者に確認し、アドバイスを求めるのが賢明です。

4介護休暇を利用する時の注意点

介護休暇は、要介護状態の家族を介護する労働者にとって、大変ありがたい制度です。しかし、介護休暇の利用に際しては、いくつか注意すべき点があります。介護休暇中の賃金や、職場における配慮など、トラブルを未然に防ぐためにも、事前に確認しておくべき事項があります。

介護休暇中は原則無給である

介護休暇を取得する際に、まず理解しておくべきなのは、介護休暇中の賃金の取り扱いです。介護休暇は、法律で定められた制度ではありますが、休暇中の賃金の支払いについては、法律上の定めがありません。つまり、会社は介護休暇中の賃金を支払う義務を負っていないのです。実際、多くの企業では、就業規則などで介護休暇を無給と定めています。

 

一方で、介護休暇を有給とする会社もわずかながら存在します。介護休暇中の賃金の取り扱いは、各社の方針によって異なるのが実情です。自社の規定を確認し、無給の場合は、休暇中の生活費をどうするかを検討しておく必要があります。もし、有給の介護休暇が認められている場合は、積極的に制度を活用していきましょう。いずれにしても、介護休暇の取得前に、賃金の支払いの有無を確認しておくことが大切になります。

上司や同僚への配慮を忘れない

介護休暇を取得する際のもう一つの注意点は、職場の上司や同僚への配慮を忘れないことです。これは、介護休暇に限らず、育児休業や病気休暇など、⻑期の休暇を取る場合に共通して言えます。

 

介護休暇を取得すると、その分、職場の人員が手薄になります。自分の仕事を同僚に振り替えてもらったり、上司に負担をかけてしまったりすることになるかもしれません。職場の理解と協力があってこそ、介護休暇を安心して取得できるのです。

 

介護休暇の取得が必要になったら、できるだけ早い段階で上司に相談し、業務の引き継ぎや調整を行いましょう。「急な休暇で迷惑をかけてしまって申し訳ない」という謙虚な姿勢を示すことも大切です。日頃から職場の人間関係を良好に保ち、コミュニケーションを大切にしておくことが何より重要になります。

 

介護休暇から復帰したら、職場の同僚や上司への感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。ねぎらいの言葉かけることは、自分が不在の間仕事のフォローをしてくれた同僚との人間関係を、さらに良好なものにするはずです。

 

介護休暇の取得は、職場の理解と協力があってこそ成り立つものです。周囲への感謝の気持ちを忘れずに、お互いを尊重し合える職場環境が、仕事と介護の両立につながります。介護休暇を利用する際は、自分自身の権利を主張するだけでなく、常に職場全体の状況も考え、周囲への配慮を怠らないようにしたいものです。

5まとめ

介護休暇は、要介護状態の家族を介護する労働者のために設けられた休暇制度です。介護が必要な家族がいる場合、一定の条件を満たせば、通算年5日の休暇を取得できます。介護休暇を上手に活用することで、介護はもちろん通院の付き添いなどにかかる時間を確保しながら、仕事を続けることが可能です。

 

仕事と介護の両立のためには、会社の理解と協力が不可欠となります。介護の現状を上司に伝え、具体的にどのような支援を求めているのかを相談しましょう。介護休暇以外の柔軟な働き方ができるかも話し合ってみてください。一方で、介護は長期戦です。会社の制度を利用するだけでなく、介護保険や福祉サービスも活用することで、自身の負担を減らすことも大切です。

 

仕事と介護の両立には、会社の理解と協力が不可欠で、長期戦となる介護は、介護保険や福祉サービスの活用で自身の負担を減らす工夫も大切です。

 

イチロウでは、介護休暇だけでは対応が難しい方へのサポートとして、自宅での介護や通院の付き添い、家事支援などのサービスを365日24時間提供します。介護はいつ必要になるかわかりません。介護休暇の要件や取り方を知り、必要時利用できるよう備えておきましょう。

監修者情報

1990年看護師資格取得、同年総合病院の脳神経内科・リハビリテーション科に就職。

ライフスタイル(結婚・出産・育児など)に合わせながら、30年以上看護業務に従事。

主な経歴は、訪問看護・施設看護師・クリニック勤務など。

2003年介護支援専門員資格取得

2022年に個人ブログ開始、2023年から医療ライターとして活動中。

得意ジャンルは、老年看護・認知症・介護保険・アンチエイジング

田代文恵(看護師)
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