介護にまつわるお役立ちコラム

在宅介護のメリット・デメリットを把握して介護サービスを上手に活用しよう!

2024年07月05日

在宅介護は、要介護の方が住み慣れた自宅で暮らし続けるための選択肢の一つです。しかし、在宅介護にはメリットとデメリットがあり、それらを十分に理解した上で介護サービスを活用することが重要です。

 

本記事では、在宅介護のメリットである自宅での生活継続や費用面でのアドバンテージ、デメリットである介護者の負担や仕事との両立の難しさなどを詳しく解説します。また、在宅介護で利用できる様々な介護サービスについても紹介します。

 

上手に介護サービスを活用し、自分や家族に合った在宅介護の方法を見つけることで、安心で充実した在宅介護生活を送りましょう。

1在宅介護とは

在宅介護とは、自宅で要介護者に対して介護や支援を行うことで、住み慣れた環境で家族と一緒に暮らしながら、必要な介護サービスを受けられます。要介護者の状態に合わせて柔軟にサービスを選択できるため、QOL(生活の質)を維持しやすいというメリットがあります。

 

しかし、在宅介護では介護者の負担が大きくなるリスクがあります。介護者は身体的・精神的・時間的・経済的な負担を抱えることになるため、介護サービスをうまく活用しながら乗り越えていく必要があります。介護者の心身の健康を維持するためにも、レスパイトケア(家族の負担を軽減するサポート)などを利用して息抜きの時間を確保することが大切です。

2在宅介護のメリット

在宅介護のメリットは、主に以下の3点です。

  • 本人が住み慣れた自宅で暮らすことができる
  • 施設と比べて介護費用を抑えることができる
  • 介護サービスの自由度が高い

在宅介護は、要介護者にとって住み慣れた環境で生活を続けられるため、精神的な安定につながります。また、施設入所と比較すると、費用面で大きなメリットがあります。さらに、在宅介護では多様な介護サービスの中から自分に合ったものを選択できるため、ニーズに合わせたきめ細やかなサポートを受けられます。

 

在宅介護の3つのメリットについて詳しく解説していきます。

本人が住み慣れた自宅で暮らすことができる

多くの高齢者は、できる限り住み慣れた自宅で暮らし続けたいと願っています。長年過ごしてきた我が家は、安心感や居心地の良さがあり、なじみの深い空間です。親しい家族や友人、近所の人々とのつながりも、高齢者にとって大きな支えでしょう。

 

また、見知らぬ場所に移ることによるストレスを避けられ、自分のペースで暮らせるというのは大きなメリットです。在宅介護なら、これまでの生活を大きく変えることなく、安心して日々を過ごすことができます。

施設と比べて介護費用を抑えることができる

在宅介護でもある程度の出費は必要ですが、施設ほどの高額な費用負担はありません。介護保険を活用すれば、介護サービスの自己負担を1割~3割に抑えられます。福祉用具のレンタルや住宅改修の補助も受けられるため、経済的な負担を軽減できます。

 

ほかにも、在宅介護であれば居住費はかかりませんし、食材の選択や調理法などを工夫することで、食費も低く抑えられるでしょう。光熱費や日用品などの雑費が別途かかってきますが、総合的に見ると費用面では在宅介護の方がメリットは大きいと言えます。

介護サービスの自由度が高い

在宅介護では、要介護者や家族のニーズに合わせて、数ある介護サービスの中から最適なものを選択し、組み合わせることができます。介護施設がルールや体制に沿った画一的なサービス提供になりがちですが、在宅介護では、訪問介護や訪問看護、デイサービスなど、それぞれの内容や利用頻度を柔軟に調整できます。要介護者の心身の状態や家族の都合に応じて、サービスの内容をカスタマイズしていくことが可能です。

 

さらに、近年は民間企業の参入も進み、介護保険外サービスの選択肢が年々広がっています。要介護者や家族の様々なニーズに合わせて自由にサービスを組み合わせれば、家族の負担軽減にも繋がるでしょう。

3在宅介護のデメリット

在宅介護のデメリットは、主に以下の3点です。

  • 介護者の負担が大きい
  • 仕事との両立が難しい
  • 急な体調の変化に対応しにくい

在宅介護では、家族が中心となって介護を行うため、介護者の負担が大きくなりがちです。休む間もなく介護に追われ、心身ともに疲弊してしまうことも少なくありません。また、介護のために仕事を辞めざるを得ない状況に陥ることもあります。

 

さらに、在宅介護では医療面のサポートが受けにくく、急な容体の変化にも対応しづらいという問題があります。介護者だけで高齢者の健康管理を行うのは難しく、不安を抱えながらの介護生活となる可能性があります。

 

在宅介護の3つのデメリットについて詳しく解説していきます。

介護者の負担が大きい

在宅介護の最大のデメリットは、介護者の負担の大きさです。毎日休みなく続く介護に追われ、介護者が心身ともに疲れ果ててしまう「介護疲れ」や「介護うつ」の状態に陥るリスクがあります。

 

介護うつは、介護ストレスが引き金となってうつ病を発症する状態を指します。介護うつになると、介護者自身の生活や健康に大きな支障をきたすだけでなく、要介護者への適切な介護もままならなくなってしまいます。

 

介護疲れや介護うつを防ぐためには、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを有効活用し、介護者の負担を軽減することが大切です。一人で抱え込まず、周囲の協力を得ながら介護をシェアしていくことを意識しましょう。

仕事との両立が難しい

在宅介護では、要介護者のそばで介助を行う必要があるため、仕事との両立が難しくなります。要介護者の通院介助や緊急時の対応などで、仕事を休まざるを得ない場面も多いでしょう。これが施設介護であれば、介護の担い手は施設のスタッフなので、家族は仕事に専念できます。

 

また、介護のために仕事を辞めてしまう「介護離職」も大きな問題となっています。総務省の平成29年就業構造基本調査では、年間10万人が介護を理由に離職しているという結果が出ています。離職によって収入が減ると、介護費用の工面にも苦労することになります。

 

仕事と介護の両立を図るためには、職場の理解と協力が不可欠です。介護休業制度や時短勤務制度など、介護との両立を支援する制度の利用を検討しましょう。また、ホームヘルパーの利用や通所介護の活用など、介護サービスを上手に組み合わせることも両立のカギとなります。

急な体調の変化に対応しにくい

施設介護では、24時間体制で医療スタッフが常駐しているため、利用者の急変にもすぐ対応できます。しかし在宅介護の場合、医療面のサポートが手薄になりがちです。特に夜間や休日など、医療機関が閉まっている時間帯に急変が起こると、適切な対応が難しくなります。

 

これは訪問診療や訪問看護を取り入れることで、ある程度はカバーできます。24時間対応の訪問介護サービスを利用することで、緊急時の駆けつけ対応も可能となります。かかりつけ医や看護師との連携を密に取り、日頃から急変時の対応について話し合っておくことも大切です。

4在宅介護で利用できる介護支援サービス

在宅介護サービスには、介護保険サービスを中心に、自治体による支援サービスや民間の介護サービスがあります。これらのサービスを適切に組み合わせることで、住み慣れた自宅で安心して生活を続けられるようサポートします。在宅介護サービスは多岐にわたるため、主な支援サービスについて詳しく解説していきます。

介護保険サービス

介護保険サービスは、介護保険制度に基づいて提供される公的なサービスです。要介護認定または要支援認定を受けた方が利用できます。費用の自己負担は1割から3割で、所得に応じて負担割合が変わります。訪問介護、訪問看護、デイサービスなど、さまざまなサービスが介護保険の対象となっています。

 

介護保険サービスのメリットは、専門的なケアを比較的低額で受けられる点です。また、ケアマネジャーが作成するケアプランに沿ってサービスが提供されるため、体系的で継続的なサポートが受けられます。しかし、サービスの種類や利用時間・回数には制限があります。

  • 訪問型サービス

訪問型サービスは、利用者の自宅に介護の専門職が訪問します。掃除、調理、食事や入浴などの生活の介助から、医師や看護師などの医療にプロによるサービスもあります。また、利用者の心身の状態によって、入浴が困難な方は訪問入浴介護、リハビリが必要な方は訪問リハビリテーションが利用できます。

 

以下に、代表的な訪問型サービスの種類と概要をまとめました。

訪問型サービスの種類サービス概要
訪問介護(ホームヘルパー)ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助、通院介助などを行う
訪問看護看護師などが自宅を訪問し、医療的なケアや健康管理などを行う
訪問入浴看護師と介護職員が自宅を訪問し、専用の浴槽を使って入浴介助を行う
訪問リハビリテーション理学療法士などが自宅を訪問し、リハビリテーションを行う
居宅療養管理指導医師、歯科医師、薬剤師などが自宅を訪問し、療養上の指導を行う
  • 通所型サービス

通所型サービスは、利用者が施設に通ってサービスを受けます。日帰りで施設に通い、入浴や食事、レクリエーションや機能訓練などがあります。心身の状態によっては、リハビリテーションに重点を置いたサービスも受けられます。また、短期間施設に滞在して介護を受けることもできます。

 

以下に、代表的な通所型サービスの種類と概要をまとめました。

通所型サービスの種類サービス概要
通所介護(デイサービス)日帰り。入浴や食事、レクリエーションなど
デイケア日帰り。専門職によるリハビリテーションなどの医療ケア
ショートステイ短期間施設に宿泊して、介助やリハビリテーションを受ける
  • 住宅環境を整えるサービス

安全で住みやすい環境を整えるために、介護保険制度が利用できます。介護保険制度では、要介護度に応じて、福祉用具のレンタルや購入、住宅改修の費用の一部を支給します。

 

以下に、代表的なサービスの種類と概要をまとめました。

住宅環境を整えるサービスの種類サービス概要
福祉用具のレンタル介護ベッドや車椅子などの福祉用具がレンタルできる
特定福祉用具の販売入浴や排泄などレンタルには向かない福祉用具を購入する際、費用の一部が還付される
住宅改修手すりの取り付けや段差の解消など、住宅のバリアフリー化費用の一部が還付される
自治体による支援サービス

介護保険制度とは別に、市区町村などの自治体が独自に提供している介護支援サービスがあります。介護保険の補完と地域の実情に合わせたきめ細やかな支援を目的としており、在宅生活を継続するための手当の支給や、介護用品の支給などを行っています。また、家族を対象に、介護者交流会や介護知識・技術を学ぶ講座を開催したり、慰労金の支給を行っている自治体もあります。

 

自治体による支援サービスは、サービス内容や対象者、利用条件などは自治体によって異なります。どんなサービスが受けられるかは、住んでいる自治体のホームページや窓口で確認してください。

民間の介護サービス

介護保険制度を補完する形で、民間企業による多様な介護サービスがあります。介護保険の対象とならない部分をカバーしたり、より柔軟で幅広いニーズに応えるため、配食サービス、家事代行サービス、移送サービスなどを提供しています。

 

民間の介護サービスは、介護保険の認定がなくても利用可能ですが、費用は全額自己負担です。利用者の希望に合わせたきめ細やかなサポートを受けられるメリットと、経済的な負担が大きいデメリットのバランスをとりながら、自分や家族に必要なサービスを見極めて利用しましょう。

  • イチロウの訪問介護サービスの特徴

イチロウの訪問介護サービスはオーダーメイド型のため、本人や家族が生活していく上で実際に困っていることを手助けしてもらうことができます。介護はもちろん、電球を変えることから、お墓参りの代行までと幅広く生活をサポート。介護の枠に捕らわれない、柔軟な対応が強みです。

 

イチロウでは、利用者との信頼関係構築を重視し、あえて担当ヘルパーは固定制にしています。また、ケアの「見える化」に力を入れていて、担当ヘルパーが作成するケアレポートを、ご家族や介護に関わる専門職にも共有。サービスの内容や質を多角的に確認できる体制を整えています。これは特に一人暮らしをしている認知症の方にとって嬉しい制度といえるでしょう。

5まとめ

在宅介護は、住み慣れた自宅で介護を受けられるメリットがある一方で、介護者の負担が大きいというデメリットもあります。しかし現在は、介護保険サービスや自治体・民間の支援サービスが充実してきており、上手に活用することで、在宅介護の質を高め、介護者の負担を軽減することができるでしょう。特に、利用者のニーズに合わせたオーダーメイドの介護サービスを提供する民間企業の存在は心強いものがあります。

 

在宅介護を続けるためには、各種サービスを適切に組み合わせ、介護する側・される側の双方にとっての最適な環境を整えることが重要です。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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