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老健(介護老人保健施設)のショートステイとは?特養や有料老人ホームのショートステイとの違い

2024年07月02日

家族の介護をしていると、心身ともに疲れが溜まってしまうことがあります。そんな時にショートステイを利用すれば、一時的に介護から解放され、リフレッシュすることができます。ショートステイには様々な種類がありますが、今回は老健(介護老人保健施設)のショートステイについて、特養や有料老人ホームのショートステイとの違いを交えながらご紹介します。ショートステイのサービス内容や利用条件、費用など、具体的な情報をわかりやすく紹介しますので、最適な施設選びの参考にしてください。

1要介護者が利用できるショートステイとは

ショートステイとは、在宅で介護を受けている要介護者が、短期間施設に入所して介護サービスを受けることができるサービスです。在宅介護を支援し、介護者の負担を軽減するために利用されます。

要介護者が利用できるショートステイには、いくつか種類があります。ショートステイが利用できる主な施設は以下の通りです。

 

【ショートステイが利用できる施設】

  • 老健(介護老人保健施設)
  • 特養(特別養護老人ホーム)
  • 介護医療院
  • 有料老人ホーム

ショートステイは、介護者が休息をとったり、急用で家を空けたりする時に、要介護者が安全に過ごせる場所を提供するための重要なサービスです。要介護者は、専門的なケアやリハビリを受けられます。

家族が旅行に出かける間や、介護者が病気で介護できない期間などに、ショートステイを利用することで、要介護者の生活を安全に維持できます。

 

ショートステイは在宅介護を助け、介護者と要介護者の双方にとって安心できるサービスです。

老健のショートステイの特徴

老健のショートステイは、短期入所療養介護といいます。医療ケアと介護サービスを併せて受けられるのが特徴であり、リハビリテーションにも力を入れています。

特養のショートステイの特徴

特養のショートステイでは、主に日常生活の介護を中心とした手厚い介護サービスを受けられます。介護保険制度では、短期入所生活介護といいます。

介護医療院のショートステイの特徴

介護医療院は、医療依存度の高い方が入所する施設です。医療スタッフが常駐しており、医療と介護が一体となったケアが提供されます。介護医療院で利用できるのは、老健と同じ短期入所療養介護となります。

有料老人ホームのショートステイの特徴

有料老人ホームのショートステイは、民間施設で提供されるサービスです。短期入所生活介護もしくは、介護保険外のショートステイサービスが利用できます。施設によっては、充実した設備とサービスが提供されます。介護サービスに加え、レクリエーションやリハビリテーションが充実しています。保険外の場合、費用は高めですが、施設によっては、まるでホテルのように快適な環境でのケアが受けられることもあります。

2老健のショートステイのサービス内容

老健のショートステイでは、リハビリテーションを中心とした多様なサービスが提供されます。具体的には、理学療法士や作業療法士によるリハビリ、医師や看護師による健康管理、介護スタッフによる日常生活の介護などが含まれます。

 

ここからは、老健のショートステイのサービス内容について、その他の施設と比較しながら違いを解説していきます。

老健のショートステイのサービス内容

老健のショートステイでは、以下のようなサービスを受けられます。

  • 医療ケア(医師や看護師による健康管理、処置など)
  • 介護サービス(食事介助、入浴介助、排泄介助など)
  • リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法など)
  • レクリエーション(体操、ゲーム、音楽療法など)

老健は、従来型老健と介護療養型老健に分けられます。従来型老健は、在宅復帰や在宅療養支援機能の充実度によって、その他型・基本型・加算型・強化型・超強化型に分けられます。療養室は、個室・多床室・ユニット型があります。介護療養型老健は、従来型老健よりも医療サービスが充実しているのが特徴です。

老健のショートステイが向いている人
・医療ケアとリハビリテーションを必要とする方
その他の施設で受けられるサービス内容の違い

老健以外にも、特養、介護医療院、有料老人ホームでショートステイのサービスを受けられます。違いは以下の通りです。

  • 特養のショートステイ
    短期入所生活介護による介護サービスを提供します。医療ケアは老健ほど充実していません。部屋は多床室、個室、ユニット型があります。
  • 介護医療院のショートステイ
    施設には医療依存度の高い方が入所しており、老健と同様に、短期入所療養介護による医療ケアやリハビリを中心としたサービスを提供します。部屋は多床室、個室、ユニット型があります。
  • 有料老人ホームのショートステイ
    短期入所生活介護サービスと、施設によっては介護保険外のショートステイサービスを提供します。保険外のサービスでは、介護サービスに加え、レクリエーションやリハビリが充実している施設もあります。また、ホテルのように高級なサービスを提供できるのも、保険外サービスの特徴です。部屋は個室が中心であり、費用は施設によって高額になることもあります。
特養のショートステイが向いている人
・医療ケアよりも日常の介護を中心に受けたい方
介護医療院のショートステイが向いている人
・医療ニーズの高い方
有料老人ホームのショートステイが向いている人
・費用が高額でも施設独自のサービスを受けたい方
3老健のショートステイを利用できる人の条件

老健のショートステイを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。要支援1~2、要介護1~5の認定を受けた方が対象です。また、病状が安定しており、常時医師の管理を必要としない方が利用できます。リハビリテーションを中心とした医療ケアや介護を必要とする方や、在宅での生活に不安がある方が対象となります。

その他の施設における利用条件の違い

老健以外のショートステイのサービスを受けられる施設の利用条件は以下の通りです。

特養のショートステイの利用条件
・要支援1~2、要介護1~5の認定を受けた方が対象
介護医療院のショートステイの利用条件
・要支援1~2、要介護1~5の認定を受けた方が対象
有料老人ホームのショートステイの利用条件
・介護保険適用のショートステイ:要支援1~2、要介護1~5の認定を受けた方が対象
・介護保険適用外のショートステイ:要介護認定を受けていない方でも利用可能

その他の施設における利用条件においても、介護保険サービスであれば要介護認定を受けて要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定された方が対象となります。有料老人ホームで受けられる介護保険適用外のショートステイは、要介護認定を受けていなくても利用可能な場合があります。詳細は施設に確認しましょう。

4老健のショートステイを利用できる期間

老健のショートステイは、1泊2日から最大30日まで利用できます。しかし、利用できる介護保険サービスの上限額が要介護度に応じて決まっているため、実際に利用できる日数の目安は以下のとおりです。

要介護度
利用限度期間
要支援1
6日
要支援2
11日
要介護1
17日
要介護2
20日
要介護3
28日
要介護4
30日
要介護5
30日

老健のショートステイは短期間の利用が基本で、通常は数日から数週間の範囲で利用する方が多いです。利用期間は、ケアプランに基づいて調整されます。30日以上利用したい場合は、やむを得ない理由がなければいけません。たとえば、「介護者が体調不良により在宅介護できない」や「本人の体調や生活リズムが在宅生活に向けてまだ整っていない」などの理由です。期間を超えて利用したい場合、その理由を記載した届出書を自治体に提出する必要があります。

その他の施設の利用可能期間

特養や有料老人ホームのショートステイも、1泊2日から最大30日まで利用可能です。また、老健のショートステイと同様に、要介護度に応じて実際に利用できる日数は限られます。有料老人ホームの介護保険適用外ショートステイであれば、施設によって利用日数を増やせる場合もあるようです。詳細は施設に確認してみましょう。

利用可能最短日数
利用可能最大日数
特養
1泊2日
30日
介護医療院
1泊2日
30日
有料老人ホーム
1泊2日
施設による
5老健の自己負担額

老健のショートステイの費用は、利用限度期間内であれば介護保険が適用され、自己負担額は1割~3割となります。自己負担額の割合は、所得に応じて決まります。利用限度期間を超えた場合や、31日目にショートステイを利用する場合は全額自己負担となります。なお、31日目に自費で利用していれば、32日目からは介護保険が再び適用となります。

 

自己負担1割の場合の一例は、以下のとおりです。

 

【基本型・自己負担1割の場合】

要介護度
従来型個室
多床室
ユニット型
要支援1
579円
613円
624円
要支援2
726円
774円
789円
要介護1
753円
830円
836円
要介護2
801円
880円
883円
要介護3
864円
944円
948円
要介護4
918円
997円
1,003円
要介護5
971円
1,052円
1,056円
その他の施設の自己負担額

特養や介護医療院のショートステイの自己負担額も、介護保険の適用範囲内で計算され、1~3割となります。有料老人ホームの介護保険適用外のショートステイにおいては、施設の設備や提供サービスの内容によって費用が大きく異なります。ショートステイを利用する前は、あらかじめ施設に費用を確認しておくことが重要です。老健以外の施設での自己負担額は以下の通りです。

  • 特養のショートステイ:老健と同様に、利用限度期間内は介護保険が適用され、自己負担額は1割~3割となります。
  • 介護医療院のショートステイ:老健と同様に、利用限度期間内は介護保険が適用され、自己負担額は1割~3割となります。
  • 有料老人ホームのショートステイ:介護保険の適用を受けて自己負担1割~3割になる場合と、全額自己負担の場合があります。全額自己負担の場合は、施設によって費用は異なります。

なお上記の自己負担額は、介護サービス費のみを紹介しています。実際には、施設の人員体制やサービス内容によって加算として上乗せされる費用や、食費・居住費・日常生活費なども別途かかります。

6老健のショートステイを利用するまでの流れ

老健のショートステイを利用するまでの流れは以下の通りです。

 

【老健のショートステイを利用するまでの流れ】

  • 1. 要介護認定の申請
  • 2. ケアマネジャーに相談
  • 3. 施設の見学、申し込み
  • 4. 利用開始前の面談、契約
  • 5. 利用開始

老健のショートステイを利用するためには、大前提として要介護認定を受ける必要があります。市区町村にある地域包括支援センターに相談するか、役所の高齢者福祉窓口に申請を行います。

 

認定がおりたら、まずは担当のケアマネージャーに相談し、ケアプランにショートステイを利用する旨を記載してもらいます。その後、施設の見学や面談の調整を行い、利用日時を決定します。利用当日は、必要な書類や持ち物を準備して施設に向かいます。

 

必要書類は、介護保険被保険者証、介護保険負担割合証、健康保険証、診療情報提供書などです。相談してから入所までは、早くて1週間程度、混雑状況によっては1ヶ月以上かかる場合もあります。

7まとめ

老健のショートステイは、医療ケアと介護サービス、リハビリテーションを併せて受けられる施設です。他の施設と比較し、医療に重点をおいたサービスを受けられるのが特徴です。ショートステイを利用する際は、実際に訪問してスタッフや入所者の雰囲気を見てから決めましょう。状況に合わせて、適切なサービスを選択することが大切です。

 

要介護度が上がり、在宅での生活が難しくなった場合でも、介護保険と自費サービスを組み合わせて在宅を続けていける可能性があります。例えば、訪問介護を利用し、ショートステイと併用すれば、家族の負担を軽減しながら在宅生活を続けられるかもしれません。

監修者情報

所属:介護老人保健施設メディトピア小諸

経歴:2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務の傍ら、ライターとしても活動している。医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

鈴木康峻(理学療法士)
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