介護にまつわるお役立ちコラム
親の介護と自分の生活の両立は可能?考えられる問題点と対処法
この記事では、親の介護と自分の生活を両立させるために知っておくべき情報をまとめました。親の介護は子どもの義務ではなく、すべてを背負い込む必要はありません。介護による問題点を理解し、親が元気なうちから備えておくことで、仕事や生活との両立が可能になります。親の介護に直面している方や、将来に不安を感じている方に役立つ内容となっています。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、親の介護について悩む人が増加すると予想されています。しかし、親の介護はすべて子どもが背負う必要はありません。介護とは、親の自立を促すためのサポートであり、付きっきりで世話をすることを指す介助とは異なります。
世間一般では、親の介護は子どもの義務だと考えられがちですが、実際はそうではありません。介護とは、要介護者の自立を促しサポートするのであり、必ずしも付きっきりで世話をするのを意味しません。24時間365日、親のそばにいて身の回りの世話をするのは介助であって、介護とは異なるのです。
確かに民法には、扶養や扶助の義務が定められています。子どもには親の生活を経済的に支える義務がありますが、それはあくまでも生活費の負担であって、直接的な介護を行う義務はないのです。介護保険制度や介護サービスを利用しながら、親の自立を促すのが子どもの役割だと言えます。
一方で、介護が必要な状態にある親を放置するのは許されません。介護の必要性を認識しながら親を放ったらかしにすれば、保護責任者遺棄致死罪や保護責任者遺棄致傷罪などの刑事罰に問われる可能性があります。子どもに介護の義務はないといっても、虐待や放置を正当化する理由にはならないのです。
親の介護が必要になったら、行政の窓口や地域包括支援センターに相談し、適切なサービスを探す必要があります。介護の主体は親本人であり、子どもはそれをサポートする立場だというのを理解しておきましょう。介護の全てを子どもが背負い込む必要はありません。しかし、親の状況を無視することもできないのです。
親の介護が必要になれば、さまざまな問題が生じます。子どもは自分の生活を犠牲にしなければならないかもしれません。仕事を続けるのが難しくなったり、家族関係がギクシャクしたりすることも考えられるでしょう。ここでは、親の介護で想定される主な問題点を見ていきます。
親の介護には多額の費用がかかります。在宅で介護を行う場合、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護サービスを利用する場合が多く、1ヶ月に20万〜30万円程度の費用が発生するケースも珍しくありません。
一方、介護施設に入居させる場合は、さらに高額な費用がかかります。有料老人ホームの入居一時金は数十万〜数千万円、月額利用料は10〜30万円程度が相場です。特別養護老人ホームは比較的安価ですが、入居待ちの期間が長いという問題があります。
親の年金収入や貯蓄だけでは賄いきれない場合、子どもが費用を負担しなければならなくなります。介護にお金がかかるあまり、子ども自身の老後資金が不足するリスクもあるのです。
親の介護をしながら仕事を続けるのは容易ではありません。要介護度が高くなるほど、介護に時間を取られるようになります。訪問介護やデイサービスを利用しても、朝晩の身支度や食事の世話、通院の付き添いなどに多くの時間が割かれるでしょう。
介護休業や介護休暇の制度を利用すれば、一定期間は仕事を休むことができます。しかし、職場に迷惑をかけたくないという思いから、制度の利用をためらう人も少なくありません。結果的に、仕事と介護の両立に苦しみ、離職を余儀なくされるケースが後を絶ちません。
介護離職は、一時的な収入の減少だけでなく、将来的なキャリアにも影響を与えます。再就職が難しくなったり、ブランクがあるため賃金が下がったりする可能性があります。
親の介護をめぐって、家族の関係が悪化するケースがあります。特に、兄弟姉妹が多い場合、介護の役割分担をめぐって対立が生じやすくなります。誰が実際の介護を担当し、誰が費用を負担するのか。こうした点で意見が一致しないことも珍しくありません。
長男や長女に介護の役割が集中する「長子介護」の問題や、介護の大半を嫁が担う「嫁介護」の問題も指摘されています。家族の一部に介護の負担が偏ると、不公平感から関係がこじれてしまうこともあります。
介護の方針をめぐる対立も起こりがちです。在宅介護を続けるか、施設に入居させるか。リハビリに力を入れるか、看取りに重点を置くか。家族の間で意見が食い違えば、人間関係が悪化する恐れがあります。
親の介護は、肉体的な負担が大きいだけでなく、精神的なストレスも引き起こします。とりわけ、突然介護が必要な状況になった場合、家族で話し合う間もなく、一人で多くの問題を抱え込まなければならなくなります。介護の方法が分からなかったり、親の状態が思うように改善しなかったりすると、強い不安やストレスを感じるようになるでしょう。
また、慣れない介護に追われるうちに、徐々に疲れが蓄積していきます。夜眠れなくなったり、イライラが続くようになったりと、知らず知らずのうちに「介護うつ」を発症してしまう恐れがあります。
親を施設に入居させた場合は、また別の罪悪感を抱えることになるかもしれません。「親の面倒を見られなかった」「もっと頑張れたはずだ」と自分を責めてしまうのです。
親の介護は誰にでも起こりうる問題です。親が元気なうちから介護について考え、備えておくことが何より大切です。ここでは、親の介護と自分の生活を両立させるために、今からできることを見ていきましょう。
「介護の話なんてまだ早い」と考えがちですが、いざというときのために、親子で率直に話し合っておくのが何より大切です。親がどのような介護を望んでいるのか、そのための費用をどう工面するのか、最期をどこでどのように迎えたいと思っているのか。こうした点を具体的に確認し、家族全員で認識を共有しておく必要があります。
親と二人だけで話し合うのは難しいと感じる人も多いかもしれません。そんなときは、兄弟姉妹を交えて、みんなで将来について考える機会を設けてみましょう。親の気持ちを尊重しつつ、家族がどこまでサポートできるか、できないかを洗い出していくのです。
話し合った内容は、メモや録音などで記録しておくのがおすすめです。いざというとき、家族の間で解釈の違いが生じては、混乱を招くだけです。合意事項を文書化し、それぞれが保管しておけば、すれ違いを防ぐことができるでしょう。
「まだ先の話」と思っていても、介護はいつ必要になるか分かりません。とっさの事態に慌てないためにも、今のうちから介護に関する知識を仕入れておくことが求められます。
例えば、オムツの当て方や車いすの操作方法、スキンケアの基本など、介護の現場で必要となる技術は意外と多岐にわたります。こうした知識をゼロから学ぼうとすると、いざというとき戸惑うだけでなく、強い拒否感を抱いてしまうかもしれません。排泄介助などは特にハードルが高いと感じる人が多いのではないでしょうか。
しかし、介護の基礎を身につけておけば、いざというとき冷静に対処することができます。介護の講座に通ったり、介護関連の書籍を読み漁ったりして、少しずつ知識を蓄えていきましょう。親の介護に備えるだけでなく、自身の老後を見据える意味でも、決して無駄にはならないはずです。
「親の様子がおかしい」「介護が必要かもしれない」と感じたら、ためらわずに地域包括支援センターに相談してみましょう。地域包括支援センターとは、介護や福祉、医療など、高齢者の生活を総合的に支える公的な窓口です。介護の専門職が親身になって相談に乗ってくれるだけでなく、介護保険サービスの利用方法や介護予防の取り組みなど、さまざまな情報を提供してもらえます。
親が65歳以上で、別居している場合も、遠慮せずに地域包括支援センターを活用しましょう。実際に介護が必要な状況でなくても、日頃の不安や疑問を相談できる心強い味方となってくれるはずです。
また、親が住む自治体が発行している「高齢者福祉のしおり」や「介護保険ガイドブック」といった便利帳も、ぜひ手に入れておきたいものです。介護サービスの概要や、利用方法、費用などが詳しく解説されています。介護の最新情報をいち早くキャッチするためにも、地域包括支援センターとの関係を築いておくことが大切だと言えます。
いくら備えていても、思いがけず親の介護が必要になることがあります。話し合いが不十分なまま、突然介護の主役を担わされるのは、誰もが戸惑うもの。そんなとき、私たちはどのように行動すべきなのでしょうか。ここでは、介護の必要性を感じたら真っ先に取るべき行動を見ていきます。
まずは家族みんなで集まり、率直に話し合うのが何より大切です。理想を言えば介護が必要になる前に時間をかけて議論すべきですが、突然の事態に備えられていないのも珍しくありません。そんなときは、早急に家族会議を開き、今後の方針を固めていきましょう。
誰が介護の中心を担うのか、みんながどこまで協力できるのか、費用をどのように負担していくのか。一人ひとりが率直な意見を出し合い、親の気持ちを想像しながら、現実的な役割分担を決めていくのです。
「○○さんに任せよう」と安易に人選するのは禁物です。介護の主役をになう人の身になって、できるのとできないのを見極める必要があります。「介護は長男の嫁の役目」といった古い価値観に縛られることなく、平等な視点で話し合いを進めていきたいものです。
親の介護が始まれば、仕事を続けるのが難しくなるかもしれません。介護のために退職を考える人もいるでしょう。しかし、職場を去る前に、勤務先の支援制度を確認してみる価値は大いにあります。
介護休業や介護休暇、短時間勤務など、多くの企業で両立支援の制度が整備されているからです。育児・介護休業法では、要介護状態の家族を介護するために休業を申請した場合、事業主は原則として認めなければならないと定められています。また、介護のための時差出勤や在宅勤務など、柔軟な働き方を認める企業も増えてきました。
こうした制度を利用しながら、無理のない形で仕事と介護を両立させていく道を探ってみましょう。自治体の介護支援策などもあわせて確認し、できる限り働き続けられる環境を整えていくことが肝心です。会社を辞めてしまえば、経済的にも精神的にも厳しい状況に追い込まれかねません。慌てず、支援制度を味方につけていきたいものです。
親の介護を一人で背負い込む必要はありません。とりわけ、一人っ子の場合、「介護は自分がしなければ」と思い詰めてしまいがちです。しかし、介護の主役はあくまでも親自身。子どもは、親の意向を尊重しつつ、できる範囲でサポートに回ればいいのです。介護の全てを引き受けようとして、仕事を辞めたり、心身を壊したりしては本末転倒です。
まずは、親の心身の状態に合わせて、さまざまな介護サービスを利用するのを考えてみましょう。訪問介護や通所介護、ショートステイなど、介護保険の給付を受けられるサービスは実に多岐にわたります。自治体などが行なっている配食サービスや移送サービス、見守りサービスなども視野に入れ、うまく活用していくのが大切です。
最近では、民間の事業者による多様なサービスも登場しています。イチロウが提供する24時間365日の在宅介護サービスなどは、その代表例と言えるでしょう。一流の介護士による柔軟なサポートを受けられるため、親の状況に合わせて必要な時間だけ利用するのができるのです。家族だけで介護を抱え込まずに、社会の力を借りながら、親と自分の生活を守っていく。それが、介護の基本的な考え方だと言えます。
親に介護の必要性を感じたときは、躊躇せずに要介護認定の申請手続きを始めましょう。要介護認定とは、介護の必要度合いを自治体が審査し、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階で判定するものです。介護サービスを利用するには、原則としてこの認定を受ける必要があります。
認定調査の結果をもとに、介護の方針を立てていくでしょう。ただし、支給限度額などのルールがあるため、状況によっては介護保険外のサービスを組み合わせるのも視野に入れなければなりません。
介護の進め方に迷ったときは、ためらわずに地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターには、ケアマネジャーや社会福祉士、保健師など、介護のプロが常駐しています。介護サービスの利用方法はもちろん、介護者の不安や悩み、将来の見通しなど、なんでも気軽に相談できる心強い味方なのです。行政の支援策や、地域の介護資源の活用法など、介護の専門家ならではの知恵とノウハウが期待できます。
介護の不安を1人で抱え込むほど危険なものはありません。「こんなの聞いても」と遠慮せず、地域包括支援センターを頼ってみてください。
親の介護は誰にでも起こりうる問題ですが、それによって自分の生活を犠牲にする必要はありません。介護の知識を身につけ、周囲の支援を上手に活用しながら、仕事や生活との両立を目指しましょう。介護はつらいのも多いですが、家族で支え合い、社会のサポートを受けるので乗り越えられます。親が住み慣れた場所で安心して過ごせるよう、また介護者自身も充実した生活を送れるよう、一緒に考えていきましょう。