自宅の介護・家事
サービス利用例

東京都 江東区 T様
仕事も介護も、全部投げ出したくなった──私を支えたのは“距離”と民間サービスでした。
対象者
ご息女
利用期間
3年
利用頻度
月1回

はじめに

介護は、ある日突然やってきます。家族の誰かが倒れたその瞬間から、生活は静かに、しかし確実に変わっていきます。今回お話を伺ったT様も、そんな“予期せぬ日常”に直面したひとりです。母親の介護をきっかけに、仕事、家族関係、住まいの形までが大きく揺れ動く中、どうやって日々を乗り越えてこられたのか。そして、その過程で見えてきた「介護保険制度の限界」と「民間サービスの必要性」とは。当事者のリアルな声から、介護の課題と解決のヒントを一緒に考えてみませんか?

まずは、これまでの介護のご経験について教えてください。

介護が始まったのは、2020年のコロナ禍の最中。母が脳梗塞で倒れたことがきっかけでした。後遺症として高次脳機能障害が残り、上下や表裏の区別もつかないような状況に。そこから介護認定を受け、在宅介護がスタートしました。

当初から家族と民間サービスを併用されていたのですか?

いえ、介護が始まった当初は、家族だけで支えていました。私が中心となって父と2人で、介護保険サービスを活用しながらどうにか回していたんです。ただ、次第に介護方針の違いや負担の偏りから衝突が増え、結果的に別居することに。いまは父が主に介護を担い、私は週1回ほど実家に通っています。平日は医療保険のデイケアに通い、朝は介護保険の訪問サービスで着替えを手伝ってもらい、夜間や休日は父やイチロウさんにお願いしています。

介護が始まった頃は、どんなことが一番大変でしたか?

家族の認識を揃えるのが本当に難しかったです。父は、母の状態を受け入れられず、「まだ介護が必要な状態じゃない」と現実逃避してしまって。病院に連れて行くのも遅れましたし、家にサービスを入れることにも強い抵抗がありました。

その状況で、どうやって働きながら介護をされたのでしょうか?

私は業務委託でWeb制作の仕事をしていたのですが、リモート勤務だったことで家にいる=介護できると思われがちでした。仕事中でも呼び出され、ついにはプロジェクトを外されてしまって。介護が落ち着くまでは仕事を失い、新しい仕事に就くまで3ヶ月ほどブランクがありました。

それはとても辛い状況ですね。

はい。でも一番辛かったのは、家族全員がそれぞれ限界で自己中心的になってしまうことでした。誰も悪くないのに、皆がストレスでぶつかってしまう。たとえば、私は睡眠不足でフラフラになっているのに、父は「若いんだから寝なくても平気だろう」と言って自分は早々に寝てしまう。「じゃあ、私はいつ寝ればいいんだ!」とお互いが感情的に声を荒げてしまい、家の中は常にピリピリしていました。 そうした日々が積み重なり、ついには母から「もういい加減にして。明日出て行って」と言われてしまって。父も「俺が全部やるから出て行け」と強く言い張り、ついに私は家を出る決断をしました。同居をやめ、別居したことでようやく冷静に話せるようになり、イチロウさんのような民間サービスを取り入れよう、という流れになりました。

別居という選択がターニングポイントだったのですか?

そうですね。適度な距離感があることで、母も私も感情的にならずに接することができました。離れていることで「ありがとう」と言ってもらえるようになったのは、大きな変化です。介護においては「スープが冷める距離」──つまり、ちょっと来るのが面倒だけど、来てくれるとありがたい、という物理的な距離感が本当に大事だと実感しました。

イチロウを使ってみて、どんな変化がありましたか?

まず、家に人が来ることで母がピシッとするようになりました。「お客様が来る」気持ちになるらしく、お茶を出そうとしたり、服装を整えたり、きちんと話そうとする姿勢が見えるようになったんです。例えば、家族に対しては「そこ取って」などと曖昧に話していたのが、「ちょうど棚の右側にある〇〇を取っていただけますか?」と具体的に指示するようになって。これは小さなようでいて、大きなリハビリ効果があると感じています。

他にも、制度面で感じた課題はありますか?

介護保険の範囲では「見守り」や「お話し相手」は対象外で、頼めないサービスが多いんです。しかも、使える限度額に至ってなくても「人が足りない」「時間帯が合わない」で断られることが多くて。特に入浴介護は、夕方の人気時間帯はもちろんNG、仕方がなく朝方にお願いしようとしたところ、事業所側から「その時間は人が確保できない」とお断りされてしまいました。最終的には週1回、夕方2.5時間ほどの入浴介助をイチロウさんにお願いすることになりました。

それは悔しいですね。保険があるのに使えない。

本当にそう思います。だったらその差額分を補填してほしい、とさえ感じました。介護保険外のサービスは自己負担が大きいですが、イチロウさんは料金の説明や対応が丁寧で、納得感がありました。安心して任せられたのも大きかったです。

今後、介護と仕事の両立において必要だと思うことはありますか?

企業側がもっと柔軟な制度や補助を設けてくれたらと思います。例えば福利厚生で保険外サービスを一部負担してもらえるだけで、離職を防げる人は多いと思います。介護は一時的に支援が必要なだけで、その時期を乗り切れれば続けられる人も多いはずなんです。

同じように悩んでいる方へメッセージをお願いします。

自分一人で抱え込まず、まずは誰かに相談すること。そして、少し距離をとって冷静に状況を見つめ直すことも大切です。高齢の親と物理的に距離を置く「スープが冷める距離」は、精神的にもお互いの余裕を生みます。民間サービスも含めて、選択肢はあります。仕事をやめなくても、乗り越えられる可能性はあると伝えたいです。

さいごに(編集後記)

Tさんの話には、仕事と介護の板挟みで揺れ動く等身大の葛藤が詰まっていました。介護の問題は「制度があるのに使えない」現実に直面すること。イチロウのような保険外サービスが果たせる役割の大きさと、家族の声に応える仕組みづくりの必要性をあらためて実感しました。

ご利用いただいているサービス
食事の介護
移動・移乗の介護
着替えの介護
調理
買い物の付き添い
参考ご利用料金(1日7時間・1回利用)
  • 1時間の料金 × 時間
    3,520円円(税込)× 7時間
  • 1回分の交通費
    990
  • 訪問回数
    月1回
  • 合計金額
    25,630円(税込)
1時間の料金 × 時間1回分の交通費訪問回数合計金額
3,520円円(税込)× 7時間990125,630円(税込)