介護にまつわるお役立ちコラム
徘徊はどうして起こる?原因・発生時の正しい対応方法・予防策も
高齢化社会が続く日本において、認知症高齢者による徘徊は社会問題の1つです。令和元年における60歳以上の行方不明者数は、22,000人を超えています。
(出典:警察庁「令和元年における行方不明者の状況/https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R01yukuefumeisha.pdf)
家族が認知症を患っている場合、どのように対応するべきか悩む人は少なくありません。徘徊発生時に慌てずに対応できるよう、認知症患者の徘徊パターンや正しい対応方法は事前に知っておきましょう。
今回は、徘徊の原因と対応方法について解説します。認知症による徘徊の予防策も解説するため、家族の認知症や徘徊に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
「徘徊=認知症」と一言で片づけられるケースは多くありますが、実際は「徘徊=認知症によって引き起こされた症状による行為」です。
徘徊が起きてしまう原因は、一人ひとり症状によって異なります。周囲が理解できなくても、徘徊する人には目的があることを理解しておきましょう。
ここでは、徘徊に見られる主なパターンと原因について解説します。
中核症状は、認知症により脳の細胞が壊れることが原因で起こります。認知症による中核症状は以下の3つです。
○記憶障害
記憶障害とは、経験したこと自体を忘れてしまう状態であり、単なる物忘れとは異なります。記憶障害による徘徊パターンは下記の通りです。
・道順や目的を忘れて自宅や目的地にたどり着けなくなる |
記憶障害がある人は、古い記憶よりも直近の記憶のほうが忘れやすい傾向にあります。
○見当識障害
見当識障害とは、場所・時間・人物など自分が置かれている状況を正しく理解できなくなる状態です。また、家族のことも認識できないことがあります。見当識障害による徘徊パターンは下記の通りです。
・約束の日時や自分がいる場所がわからなくなり道に迷ってしまう |
見当識障害がある人は、慣れている場所でも突然道順がわからなくなり、遠くまで歩いてしまうこともあります。
○判断力の低下
判断力や理解力の低下も中核症状の1つです。「道に迷ったら誰かに聞く」「電車やバスに乗る」などの判断がむずかしくなります。判断力の低下による徘徊パターンは下記の通りです。
・迷いや混乱により正しい判断ができず歩き続けてしまう |
判断力が低下している場合、道に迷うと帰宅する方法を自分で考えることができません。
BPSDとは、「認知症の行動と心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」の頭文字を取った言葉です。中核症状のほか、ストレスや不安などの心理的症状が重なると徘徊が起こりやすくなります。
下記は、BPSDによる徘徊の具体例です。
・幻覚や妄想により1人で外に出かけてしまう ・不安や混乱からうろうろと歩き回る ・思い込みや不安から自宅を飛び出す ・ストレスを感じて静かな場所へ移動しようとする |
BPSDは、個人の性格や周囲の人との関わりなどが影響するため、「周辺症状」と呼ばれることもあります。中核症状やBPSDが見られる場合は、本人の気持ちに寄り添った言葉かけや対応が必要です。環境の変化や知らない場所への外出などは、十分に注意しましょう。
前頭側頭型認知症とは、前頭葉や側頭葉の委縮・血流低下などが原因で発症する認知症です。前頭側頭型認知症は、思考・判断・行動・社会性をつかさどる器官の機能が低下するため、徘徊や常同行動が起こりやすくなります。
前頭側頭型認知症に多く見られる徘徊パターンは、下記の通りです。
・周囲の状況を考えずに突然立ち去ってしまう ・毎日決まった時間に同じ順番で行動する ・悪天候でも毎日同じ道順で散歩する |
前頭側頭型認知症は、初期・中期・後期によって症状が異なることから、症状に合った対策が必要となります。徘徊や常同行動は中期に見られることが多く、後期は意欲や筋力の低下により室内での常同行動にとどまることが特徴です。
前頭側頭型認知症による徘徊や常同行動は、順番や道順が決まっているため、迷子になりにくいといえます。しかし、集中力が低下しており、交通事故や転倒によるケガの危険性も高まるため、注意が必要です。
徘徊に気が付いた場合や行先に見当が付かない場合は、事故に遭わないよう即座に警察へ通報することが大切です。また、季節によっては脱水症状・熱中症・低体温症などの危険性もあります。誰かに安全に保護してもらうためにも、家族だけで探そうとせず、地域住民に協力を求めましょう。
ここでは、徘徊している場面に遭遇した際の正しい対応方法について解説します。
家族の徘徊に遭遇したら、怒らないことが重要です。怒られた理由は記憶に残らないことが多いものの、「怒られた」「怖い」というネガティブな気持ちは心に残りやすい傾向にあります。ネガティブな感情を抱く場所や環境から抜け出そうとして、徘徊が続くこともめずらしくありません。
徘徊することを怒っても改善にはつながらないため、まずは外出したい理由を聞くことが大切です。「自宅に帰りたい」「部屋に悪者がいる」「トイレに行きたい」など、外出したい理由や目的がわかれば症状に合った対応ができます。
外出したい理由がわからなくても、ストレスや不安など本人の気持ちに共感してあげましょう。本人の気持ちが落ち着いて、解決のヒントが見つかることもあります。
家族の徘徊を無理に止めたり連れ戻したりすることは逆効果です。また、外出を止めるために玄関や部屋に鍵をかけたり履物を隠したりすると、怒りや暴力などを引き起こすことがあります。
外出しようとしている場合は、無理に止めずに一緒に散歩や外出することも1つの方法です。一緒に歩くうちに気持ちが落ち着いて、自分から自宅に戻ろうとすることもあります。ただし、事故やケガを防ぐためにも必ず誰かが一緒に行動しましょう。外出させないようにするのではなく、徘徊によるリスクを回避する対応がポイントです。
認知症の家族がいる家庭では、実際に徘徊が起きた場合に備えた対策が必要となります。下記は、認知症による徘徊が起きた場合の対策例です。
・近所の人やよく行くお店の人に事前に声をかけておく ・GPS機能付きの靴などを使用する ・服の内側や持ち物に名前や連絡先を目立たないように記入する ・玄関にセンサーを設置する ・市町村役場や警察署と連携して捜索できる「SOSネットワーク」に登録しておく |
万が一徘徊で行方不明となっても、対策を行っていれば早期発見につながります。徘徊のタイミングに気付く工夫や地域との連携など、事前に対策を講じておきましょう。また、認知症による徘徊を防ぐためには以下の方法がおすすめです。
〇定期的な外出・適度な運動を一緒にする
定期的な外出や適度な運動は、充実感・疲労感・達成感を味わうことにつながります。外出したい衝動を抑えられるだけでなく、睡眠の質向上による夜間の徘徊予防にも効果的です。
〇介護サービスを利用する
介護サービスでは、食事・排泄・散歩・話し相手などのお世話を介護スタッフに任せることができます。日中1人で過ごす家族の見守りや夜間のサポートなど、家族だけでは対応がむずかしい時間帯のみサービスを利用することも可能です。
介護サービスを提供する「イチロウ」では、利用者や家族の要望に合わせたオーダーメイドによる訪問介護を行っています。家族の介護や認知症による徘徊に悩んでいる人は、相談してみましょう。
認知症による徘徊の主な原因は、「中核症状の影響」「BPSD」「前頭側頭型認知症」の3つです。
認知症による徘徊が起こった場合は、「怒らずに理由を聞く」「無理に止めずに一緒に外出する」など、本人の気持ちに寄り添った対応が必要となります。また、徘徊の予防策として、定期的な外出・適度な運動を一緒に行ったり、必要に応じて介護サービスを利用したりすることも効果的です。
家族の認知症による徘徊に悩んでいる人は、質の高い介護サービスが受けられる「イチロウ」の利用を検討してみましょう。