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認知症が一気に進む原因は?進行速度や落ち着かせる方法を解説

2024年10月30日

 

認知症は、高齢者にとって大きな課題であり、進行速度や原因について理解することは非常に重要です。特に、認知症が急激に進行する原因や、進行を少しでも抑える方法を知っておくことは、介護をする家族にとっても心強い支えとなります。

この記事では、認知症が一気に進む原因や、種類別の進行速度、さらに認知症の進行を落ち着かせるための具体的な方法について詳しく解説します。

1認知症が一気に進む原因

認知症の症状が急激に悪化する背景には、いくつかの要因が考えられます。

主な原因として、以下の4つが挙げられます。

  • 脳への刺激の不足
  • 環境の急激な変化
  • 過剰なストレス
  • 脳の病気の発症

以下では、これらの要因について解説します。

脳への刺激の不足

脳への刺激が極端に少なくなると、認知症が一気に進行する場合があります。例えば、自宅から出ない生活や対人交流の減少は、脳が十分な刺激を受けられなくなります。また、寝たきりの生活も、脳への刺激不足につながる大きな要因です。

 

認知症の症状が現れ始めた方が、転倒などをきっかけに寝たきり生活になってしまうと、認知機能の低下が加速することがあります。さらに、家族や周囲の人が過度に世話をしすぎてしまい、本人が自分で考えたり行動したりする機会が減ってしまうことも、脳への刺激不足を招く原因です。

 

脳への適度な刺激を維持するためには、日常生活の中で本人ができることは自分で行ってもらい、社会との接点を持ち続けることが重要です。

環境の急激な変化

認知症の方にとって、環境の急激な変化は大きなストレス要因となり、症状の悪化を引き起こす可能性があります。例えば、入院や施設への入所、引っ越しなどの生活環境の変化は、心身の大きな負担になりかねません。

 

慣れ親しんだ環境から離れることで、不安や混乱が生じやすくなります。また、新しい環境に適応するために必要な認知機能が十分に働かなくなり、結果として症状が急激に悪化する場合があります。

 

環境の変化が避けられない場合は、できるだけ段階的に行い、急激な変化による影響を軽減するようにしましょう。

過剰なストレス

過剰なストレスは、認知症の症状を急激に悪化させる大きな要因の一つです。配偶者との死別や家族・友人とのトラブルなど、精神的に大きな負担がかかる出来事は、認知症の進行を加速させる可能性があります。

 

ストレスが過剰になると、脳内でストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加します。コルチゾールは、記憶を司る海馬に悪影響を与え、記憶力の低下や認知機能の悪化を引き起こす可能性があります。

 

認知症の方のストレスを軽減するためには、穏やかな環境づくりや、本人の気持ちに寄り添うコミュニケーションが重要です。また、リラックスできる趣味活動や軽い運動を取り入れるのも効果的です。

脳の病気の発症

認知症の方が脳に新たな病気を発症することで、症状が急激に悪化するケースがあります。特に、脳梗塞などの脳血管障害は、認知機能に大きな影響を与える可能性があります。

 

例えば、無症候性脳梗塞と呼ばれる、症状が現れにくい小さな脳梗塞を繰り返し起こすと、認知機能が段階的に低下していくおそれがあります。また、大きな脳梗塞を起こした場合、麻痺などの身体症状と共に、認知機能が大きく低下する可能性もあります。

 

脳の病気による認知症の急激な悪化を防ぐためには、定期的な健康診断や脳ドックの受診が重要です。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理も、脳の健康維持に欠かせません。

 

認知症の症状が急激に悪化した場合は、まずは医療機関を受診し、原因を特定することが大切です。適切な対応や治療により、症状の進行を遅らせたり、場合によっては改善させたりすることも可能です。

2【種類別】認知症の進行速度

認知症の進行速度や症状の現れ方は、個人によって大きく異なり、認知症の種類によっても、特徴や進み方に違いがあります。

 

ここでは、主な認知症の種類別に、その特徴と進行速度について詳しく解説していきます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く見られる種類です。アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積することで発症すると考えられています。アミロイドβの蓄積により、脳細胞が徐々に破壊され、脳の機能が低下していきます。

 

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状としては、記憶障害や言語障害、判断力の低下などです。初期段階では、最近の出来事を忘れやすくなったり、言葉が出てこなくなったりするといった症状が現れます。

 

進行速度に関しては、アルツハイマー型認知症は比較的ゆっくりと進行することが知られています。発症後、症状が徐々に悪化していく傾向にあり、急激な変化は少ないのが特徴です。ただし、個人差も大きく、環境やストレスなどの要因によって進行速度が変化する可能性もあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体と呼ばれる特殊なタンパク質の塊が蓄積することで発症する認知症です。アルツハイマー型認知症に次いで多く見られる種類で、認知機能の低下に加えて、特徴的な症状がいくつか見られます。

 

レビー小体型認知症の主な症状は、認知機能の変動、幻視、パーキンソン症状などです。特に、認知機能の変動が大きいのが特徴で、調子の良い時と悪い時を繰り返しながら徐々に進行していきます。

 

進行速度に関しては、症状の波が大きいため、一見すると急激に悪化したように見えることがあります。しかし、実際には良い時と悪い時を繰り返しながら、全体的にはゆっくりと進行していくのが一般的です。ある日突然症状が悪化したように見えても、翌日には改善していることもあるため、周囲の人が認知症と気づきにくい面もあります。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症する認知症です。脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部が損傷を受け、その結果として認知機能が低下します。

 

血管性認知症の症状は、脳の損傷部位によって異なります。一般的に、思考のスピードが遅くなる、段取りを立てるのが苦手になるといった症状が見られ、手足の麻痺や言語障害などの身体症状を伴うこともあります。

 

進行速度に関しては、血管性認知症は階段状に進行するのが特徴です。脳梗塞などの血管障害が起こるたびに、認知機能が急激に低下し、その後はしばらく安定期が続きます。このため、症状が突然悪化したように見えることがあります。ただし、生活習慣の改善や適切な治療により、進行を遅らせたり、場合によっては改善させたりすることも可能です。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が萎縮することで発症する認知症です。他の認知症と比べて若年で発症することが多く、50代から60代で発症するケースも少なくありません。

 

前頭側頭型認知症の主な症状には、性格の変化や社会性の低下、言語障害などがあります。初期段階では、これまでの性格とは異なる行動が目立つようになったり、周囲への配慮が欠けるようになったりします。記憶障害は比較的後期まで目立たないのが特徴です。

 

進行速度に関しては、アルツハイマー型認知症と同様に、ゆっくりと進行していく傾向にあります。ただし、性格の変化や行動の変化が顕著なため、周囲の人には急激に変わったように感じられることもあります。

 

前頭側頭型認知症は、初期段階では認知症ではなく精神疾患と誤診されることもあるため、正確な診断と適切なケアが重要です。

 

認知症の種類によって進行速度や症状の特徴が異なるため、それぞれの特性を理解し、適切なケアや対応を行うことが大切です。また、どの種類の認知症であっても、早期発見・早期治療が重要であり、症状の進行を遅らせたり、QOL(生活の質)を維持したりするために大きな役割を果たします。

 

3認知症の進行を落ち着かせる方法

認知症の症状が急激に悪化した場合、本人も家族も大きな不安を感じることでしょう。しかし、適切な対応や生活習慣の改善によって、症状の進行を緩やかにし、QOL(生活の質)の維持が可能です。

 

ここでは、認知症の進行を落ち着かせるための効果的な方法について詳しく解説していきます。

かかりつけ医の受診

認知症の症状が急激に悪化した場合、最初に行うべきことは、かかりつけ医への受診です。急激な悪化の背景には、新たな脳の疾患や身体的な問題が隠れている可能性があるからです。

 

例えば、小さな脳梗塞を繰り返し起こしている場合、症状が急に悪化したように見えることがあります。また、うつ病や甲状腺機能低下症など、認知症と似た症状を引き起こす病気が原因かもしれません。

 

かかりつけ医は患者の普段の状態をよく知っているため、変化に気づきやすく、適切な対応を素早く行ってくれます。必要に応じて専門医への紹介も行ってくれるでしょう。

 

定期的な受診を心がけ、症状の変化や気になる点があればすぐに相談することが大切です。早期の対応により、症状の進行を遅らせたり、場合によっては改善させたりすることも可能です。

生活習慣の見直し

認知症の進行を緩やかにするためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。特に、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。

 

昼夜逆転の生活になってしまうと、認知症の症状が悪化しやすくなります。朝は明るくなったら起床し、夜は暗くなったら就寝するという自然なリズムを心がけましょう。良質な睡眠を取ることで、脳内の老廃物が排出され、脳の健康維持につながります。

 

また、日中はできるだけ活動的に過ごすことも大切です。家の中に閉じこもりがちになると、脳への刺激が不足し、認知機能の低下を招く可能性があります。日光を浴びたり、軽い運動をしたりして、適度な活動量を保つよう心がけましょう。

 

食生活の改善も重要です。バランスの取れた食事を心がけ、特に野菜や魚、オメガ3脂肪酸を含む食品(くるみや青魚など)を積極的に摂取することが推奨されています。また、水分補給も忘れずに行いましょう。

有酸素運動

軽い有酸素運動は、認知症の進行を緩やかにする効果が期待できます。散歩や水泳などの軽い運動は、脳への血流を改善し、認知機能の維持に役立ちます。また、生活習慣病の予防にもつながるため、積極的に取り入れることをおすすめします。

 

ただし、ランニングやサイクリングなど、激しい運動は怪我のリスクが高まる可能性があります。また、身体的な負担が大きいと、継続が難しくなる可能性もあります。まずは無理のない程度の運動から始め、徐々に習慣化していくことが大切です。

 

運動を楽しみながら続けるためには、同じ趣味を持つ仲間と一緒に行うのも良いでしょう。人とコミュニケーションを取りながら体を動かすことで、脳への刺激も増え、より効果的です。

 

人との交流

他者との交流を維持することは、認知症の進行を遅らせるために非常に重要です。特に、同居している家族以外の人との交流が効果的です。なぜなら、よく知っている相手とのコミュニケーションよりも、少し気を使う相手とのやりとりの方が、脳への刺激が大きいからです。

 

例えば、離れて暮らす家族や孫、同年代の友人との交流は、脳に良い刺激を与えます。また、デイサービスやショートステイなどを利用して、同年代の方々やスタッフとコミュニケーションを取る機会を設けるのも良いでしょう。

 

さらに、他者と一緒に認知トレーニングに取り組むことも効果的です。言葉遊びやパズル、簡単な計算問題などを一緒に楽しむことで、脳の活性化を図ることができます。

 

人との交流は、単に認知機能の維持だけでなく、精神的な安定や生活の質の向上にもつながります。孤立を防ぎ、社会とのつながりを保つことで、認知症の進行を緩やかにすることができるのです。

 

上記の方法を日常生活に取り入れることで、認知症の急激な悪化を防ぎ、穏やかな進行を促すことができます。ただし、個人差も大きいため、本人の状態や好みに合わせて、無理のない範囲で実践することが大切です。また、家族や介護者も一緒に取り組むことで、より効果的かつ持続的な支援が可能となるでしょう。

 

4イチロウの認知症ケアサービスをご紹介

認知症の症状が一気に進行してしまった場合、ご本人はもちろん、ご家族の方々も大きな不安を感じることでしょう。そのような状況下で、適切なケアとサポートを受けることは非常に重要です。ここでは、認知症の方々とそのご家族を支援する「イチロウ」の認知症ケアサービスについてご紹介します。

 

イチロウは、介護保険では対応できないあらゆる介護・生活支援を24時間365日提供する訪問介護サービスです。認知症の方々に特化したケアサービスも充実しており、症状の度合いに関わらず対応が可能です。

 

イチロウの認知症ケアサービスは、ご利用者様一人ひとりのニーズに合わせたオーダーメイドの内容となっています。例えば、日常生活のサポートから、外出の付き添い、見守りなど、幅広いサービスを提供しています。認知症の方が自宅で安心して過ごせるよう、きめ細やかな支援を行います。

 

また、イチロウのサービスは柔軟性が高く、急な要望にも対応可能です。認知症の症状は日によって変動することがありますが、そのような状況にも迅速に対応できる体制が整っています。

 

認知症の方々の生活の質を向上させ、同時に症状の進行を緩やかにするためには、適切なケアと刺激が欠かせません。イチロウの認知症ケアサービスは、そのような総合的なサポートを提供することで、認知症の方々とそのご家族の生活をしっかりとサポートします。

 

認知症ケアに関するご不安やご質問がありましたら、まずはイチロウにお気軽にご相談してみてはいかがでしょうか。

5認知症に関するよくある質問

認知症の症状や進行に関して、多くの方が不安や疑問を抱えています。ここでは、特に多くに寄せられる質問について回答します。

入院や施設への入居で認知症が進むことはある?

入院や施設への入居が、認知症の症状を悪化させる要因になることがあります。主に、環境の急激な変化が認知症の方にとって大きなストレスとなるためです。慣れ親しんだ環境から離れることで、不安や混乱が生じやすくなり、認知機能に負担がかかります。

 

また、入院や施設入居によって、日常生活での活動が制限されることも要因の一つです。他者とのコミュニケーションが減少したり、これまで自分で行っていた家事などの日常的なタスクがなくなったりすることで、脳への刺激が不足し、認知機能の低下を招く可能性があります。

 

このような状況を防ぐためには、可能な限り環境の変化を最小限に抑え、入院中や施設での生活においても、適度な刺激や活動を維持することが重要です。例えば、なじみの物を持ち込んだり、定期的な家族の訪問を行ったりすることで、安心感を与えることができます。また、リハビリテーションや趣味活動など、脳に適度な刺激を与える機会を設けることも効果的です。

認知症が進んで歩けなくなる場合があるのはなぜ?

知症の進行に伴い、歩行能力が低下し、最終的に歩けなくなる場合があります。これは、認知症が単に記憶や思考能力だけでなく、身体機能にも影響を及ぼすためです。

 

認知症による歩行障害は、脳のさまざまな部位の機能低下が関係しています。例えば、運動を計画し実行する前頭葉の機能低下や、バランス感覚を司る小脳の機能低下などです。また、空間認識能力の低下により、周囲の状況を正確に把握できなくなることも、歩行の困難さを増加させる要因です。

 

さらに、認知症の進行に伴う筋力の低下や、長期間の不活動による身体機能の衰えも、歩行能力の低下に拍車をかけます。特に、ベッド上での生活が長期化すると、急速に筋力や関節の柔軟性が失われ、歩行が困難になる可能性が高まります。

 

このような状況を予防するためには、可能な限り日常的な運動や活動を維持することが重要です。軽い体操や散歩など、無理のない範囲で身体を動かす機会を設けることで、筋力や関節の機能を維持し、歩行能力の低下を遅らせることができます。また、バランス訓練や歩行補助具の適切な使用など、専門家の指導のもとでの適切なリハビリテーションも効果的です。

 

認知症の進行に伴う身体機能の変化に対しては、早期からの対策と継続的なケアが重要です。症状の変化に気づいたら、速やかに医療専門家に相談し、適切な対応策を講じることが、QOL(生活の質)の維持につながります。

6まとめ

認知症の急激な進行は、適切な対応と理解によって緩和できます。本記事で解説した原因や進行速度、落ち着かせる方法を参考に、早期の対策を講じることが重要です。専門医の診断や生活習慣の見直し、有酸素運動、人との交流など、できることから始めることで、症状の悪化を防ぎ、QOL(生活の質)の維持向上につながります。また、イチロウのようなサービスを活用することで、より専門的なケアを受けられます。認知症と向き合う中で不安や疑問が生じた際は、躊躇せず専門家に相談することが、より良い介護生活への第一歩となるでしょう。

 

監修者情報

所属:介護老人保健施設メディトピア小諸

経歴:2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。リハビリテーション業務の傍ら、ライターとしても活動している。医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆を心がけている。

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

鈴木康峻(理学療法士)
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