介護にまつわるお役立ちコラム

認知症の一人暮らしを放置するリスクとは?介護に限界を感じる前に検討すべき支援サービスを紹介

2024年07月05日

高齢化社会が進む中で、認知症を患う高齢者の一人暮らし世帯が増加しています。しかし、認知症の一人暮らしはさまざまなリスクを伴い、介護者や家族にとっても大きな負担となります。

この記事では、認知症の一人暮らしを続けることによる具体的なリスクを解説し、親が一人暮らしになる前に確認しておくべきポイントや、利用できる支援サービスについて紹介します。ぜひ本記事を参考にして、認知症の方が安心して暮らせる環境づくりに役立ててください。

1認知症の一人暮らし世帯は増加傾向

高齢化が進む日本において、認知症を患う一人暮らしの高齢者は今後ますます増加することが予想されています。

 

厚生労働省が発表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯のうち一人暮らし(単独世帯)は51.6%の割合を占めています。

 

また、推計では65歳以上の高齢者の約5.4人に1人が認知症であるとされており、いずれの数字も今後さらに増加する見込みです。

高齢者の一人暮らし世帯は51.6%

2022年の高齢者世帯1,693万世帯のうち、単独世帯は873万世帯と、全体の51.6%を占めています。さらに、その内訳を見ると、男性の単独世帯が313万世帯(35.9%)、女性の単独世帯が559万世帯(64.1%)と、女性の一人暮らしが男性の約2倍となっています。高齢者の一人暮らし世帯は年々増加傾向にあり、今後もこの傾向は続くと予想されます。

65歳以上の5.4人に1人が認知症患者

推計では、65歳以上の高齢者の約16%、つまり5.4人に1人が認知症とされています。年齢が上がるにつれて認知症の割合も高くなり、80歳代後半では男性の35%、女性の44%が認知症を患っています。

 

さらに、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症となっています。高齢化が進むにつれ、認知症患者数は今後もさらに増加すると見込まれています。

2認知症で一人暮らしを続けるリスク

認知症の方が一人暮らしを続けると、以下のようなさまざまなリスクが高まります。

  • 火の不始末による自宅火災のリスク
  • 外出時の事故や迷子のリスク
  • 服薬や生活習慣の悪化リスク
  • 金銭トラブルに巻き込まれるリスク
  • ご近所トラブルに巻き込まれるリスク

以降では、それぞれのリスクについて解説します。

火の不始末による自宅火災のリスク

認知症の中核症状である「もの忘れ」や理解力・判断力の低下により、火の不始末のリスクが高まります。具体的には、コンロの火を消し忘れたり、ストーブ・ヒーターを止め忘れたりすることで、自宅が火事に遭う危険性があります。また、喫煙習慣がある方の場合、タバコの火の不始末によって火災に発展することも考えられます。

 

対策としては、安全装置付きのコンロや、IHクッキングヒーターへの切り替えが有効です。また、家族や介護サービスによる定期的な見守りや声かけも重要でしょう。

外出時の事故や迷子のリスク

認知症の症状である「見当識障害」により、今がいつなのか、ここがどこなのかが把握できなくなり、外出時の事故や迷子のリスクが高まります。例えば、自宅に帰れなくなったり、道路の横断や踏切の通過など危険な場所で事故に遭ったりする可能性があります。

 

対策としては、GPSなどの位置情報システムを活用した見守りサービスの利用が考えられます。また、外出時は必ず身分証明書を携帯し、迷子になった際の連絡先を明記しておくことも大切です。

服薬や生活習慣の悪化リスク

認知症が進行すると、服薬管理や生活習慣の維持が困難になります。薬の飲み忘れや飲み過ぎによって持病が悪化したり、栄養バランスの偏った食事や認知機能の低下によって食べ物の管理ができなくなり、消費期限切れの食べ物を食べるため、健康状態の悪化を招くリスクがあります

 

対策としては、服薬カレンダーや自動薬ケースの活用、訪問看護による服薬管理などが有効です。また、配食サービスによる健康的な食事の提供や訪問介護や家族による食べ物の管理を行うことにより、食生活の改善につながります。

金銭トラブルに巻き込まれるリスク

認知症の方は、判断力の低下により不要な契約を結ばされたり、詐欺被害に遭ったりするリスクが高まります。また、家賃や公共料金の滞納、同じ商品を大量に購入してしまうなどの金銭管理の問題も起こりやすくなります。

 

対策としては、成年後見制度や日常生活自立支援事業の利用が考えられます。これらの制度を活用することで、本人に代わって適切な財産管理を行うことができます。

ご近所トラブルに巻き込まれるリスク

認知症の症状である「収集癖」によるゴミ屋敷化や、「物盗られ妄想」による近隣住民への疑いなど、ご近所トラブルに発展するリスクがあります。

 

ご近所の人や地区の民生委員に本人の状態を理解していただきながら良好な関係を築く方法も効果的です。また、訪問介護などのサービスを利用して、ゴミ出しや掃除などを支援してもらうことも有効でしょう。

3親が一人暮らしになる前に確認しておきたいポイント

認知症の親が一人暮らしをする場合、事前に準備や対策を行うことで、さまざまなリスクを軽減することができます。

ここでは、親が一人暮らしになる前に確認しておきたいポイントを3つ紹介します。

配偶者や親戚・家族と認知症について共有する

認知症の方の介護は、家族全体で支えていく必要があります。特に配偶者や親戚など、身近な人々と認知症についての理解を深め、協力体制を築いておくことが重要です。

 

共有すべき内容としては、認知症の症状や進行状況、現在の生活状況、今後予想される問題点などが挙げられます。また、介護や見守りの分担、金銭管理の方法、緊急時の対応などについても話し合っておくとよいでしょう。

同居や施設の利用を検討する

認知症が進行した場合、一人暮らしの継続が難しくなることがあります。そのため、あらかじめ同居や施設利用について検討しておくことが大切です。

 

認知症の方が入居できる主な施設としては、グループホーム、有料老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホームなどがあります。施設に入ることで、24時間の見守りや介護を受けられ、安全で安心な生活を送ることができます。

 

ただし、施設入居にはデメリットもあります。馴染みの環境から離れることで、認知症が急激に進行してしまう可能性があります。また、入居費用が高額になる点も注意が必要です。

認知症に関する相談先や支援サービスを確認する

認知症の一人暮らしを支えるためには、様々な介護支援サービスを活用することが重要です。介護保険サービスでは、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護など、多岐にわたるサービスが利用可能です。

 

また、介護支援サービス以外にも、認知症について相談できる機関が数多くあります。代表的な相談先を以下に紹介します。

 

【認知症に関する相談先】

  • 認知症疾患医療センター:もの忘れ・認知症に関しての受診相談が可能
  • 認知症学会専門医:認知症専門医を紹介
  • 日本老年精神医学会専門医:認知症専門医を紹介
  • もの忘れ外来:認知症専門医の紹介
  • 認知症の人と家族の会:介護の相談や情報交換

これらの相談先を確認し、必要に応じて利用することで、認知症の一人暮らしに関する不安や困りごとに対応することができるでしょう。

4認知症の一人暮らしで利用できる支援サービス

認知症の方が一人暮らしを続けるには、様々な支援サービスを上手に活用することが重要です。

 

ここでは、介護保険サービス、自治体による支援サービス、民間の支援事業サービス、そしてイチロウの訪問介護サービスについて紹介します。

介護保険サービス

介護保険サービスは、要介護認定を受けた方が利用できるサービスです。介護の必要度に応じて、訪問介護、デイサービス、ショートステイなど様々なサービスが受けられます。自己負担は1割〜3割ですが、残りは介護保険から支給されるため、費用面では比較的利用しやすいサービスと言えます。

 

認知症の一人暮らしにとって助かる介護保険サービスには、以下のようなものがあります。

  • 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行う
  • 通所介護(デイサービス):日帰りで施設に通い、入浴、食事、レクリエーションなどのサービスを受ける
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):短期間、施設に宿泊しながら介護サービスを受ける
自治体による支援サービス

自治体によっては、認知症の一人暮らしの方を対象とした独自の支援サービスを提供しています。例えば、以下のようなサービスがあります。

  • 緊急通報システム:緊急時にボタンを押すと、コールセンターに通報が入り、適切な対応をしてくれる
  • 配食サービス:栄養バランスの取れた食事を自宅に届けてくれる
  • 見守りサービス:定期的に自宅を訪問し、安否確認や生活状況のチェックを行う

これらのサービスは、一人暮らしの高齢者を見守り、緊急時の対応を助ける上で大変役立ちます。費用は自治体によって異なりますが、介護保険サービスと比べると安価な場合が多いです。

民間の支援事業サービス

民間企業による支援サービスも充実してきています。例えば、以下のようなサービスがあります。

  • 家事代行サービス:掃除、洗濯、料理など、日常的な家事を代行してくれる
  • 見守りサービス:センサーやカメラを使って、高齢者の生活リズムや異変を遠隔でチェックする
  • 話し相手サービス:定期的に訪問や電話で話し相手になってくれる

民間サービスは、自治体のサービスと比べると費用は高くなりますが、よりきめ細やかで柔軟な対応が期待できます。自費で利用する分、ニーズに合ったサービスを選びやすいというメリットもあります。

  • イチロウの訪問介護サービスの特徴

イチロウの訪問介護サービスは、介護保険制度の枠組みにとらわれない、オーダーメイドの介護サービスを提供しています。特に、一人暮らしの認知症の方にとって魅力的な特徴が多くあります。

  • 最短当日のサービス利用が可能:早急な対応が必要な場合に頼りになります。
  • 介護保険では対応できないサービスにも柔軟に対応:一人暮らしならではのニーズにも応えてくれます。
  • ヘルパーの指名が可能:認知症の方の特性に合わせて、担当ヘルパーを固定することができます。
  • オンラインレポートによるサービスの透明性:遠方の家族も、サービス内容を把握することができます。

イチロウのサービスは、重度の認知症の方の一人暮らしにも対応が可能です。サービス内容はオーダーメイドで柔軟に設計できるので、状態の変化に合わせて必要なサポートを組み合わせていくことができるのです。

5まとめ

認知症の一人暮らしは、今後ますます増加すると予想されます。認知症の方の一人暮らしには様々なリスクが伴いますが、適切な支援サービスを利用することで、安全で安心な生活を送ることが可能です。介護保険サービス、自治体や民間企業で行われている支援サービスなど、多様なサービスを上手に組み合わせることが大切です。また、イチロウのような柔軟で寄り添ったサービスを活用することで、認知症の方の一人暮らしをより手厚くサポートすることができるでしょう。認知症の一人暮らしに不安を感じたら、まずは周囲の人と情報を共有し、適切な支援サービスを探すことから始めてみてください。

監修者情報

2007年に介護系専門学校を卒業後、介護付き有料老人ホームに就職。

その後、慢性期病院の療養病床・2つの介護付き有料老人ホームに転職しながら介護士として現場業務に約6年間従事。

介護支援専門員資格取得後、新規開設の地域密着型老人福祉施設に転職し、施設ケアマネジャーとして入居者のケアマネジメント業務を行う。

2016年から居宅介護支援事業所へ転職。現在に至るまで、在宅で生活する要支援・要介護者のケアマネジメントに携わる。

川崎翔太(介護支援専門員)
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