介護にまつわるお役立ちコラム

在宅介護に限界を感じるタイミングとは?困ったときに頼れるサービスをご紹介

2024年07月05日

在宅介護は、期間が長くなるにつれて、家族にとって大きな負担となる場合があります。介護の状況が変化し、限界を感じる瞬間は誰にでも訪れる可能性があるのです。そんなとき、介護者はどのような選択をするのがよいのでしょうか。

 

この記事では、在宅介護の限界を感じたときに活用できる様々なサポートサービスについて、詳しく解説します。介護の質を向上させつつ、介護者自身の生活も大切にする方法を見つけられるでしょう。

1在宅介護に限界を感じるタイミングとは?

在宅介護は、家族にとって大きな責任と負担を伴うため、介護を続けていく中で、限界を感じる瞬間が訪れるかもしれません。そのタイミングは状況によって様々ですが、いくつかの共通するサインがみられます

排せつのトラブルが増えたとき

排せつのトラブルの中でも、特に夜間の頻繁なトイレの付き添いは、介護者の睡眠を妨げ、慢性的な疲労をもたらします。また、失禁や便失禁のトラブルが増えると、洗濯や清掃の頻度が増え、介護者の身体的負担が増加し、精神的なストレスも蓄積します。この状況が続くと、介護者は十分な休息を取ることができず、日中の活動にも支障をきたすようになり、限界を感じやすくなるでしょう。

徘徊が増えたとき

認知症の進行に伴う徘徊の増加は、介護者にとっては大きな負担です。夜間の徘徊は、、介護者の睡眠を妨げ、慢性的な疲労を引き起こします。徘徊で道に迷ったり危険な状況に陥ったりする場合は、介護者は常に所在を確認し、外出を防ぐための対策を講じなければなりません。また、徘徊によって行方不明になったときには、警察への連絡や近隣への聞き込み、街中の捜索など、たいへんな時間と労力を要します。

 

このような状況が頻繁に発生すると、イライラが募り、介護者の心身の疲労は急速に蓄積していきます。生活リズムを大きく乱し、仕事や家事、自身の健康管理にさえ支障をきたすようになり、介護者は「もう無理かも」と考えるのです。

火のトラブルが起きたとき

認知症の進行や身体機能が低下すると、火の管理が適切にできなくなります。コンロの消し忘れ、たばこの不適切な取り扱いなど、小さな火災から大規模な火事につながるリスクもあるため、取り返しのつかない事態を事前に防ぐ対策が必要です。

 

火のトラブルが一度でも起きると、介護者は、常に火の元に注意を払い、防火対策を講じなければならず、かなりの精神的負担となります。火災のリスクは、介護者が外出したり休息を取ったりする時間も制限してしまうため、介護者に余裕がなくなり限界を感じるようになるのです。

仕事との両立ができなくなったとき

仕事と介護の両立は、介護者にとって精神的・体力的な負担が大きいものです。仕事中に要介護者や病院から急な連絡があると、対応のために仕事を中断せざるを得ません。また、緊急時には職場を離れなければならない場合もあります。このような状況は、職場に迷惑をかけてしまう上に、仕事の効率も下がり、介護者に強いストレスを与えるため、介護者は在宅での介護に徐々に限界を感じ始めます。

暴力・暴言・介護拒否が起きたとき

認知症の進行や精神状態の変化により、介護を受ける人が暴力をふるったり、きつい言葉を投げかけたり、介護を受け入れないケースは家族崩壊にもなりかねません。

 

愛する家族から攻撃的な態度を取られると、介護者の心は深く傷つくでしょう。また、暴力によって介護者自身がケガをする危険もあり、安全に介護を続けるのが難しくなります。介護を拒否されると、食事や入浴、薬の服用といった日常的なケアで説得や工夫を重ねなければならず、これも大きな負担です。

 

このような状況が続くと、介護者は自信を失い、どうすることもできないという無力感や絶望感から、在宅での介護を諦めることを考え始めます。

2在宅介護が限界を迎えたら注意したいこと

在宅介護が限界に達すると、介護者は深刻な精神的・身体的ストレスから、介護うつに陥るリスクが高まります。介護うつを回避し、介護者自身の健康を守るためにはどのようにしたらよいでしょうか。

家族やケアマネージャーなどに頼る

在宅介護において、介護者が孤立してしまうことは決して珍しくありません。夜間も気が休まらず、常に要介護者のことを気にかけなければならない状況が続くと、心身ともに疲弊してしまいます。このような状況を改善するには、周囲の人々に助けを求めることが重要です。

 

まず、家族や親族に対して正直に現状を伝え、介護の分担や協力を依頼しましょう。直接的な介護が難しい場合でも、家事の手伝いや精神的なサポートなど、様々な形での協力が可能です。

 

また、ケアマネージャーや訪問ヘルパーなどの専門家にも積極的に相談しましょう。彼らの豊富な知識と経験は、解決策を見出すのにたいへん役立ちます。一人で抱え込まず、周囲のサポートを活用することが、在宅介護の継続には不可欠です。

介護サービスや施設の利用や見直しを検討する

在宅介護の限界を感じたら、介護サービスを見直しや、新たなサービスの導入も検討しましょう。介護保険制度では多様な在宅サービスが用意されています。例えば、デイサービスの利用回数を増やしたり、訪問介護の時間を延長したりすることで、介護者が自由時間を確保できるようになります。また、ショートステイを定期利用すれば、旅行や観劇に行くなど、リフレッシュする機会を得られます。様々なサービスを適切に組み合わせると、介護者の負担を軽減できるでしょう。

仕事と介護の両立するための制度を利用する

仕事と在宅介護を上手に両立させるためには、職場の理解と制度の活用が欠かせません。

 

まず、上司や人事部門に介護の状況を伝え、業務の調整や勤務時間変更、在宅勤務導入などを相談しましょう。従業員の介護問題に理解を示し、柔軟な対応をしてくれる企業も増えています。次に、法律で定められた介護休業制度や介護休暇制度の検討が重要です。介護休業は家族一人につき通算93日まで休業でき、介護休暇制度では年間5日(要介護者が2人以上の場合は10日)まで休暇を取得できます。

3在宅介護を支えるサービスを紹介

在宅介護を支える主要なサービスについて紹介します。これらのサービスは、専門家やプロよるケアの提供だけでなく、介護者が休める時間も作り出せるでしょう。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるよう支援する施設です。医療や介護予防、生活支援などを一体的に調整する役割を担っています。専門知識を持つ職員が常駐し、介護保険の申請手続きから適切なサービスの紹介、認知症相談、権利擁護まで幅広く対応します。

 

また、在宅介護を行う家族の相談を受け付け、介護の悩みや不安を解消するのも支援の1つです。地域包括支援センターは、介護に関わるすべての人が気軽に相談できる窓口となっています。

介護保険サービス

在宅介護において、介護保険サービスの活用は不可欠です。要介護認定を受けると、ケアマネージャーが介護度に合わせたケアプランを作成し、それに基づいた様々なサービスを利用できます。

これらのサービスの具体的な内容は次のとおりです。

  • 訪問型

訪問型サービスは、介護が必要な方の自宅に専門スタッフが訪問し、必要なケアを提供するサービスです。利用者が慣れ親しんだ自宅環境で介護を受けられます。

 

主な訪問型サービス:

  • 訪問介護:ホームヘルパーが身体介護や生活援助を行う
  • 訪問看護:看護師が医療的ケアや健康管理を行う
  • 訪問リハビリテーション:理学療法士や作業療法士が機能回復のためのリハビリを行う
  • 居宅療養管理指導:医師、歯科医師、薬剤師などが療養上の管理や指導を行う
  • 通所型

通所型サービスは、要介護者が施設に通って受けるサービスです。日中、専門スタッフの支援のもと、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受けます。

 

主な通所型サービス:

  • デイサービス:日常的な介護や機能訓練、レクリエーションなどを行う
  • 通所リハビリテーション(デイケア):医療機関や介護老人保健施設で専門的なリハビリテーションを行う
  • 認知症対応型通所介護:認知症の方を対象とした専門的なケアを行う
  • 短期宿泊サービス

短期宿泊サービスは、要介護者が一時的に施設に宿泊しながら介護サービスを受けられす。利用者は専門的なケアを受けながら、環境の変化による刺激も得られるでしょう。同時に、介護者は、介護からの一時的な解放と心身のリフレッシュの機会となります。

 

主な短期宿泊サービス:

  • 短期入所生活介護(ショートステイ):特別養護老人ホームなどで日常生活上の世話や機能訓練を行う
  • 短期入所療養介護(医療型ショートステイ):介護老人保健施設や医療機関で、日常生活上の世話や機能訓練、医療的なケアを行う。
民間の訪問介護サービス

介護保険サービスは多くのニーズに対応していますが、深夜の介護や長時間の見守り、家事援助など、対応できないサービスもあります。介護保険で補えない部分は、民間の訪問介護サービスを利用すれば解決できるでしょう。

 

民間サービスは、介護保険の制約にとらわれず、柔軟な対応が可能で、24時間体制の見守りや、大掃除、庭の手入れなど、幅広いサービスを提供しています。また、介護者の急な用事や体調不良にも迅速に対応できるため、介護者の負担を大きく軽減できます。

 

介護保険サービスと組み合わせて利用すれば、切れ目のないケアを実現できるでしょう。ただし、費用は全額自己負担となるため、計画を立てて利用するのが望ましいです。

4在宅介護が限界のときは施設入所も検討する

介護サービスを活用しても、介護者の体調悪化や要介護者の状態変化により、在宅介護に限界を感じる場合があります。その時は、施設入所も選択肢の一つです。

 

施設入所では24時間体制の専門的ケアが受けられます。医療や介護の専門家が常駐しているため、緊急時にも迅速な対応が可能です。他の入居者との交流の機会も多く、要介護者の社会性を保てるメリットもあります。

 

もし金銭面の不安があっても、すぐに諦めてしまうのは早急といえます。例えば、特別養護老人ホームは比較的低料金で利用できる施設であり、介護保険の利用や各種の補助制度を活用すれば、費用の負担を軽減できる可能性があります。

5まとめ

在宅介護の限界を感じたときは、一人で抱え込まずに適切な支援を求めることがとても重要です。

在宅介護を支える支援として、

  • 地域包括支援センター
  • 介護保険サービス
  • 民間の訪問介護サービス

など、様々な選択肢があります。これらのサービスを上手に活用すれば、介護の質を向上させ介護者自身の健康や生活の質も維持できるでしょう。また、状況に応じて、施設入所も検討するべきです。介護に関する悩みや不安があれば、自分一人で解決しようとはせずに、まずは専門家に相談してみましょう。

監修者情報

1990年看護師資格取得、同年総合病院の脳神経内科・リハビリテーション科に就職。
ライフスタイル(結婚・出産・育児など)に合わせながら、30年以上看護業務に従事。
主な経歴は、訪問看護・施設看護師・クリニック勤務など。
2003年介護支援専門員資格取得
2022年に個人ブログ開始、2023年から医療ライターとして活動中。
得意ジャンルは、老年看護・認知症・介護保険・アンチエイジング

田代文恵(看護師)
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