介護にまつわるお役立ちコラム
デイサービスを拒否する理由とは?行きたがらない親を説得・行かせる方法を紹介
親の介護が必要になり、デイサービスの利用を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に利用を勧めても、親が頑なに拒否するケースは珍しくありません。デイサービスに行きたがらない理由は人それぞれですが、適切な対応ができれば、親の拒否感を和らげ、デイサービスを楽しく利用してもらえる可能性があります。
本記事では、高齢の親がデイサービスを拒否する理由や、行きたがらない時の対応方法を紹介します。デイサービスの利用に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
親の介護が始まると、介護をする側は心身ともに大きな負担を抱えます。とくに仕事と介護の両立は容易ではなく、介護者自身の時間の確保が難しくなります。そんなとき、デイサービスを上手に活用できれば、介護者の負担を軽減しながら、親の介護を続けていけるでしょう。
しかし、全ての高齢者がデイサービスを喜んで利用しているわけではありません。なかには「デイサービスには行きたくない」と拒否する方も少なくないのです。親がデイサービスに行きたがらない理由としては、大きく分けて次のような要因が考えられます。
高齢になると、新しい環境に馴染むことが難しくなります。とくに認知機能の低下がみられる場合は、慣れない場所や初対面の人に囲まれると、強い不安を感じる可能性があります。「知らない人ばかりで怖い」「どんなことをするのかわからない」といった漠然とした不安から、デイサービスを拒否してしまう可能性があります。
このようなケースでは、事前にデイサービスの見学に行ったり、パンフレットなどで施設の様子を見せたりして、具体的なイメージを持ってもらうことが大切です。また、はじめのうちは短時間の利用から始め、徐々に滞在時間を延ばしていくなどの工夫も効果的です。スタッフとの信頼関係を築きながら、安心して過ごせる環境を整えていきましょう。
長年住み慣れた自宅を離れ、施設で過ごすことに抵抗を感じる高齢者は多いものです。「家が一番落ち着く」「施設では自由がない」と考え、デイサービスを拒否するケースがあります。
このようなケースでは、自宅での生活を望む気持ちを尊重しつつ、デイサービスのメリットを伝えていきます。たとえば「自宅では一人で寂しいかもしれないけれど、デイサービスなら友達もできるし、楽しく過ごせるよ」といった声かけも有効です。また、デイサービスの利用日数や時間を調整し、自宅での時間も確保できるようにすると、抵抗感が和らぐかもしれません。施設と自宅、両方の良さを実感してもらえるよう、伝わりやすい説明を行いましょう。
「人様の世話にはなりたくない」という思いから、家族以外の介護を拒否する高齢者も少なくありません。プライドが高く、他人に弱みを見せたくないと考える方もいるでしょう。
このようなケースでは、デイサービスは「介護される場所」ではなく「自立した生活を送るための場所」であとを伝えましょう。「デイサービスでリハビリに取り組めば、できることが増えるかもしれない」など、前向きな気持ちになれるような声かけが効果的です。また、デイサービスの利用が家族の負担軽減につながると理解してもらうことも大切です。「あなたがデイサービスに通ってくれたおかげで、私も仕事と介護を両立できている」といった家族の思いを伝えると、利用を前向きに検討してくれるかもしれません。
認知症の場合、記憶障害によりデイサービスに通っていたことを忘れてしまう可能性があります。前日まで楽しみにしていたはずが、当日になると「聞いていない」と言い張ったり、送迎車に乗ろうとしなかったりするのです。
認知症の人に対しては、否定せずに寄り添う姿勢が何より大切です。「忘れてしまったかもしれないけど、デイサービスではみんなが待っているよ」と優しく声をかけ、一緒に準備を進めましょう。送迎の際には、迎えに訪れたスタッフが顔なじみの関係と認識できるよう、挨拶や会話を自然に促してみます。「いつもお世話になっているあの人が迎えに来てくれたよ」と伝えると、安心して施設に向かえるかもしれません。記憶障害への理解を深め、適切な対応を心がけたいものです。
行きたがらない親をデイサービスに行かせる方法は、一言でいうと「親の気持ちに寄り添いつつデイサービス利用のメリットを伝えていく」ということです。具体的には以下の4つです。
【デイサービスを拒否する時の対応】
- なぜ行きたくないのか気持ちに寄り添って尋ねる
- 慣れるまで家族が同行する
- 本人の趣味や好みに合うデイサービスを選ぶ
- ポジティブな印象を持たせる
逆に、強引に説得したり無理やり連れて行ったりすると、ますますデイサービスを嫌厭するようになったり、家族間の信頼が壊れてしまう恐れさえありますので、やってはいけません。
「どうしてデイサービスに行きたくないの?」と、拒否する理由を尋ねてみましょう。高齢者の率直な思いに耳を傾けることで、抱えている不安や悩みが見えてくるはずです。一方的に説得するのではなく、気持ちに寄り添うことが信頼関係には大切です。
理由を聞く際は、急かしたり責めたりせずにゆっくりと話を聞きましょう。「そう思うのももっともだね」などと共感の言葉をかけるのも効果的です。高齢者の心に寄り添い、デイサービス利用への不安を和らげていく姿勢が求められます。
施設に行くのも一案です。「一緒に行こうね」と寄り添いながら、施設の雰囲気に徐々に馴染んでもらいましょう。
家族が付き添うことで、高齢者も安心してデイサービスに通えるはずです。スタッフとの交流を通じて、新しい環境を受け入れられるようにサポートしていくことが大切です。ただし、必要以上に長く付き添いすぎないよう、高齢者の自立心にも配慮しましょう。
デイサービスといっても、提供されるサービスは施設によってさまざまです。なかには、利用者の趣味や嗜好に特化したプログラムを用意している施設もあります。
たとえば、園芸やカラオケ、書道など、高齢者の趣味を取り入れているデイサービスなら「好きなことができる」と利用に前向きになるかもしれません。機能訓練に力を入れている施設や、ゆったりと温泉気分を味わえる施設など、高齢者のニーズに合わせてサービス内容は広がっています。旅行気分を味わえるプログラムを実施しているデイサービスもあるほどです。いくつかの施設を見学したり、体験利用したりしながら、最適な施設を探してみるのもよいでしょう。
「デイサービス=介護を受ける場所」というマイナスイメージを持つ高齢者も少なくありません。家族から見ると「楽しい場所」と思えても、本人にはそう映らないことがあるのです。
そこで、デイサービスの良い面をアピールし、ポジティブな印象を持ってもらうことが大切です。「デイサービスでは、みんなと一緒におしゃべりしたり体操したりして、元気になれるんだって」と明るく伝えるのも一案です。利用者同士の交流や、生きがい作りの場としてのデイサービスを強調しましょう。
また、見学の際には「にぎやかで楽しそうな雰囲気だったね」と感想を述べるのも効果的です。設備の充実ぶりを褒めたり、スタッフの親切な対応に触れたりするなど、具体的にデイサービスの良さを伝えることを心がけましょう。ただし、あまり大げさに宣伝しすぎると不信感を抱かれる恐れもあるため、バランスが必要です。
イチロウが提供する介護保険外サービスを活用したことで、ヘルパーに介護されることに慣れ、デイサービス利用できるようになった事例を紹介します。
この方は、デイサービスやショートサービスでの生活に馴染めず認知症が悪化。躁状態が続くようになり、自宅での介護は限界で、ご家族は施設への入所も考えるようになりました。そんなとき、民間が行っている介護保険外のサービスがあること知り、インターネットでイチロウを見つけると、すぐに利用を開始しました。
イチロウは、ご本人と相性が良く認知症ケアが得意なヘルパーを手配。ヘルパーはご本人の気持ちに寄り添い、安心感を与えながら、根気よく丁寧なコミュニケーションを心がけました。介護士としてのプロスキルはもちろん、ヘルパーのほがらかな人柄に、ご本人も家族も支えられ、2週間ほどで症状は落ち着きました。このことがあって、ご本人がヘルパーに介護されることに慣れたのでしょう。以前は嫌がっていた通所サービスに前向きになり、少しずつデイサービスやショートステイが活用できるようになりました。
デイサービスを上手に活用することで、高齢者の生活の質を高め、家族の介護負担を軽減することができます。しかし、高齢の親が利用を拒否する少なくありません。親がデイサービスを拒否するときには理由があります。きちんと対話し、本人の不安を取り除きながら、少しずつデイサービスに慣れてもらうことが大切です。また、本人の趣味や好みに合ったデイサービスを選び、ポジティブな印象を持たせることで、デイサービスへの拒否感を和らげることができるでしょう。