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老人ホームの退去費用相場はいくら?退去時の費用内訳や注意点を解説

2024年07月02日

老人ホームを退去する際、どのような費用がかかるのか気になる方は多いでしょう。退去費用の内訳は施設によって異なり、トラブルに発展するケースもあります。この記事では、老人ホームの退去費用の相場や内訳、注意すべきポイントについて解説します。老人ホームへの入居を検討中の方や、ご家族が入居中の施設からの退去を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1老人ホームの退去費用とは

老人ホームを退去する際には、さまざまな費用が発生する可能性があります。これらの費用は施設によって異なるため、入居前の確認が必要です。老人ホームの退去費用をめぐるトラブルは多く、入居者や家族にとって大きな負担となることがあります。そのため、退去費用については特に注意が必要です。

 

具体的には、以下の3つの内訳が主な退去費用として挙げられます。

  • 未払金
  • 備品の修繕費
  • 清掃費

未払金は、入居中に発生した利用料や食費などの未払い分です。備品の修繕費は、入居者が使用していた部屋や共有スペースの備品が損傷した場合に発生します。清掃費は、次の入居者が快適に生活できるよう、部屋を元の状態に戻すために必要な費用です。

 

つまり、老人ホームの退去費用は、主に原状回復にかかる費用であると言えます。ただし、施設によっては、これ以外に特別な費用を設けている場合もあるので注意が必要です。通常の賃貸物件の場合、入居時に支払った敷金で原状回復を行いますが、多くの老人ホームでは敷金を支払わない代わりに、退去時に原状回復費用が発生する可能性があります。

 

原則として、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則って退去費用がチェックされ、経年劣化は費用負担の対象外とされています。しかし、施設によってはこの限りではないケースもあるため、入居前に退去費用についてしっかりと説明を受けておきましょう。

老人ホームの退去費用の内訳

老人ホームを退去する際に発生する費用には、どのようなものが含まれるのでしょうか。ここでは、退去費用の主な内訳を見ていきます。

  • 未払金
  • 備品の修繕費
  • 清掃費

まず、未払金です。入居中に発生した利用料や食費などの未払い分を指します。退去時に精算が行われ、未払い分を支払う必要があります。

 

次に、備品の修繕費です。入居者が使用していた部屋や共有スペースの備品が損傷した場合、その修復にかかる費用が退去費用として請求されます。例えば、壁紙が破れていたり、家具が傷ついていたりする場合、元の状態に戻すための修繕費用が必要になります。

 

最後に、清掃費です。次の入居者が快適に生活できるよう、部屋に初めて入居した時の状態に戻すために、清掃が行われます。具体的には、カーペットのシャンプー洗浄、壁や床の汚れ除去、設備の消毒などが含まれます。

 

以上の3つが、老人ホームの退去費用の主な内訳です。ただし、施設によっては、これ以外にも特別な費用を設けている場合があります。例えば、退去時の手続き費用や、残置物の処分費用などが別途請求されることもあるため確認が必要です。

 

多くの老人ホームでは、入居時に敷金を支払わない代わりに、退去時にこれらの費用が発生する可能性があります。ただし、国土交通省のガイドラインでは、経年劣化による損耗は原状回復費用の対象外とされています。つまり、通常の使用による傷や汚れは、入居者の負担にはなりません。しかし、施設によってはガイドラインとは異なる基準を設けている場合もあるため、入居前に退去費用について十分な説明を受け、理解しておくことが大切です。

老人ホームの退去費用を負担する人

老人ホームの退去費用は、誰が負担するのでしょうか。基本的には、入居者本人が存命している場合は本人が負担し、死亡による退去の場合は身元保証人の負担になります。

 

入居者本人が存命の場合、退去にかかる費用は本人が支払います。ただし、認知症などにより本人に支払い能力がない場合は、身元保証人や家族が代わりに負担することが多いでしょう。

 

一方、入居者が死亡し、それを理由に退去する場合は、身元保証人が身柄を引き取り、退去にかかる費用を支払います。身元保証人は、入居契約時に指定された人物で、入居者が契約上の義務を果たせない場合に、その責任を負う立場にあります。

 

身元保証人は、入居者の死亡後、部屋の明け渡しや原状回復、残置物の処分などを行い、それらにかかる費用を負担しなければなりません。また、入居者に未払いの利用料や食費などがある場合は、身元保証人がそれらを精算する必要があります。

 

ただし、身元保証人の負担には限度があります。入居契約時に取り交わした範囲内の責任しか負わないため、それ以上の費用を請求されることはありません。

2老人ホーム退去費用の相場

老人ホームの退去費用は、施設の種類や立地などによって大きく異なります。一般的な傾向として、都市部にある施設は地価が高いため、退去費用も高額になる傾向があります。高級なサービスや特別なケアを提供している施設でも、退去費用が高くなりやすいです。

 

退去費用が高額になるその他の要因としては、入居者の部屋の消耗が激しかったり、清掃が大変な状態だったりする場合が挙げられます。例えば、壁紙やフローリングに大きな傷やシミがある場合、その修復に多額の費用がかかることがあります。また、長年の喫煙や体臭などによって部屋が著しく汚れている場合、専門業者による清掃が必要になり、高額な費用が発生することも考えられるでしょう。

 

では、具体的に老人ホームの退去費用の相場はどのくらいなのでしょうか。一般的な目安としては、10~30万円程度が退去費用の相場と言えます。ただし、前述のように施設や立地、部屋の状態によって大きく異なるため、一概には言えません。

 

退去費用の相場を知るためには、入居前に施設側から詳しい説明を受け、契約書の確認が大切です。退去時にどのような費用が発生する可能性があるのか、あらかじめ把握しておくことで、トラブルを未然に防げます。

3老人ホーム退去時は入居一時金が返金される?

多くの老人ホームでは、入居時に「入居一時金」という一定額を預けるシステムを採用しています。この入居一時金は、将来にわたる家賃の一部を前払いするという性質を持っています。つまり、入居者が老人ホームを利用する期間に応じて、毎月の利用料が入居一時金から差し引かれていく仕組みです。

 

入居一時金の金額は施設によって異なりますが、数十万円から数千万円と幅広いのが特徴です。一般的に、高級な施設ほど入居一時金が高額になる傾向にあります。

 

ここで注目したいのが、入居一時金の償却と返金です。入居一時金は、基本的に時の経過とともに減少していきます。これを償却と呼びます。つまり、入居者が老人ホームを利用すればするほど、入居一時金の残額は少なくなっていくわけです。

 

そして、入居者が退去する際には、支払った入居一時金から償却期間に応じた金額が差し引かれ、残りの金額が返金されます。この償却期間は、施設ごとに異なり契約書に明記されています。トラブルを防止するためには、入居前に以下の点についての確認が重要です。

【トラブル回避のために確認しておきたいポイント】

  • 入居一時金の返還の有無
  • 償却が始まるタイミング
  • 初期償却の割合
  • 償却期間
  • 中途解約時の返金方法

初期償却の割合と償却期間は、返金額に大きく影響します。初期償却とは、入居後すぐに一定割合の入居一時金が差し引かれることを指し、この割合が高いほど、返金額は少なくなります。また、償却期間が長いほど、返金額は減少していきます。もし不明な点があれば、遠慮なく施設側に質問し、納得するまで確認することをおすすめします。

4老人ホームを退去する際に知っておきたいポイント

高齢者施設を退去する際には、さまざまな注意点があります。ここでは、老人ホームを退去する際に知っておきたいポイントについて紹介します。

 

老人ホームに入居する際には、入居一時金や月々の利用料など、多額の費用がかかります。しかし、入居後まもなく体調を崩したり、亡くなったりして退去せざるを得ない状況になることもあるでしょう。そのような場合、支払った費用はどうなるのでしょうか。

3ヶ月以内の退去は日割り額を差し引いて返金される

老人ホームに入居してから3ヶ月以内に退去する場合、入居一時金は90日以内なら全額返金されます。ただし、入居日数分の家賃は支払う必要があります。90日ルールや短期解約特例制度といわれるものです。これは「老人福祉法」にも明記されている通りです。

 

例えば、入居一時金が300万円で、入居後1ヶ月で体調を崩して退去することになった場合、1ヶ月分の利用料を差し引いた約270万円が返金されることになります。ただし、月々の管理費などの経常的費用については、日割り計算の対象外となる場合もあるので注意が必要です。

 

なんらかの事情でやむを得ず退去しなければならない時は、契約書をよく確認し、施設側としっかり話し合いましょう。退去後のスムーズな費用精算のためにも、入居時の契約内容を十分に理解しておくことが大切です。

原則、ハウスクリーニングは施設が負担する

老人ホームを退去する際、部屋の清掃やハウスクリーニングが必要です。原則として、このハウスクリーニング費用は施設側が負担すべきものです。

 

入居者の通常の生活で発生した汚れやダメージは、経年劣化や通常損耗として扱われ、入居者に原状回復義務はありません。しかし、入居者の故意や過失による損傷や、通常の使用を超えるような著しい汚損が認められる場合は、入居者に原状回復費用の負担が求められることがあります。

 

ただし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はあくまでガイドラインであり、法的拘束力はありません。ハウスクリーニング費用を入居者側に求めることを禁じるものではないのです。

 

したがって、ハウスクリーニング費用について取り決めがある場合は、入居時の契約書や重要事項説明書をしっかりチェックしておきましょう。事前に費用負担について説明を受け、納得した上で契約することが肝心です。退去時のトラブルを避けるためにも、入居の際は契約内容を十分に確認し、疑問点は解消しておくことが重要といえるでしょう。

5まとめ

老人ホームの退去費用について、相場や内訳、注意点などを詳しく解説してきました。退去費用は施設によって大きく異なり、数万円から数百万円までと幅があることがわかりました。主な費用の内訳は、未払金、備品の修繕費、清掃費などです。

 

トラブルを避けるためには、入居前に退去費用について十分な説明を受け、疑問点を解消しておくことが大切です。特に、入居一時金の償却や返金、原状回復費用の負担については、事前の確認が欠かせません。

 

老人ホームを退去する際は、費用面だけでなく、手続きや精算などさまざまな問題が発生します。トラブルを未然に防ぎ、スムーズに退去を進めるためにも、入居前からしっかりと準備をしておくことが何より重要だと言えるでしょう。

監修者情報

ケアマネジャー20年の実績があり、100名以上の高齢者を担当。

がん末期や難病、認認介護、介護拒否などの事例も多く経験。現在はWebライターとして介護分野を中心に執筆している。

 

長谷部宏依(介護士専専門員)
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