介護にまつわるお役立ちコラム

胃ろうとは?ケア方法や介護保険での費用・在宅と介護施設による違いを解説

2025年06月10日

病気や加齢により口から十分な栄養を摂取できなくなった方にとって、胃ろうは重要な栄養管理手段のひとつです。体への負担が比較的少ないとされるこの方法は、医療現場や介護施設、在宅介護でも広く活用されていますが、その導入には医療的な判断だけでなく、費用や介護体制の検討も欠かせません。特に「胃ろうにかかる費用はどれくらい?」「介護保険はどこまで使えるのか?」といった疑問を持つご家族は多いでしょう。

 

本記事では、胃ろうの基礎知識や必要となるケース、メリット・デメリット、カテーテルの種類、在宅と施設でのケアの違い、そして介護保険の適用範囲や費用の目安までをわかりやすく解説します。胃ろうの導入を検討している方や、介護の負担に不安を感じているご家族は、ぜひ参考にしてください。

1胃ろうとは何か|その役割と仕組み

胃ろうは、内視鏡を使ってお腹に小さな穴を開け、胃までカテーテル(チューブ)を通して直接栄養を摂取する医療処置です。この処置は、PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼ばれ、比較的短時間(約30分程度)で終わる手術です。

 

胃ろうは主に、認知症や脳梗塞などの脳の病気、神経・顔面・のどの疾患により、口から十分な栄養を摂ることが難しくなった方に行われます。特に嚥下機能が低下し、食べ物が誤って気道に入る「誤嚥(ごえん)」のリスクが高い場合、誤嚥性肺炎を予防する観点からも、胃ろうが選択されることがあります。

胃ろうが必要となる疾患や症状

胃ろうが必要になる主な疾患や症状には、嚥下機能障害や繰り返す誤嚥性肺炎などがあります。具体的には以下のような疾患で胃ろうが検討されます。

疾患名説明
脳血管障害脳梗塞や脳出血により嚥下機能が低下し、誤嚥リスクが高まる
認知症認知機能の低下により食事の認識や飲み込みの調整が難しくなる
神経筋疾患ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで筋肉の制御が難しくなる
食道狭窄食道が狭くなり、食物の通過が困難になる
頭部顔面外傷顔面や頭部の外傷によって嚥下機能が損なわれる
ALS(筋萎縮性側索硬化症)運動ニューロンの変性により筋肉のコントロールが困難になる

低栄養状態が続くと、免疫力低下、体重減少、褥瘡発生、認知症の進行など、さまざまな健康リスクが高まります。胃ろうによる確実な栄養摂取は、これらのリスクを軽減する役割も担っています。

胃ろうと腸ろうの違いと選択基準

胃ろうと腸ろうはどちらも経管栄養法ですが、栄養剤を注入する場所が異なります。どのような場合にどちらが選択されるかを表で比較してみましょう。

項目胃ろう腸ろう
仕組みお腹に穴を開け、胃までカテーテルを通すお腹に穴を開け、小腸までカテーテルを通す
選択される場合一般的な経管栄養の第一選択肢として胃の疾患がある場合や胃切除後など胃ろうが使えない場合
対象となる人嚥下障害がある人、認知症患者など胃がんなどの理由で胃ろうが適さない人、誤嚥を繰り返す人

通常は胃ろうが選択されることが多いですが、胃がんや胃切除後など胃に問題がある場合は腸ろうが選択されます。また、胃ろうでも誤嚥性肺炎を繰り返す場合には、腸ろうに変更されることもあります。

2胃ろうのメリットとデメリットを徹底比較

胃ろうによる栄養摂取法にはさまざまなメリットとデメリットがあります。他の栄養摂取法と比較しながら、それぞれの特徴を見ていきましょう。

メリットデメリット
・誤嚥性肺炎を予防できる
・咽頭部への刺激が少なく、状態によっては口からの食事と併用可能
・必要な栄養を確実に摂取できる
・生活や行動範囲が制限されにくい
・食事介助の時間や手間が削減される
・他の経管栄養法と比較してトラブルリスクが低い
・胃ろう周辺の皮膚トラブルが起こりやすい
・定期的に医師による胃ろうカテーテルの交換が必要
・誤って抜いてしまうと短期間で塞がり、再手術が必要になる
・注入時の温度や速度により下痢などの排泄問題が起きることがある

胃ろうを造設するメリット

胃ろうの最大のメリットは、誤嚥性肺炎の予防効果です。口から食べる場合に比べて、食物が気道に入るリスクが大幅に低減されます。また、咽頭部への刺激が少ないため、状態によっては口からの食事と胃ろうを併用することも可能です。

必要な栄養を確実に摂取できる点も大きなメリットです。食欲不振や嚥下困難な状態でも、必要なカロリーやバランスの取れた栄養素を確実に体内に取り入れることができます。

 

さらに、胃ろうは生活や行動範囲を大きく制限することがなく、カテーテルは衣服で隠すことができるため、外見上も目立ちません。入浴も可能で、日常生活への影響は比較的小さいといえます。

 

介護者にとっても、食事介助の時間や手間が大幅に削減されるため、介護負担の軽減につながります。特に在宅介護においては、この点が大きなメリットとなります。

胃ろうによる生活への影響とリスク

一方で、胃ろうにはいくつかのリスクや注意点もあります。まず、胃ろう周辺の皮膚トラブルが起こりやすく、定期的なケアが必要です。また、カテーテルは定期的に医師による交換が必要で、その都度医療機関を受診する必要があります。

 

胃ろうカテーテルが誤って抜けてしまった場合、穴は一晩程度の短時間で塞がってしまうため、すぐに医療機関を受診して再挿入しなければなりません。塞がってしまった場合は再手術が必要になります。

 

また、栄養剤の注入時の温度や速度によっては、下痢や嘔吐などの消化器症状が起こることもあります。適切な温度と注入速度で行うことが重要です。

胃ろうと他の栄養摂取法との比較

栄養摂取の方法には、口からの食事に加えて、胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養法、中心静脈栄養法といった多様な選択肢があります。それぞれの方法には特徴や適応があり、患者の病態や生活状況によって最適な選択が異なります。

 

以下の表は、それぞれの栄養摂取法について比較したものです。

栄養摂取法特徴メリットデメリット
口からの食事自然な形での栄養摂取味覚や食感を楽しめる、自然な消化過程嚥下障害がある場合は誤嚥リスクが高い
胃ろうお腹から直接胃へ栄養を入れる誤嚥リスクが低く、栄養を確実に摂取できる皮膚トラブル、定期交換が必要
腸ろうお腹から直接小腸へ栄養を入れる胃の疾患がある場合も使用可能皮膚トラブル、定期交換が必要
経鼻経管栄養法鼻から胃までチューブを通す一時的な使用に適している鼻や喉の不快感、チューブが見える
中心静脈栄養法太い静脈から直接栄養を入れる消化管が使えない場合でも栄養摂取可能感染リスクが高く、長期使用に不向き

各栄養摂取法にはそれぞれの特性があります。どの方法を選択するかは、医学的な適応だけでなく、患者本人や家族の意向、在宅か施設かといった生活環境まで含めて総合的に判断することが重要です。

3胃ろうカテーテルの種類と選び方

胃ろうカテーテルには複数の種類があり、それぞれに特徴があります。

主に「胃の内部の形状」と「皮膚の外側の形状」の2つの観点から分類されます。

分類方法タイプ特徴
胃の内部の形状バルーン型胃内でバルーンを膨らませて固定、挿入時の負担が少ないが交換頻度が高い
バンパー型ストッパーで固定、長期使用に向くが挿入時に痛みを伴う
皮膚の外側の形状ボタン型体外に出る部分が小さく目立たない、自己抜去リスクが低い
チューブ型栄養剤の注入が簡単だが引っ張って抜けるリスクがある

バルーン型とバンパー型の特徴と使い分け

胃の内部の形状による2つのタイプであるバルーン型とバンパー型には、それぞれ特徴があり、患者の状態や生活環境に応じて適切に選択する必要があります。バルーン型は蒸留水でバルーンを膨らませて固定する方式で、挿入時の負担が少ないのが特徴です。一方、バンパー型はカテーテル抜去を防止するためのストッパーがついており、胃ろう造設時にもよく使用されます。

比較項目バルーン型バンパー型
固定方法蒸留水でバルーンを膨らませて固定ストッパー(バンパー)で固定
交換頻度1~2ヶ月に1度約4〜6ヶ月に1度
交換費用1回約1万円(保険適用で1割負担なら1,000円)1回約2万2,000円(保険適用で1割負担なら2,200円)
挿入時の負担少ない痛みを伴うことがある
適している場合頻繁な交換が可能な場合、在宅で介護する場合長長期使用、交換頻度を減らしたい場合

バルーン型は比較的簡単に交換できますが、バルーンの劣化により交換頻度が高くなります。一方、バンパー型は交換頻度が少なく済みますが、交換時には専門医の技術が必要で、痛みを伴うことがあります。

ボタン型とチューブ型のメリット・デメリット

皮膚の外側の形状による2つのタイプであるボタン型とチューブ型には、それぞれ特徴があり、患者さんのライフスタイルや身体状況に合わせて選択することが重要です。ボタン型は注入時にボタンを開けて栄養チューブを接続する必要がありますが、チューブ型に比べて見た目が目立たず、日常生活への影響が少ないという特長があります。

比較項目ボタン型チューブ型
見た目コンパクトで目立たないチューブが体外に出ているため目立つ
注入時の手間ボタンを開けて栄養チューブを接続する必要がある栄養チューブとの接続が簡単
特徴逆流防止装置がある、自己抜去しにくいチューブが引っ張られて抜けるリスクがある
適している場合日常生活を重視する人、活動的な人寝たきりで動きが少ない人、施設入所者

在宅での利用ではボタン型が多く選ばれる傾向があります。これは外見上の配慮と、日常生活への影響を最小限にするためです。一方、チューブ型は注入が簡単なため、施設での使用に適しています。

4胃ろうにかかる費用と介護保険の適用範囲

胃ろうに関連する費用と、介護保険や医療保険での負担について見ていきましょう。

費用項目金額保険適用後の負担額(1割負担の場合)
手術費約10万円約1万円
病院での治療費約4万4,400円約4,440円
栄養剤代+訪問診療代月約6万円月約2~3.5万円
カテーテル交換費用(バルーン型)1回約1万円1回約1,000円
カテーテル交換費用(バンパー型)1回約2万2,000円1回約2,200円

胃ろうに関する費用は、医療保険と介護保険の適用範囲が明確に区分されています。胃ろう造設手術やカテーテル交換などの医療行為は医療保険が適用され、在宅での介護サポートや施設での介護サービスには介護保険が適用されます。

 

医療保険では、手術費用や定期的なカテーテル交換費用、医師の処方による栄養剤などが対象となります。負担割合は所得に応じて1~3割となり、高額療養費制度を利用することでさらに負担を軽減することも可能です。

 

介護保険では、胃ろうのある方の在宅介護に必要な訪問介護や訪問看護などのサービスが対象となります。要介護度に応じて利用限度額が設定され、その範囲内であれば1~3割の自己負担で利用できます。

 

栄養剤については、医薬品として処方される場合は医療保険が適用されますが、食品として購入する場合は保険適用外となります。施設入所の場合は、栄養剤が食費として扱われることもあるため、事前に確認が必要です。

胃ろう造設手術の費用と保険適用

胃ろう造設手術にかかる費用について、以下にまとめました。

項目金額
胃瘻造設術60,700円
胃瘻造設時嚥下機能評価加算25,000円
合計85,700円
医療保険適用後(1割負担の場合)8,570円

胃ろう造設手術は医療保険の適用対象となります。負担割合は所得に応じて1~3割となります。また、高額療養費制度を利用することで、月々の医療費の自己負担には上限額が設定され、それを超えた分は払い戻されます。

栄養剤の種類と月額費用の目安

胃ろうで使用される栄養剤の種類と、医師の処方、注入時間を以下にまとめました。

区分医薬品食品
保険適用ありなし
医師の処方必要不要
注入時間1回あたり1~2時間1回あたり5~15分

栄養剤は大きく医薬品と食品の2種類に分けられます。医薬品として処方される場合は保険が適用され、1割負担の場合、月額2~3.5万円程度の負担となります。食品として購入する場合は保険適用外となり、全額自己負担となります。

高額療養費制度や生活保護など利用可能な支援制度

胃ろうの費用負担を軽減するために利用できる支援制度には、以下のようなものがあります。

支援制度概要申請方法・条件
高額療養費制度月々の医療費の自己負担に上限を設ける制度加入している健康保険の窓口に申請
民間の医療保険入院や手術に対して給付金が支払われる加入時の契約内容による
生活保護制度生活に困窮する場合に利用できるセーフティネット市区町村の福祉事務所に相談

「健康保険限度額適用認定証」を事前に取得しておくと、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までで済むため、高額な立て替えが不要になります。所得に応じて負担限度額が設定されるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

5在宅での胃ろう管理とケア方法

在宅で胃ろうを管理する際の基本的な考え方は、清潔を保ち、トラブルを早期に発見して対処することです。家族による管理は最初は不安も多いですが、手順を理解し、適切なサポートを受けることで安心して行うことができます。

栄養剤の注入手順と注意点

在宅で胃ろうからの栄養剤注入を行う具体的な手順は、以下の通りです。

手順詳細
1. 準備手を洗い、栄養剤を室温に戻す
2. セッティング栄養剤をイリゲーター(専用容器)に入れ、チューブを接続
3. 接続患者の体を30~90度起こし、胃ろうカテーテルに栄養チューブを接続
4. 注入決められた速度で栄養剤を滴下させる
5. 半固形の場合シリンジで吸って、ゆっくりと注入する
6. 薬の注入内服薬は水に溶かしてシリンジで注入
7. 後処理白湯を流してチューブ内を洗浄
8. 確認と姿勢維持漏れがないか確認し、1時間程度は上体を起こした状態を保つ

注入時の安全を確保するためには、適切な姿勢(上体を30度以上起こす)を保つこと、注入速度を守ること、注入中は付き添うことが重要です。逆流や誤嚥を防ぐため、注入後も30分~1時間は座位を保ちましょう。

皮膚トラブルの予防と対処法

胃ろうカテーテル周辺で起こりやすい皮膚トラブルとその予防・対処法について、以下にまとめました。

トラブルの種類症状予防・対処法
皮膚への埋没カテーテルが皮膚に埋もれる週に1度はカテーテルを回転させ、適切な間隔(1~1.5cm)を保つ
不良肉芽カテーテル周囲に赤いやわらかい組織ができるカテーテルと皮膚の間にスポンジやこよりを置き、圧を分散させる
皮膚の感染発赤、腫脹、熱感、滲出液が見られる清潔を保つ、毎日の観察と適切なケア
カテーテルの自己抜去カテーテルが抜けてしまう服や腹帯でカテーテルを隠す、緊急時の連絡先を準備しておく

皮膚トラブルを防ぐためには、日々の観察と清潔保持が欠かせません。異常を発見したら、早めに医師や看護師に相談しましょう。

在宅介護で家族が行うべき日常ケア

胃ろうのある方の在宅介護で、家族が日常的に行うべきケアは、以下の通りです。

ケアの種類頻度方法・ポイント
口腔ケア1日3回以上歯ブラシや口腔スポンジを使用、唾液の分泌促進
カテーテル周囲の皮膚ケア毎日清潔な水やぬるま湯で洗浄、しっかり乾燥させる
カテーテルの回転週に1回皮膚への埋没を防ぐ、スムーズに回転することを確認
緊急時の対応準備常時緊急連絡先リストの作成、抜けた場合の対応方法を確認

胃ろうを造設していても口腔ケアは非常に重要です。唾液の分泌が減少すると口腔内の細菌が増え、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。また、カテーテル周囲の皮膚は常に清潔に保ち、トラブルの早期発見に努めましょう。

家族の介護負担を軽減するプロのサポート

胃ろうのある方の在宅介護において、家族の負担を軽減するためのサービスやサポート体制も充実しています。特に専門的な知識と技術を持つ訪問介護・看護サービスは大きな助けになります。

 

イチロウ」の訪問介護・看護サービスは、胃ろうケアに精通した専門スタッフが対応し、安心して在宅介護を続けられるようサポートします。サービス内容は以下の通りです。

サービス区分内容料金(税抜)
介護コース
(日中基本料金9:00〜18:00)
身体介護、生活援助、胃ろうケアサポートなど要相談
看護コース
(日中基本料金9:00〜18:00)
医療的ケア、健康管理、胃ろう管理など要相談

イチロウの24時間対応の介護サービスは、夜間の緊急時にも迅速に対応するため、家族の介護負担や不安を大幅に軽減します。カテーテルが抜けた場合や皮膚トラブルが発生した場合など、専門知識が必要な場面でも安心して対応してもらえます。

 

医療的ケアを含む介護サービスを選ぶ際は、スタッフの専門性や24時間対応の有無、緊急時のサポート体制などを確認することが大切です。イチロウでは、胃ろうケアの専門知識を持ったスタッフが、患者さん一人ひとりの状態に合わせたきめ細かいケアを提供しています。

 

>>イチロウについて詳しく見る

6胃ろうに対応している介護施設の選び方

胃ろうのある方が入居できる介護施設は、2012年の介護保険法改正後に増加しています。しかし、すべての施設が対応できるわけではないため、入居前にしっかりと確認することが重要です。

施設選びで確認すべき医療体制のポイント

胃ろうのある方が入居する施設を選ぶ際に確認すべき医療体制を以下にまとめました。

確認項目具体的な確認内容
協力医療機関近隣にどのような協力医療機関があるか、往診対応の有無
介護・看護体制胃ろう対応可能な職員の人数、24時間体制の有無
リハビリ支援摂食嚥下リハビリの実施状況、専門職の配置
医療的ケア対応胃ろう以外の医療的ケアへの対応範囲
看取り体制終末期ケアの方針、家族との連携方法

施設見学の際には、実際の胃ろうケアの状況や、対応可能な職員の配置状況を具体的に質問しましょう。また、緊急時の対応体制についても確認することが大切です。

施設入居時の費用と介護保険の負担割合

胃ろうのある方が介護施設に入居する際の費用と、介護保険での負担割合について、以下にまとめました。

費用項目金額備考
カテーテル交換費用(バルーン型)1回約1万円保険適用で1割負担なら約1,000円
カテーテル交換費用(バンパー型)1回約2万2,000円保険適用で1割負担なら約2,200円
栄養剤費月約6万円保険適用で月約2~3.5万円、食費として扱われる場合も

介護施設での胃ろう関連費用は、医療保険と介護保険の両方が関わります。カテーテル交換などの医療行為は医療保険、施設の基本サービスは介護保険が適用されます。栄養剤は医薬品として処方される場合と、食費として扱われる場合があるため、事前に確認が必要です。

施設での胃ろうケアの内容と質の見極め方

施設での胃ろうケアには、栄養剤の注入、口腔ケア、皮膚ケアなどが含まれます。質の高いケアを提供する施設を選ぶためには、以下のポイントを確認しましょう。

  • 医師や看護師との連携による栄養剤選択の仕組み
  • 定期的なカテーテル交換への対応方法
  • 緊急時(カテーテルが抜けた場合など)の対応体制
  • 口腔ケアの実施状況とスタッフの専門性
  • 皮膚トラブルの予防と早期発見の取り組み

施設見学時には、実際のケアの様子を見学したり、スタッフに具体的な質問をしたりして、ケアの質を見極めることが大切です。

7胃ろうに関する意思決定と尊厳の問題

胃ろうの造設を検討する際には、医学的な側面だけでなく、「本人らしい生き方」をどう支えるかという倫理的な視点も考慮する必要があります。本人の尊厳を守りながら、最善の選択をするためには、家族間での十分な話し合いが不可欠です。

 

とくに、高齢者や認知症の方など意思表示が難しい状況では、家族や医療者が本人の過去の言動や価値観をもとに判断を下すことになります。そのためにも、「どのように生きたいか」「どんな最期を迎えたいか」について、元気なうちから話し合っておくことが、本人の尊厳を守ることにつながります。

延命治療としての側面と本人の意思の尊重

胃ろうは延命治療として捉えられることもあります。特に認知症など判断能力が低下している場合は、本人の意思確認が難しいという問題があります。

 

本人の意思が明確でない中で胃ろうを選ぶことは、家族にとっても大きな決断です。「尊厳死宣言書」などの事前指示書を作成しておくことで、本人の意思を尊重した選択をしやすくなります。

 

ただし、日本では尊厳死や安楽死に関する法整備が十分でないため、必ずしも本人の希望通りになるとは限りません。家族や医療者は、本人がどのような生き方を望んでいたかを考慮しながら、最善の選択をすることが大切です。

経口摂取への回復可能性とリハビリの取り組み

胃ろうを造設しても、リハビリによって経口摂取が可能になる可能性があります。特に一時的な嚥下機能の低下であれば、適切なリハビリを行うことで、口から食べる喜びを取り戻せるケースもあります。

 

胃ろうと経口摂取の併用も可能であり、少量であれば口から食べる楽しみを残しながら、必要な栄養は胃ろうから摂取するという方法もあります。「食べる」という行為は単なる栄養摂取以上の意味を持ちます。可能な限り口から食べる喜びを大切にする視点も重要です。

胃ろう造設前に家族で話し合うべきこと

胃ろう造設は、栄養摂取方法を大きく変える医療処置であり、本人と家族の生活に長期的な影響を与えます。造設を検討する際には、家族間で十分な話し合いを行い、さまざまな側面から検討することが重要です。

話し合いのポイント内容
メリット・デメリットの共有胃ろうのメリットとデメリットを家族全員で理解する
本人の意思確認可能な限り本人の意思を確認し、尊重する
介護体制の確認家族の介護体制や外部サービスの利用可能性を確認する
医療連携体制の確認かかりつけ医や訪問看護など、医療機関との連携体制を確認する
将来の方針胃ろう造設後の生活プラン、経口摂取へのリハビリの可能性、長期的な目標を設定する

急な症状変化に備えた準備も重要です。カテーテルが抜けてしまった場合の対応方法や緊急連絡先リストの作成など、具体的な対応策を事前に確認しておきましょう。また、カテーテル交換の頻度や費用、栄養剤の種類なども検討事項に含めると良いでしょう。

 

将来の治療方針についても話し合っておくことが大切です。胃ろうはあくまで栄養摂取を支援する手段であり、場合によっては経口摂取への移行も可能です。リハビリテーションの方針や、将来的に病状が進行した場合の対応なども含めて、家族間で共通認識を持っておくことで、後々の意思決定がスムーズになります。

 

また、胃ろう造設後の生活の質をどう維持するかという視点も欠かせません。単に生命を維持するだけでなく、本人の尊厳や生きがいを守るための工夫について話し合うことも重要です。家族それぞれの負担が偏らないよう、介護の役割分担についても具体的に検討しておきましょう。

8まとめ

胃ろうは嚥下困難な方にとって重要な栄養摂取手段です。誤嚥性肺炎の予防や確実な栄養摂取というメリットがある一方、皮膚トラブルや定期的なカテーテル交換が必要というデメリットもあります。カテーテルは患者さんの状態に合わせてバルーン型・バンパー型、ボタン型・チューブ型から選択します。

 

費用面では介護保険や医療保険の適用で負担が軽減されますが、制度理解が重要です。在宅管理では清潔保持や適切な注入方法の習得が必須で、施設選びでは24時間のケア体制など充実したサポート環境を確認しましょう。

 

胃ろう造設を検討する際は、本人の意思を尊重し、家族間での十分な話し合いが大切です。単なる延命ではなく生活の質を向上させる選択となるよう、医療者と連携して決断しましょう。状態によっては経口摂取への回復可能性もあります。

 

イチロウの訪問介護・看護サービスは、胃ろうケアに精通した専門スタッフが24時間体制で対応し、安心して在宅介護を続けられるようサポートします。医療的ケアを含む充実したサービス内容で、ご家族の介護負担を軽減しながら、患者さんの尊厳ある生活をサポートいたします。胃ろうでお悩みの方は、ぜひイチロウのサービスをご検討ください。

9よくある質問

胃ろうの導入を検討されている方やご家族からは、費用負担や在宅でのケア方法、施設選びのポイントなど多岐にわたるご質問をいただきます。また、カテーテルの種類選択や造設の決断に関する悩みも多く寄せられています。

 

ここでは、胃ろうに関してよく寄せられる質問についてお答えします。

Q1. 胃ろうの費用は介護保険でどこまでカバーされますか?

胃ろうに関する費用は医療保険と介護保険で適用範囲が分かれています。胃ろう造設手術(約10万円)やカテーテル交換(1~2万円)、栄養剤(月約6万円)は医療保険が適用され、1~3割の自己負担となります。一方、在宅での介護サポートや施設での介護サービスには介護保険が適用されます。高額療養費制度を利用すれば月々の医療費負担に上限が設けられ、さらに負担を軽減できます。栄養剤は医薬品として処方される場合は保険適用ですが、食品として購入する場合は全額自己負担となるため注意が必要です。

Q2. 在宅で胃ろうのケアをするのは家族にとって負担が大きいでしょうか?

在宅での胃ろうケアは最初は不安も多いですが、適切な指導を受ければ家族でも十分に管理できます。主なケアは栄養剤の注入、カテーテル周囲の皮膚清拭、口腔ケアなどで、手順を覚えれば30分程度で完了します。ただし、皮膚トラブルの観察や緊急時の対応など専門的な判断が必要な場面もあります。家族の負担を軽減するため、訪問看護や24時間対応の訪問介護サービスを活用することで、安心して在宅ケアを続けることができます。イチロウのような専門サービスなら胃ろうケアに精通したスタッフが対応してくれます。

Q3. バルーン型とバンパー型のカテーテルはどちらを選ぶべきですか?

カテーテル選択は患者さんの状態や生活環境によって決まります。バルーン型は交換が簡単で挿入時の負担が少ないですが、1~2ヶ月ごとの交換が必要です(1回約1万円)。バンパー型は4~6ヶ月に1度の交換で済みますが、交換時に痛みを伴うことがあります(1回約2万2,000円)。在宅で頻繁な通院が可能ならバルーン型、交換頻度を減らしたい場合はバンパー型が適しています。また、皮膚の外側はボタン型が見た目に配慮でき、チューブ型は注入が簡単という特徴があります。医師と相談して最適なタイプを選択しましょう。

Q4. 胃ろう対応の介護施設を選ぶ際のポイントは何ですか?

胃ろう対応施設選びでは医療体制の確認が最重要です。24時間体制で胃ろうケアに対応できる看護師や介護士の配置、協力医療機関との連携体制、緊急時の対応方法を具体的に質問しましょう。また、カテーテル交換への対応や栄養剤の管理方法、口腔ケアの実施状況も確認が必要です。施設見学時には実際のケアの様子を見学し、スタッフの専門性や入居者への接し方も観察してください。費用面では、栄養剤が医療費として扱われるか食費として扱われるかによって負担が変わるため、事前に確認しておくことが大切です。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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