介護にまつわるお役立ちコラム

親の介護を理由に退職するのは危険?辞める前に知っておくべき制度も紹介

2025年05月15日

親の介護と仕事の両立に悩み、「もう退職するしかない」と考えていませんか?安易な介護離職は、収入減やキャリア喪失のリスクを伴います。

 

この記事では、介護を理由に退職するメリット・デメリット、介護離職者の現状を解説します。さらに、退職前に活用できる介護休業等の支援制度や失業保険、検討すべき対策も紹介します。介護と仕事の両立に悩んでいる方は、後悔しない選択をするために参考にしてみてください。

1親の介護による退職の現状

厚生労働省の「厚生労働省|令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書

」によると、家族の介護を理由とした退職者がいた企業について、「全体」では「正規労働者で介護離職者がいた」が4.3%、「有期契約労働者で介護離職者がいた」が3.3%、「無期契約労働者で介護離職者がいた」が0.4%、「介護離職者はいない」が 81.7%でした。

 

年代別に見ると、介護離職者は50代(35.5%)が最も多く、次いで60歳以上(25.1%)、40代(19.2%)となっています。男女比では、女性が70.7%、男性が29.3%です。

 

また、離職者の6割以上が、介護休業などの両立支援制度を利用せずに退職している実態も明らかになっています。これは、制度が十分に活用されないまま離職に至るケースが多いことを示唆しています。

 

参考:厚生労働省|令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書

介護離職者数は年々増加している

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、介護離職者数はかなり大きく増加しています。具体的には、2017年の介護離職者数は約9.9万人で10年前から2倍の数となり、2022年には約10.6万人と、年々増加傾向です。

 

また、大和総研の「介護離職の現状と課題」を見ると、以前はパートタイム労働者(非正規雇用者)の介護離職が多い傾向がありましたが、2010年頃からその差が縮小し、近年では正規雇用者の離職者数も多くなっています。

 

背景には、急速な高齢化により介護が必要な高齢者が増え続けている一方で、介護施設の不足などから在宅介護を選択せざるを得ないケースが増えていることがあります。結果として、働き盛りの世代が介護の主な担い手となり、離職につながっていると考えられます。

 

参考:

厚生労働省|令和5年 雇用動向調査結果の概要

株式会社大和総研|介護離職の現状と課題

「両立が難しい」が最大の退職理由

なぜ介護離職を選ぶのでしょうか。厚生労働省の「令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書」によると、介護離職の理由は「仕事と介護の両立が難しい職場だったため」が59.4%と最も多くなっています。次いで多いのが「介護をする家族・親族が自分しかいなかったため」で17.6%、「自分の心身の健康状態が悪化したため」が17.3%となっています。

 

また、ケアマネジャーからの急な連絡や、親の突然の入院・体調悪化への対応などで、思うように仕事に集中できなくなる状況も、両立を困難にさせる要因です。

 

参考:厚生労働省|令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書

退職までの両立期間は1年以上が多数

介護離職は、決して衝動的な判断ではありません。厚生労働省の「令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書」によると、離職に至る前に仕事と介護の両立を試みていた期間は「1年以上」が最も多く、つまり多くの人が1年以上にわたり、仕事と介護を何とか両立させようと努力した末に、やむを得ず離職という決断を下しているのです。

 

長期間にわたる介護と仕事の両立は、心身ともに大きな負担となります。このデータは、介護離職が決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる問題であり、離職という選択がいかに重いものであるかを示唆しています。

 

参考:厚生労働省|令和元年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 報告書

2親の介護で退職することのメリットとデメリット

親の介護のために退職することは、大きな決断です。介護に専念できるというメリットがある一方で、収入減やキャリアの中断といったデメリットも存在します。下表に、主なメリットとデメリットをまとめました。

メリットデメリット
・介護に集中できる精神的な余裕ができる
・介護サービス利用料を抑えられる可能性がある
・収入源を失うリスクが大きい
・築いてきたキャリアを失ってしまう
・将来への不安から精神的な負担が増える

経済面、精神面、将来のキャリアなど、さまざまな角度から影響を考慮し、メリットとデメリットを冷静に比較検討することが重要です。安易な決断は避け、ご自身の状況に照らし合わせて慎重に判断しましょう。

退職することのメリット

仕事と介護の両立に追われる日々から解放され、介護に集中できる環境が手に入ることは、退職の大きなメリットです。時間的・精神的な余裕が生まれ、これまで十分にできなかった親とのコミュニケーションやケアに時間を充てられるようになります。また、介護サービス利用を抑えることで、経済的な負担が軽減される可能性もあります。介護される親にとっても、身近な家族からの手厚いケアは安心感につながるでしょう。

  • 介護に集中できる精神的な余裕ができる

退職によって仕事に関する責任やプレッシャーから解放されると、精神的な余裕が生まれます。「仕事に穴をあけられない」「介護で休みづらい」といったストレスがなくなり、落ち着いた気持ちで介護に向き合えるようになります。親に対して十分な時間をかけられなかったことへの罪悪感や、「ほったらかしにしている」という後ろめたさからも解放されるでしょう。

 

時間的なゆとりは、より丁寧な介護の実践を可能にし、結果的に介護の質の向上につながる場合もあります。また、介護される親にとっても、常に家族がそばにいてくれるという安心感は、精神的な支えとなるはずです。

  • 介護サービス利用料を抑えられる可能性がある

自身が介護の主たる担い手となることで、外部の介護サービスの利用を必要最小限に抑え、結果的に費用負担を軽減できる可能性があります。

 

例えば、訪問介護を毎日数時間利用したり、デイサービスを週に何度も利用したりすると、介護保険を利用しても自己負担額は月数万円になることがあります。有料老人ホームなど施設への入居となれば、月額数十万円以上の費用がかかることも少なくありません。

 

家族が中心となって介護を行うことで、これらのサービス利用を減らし、経済的な負担を抑えられるケースがあります。ただし、必要な介護レベルや利用するサービス内容によって状況は大きく異なります。

退職することのデメリット

介護離職にはメリットがある一方、見過ごせないできないデメリットも存在します。最も大きいのは収入が途絶えることによる経済的な困窮リスクです。また、一度離職すると元のキャリアに戻るのは難しく、社会とのつながりが希薄になると精神的な孤立感を感じるようになるかもしれません。介護がいつまで続くか見通しが立たない点も、将来への不安を増大させる要因です。

  • 収入源を失うリスクが大きい

退職によって毎月の安定した収入がなくなることは、最も直接的で深刻なデメリットです。貯蓄を取り崩す生活が続けば、経済的な余裕はあっという間になくなります。さらに、介護期間が長引けば、その間の国民年金保険料や住民税などの支払いも負担となるでしょう。

 

介護が終了し、いざ再就職しようとしても、ブランク期間が長いほど希望する条件での仕事を見つけるのは困難になる傾向があります。結果的に、介護が終わった後も長期にわたって経済的な苦境が続く可能性も否定できません。

  • 築いてきたキャリアを失ってしまう

長年かけて築き上げてきた職務経験や専門スキル、職場での地位などを、介護離職によって手放さなければならないのは大きな損失です。離職期間が長引けば、知識やスキルの陳腐化も懸念されます。再就職できたとしても、以前と同じ役職や給与水準を得るのは難しく、キャリアが中断・後退してしまうケースが少なくありません。

 

特に、仕事に誇りややりがいを感じていた人にとっては、キャリアの喪失は大きな精神的ダメージとなり得ます。年齢によっては、思い描いていたキャリアパスへの復帰が非常に困難になるという厳しい現実もあります。

  • 将来への不安から精神的な負担が増える

介護離職後は、「いつまでこの生活が続くのか」「貯金はいつまで持つのか」といった、終わりの見えない介護生活と経済的な困窮に対する不安が常につきまといます。仕事を通じて得られていた社会との接点が失われることで、孤独感や疎外感を覚える人も少なくありません。

 

介護そのものの負担に加えて、これらの将来への不安や社会的孤立感が重なると、精神的な負担は計り知れないものになります。追い詰められた結果、介護者自身がうつ病などの精神疾患を発症したり、最悪の場合、介護者と被介護者がともに追い詰められたりしてしまう「共倒れ」に陥るリスクも指摘されています。

3介護が理由で退職する前に活用すべき介護支援制度

「もう辞めるしかない」と決断する前に、仕事と介護の両立を支援するために国が定めた制度の活用を検討しましょう。「育児・介護休業法」には、労働者が介護をしながら働き続けるためのさまざまな支援策が盛り込まれています。これらの制度を知り、自身の状況に合わせて組み合わせることで、離職を回避できる可能性があります。

介護休業制度

介護休業制度は、労働者が要介護状態にある家族を介護するために、まとまった期間の休業を取得できる制度です。概要を下表にまとめました。

内容要介護状態(※)にある対象家族を介護するための休業
条件対象家族1人につき、3回まで、通算93日まで取得可能
対象者日々雇用を除くほとんどの労働者(期間雇用者には別途条件あり)。対象家族は配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母
申請方法原則として休業開始予定日の2週間前までに、書面等で事業主に申し出る

※要介護状態:負傷、疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

 

介護休業期間中は、原則として会社からの給与は支払われませんが、一定の要件を満たせば雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。支給額は、原則として「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」です。この制度を活用することで、一時的に介護に専念する時間を確保し、職場復帰後の生活に備えることができます。

 

参考:厚生労働省|介護休業とは

介護休暇制度

介護休暇制度は、要介護状態にある家族の介護や世話を「単発的」に行うために、年次有給休暇とは別に休暇を取得できる制度です。概要を下表にまとめました。

内容要介護状態にある対象家族の介護や世話(通院付き添い、手続き代行など)のための休暇
条件対象家族が1人なら年5日まで、2人以上なら年10日まで。1日または時間単位(※)で取得可能
対象者日々雇用を除くほとんどの労働者(労使協定により対象外となる場合あり)。対象家族は介護休業と同じ
申請方法当日の口頭での申し出も可能(ただし社内規定を確認)。書類提出を求められる場合もある

※時間単位取得:始業から終業の間で、中抜けなしの時間単位での取得が可能

 

介護休暇中の賃金については、法律上の定めはなく、会社の規定によります。介護休業と異なり、雇用保険からの給付金もありません。しかし、急な通院の付き添いや、ケアマネージャーとの打ち合わせ、役所での手続きなど、突発的に必要となる短時間の用事に対応しやすいのが大きなメリットです。「ちょっとした用事のために有給休暇を使い切ってしまう」といった事態を防ぐのに役立ちます。

 

参考:厚生労働省|介護休暇とは

短時間勤務等の制度

介護をしながら働き続けるために、労働時間を調整する制度も設けられています。企業は、以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。

  • 短時間勤務制度: 1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する。
  • フレックスタイム制度: 始業・終業時刻を労働者が決定できる。
  • 時差出勤制度: 始業・終業時刻を繰り上げまたは繰り下げる。
  • 介護費用の助成措置: 労働者が利用する介護サービスの費用を助成する。

本制度の概要について、下表にまとめました。

内容上記のいずれか、または複数を組み合わせた措置を、企業が労働者の状況に応じて提供
条件対象家族1人につき、利用開始日から連続して3年以上の期間で、2回以上利用可能(企業は少なくともこの期間・回数は利用できる措置を用意する必要がある)
対象者日々雇用を除くほとんどの労働者(労使協定により対象外となる場合あり)。対象家族は介護休業と同じ
申請方法利用したい措置や期間を定め、企業の規定に沿って申請。多くの場合、開始予定日の一定期間前(例:1ヶ月前)までの申し出が必要

これらの制度は、介護休業を取得するほどではないものの、フルタイム勤務が難しい場合に有効です。例えば、介護休業から復帰した後に短時間勤務を利用して徐々に仕事に慣らしていったり、デイサービスの送迎時間に合わせて時差出勤を活用したりといった使い方が考えられます。ただし、短時間勤務などを利用した場合、短縮した時間に応じて給与も減額されるのが一般的です。

残業免除・制限の制度

この制度は、介護のために定時で退社したい、残業時間を減らしたいという場合に利用できる制度です。

  • 所定外労働の制限(残業免除): 労使協定で定められた、定時を超えて働く「残業」そのものを免除してもらう制度。
  • 時間外労働の制限: 労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える「時間外労働」に上限(月24時間・年150時間)を設ける制度。

概要については、下表をご覧ください。

内容所定外労働(残業)の免除、または時間外労働の上限設定
条件1回の申請で1ヶ月以上1年以内の期間について請求可能。回数制限なし
対象者日々雇用や入社1年未満などを除くほとんどの労働者(労使協定により対象外となる場合あり)。対象家族は介護休業と同じ
申請方法原則として開始予定日の1ヶ月前までに、書面等で事業主に申し出る

これらの制度を利用することで、終業後の時間を確実に介護に充てられるようになります。ただし、どちらの制度も、労働者が請求した場合でも「事業の正常な運営を妨げる場合」には、会社側は請求を拒否できるとされています。

 

参考:

厚生労働省|所定外労働の制限(残業免除)とは

厚生労働省|時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

深夜労働の制限

家族の介護のために、深夜(午後10時から午前5時までの間)の勤務を免除してもらうことができる制度です。概要を下表にまとめました。

内容深夜(午後10時~午前5時)の時間帯における労働の免除
条件1回の申請で1ヶ月以上6ヶ月以内の期間について請求可能。回数制限なし
対象者以下の労働者を除くほとんどの労働者。対象家族は介護休業と同じ
・日々雇用される者
・入社1年未満の者
・深夜にその家族を常時介護できる同居の家族(16歳以上)がいる者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
・所定労働時間の全部が深夜にある者
申請方法原則として開始予定日の1ヶ月前までに、書面等で事業主に申し出る

夜勤がある仕事をしている場合に、介護との両立を図る上で有効な制度です。ただし、この制度も残業の制限と同様に、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、会社側は請求を拒否できるとされています。

 

参考:厚生労働省|Ⅷ 深夜業の制限

4介護離職における失業保険の受給条件

やむを得ず親の介護を理由に退職した場合でも、一定の条件を満たせば雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受給できます。介護離職は、自己都合退職の中でも「正当な理由のある自己都合退職」と判断され、「特定理由離職者」として扱われるのが一般的です。

 

これにより、通常2~3ヶ月ある給付制限期間がなく、待機期間7日間のみで給付が開始されるというメリットがあります。ただし、受給には以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険の加入期間: 原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あること(通常の自己都合退職は離職日以前2年間に12ヶ月以上)。
  • 就労の意思と能力: 働く意思と能力があること。
  • 求職活動: 積極的に求職活動を行っていること。

給付額は離職前の賃金に基づいて計算され、給付日数は年齢や雇用保険の加入期間によって異なりますが、通常90日~150日です。失業保険はあくまで再就職までの支援であり、給付期間は限られています。受給を前提とするのではなく、計画的な活用が必要です。手続きは住所地を管轄するハローワークで行います。

 

参考:ハローワークインターネットサービス|基本手当について

5介護が理由で退職する前に検討すべき対策と準備

介護離職は最終手段と考え、まずは退職を回避するための対策を検討しましょう。公的な介護支援制度の活用はもちろん、介護サービスの利用、職場への相談、家族・親族との連携など、打てる手はさまざまです。一人で抱え込まず、利用できる資源を最大限に活用し、仕事と介護を両立できる道を探ることが重要です。

介護サービスの活用を検討する

介護の負担を軽減するには、介護保険サービスや保険外サービスの積極的な活用が不可欠です。各サービスについて簡単にまとめました。

  • 介護保険サービス
    [内容]訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)、福祉用具レンタルなど、要介護度に応じてさまざまなサービスがあります。
    [費用]費用の1割~3割(所得に応じて変動)が自己負担となります。
  • 介護保険外サービス
    [内容]介護保険適用外のサービス。家事代行、配食サービス、見守りサービス、外出・旅行の付き添いなど多岐にわたります。
    [費用]:全額自己負担となりますが、保険サービスではカバーしきれないニーズに対応できます。
  • 自治体独自のサービス
    [内容]お住まいの市区町村が独自に提供している高齢者支援サービスもあります
    (例:軽度生活援助、緊急通報システムなど)。

これらのサービスを組み合わせることで、介護者の身体的・時間的負担は大幅に軽減できます。退職による収入減と、サービス利用にかかる費用を比較検討し、仕事との両立が可能になる最適なバランスを見つけましょう。

職場に介護状況を相談してみる

介護の問題を一人で抱え込まず、早い段階で職場に相談することも重要です。事前に状況を伝えておくことで、親の体調急変などで突発的に休む必要が出た場合にも、理解や協力を得やすくなります。

 

相談する際は、まず自身の状況を具体的に伝えましょう。その上で、利用したい会社の制度や業務量の調整、残業の少ない部署への配置転換などを具体的に相談してみます。会社によっては、法律で定められた制度以外にも、独自の支援制度を設けている場合もあります。諦めずに、まずは相談してみることが大切です。

家族・親族と協力体制を構築する

介護は、一人だけで背負うには重すぎる負担です。「自分がやるしかない」と思い込まず、兄弟姉妹や他の親族にも積極的に協力を求めましょう。まずは、関係者が集まる「家族会議」を開き、親の状況や今後の介護方針、役割分担、費用負担などについて率直に話し合う機会を持つことが重要です。

 

協力の形は、直接的な身体介護だけではありません。金銭的な援助、定期的な見守りや話し相手、情報収集、手続きの代行、精神的なサポートなど、各自ができる範囲で関わる方法はさまざまです。ケアマネージャーなど専門家も交えて話し合うのも有効です。複数人で協力・分担することで、一人当たりの負担が軽減され、結果的に介護離職を防ぐことにつながります。

公的な相談窓口を積極的に利用する

介護に関する悩みや困りごとは、公的な相談窓口に相談することも有効な手段です。専門的な知識を持つ職員が、状況に応じたアドバイスや情報提供をしてくれます。主な相談窓口と役割は以下の通りです。

相談窓口の種類受けられるサービス
地域包括支援センター高齢者に関する総合相談窓口。介護保険サービスの説明・申請代行、ケアプラン作成支援、権利擁護、地域の医療・福祉機関との連携など。
社会福祉協議会地域福祉の推進拠点。生活困窮者支援、ボランティア活動支援、福祉サービスの提供・相談など。
保健所地域住民の健康維持・増進を担う機関。難病相談、精神保健福祉相談、医療に関する相談など。
国民健康保険団体連合会主に介護保険サービスの質の向上や苦情対応を行う機関。介護サービス事業者に対する不満や疑問、虐待に関する相談など。

これらの窓口は、介護保険制度や利用できるサービスについて詳しく教えてくれるだけでなく、介護サービス事業者への苦情やトラブルにも対応してくれます。「家族以外に相談できる人がいない」「専門家の客観的な意見が聞きたい」といった場合に、積極的に活用しましょう。問題解決の糸口が見つかるかもしれません。

6イチロウの介護サービスで介護の負担を軽減

仕事と介護の両立に限界を感じている、あるいは公的な介護保険サービスだけでは手が足りないと感じているなら、民間の介護サービス「イチロウ」の活用も有効な選択肢です。「イチロウ」は、利用者一人ひとりの状況に合わせて、必要なときに必要な分だけサポートを提供するオーダーメイド型の訪問介護サービスです。

 

公的な介護保険の枠にとらわれず、身体介護や生活支援、通院・外出の付き添いまで、幅広いニーズに柔軟に対応します。介護保険では対象外となる家族のための家事や、ペットの世話、庭の手入れといった細かな要望にも応えられるのが大きな特徴です。

 

24時間365日対応可能で、介護認定の有無に関わらず利用できます。介護の負担を軽減し、仕事やご自身の生活との両立を支える力となります。

 

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7まとめ

親の介護を理由とした離職は非常に深刻な問題です。介護に専念できるメリットがある一方、収入減やキャリア喪失、精神的な負担増といった大きなデメリットも伴います。

 

安易に退職を選ぶ前に、まずは利用できる制度や対策がないか確認しましょう。この記事で紹介したように、育児・介護休業法に基づく「介護休業」「介護休暇」「短時間勤務」などの支援制度があります。また、やむを得ず離職する場合でも、「特定理由離職者」として失業保険の早期給付を受けられる可能性があります。

 

退職を回避するためには、介護サービスの活用、職場への相談、家族との協力体制構築、公的窓口の利用といった対策を検討することが重要です。介護離職は大きな決断です。利用できる社会資源を最大限に活用し、ご自身とご家族にとって最善の選択をしてください。

監修者情報

作業療法士として二次救急指定病院で医療チームの連携を経験。その後、デイサービスの立ち上げに携わり、主任として事業所運営や職員のマネジメントに従事。「現場スタッフが働きやすく活躍できる環境づくり」をモットーに、現場を統括。

現在は、医療・介護ライターとして、医療介護従事者や一般の方向けに実践的で役立つ情報を精力的に発信している。

平岡泰志
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